情報紙から飛び出した 演劇系エンタメ サイト
Copyright Since1999 情報紙ターミナル
Copyright Since2010 株式会社ERIZUN

スタジオライフ『なのはな』特別鼎談・製作発表記者会見レポートが届きました 2018年11月

(2018年11月23日記載)

『エンタメ ターミナル』では舞台を中心としたエンターテインメント関連情報をWEB記事として発信しています。
掲載内容は、掲載日付のものとなりますので、最新情報は各自ご確認ください。

※ 記事・写真等の無断使用・無断転載は禁止しています。なお、リンクはフリーです。

 
この記事おススメ!って思った方は   をクリック!
Loading...

スタジオライフ 舞台版『なのはな』
特別鼎談・製作発表記者会見レポートが届きました

作品について(リリースより)

萩尾望都氏は2011年8月号の「flowers」に「なのはな」を発表しました。
3・11に起きた東北地方太平洋沖地震から半年も待たずしての発表でした。
揺れと津波と、そして福島第一原子力発電所の事故により多くの人の運命が変わってしまった直後に筆を取り、
発信したのです。止むに止まれぬ思いゆえと推察します。あれから7年、まだ後処理も完了しないまま時だけが
過ぎてゆきます。『なのはな』は、ナホという多感な少女を軸に、忘れてしまいたい現実と向き合った時、
事の厳しさと重みとともに、限りない哀しみの浄化の希望が溢れてくる「祈り」のような作品です。


舞台化について(リリースより)

2011年3月11日から8年後、2019年2月末から3月にかけて、この企画を充てました。
3月11日当日の新聞紙面やウェブ等、特集は組むと思いますが一過性のものになるのではという
懸念は拭い去れません。公演として行うことにより、私達に大きな宿題として残されている
フクシマのことを心に思い起こしていただけると期待しています。そして俳優の肉体と感情を
通過した言葉の数々が観客の魂に刻まれ、新しい記憶となることを望んでいます。
チェルノブイリの人々の想いとリンクし、亡くなった人々の魂へ心を寄せ、
菜の花に未来を託した物語『なのはな』を舞台空間に拡げさせていただく事により、忘却を回避し、
我々と若い命たちの、そしてこれから誕生する新しい命たちの未来を考える機会とさせていただきたく思います。

舞台版『なのはな』特別鼎談・製作発表記者会見レポート(2018年11月21日)

『なのはな』は漫画家・萩尾望都が、2011年の東日本大震災および福島の原発事故を題材として
同年に発表した短編作品。生まれた家を離れ避難先で暮らす福島の小学6年生・ナホは、
津波で行方不明になったままの祖母と夢の中で再会。祖母のもとへ導いてくれたのは、
人形を手にした西洋人の女の子で……。過酷な現実と幻想的なイメージがない交ぜになる日々の中、
ナホが希望の糸口を見出していくまでが描かれる。
劇団の代表作である『トーマの心臓』をはじめ、『訪問者』『11人いる!』『マージナル』など、
これまで何度も萩尾作品を舞台化しているスタジオライフ。
そこで製作発表の席では、萩尾と、劇作・演出を担当するスタジオライフの倉田淳、
そして今回客演を務める作曲家・明石隼汰の3人による特別鼎談が催された。
倉田が『なのはな』誕生までの経緯を尋ねると、萩尾は7年前の春の心情を丁寧に述懐。
「テレビで震災や原発事故のニュースを見て、血の気が引くとともに作品を描く気力がザーッと引いてしまいました。
『気持ちを明るくしなきゃ!』ということで親しい人たちと公園へお花見に行ったんですが、
そこで『チェルノブイリでは汚染地域に菜の花を植えた』という話を聞きまして
(※チェルノブイリ原発事故で汚染された農地では、放射性物質をよく吸収する菜の花によって
土壌を再生しようという試みがある)。
そこで初めて希望が見えた気がして、自分にとっての“お祓い”をするような気持ちで勢いのままに描きました。
ただ、災害の渦中にいたら絶対描けなかった。私はちょっと離れていたから描けたんだと思います」(萩尾)。
一方、独自の作曲メソッドで数多くの有名CMソングを手掛けている明石は、子供の頃から萩尾作品の熱烈なファン。
縁あって20年来“パソコンの師匠”という立場で萩尾と交流を重ねてきた。奇しくも福島県出身であり、
この作品に対する思いもひとしおだ。そんな彼が今回、劇中に登場する『アララソング』の作曲を含めた
劇伴をスタジオライフから依頼されたが、「この曲を歌う音寿という役を俺以上に演じられる人はないんじゃないか」
との思いが募り、自ら出演を希望したのだという。実は昔、文芸座で俳優経験があることを彼が照れ臭そうに明かすと、
萩尾も倉田も「初めて知りました」とびっくり。「ずっと長いことその進化を見つめてきたスタジオライフの舞台に、
まさか自分が参加させていただくとは思いませんでした。まだ稽古も始まっていないので不安の方が大きいですけども、
スタジオライフの世界を壊さないよう、自分の役割を果たせればと思っております」(明石)と屈託ない 笑顔で。
倉田は「スローガンのようにして声高に何かを叫ぶわけではないですが、ひしひしと、痛みや切なさが胸に迫ってくる作品。
ページ数にすればたった24ページですが“たった”と言えない、ものすごい分量が詰め込まれています。
これをどう芝居に起こすかと考えると頭が痛いんですけども(笑)、余計なことを足さず、シンプルにやりたいと
思っています」と抱負を述べた。 スタジオライフの演劇に対し「それは違うな~と思ったことがない」と、萩尾も太鼓判。
長年にわたり多くの作品を原作として提供しているのは、そうした信頼があるからだ。
「倉田さんの演出には、原作の本質をきちんと捉え、骨格を損ねないという特長があります。
それは漫画をそのままコピーしたぬるい演出とも違う。細部にまで深い意味があり、時々、
お能の舞台を観ているような感覚に陥る時さえあります。今回はどんな世界を見せていただけるのか期待しています」
(萩尾)と励ましの言葉を寄せた。


