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彩吹真央さんインタビュー こまつ座初出演『イヌの仇討』 2017年06月

(2017年06月23日記載)

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彩吹真央さんインタビュー
こまつ座初出演『イヌの仇討』

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公演について

時代の真実は虚偽と謎だらけ。
現代と変わらぬ歴史のからくりと人間のドラマ、忠臣蔵・・・
武士の正義は、はたして本当につらぬかれたのだろうか。

討ち入り当日、密室でお犬様と炭焼き小屋に隠れていた吉良上野介は
どんな思いで首をはねられるまでの二時間を過ごしたのか。
吉良の目線から、その知的な興味を駆使して語られるスリリングな舞台運びは、
作者の目でみた忠臣蔵のもう一つの側面を浮かび上がらせる。
大石内蔵助の登場しない忠臣蔵は、逆に大石内蔵助を鮮明に浮き立たせ、
移り気な大衆の力によって美談として今に伝聞されるべき、作られた忠臣蔵ではなかったか?
さて、その真実は・・・こまつ座の初演から二十九年の時を経て、今甦る井上ひさしが描いた「忠臣蔵」異聞。

STORY

時は元禄十五年(一七〇二)十二月十五日の七ツ時分(午前四時頃)。

有明の月も凍る寒空を、裂帛の気合、不気味な悲鳴、そして刃に刃のぶつかる鋭い金属音が駆け抜ける。
大石内蔵助以下赤穂の家来衆が、ついに吉良邸内に打ち入った。狙う仇はただ一人。
「吉良上野介義央」
ところが、やっとの思いでたどりついた上野介の御寝屋は蛻の殻だった。
上野介は、御勝手台所の炭小屋に逃げ込んでいた。
赤穂の家来衆が邸内を二時間にわたって、三度も家探しをしていた間、
身を潜めていたというあの物置で、彼らの心に何が起こったのか。
果たしてどんな事実があったのだろうか。

―――討ち入りから三百五十年、歴史の死角の中で眠っていた物語が、東憲司の演出によって二十九年ぶりに甦る。

   

彩吹真央さんインタビュー( 2017年6月14日 取材・撮影・文:住川絵理 )

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―――彩吹さんは今回、こまつ座作品に初出演となりますが、今の心境は。

こまつ座の舞台を観劇すればするほど、「いつか私も出させて頂きたい」という思いが募っていきました。
念願叶い、出演させて頂けると決まった時には本当に嬉しかったです。
こまつ座作品の中でも、時代物に参加出来るというのは驚きました。時代物ということは、
間違った所作は出来ないな、所作が体にしみついていないといけないなという、緊張感があります。
現代のお芝居ですとなんとなくの想像で動けるような仕草も、時代物だとそうはいきません。
もちろんタカラヅカ時代も和物のお芝居はありましたので、性別は違えども
「ああこういうことをやっていたな」という懐かしさもあります。
でも私にとっては、今回、着物姿の女性を演じる初めての機会になるので、稽古場で過ごす毎日が新鮮です。
タカラヅカで男役をやっているころには男舞を踊ることが多く、肩肘はらないで肩を落とすとか、
真正面を向かないとか、そういう女性らしい所作をやってきていないので、
どうしても言い争うような場面では強さが前面に出て、勝ってしまうんですよね(笑)。
そこは本当に気をつけないといけないなと思っています。そんな毎日を楽しく過ごしています。

―――改めて、日本舞踊、所作は習われたのですが?

日本舞踊は時間がある時にお稽古をしていました。
今回、作品の中でお茶のお手前をする場面があります。
茶道は宝塚音楽学校時代に少し触れましたが、宝塚ファミリーランドのお茶室で、
ほっと和んで眠くなりながらお菓子を食べてる時間だったので・・・(苦笑)、全然身についていないんです。
だから今回は、先生のところに習いに行ったり、ちょっとこれはどうしようかなとも思ったのですが、
今の時代は便利な動画がネット上に出ているので、YouTubeで検索して眺めています。

―――お茶の作法も習われたのですね。

先日先生のところで習った時に、心がこもってこその所作なんだなと感じました。
どうでもいい感じで手順だけをこなせばちゃちゃっと出来てしまうものですが、
「お客様に美味しい物を召し上がって頂きたい」と、一挙手一投足で丁寧に立てる気持ちが大切なんだなと。
この所作のひとつひとつが役作りにも繋がるなと思いました。吉良上野介さんは茶人でもあったので、
その方の妾の役ということであればお手前は出来て当たり前かなと思いますし、
お芝居上どうしても略手前になってしまいますが、嘘偽りなくきちんとやらなければなと思います。
私自身も、日本人として得ておきたい知識だなと思いましたし、
これが趣味になればいいなとも思います。お茶会に招かれた時、さっとそういうことが出来たら素敵ですよね。
まずは、毎日家でお茶を立てて飲みたいなと思います。
日本舞踊も茶道も、改めて触れ、私はとても好きな世界だなと感じました。

―――稽古用の浴衣姿もお似合いですね。新調なさったんですか?

