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菅野こうめいさんインタビュー 『冒険者たち』脚本・演出・作詞 2013年05月

(2013年05月28日記載)

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菅野こうめいさんインタビュー
ミュージカル『冒険者たち』脚本・演出・作詞

菅野こうめいプロフィール

伝説のミュージカルショウ「SHOW GIRL」シリーズで10年間、演出助手・ショー構成・訳詞を担当。1986年「小堺クンのおすましでSHOW」で演出家デビューを果たす。ミュージカル作品のほか、show stage、コンサート、博覧会や大型スポーツイベントなど、幅広いジャンルで演出を手がける他、USJや志摩スペイン村など、テーマパークのエンターテイメントディレクターも務めた。

コンサートでは大地真央、一路真輝、真琴つばさ、安蘭けい、春野寿美礼などの宝塚OGをはじめ、服部克久、千住明などのオーケストラ、中山美穂、加山雄三、サーカス(コーラスグループ)、吉田兄弟(津軽三味線)、氷川きよしなど、ジャンルを超えた多くのアーティストの演出を手掛けている。CDアルバム「春野寿美礼 Chopin et Sand 男と女」も手掛けた。

近年のミュージカル作品は、「カーテンズ」、「ガイズ&ドールズ」、「ア・ソング・フォー・ユー」、「カルテット!」など。

<今後の予定>
笹本玲奈 「15th Anniversary Show Magnifique(マニフィック)」
構成・演出:菅野こうめい
出演:笹本玲奈 他
2014年1月31日(金)~2月2日(日) 天王洲 銀河劇場


菅野こうめいさんインタビュー
(取材日:2013年5月24日/インタビュアー・撮影:住川絵理)



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ミュージカルだけでなく、コンサートやテーマパークエンターテインメントのディレクターなど
多方面で手腕を発揮している、菅野こうめいさんにインタビューしました。

ミュージカル『冒険者たち』の原作は、斎藤惇夫氏によって72年に出版された『冒険者たち ― ガンバと15ひきの仲間 ―』。
40年経った今でも多くの人に愛され読み続けられている児童文学です。
75年にはアニメ『ガンバの冒険』が放映され一躍有名作品になりました。
そしてその後は、多くのカンパニーによって舞台化されました。

今作は、2009年3月に初演が行われたミュージカル『冒険者たち』を大幅にリニューアル。
菅野こうめいさんのアイデアが盛り込まれ、
2幕構成のミュージカルとして生まれ変わりました。


ーーー今回、菅野こうめいさんは脚本・演出・作詞を手掛けられるということですが、
ミュージカル『冒険者たち』の上演が決まり、どのようなことから始められたのでしょうか。

◆菅野こうめい
まず初演と再演の台本とDVDを見て、あとは原作を読んでアニメも全話見ました。

原作は若い頃に読んだ覚えもあるのですが、「そんな本もあったなー」という位の認識で、アニメも世代的に見ていなかったので、今回ほとんどまっさらな状態で原作を読みました。

正直言って打ちのめされましたねー。安保闘争の後に描かれたという時代背景を知ってはいましたが、これは現代の日本に通じる話だと思いました。ノロイという敵役が原発で、イタチは津波だなと。僕の中で東北や福島の現状と重なり、そういうことを盛り込みたいという話をプロデューサーにしました。一切「フクシマ」や「ゲンパツ」という言葉は使いたくなかったので、「あくまでもエンターテインメントとして、それを描き出したい」という思いを持ちながら、登場人物のネズミたちにその思いを投影して脚本を書き始めました。

ーーー脚本を書かれる時、それぞれのキャラクターの気持ちを考えるところから始めるのですか?

◆菅野こうめい
そうですね。原作はもっとたくさんのネズミが出てきますが、今回は何人かのキャラクターを合わせて複合的に表現するキャラクターも作りました。9人のネズミたち、それぞれに見せ場も作りたいし、9人が最終的にどのようにユナイトするか(結びつくか)という物語なので、最初の段階でのキャラクター設定は、一番丁寧に考えました。

今、最終段階の稽古をしていますが、「全員いい役だな!」と思います。いくつかの役をお願いしている方を含め、みんないい。こんなことは珍しいです。書き始めてしばらくするとジワジワしてくる時があるのですが、ある時期から頭の中でキャラクターたちが「こうさせろ、こうさせろ」と話しかけてくるので、後はその声に従って書いていったような感覚です。

