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『助太刀屋助六 外伝』
四代目市川猿之助さんにインタビューしました
喜劇にこだわり様々な作品を創りあげた鬼才、故・岡本喜八監督の生前最後の作品「助太刀屋助六」は、過去にテレビドラマや映画にもなっているが、新たな物語として舞台化されることになった。故郷を捨て江戸を目指していた助六が、旅の途中で仇討ち騒動に巻き込まれ助太刀をする姿をコメディタッチで描いた作品。主人公・助六役を演じるのは、市川猿之助。共演は、朝海ひかる、吉沢悠、忍成修吾、上山竜司、細見大輔、市川猿三郎、石橋直也、鶴見辰吾、ほか。 作・演出はG2。 公演日程:12月15日(土)~12月24日(祝・月)、会場:ル テアトル銀座。11,000円。
父は四代目市川段四郎。伯父には三代目市川猿之助。祖母には女優・高杉早苗。九代目市川中車(香川照之)は従兄弟にあたる。慶應義塾大学文学部国文科卒業。1980年7月歌舞伎座『義経千本桜』の安徳帝役で初御目見得。1983年7月歌舞伎座『御目見得太閤記』で、二代目市川亀治郎を名乗り初舞台。2007年NHK大河ドラマ『風林火山』で武田信玄として映像作品に初出演。2012年6・7月新橋演舞場「二代目猿翁 四代目猿之助 九代目中車 襲名披露公演」にて、四代目市川猿之助を襲名。
歌舞伎だけでなく、現代劇やテレビドラマ、バラエティ番組などにも出演し活躍の幅を広げている市川猿之助。常日頃から「ワクワクする気持ちを大切にしたい」と心がけているそうだ。美術品や骨董品にも精通しているが、先日ロケで京都を訪れ、全て尾形乾山(琳派の一人)の器で、松茸など秋の味覚を堪能したという。二代目市川亀治郎を改め四代目市川猿之助を襲名した今年、例年にも増して多忙を極めた。そんな今だからこそ、心躍らせ感性を豊かにする時間が大切になるのだろう。
襲名前、猿之助は永年名乗ってきた市川亀治郎という名前に強い思い入れを抱いていた。しかし、現在の心境は変わったようだ。「今はもう亀治郎という名前にこだわりはなくなりました。よく頑張ったし良い名前だと思うけど、市川亀治郎という名前はもう僕のものじゃないなと思っています。それはきっと、やりきったからでしょうね」。そう話す彼の表情は晴れやかで、目の前のやるべきことに立ち向かう強いエネルギーを感じる。
6月・7月に新橋演舞場で行われた襲名披露興行は、スーパー歌舞伎と古典や舞踊を昼夜に分けて上演し、早くも前例がないことに挑んだ。「スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』の絵看板も初めて新橋演舞場の入り口に飾られたのは嬉しかったです。僕よりも周りのスタッフさんたちが大変だったと思いますよ。でもね。結果が良ければ全て良しでしょう。お客様には、ただただ感謝ということに尽きますね」。
そんな猿之助が、次に挑むのは、『助太刀屋助六 外伝』という舞台だ。「色々な作品、演出家、役と出会うことに楽しみを感じています」と語っているが、どのような経緯で出演を決めたのだろう。
「いずれ芝居をやりたいね!と、役者仲間の市川猿三郎さんや石橋直也さんとお酒を飲みながらした話が、あれよあれよという間に大きくなって『助太刀屋助六 外伝』という形になったのです。正直、その時にどんな話をしたのか、酔っ払っちゃってあまり覚えていないんですけどね(笑)。とても珍しいケースで話が進んでいったのです。蓋を開けたら、演出がG2さんで、共演者に朝海ひかるさんのお名前も入っていて、これはすごい!と思いました」。
猿之助は以前、朝海ひかるがエリザベート役で出演したミュージカル『エリザベート』を観劇し、優しい雰囲気で素敵だと思ったそうだ。初めて観た時にエリザベートを演じていたのは一路真輝だった。その時は女性としての強さを感じた。同じ役でも演じる人によって印象が全然違ったことにも驚いたそうだ。猿之助は宝塚の舞台を観たことがないという。(子役以外)男性だけで演じる歌舞伎と女性だけで演じる宝塚歌劇団についてどのように感じているのだろうか。「似て非なる部分と、すごく似ているところがあると思いますので、共演を機に朝海さんにいろいろお話を伺ってみたいです」と語った。歌舞伎がホームグラウンドだという意識はどこかにあるとしつつも、歌舞伎以外の仕事では「人との出会いが次に繋がるかもしれない」という楽しみを感じているようだ。
「『助太刀屋助六 外伝』の演出のG2さんとは一度お食事をご一緒させていただいたのですが、穏やかな方だなという印象です。共演者も初めてご一緒する方が多いから、稽古後の飲み会が楽しみ。実はコレが非常に大事なんです。みんなで食事に行ったりすると、翌日は本当に打ち解けます。それでね、今まで言えなかったことが言えるようになる。一気に余計なものを脱ぎましょう、となるわけです(笑)」。猿之助ならではの戦略があるようだ。ル テアトル銀座という劇場で芝居をするということに関してはどのように感じているのだろうか。
「12月、もう年の瀬も押し迫っているんだから、きっと皆さん重い作品は見たくないでしょう?軽やかなタッチのコメディ作品になりそうなので、ハッピーになって帰っていただく、これがやっぱり芝居の醍醐味だと思います。せっかく銀座で上演するのだから、終演後にお食事を召し上がりながら『いやぁ、今日は楽しかったね』って、盛り上るようなものになればいいなと思うんです」と、意外とロマンチストな一面ものぞかせる。そんな猿之助が今回演じる助六という役は、仇討と聞くと、いてもたってもいられなくなって助太刀(すけだち)しに行くという役どころだ。
「おせっかいだよねぇ。僕だったらどうぞご勝手におやりなさいと、見て見ぬふりをします(笑)。昔はかわら版でニュースが配られていたわけですし、仇討とかそういうことしか取り上げられないから、しょっちゅうそんな話があったんでしょうね。今の若い子たちは、仇討って言葉自体を知らないと思いますよ。そういう若い方にも楽しんでもらえるものにしたいですね。やっぱり他では観られないそこだけのものをやらないと、なかなか劇場まで足を運んでいただけない時代。付加価値を付けるというのが非常に大事。今後やりたいことですか?海外公演もこのごろ減ってきちゃったから、そろそろやりたいですね。行くとしたらイタリアとかポルトガルがいいな。だって、食べ物がおいしいでしょ(笑)」
知性を生かした戦略が見え隠れしているかと思えば、自身の感性を大切に目の前にある興味に突き進んでいく。そんな猿之助の言動からは、「今を生きる」というキーワードが浮かんできた。『助太刀屋助六 外伝』は、猿之助のそんな疾走感を味わえる舞台になりそうだ。
『助太刀屋助六 外伝』
キャラクター原案:岡本喜八『助太刀屋・助六』より
作・演出:G2
出演:市川猿之助、朝海ひかる、吉沢悠、
忍成修吾、上山竜司、細見大輔、
市川猿三郎、石橋直也、鶴見辰吾 ほか
公演日程: 2012年12月15日~24日
劇場:ル テアトル銀座
チケット料金:11,000円
企画・製作・主催:梅田芸術劇場
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