もともと持っていたものもあれば、以前ファンクラブのみなさんから頂いた浴衣もあります。
今日着ているのも稽古中に誕生日を迎えたので、またファンのみなさんから頂きました。有松絞りの浴衣です。
ファンのみなさんの思いがこもっていますし、きちんとしたものを着ると背筋が伸びて、
頑張ろうという気持ちがより大きくなります。

―――髪型も自分でなさっているのですか?

そうですね。毎日同じ髪型ですが自分でやっています。お稽古が始まる前は「どんな髪型にしようかな?
タカラヅカの娘役さんはみんな凝っていたな」と、髪型の研究をしようと思いましたが、
いざ稽古が始まると、毎朝お化粧をして浴衣を着てというだけで手いっぱいでした(笑)。
でも、作品によって髪型や着るものを変えることが出来るのは面白いなと思います。
派手な役であれば稽古中も派手なものを着ようかなと思います。
今回は時代物の日本人役なのでなるべく髪は黒い方がいいかなと思っています。


―――こまつ座の稽古に初めて参加して、他とは違うなと思うようなところはありますか。

たくさんありますが、まずは演出の東さんがとてもパワフルです。
東さんは井上ひさしさんの戯曲を読み深めていらっしゃり、その深さがすごいなと思います。
今回は東さんが井上さんの思いを紐解きつつ、そこにご自身のオリジナリティを注ぎ込むには
どうすればいいだろうか・・・と、全てを捧げて取り組まれています。
たくさん調べて、実はこういう人だったんだよという説明も私たちに届けて下さるので、
100パーセントの信頼でみんなが付いていくような稽古を重ねています。
みなさんが真剣に作品に向き合っている姿を感じつつ、私もその一員として真剣に向き合えることが嬉しいです。

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―――こまつ座のどんなところに魅力を感じますか。

まず、座付の作家の井上ひさしさんが書かれた戯曲の素晴らしさです。
井上さんのセリフを言ってみたいと思っておりましたので、自分がセリフを言う時も、
共演者の方のセリフを聞いている時も、幸せを噛みしめています。
自分が客席にいる時に感じること以上に生で触れることが出来ているので、願い続けてきて良かったなと思います。

―――みなさん一緒に、吉良邸跡地にも行かれたそうですね。

稽古3日目位のタイミングで行きました。まだ「はじめまして」のような状況でしたが、
社会科見学のようにみなさんと見学し、同じ空間を感じ、その後一緒にちゃんこ鍋を食べたら、
あっという間に打ち解けました。誰もが知っているような赤穂事件が起きたその場所に行って、
実際に吉良邸を見学し、戯曲に書かれているのは全てフィクションではないなという真実味をあちこちで感じ、
演じる側としてもやりがいを感じています。

―――彩吹さんが演じる吉良上野介の側妻さんは実在した方なのですか?

いたかもしれないという感じです。でも私の中では台本を読んだ時から、
「絶対にいたでしょう!」と思っています。私としてはそういう設定で演じています。

―――吉良邸で強く感じたのは?

すごくのどかな場所だなと感じ、それがある意味残酷でもあるなと思いました。
松の廊下の事件の前までは今でいう東京駅の近くに吉良邸があり、
あの事件が起きてから幕府の命令で本所に移りました。
タカラヅカ時代、バウ・ミュージカル『月の燈影(ほかげ)』という作品に出演した際に、
川向う、川を超える意味に触れました。あの時代は橋を渡るか渡らないかで全然違ったんだろうなと思います。
お上の命で川向こうに追いやられた後、のんびり過ごしたかったであろうに、
茶会の日の寝静まったころに襲撃されてしまう。その静けさが残酷だなと想像し、吉良さんに思いを馳せました。