今回演出するのも自分自身なので、(舞台上での)画が見えていて、それに向かって書いていく場面もありました。演出を進める中、物理的な問題で違う方法をとらなければいけないようなことももちろん出てくるわけで、そうなった時にどう対応出来るかも含めて考えながら書いているので、脚本を書き上げた時点でもう演出家の目になっているような気がします。

あとは稽古場でみんなの声を聞いた時に、初めて全貌が見えてくるんですよ。そういう意味では脚本を書いた時よりも、読み合わせをした頃から「大丈夫だな、これは面白くなりそうだな」と思いました。




ーーー東北への思いも込めてというお話が先ほど出ましたが、菅野こうめいさんのルーツが福島にあるということも影響しているのでしょうか。

◆菅野こうめい
父方も母方も福島出身で僕のルーツでもありますし、震災後両親が福島の人たちに色々なことをしているのを見てきました。僕自身も震災後に訪れたということもあり、この作品の内容と重なったんです。「絆」という言葉がよく言われていますが、それ以上にユナイト(結びつける)して何かに取り組まなくてはいけないんじゃないか、という思いをネズミたちに託したんです。

ーーーミュージカル『冒険者たち』に登場するのはネズミやイタチなどの動物たちですが、人間と重なるところも多いのでしょうか。

◆菅野こうめい
擬人化しているという意味では、人であろうとネズミであろうと、僕は同じだと思います。何人という言葉も出てくるし、何匹という言葉も出てきます。でもそこに違和感はないんですよね。登場するのはネズミたちですが、これは「人間の物語」だと思いますから。ネズミだからといってネズミらしい動きを追求するのではなく、それぞれのキャラクターが持つ心を表せたらと思います。

ーーーそれぞれが「人格」を持っている、というわけですね。ネズミとノロイの関係性についてはどのようにお考えですか?

◆菅野こうめい
それはちょっと難しいですね。ネズミはノロイを目に見えぬ敵として捉えています。だから余計に恐ろしい。それって今、日本が直面している問題に重なると思います。近づくことが出来ずイメージの中でどんどんその存在が大きくなる。でも、その怖さを経験した人が居る。その経験を聞いても姿が見えないので、それにどう立ち向かえばいいのか分からない、というネズミたちの恐怖は、今僕たちが持つ恐怖と共通しているなと思います。原作の中にそういうメッセージが入っているような気がしたのです。

ーーー日常の中での「目に見えない敵」というのは、プレッシャーや緊張感など意外とたくさんあるかもしれないですね。

◆菅野こうめい
「目に見えない敵に向かって自分たちはどうやって進んでいけばいいのか」ということが、このミュージカルのひとつのテーマだと思います。そういうものを全て歌に込めたいと思って歌詞を考えました。



ーーー友情、対立、信頼など、人間の普遍的なものが描かれているのかなと思いますが、特に強く感じるのはどのようなことですか。

◆菅野こうめい
この言葉を使うのはちょっと恥ずかしいのですが・・・「愛」ですね。故郷に対する思い、家族、友達、ありとあらゆるこの地上にある自分が信じられる「愛」をどのようにみんなが掴むか、どうしたら心の中に持ち続けられるか、という問いかけをしたかったのです。

ーーー演出面で少し、アクロバティックなシーンや、ダンスナンバーもあるそうですね。

◆菅野こうめい
実は少しどころではなくなってしまった・・・(笑)。そんなにダンスナンバーがある作品ではないのですが、ミュージカルとしてやる以上、戦いのシーンは、いろんな表現を用いてやりたいなと思っていました。鳥だったら飛ぶだろうから、どうやって飛ばそうかな、と考えてエンターテインメントとして楽しめる仕掛けをたくさん用意しました。体を動かすのが得意な若い子たちもたくさん出ているので、次第にそういうシーンが増えていきました(笑)。

ーーー音楽はどのような感じになりそうですか?

◆菅野こうめい
作曲は前回もこの作品を手掛けた大石憲一郎さんが今回もご担当下さると言うことでしたので、前回上演時のテーマソングとバラードの2曲を残して、また新たに作曲していただくことにしました。とてもかっこいい音楽が仕上がってきました。僕と大石さんの作業を振り返っても、オリジナル作品で最初からこんなに思った通りうまくいくことって実はなかなかないんですよ。それぐらい僕のイメージ通りの曲を作っていただきました。いい作曲家と巡りあったな、と感じています。



ーーーたくさんのネズミたちが登場しますが、ご自身はどのネズミの性格に近いと思われますか?(笑)