鼎談に続いてはキャストが登壇。Wキャストでナホを演じる松本慎也と関戸博一は、
「大切な人を失い、ふるさとを失い、それでも少女が見出す未来への希望というものをみずみずしく演じたいと思います。
演劇という表現を通して今一度福島へ思いを馳せ、そしてこの星に生きている一人の当事者として、未来に祈りと希望を
届けられるような作品を作っていければ」(松本)、「キャスト表の一番上にある名前はナホですが、家族の物語であり
全員が主役の物語だと思っています。『なのはな』は心の中の菜の花。広げて言うと観客席にいる全員が主役になれるよう、
心に届けたい。今まで以上の覚悟を持って臨みます」(関戸)と、それぞれに意気込みを。
西洋を舞台にした作品の多いスタジオライフだけに、髪を真っ黒に染めた二人が粛然と並んで立つ姿が、清新に感じられた。
倉田も改めて挨拶。発表当時『なのはな』を読んで以来、強く惹かれつつも、自分がこれを手掛けていいんだろうかという
思いがずっとあった――と振り返る。「でも時が流れ、このままではいけないなと思うようになりました。
(3・11のことが)日に日に忘れられ、どんどん置き去りにされていってしまう現状を感じ……東北ではまだいろんなことが
片付いていないということを忘れないでいるために、今、自分にできることをやりたいなと決意した次第です」。
また「ナホちゃん、ばーちゃん、じーちゃん、お父さんもお母さんもお兄ちゃんも音寿さんもみんな、それぞれの思いがある。
一つ一つの思いを大切に大切に、表現に結び付けていきたいなと思います」と熱く語った。
スタジオライフ公演『なのはな』は2019年2月27日〜3月10日:東京芸術劇場シアターウエスト、
4月12日~13 日:大阪・ABCホールにて。(文・上甲薫)

<<

 

 

スタジオライフ『なのはな』

 

原作:萩尾望都『なのはな』(小学館FCS『萩尾望都作品集 なのはな』より(小学館刊))

(小学館FCS『萩尾望都作品集 なのはな』より(小学館刊))

脚本・演出:倉田淳

 

[東京公演] 2019年2月27日(土)〜3月10日(日) 東京芸術劇場シアターウエスト

[大阪公演] 2019年4月12日(金)〜4月13日(土) ABCホール

[チケット]2019年1月13日(日)一般発売開始

 

公式サイト

 

 

 
 

情報は書き込んだ時点のものですので、実際の内容と異なる場合があります。
あらかじめご了承下さい。

[ PR ]