―――『イヌの仇討』は、「赤穂事件」を題材にしながら、
浅野内匠頭も大石内蔵助も登場しないところが面白いですよね。


みんなが知っている事件が題材になっているということで興味をそそる内容だと思います。
しかし、世の中に出回っている「忠臣蔵」のストーリーは、ヒーローが大石内蔵助、
敵役が吉良上野介となっているので皆様もそのイメージが強いと思いますが、
この作品はそれを覆す内容で、私自身としては「実はこっちが真実なのでは」と思う程のお話になっています。
目に見えるものだけが真実ではないということに触れて頂き、
こういうことにも目を向けていかなければと思っていただけたら嬉しいなと思います。

井上さんは、300年間敵役だった白髪のおじいちゃんは、実はこんなに心の温かい人だったんだよということを
知って欲しいと思って書かれたのかなと思います。出演者の私たちはそれを伝えるのが使命なので、
この作品の中で吉良さんの妾として、誰よりも吉良上野介さんをお慕いしたいと思います。
大谷さんが演じられる姿は吉良さんそのもので、絶対に吉良さんはこういう方だったに違いないと思うほどです。
名古屋の吉良町も訪れましたが、そこに住んでいらっしゃる方たちは吉良さんを慕っています。
世間のイメージとのギャップを感じます。これをご覧になった方にはこういう一面もあったと感じて頂き、
吉良さんのファンになって頂けたらと思います。

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―――『イヌの仇討』が29年ぶりに上演される意味をどのように捉えていますか。

この作品で何が言いたいかというと、お上と世間とのくされあいというか、世間のもてはやし方、浮気な心、
なのかなと思います。それって今、この時代にも似ているようなこともあるな、どんな時代も同じなんだな・・・
なんてことも感じます。

―――ひとつの部屋の中だけで人物の関係性、細やかな描写がなされている
ところが素晴らしいですし、命の危険が及ぶような最中でも深刻になりすぎずに描かれているところが、
この作品の面白さでもありますね。


井上さんの書かれる戯曲は、例え争いがあっても、貧しい中で暮らしていても、
必ず笑いを交えて表現されています。今回の作品も、討ち入りの最中が舞台なので、
ちょっと声を大きくしたら殺されるかもしれない状況なのに、ケンカをし始めるし、そこには犬もいるし。
29年前の公演を拝見していないので、お稽古に入るまで台本を読み続ける中で、「犬」はどういう表現で
登場するのだろうと気になりました。「29年前はなかったかもしれないけど、今回はもしかしたら
タレント犬が出て来ちゃう?もしそうだったら私も毎日犬に接して、私が家に帰ったら
飼い猫はどういう反応をするかな?」と、ひとしきり妄想に浸ったのですが・・・(笑)、
結果的にはうちの猫が嫉妬するような感じではない登場の仕方でした。
どうなるのかは観てのお楽しみということで(笑)。

―――仇討とか敵討って今はあまり使われない言葉ですが
昔は日常の中にあった言葉だと思います。やったらやり返すとか、誰かの為に人を手にかけるというのは、
彩吹さんのイメージとは真逆な世界ですが、この世界に触れてみて感じることは?


今回私が演じるのは吉良側の立場ですが、逆の立場で殿に忠誠を誓っていたらそういうことを
していたかもしれないなとは思います。殿の無念を晴らそうと思う、侍の心、
あの時代であればあり得ることなのかなと思います。

―――蚊を殺すのもダメ、犬を大事にあがめていなければダメの時代ですから、
生きて行くのも今とは随分勝手が違ったでしょうね。


作品の中にも「生類憐れみの令」のことがたくさん出て来ますが、ひいてはそれが原因で
色々なことが巻き起こっていったのではないかという気がします。実際に300年前に起こっていた話なので、
今その決まりがあったら、蚊は殺せないし、犬や猫はどんどん増えるし・・・それは想像を超える世界です。
赤穂事件を題材にしつつ、その当時の出来事や情勢も描かれているので、
そういうこともあったんだなと歴史を思い返すきっかけにもなります。そういう楽しみ方も出来る作品ですので、
是非足を運んで頂けたらと思います。

 

山形新聞・山形放送後援

こまつ座第118回公演 『イヌの仇討』

 

作:井上ひさし

演出:東憲司

 

出演:大谷亮介、彩吹真央

久保酎吉、植本潤、加治将樹

石原由宇、大手忍、尾身美詞

木村靖司、三田和代

 

日程:2017年7月5日(水)~23日(日)

会場:紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA

お問い合わせ:こまつ座03-3862-5941

 

こまつ座

 

 

 
 

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