◆菅野こうめい
僕はガンバですよ。超いい加減ですから(笑)。
ガンバは先頭切って戦いにいく奴じゃない。「フクシマ」からは一番遠いタイプだと思うんです。でも、都会人としての見栄や負けずぎらいが出て、行くことになっちゃう。そんなタイプのネズミが、色々な経験をして正義心に火が付いて、学習しながら「進化」する話だと思います。人間って「成長」することはあっても、「進化」することってあまりないじゃないですか。でも、ネズミは「進化」しそうな気がします。「成長」ではなく「進化」。それもこの作品のテーマになっているような気がしますし、「僕自身も進化したい!」という思いも込めて、似ているタイプはガンバかなぁと。決してヒーローということではなく、いい加減な男として誰が近いかを考えたら・・・という意味でね。ヨイショみたいに体力はないし、ガクシャみたいに知性もないので(笑)。

ーーー理想としては他のキャラクターだったりします?(笑)

◆菅野こうめい
理想としては・・・あ、尾藤イサオさんが演じるオイボレですね。不思議な時にフラッと現れて。でも最後かっこいいんですよ。「あしたのジョー」を彷彿とさせるような感じです。あれは尾藤さんだからこそ出せる雰囲気だと思いますけど。

ーーー『冒険者たち』というタイトルが付いていますが、冒険したいことはございますか?

◆菅野こうめい
僕はもう、この歳になったら、ない、ない。とにかく静かに暮らしたいです(笑)。

ーーーでも実際のところ、静かにならなかったり?

◆菅野こうめい
ならないですよね。

ーーーということは毎日が冒険?(笑)

◆菅野こうめい
そうですね(笑)、ずっと冒険しているのかもしれない。
「いつもエンターテインメントの世界で冒険し続けたい」という思いはありますが、それを言うのは格好良すぎるので・・・もう少し違うんですよね。「楽しいことがあるなら、冒険しちゃおうかな」位の感じです(笑)。

ーーーたくさんの娯楽があり選択肢が増えている中で「舞台を見に足を運ぶ」、ということはなかなか大変なことなのかなとも思いますが、そのあたりはどのようにお感じですか。

◆菅野こうめい
少し経済が上向きだという報道もされていますが、劇場全体を見渡すとなかなか大変な時を迎えているなと思います。みんなが劇場に来て下さるということが根付くといいなということを考えながらいつもやっています。日本ではロングラン形態のものは一握りで、ほとんどの作品が短期間での上演なので、リミテッド(限り)がある中で集中的に情報を発信し、受け取り手にどう伝えていくかは常に考えていないといけないですよね。観劇が娯楽ではなくて、生活の一部になって欲しいなと思います。そのたのに出来ることは、僕自身も一生懸命やりたいなと思います。あまり気難しいことをやらずに、みんなが楽しんだり、何かを感じたり出来るような作品も必要だなと思うし、僕はそういう作品を担当することが多いですね。

ーーー最近演出なさった『ア・ソング・フォー・ユー』や『カルテット!』そして今回の『冒険者たち』などは、何か困難や大変なことにぶつかった時にどうしていくか、どのように人と結び付いていくか、ということがテーマになっているような気がします。

◆菅野こうめい
ああ、そうかもしれないですね。そういう作品が好きですね。

ーーー菅野こうめいさんが何か困難にぶつかったら、どのように乗り越えますか?

◆菅野こうめい
ずっとその連続です。あまり気にしないので、これはというアドバイスはないですね。

ーーーそれまでの経験などが役立つようなことはありますよね。

◆菅野こうめい
それはもう本当にそうですね。仕事に関してはいくつでも手段はありますし、アイデアも浮かびます。ミュージカルを好きでこれまで色々とやってきた経験もあるので、そういうことを次世代に伝えておきたい、という気持ちが最近強まっています。これからもそういう機会は、どんどん欲しいですね。仕事の上ではそう言えますが、普段の僕は先ほども言ったとおり、全くダメな男なので・・・(笑)

 

ミュージカル『冒険者たち』

~The Gamba 9~

 

原作:冒険者たち ― ガンバと15ひきの仲間 ―

斎藤惇夫作 岩波書店刊

 

脚本・演出・作詞:菅野こうめい 

作詞:うえのけいこ

音楽:大石憲一郎

振付:振付稼業air:man

 

 

【東京公演】

2013年6月6日(木)~6月16日(日)

サンシャイン劇場

 

【名古屋公演】

2013年6月22日(土)

名鉄ホール

 

お問い合わせ

アトリエ・ダンカン  03-3475-0360 (平日12:00~18:00)

 

http://www.duncan.co.jp/web/stage/boukensha/index.html

 

 

 
 

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