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小林綾子さんインタビュー
ala Collectionシリーズvol.6『秋の螢』出演
製作発表&可児市文化創造センター視察レポート
▲写真左より、渡辺 哲、松本祐子(演出)、小林綾子、細見大輔、福本伸一、粟野史浩
「ala Collectionシリーズ」は、演出家と俳優、スタッフが可児市に滞在して舞台製作を行い、
可児市から文化発信している事業です。『秋の螢』という作品で初めて参加することになった
小林綾子さんにインタビューしました。
公演『秋の螢』は、可児市文化創造センター・小劇場を皮切りに、東京・吉祥寺シアター、
徳島、盛岡、栃木、長岡で上演されます。
―――小林さんは8月24日から岐阜県可児市に入られたそうですが、
このシリーズに参加することになった経緯を。
衛 紀生さん(可児市文化創造センター館長兼劇場総監督)と知り合ったのは、音無美紀子さんが出演なさっていた舞台を見に行った時に偶然お会いしたのがきっかけで、「今度公演がある時にはお声かけしますね」と言ってくださいました。音無さんはala Collectionシリーズに出演なさったことがあり「可児はとても良いところよ」とおっしゃっていましたが、訪れてみたら想像していた以上に素敵なところでした。
―――この場所で稽古~本番の約1ヶ月半を過ごすのですよね。
稽古と本番を行なう可児市文化創造センターは高台にあるので見晴らしが良いです。そして建物自体も素晴らしくて、まるでヨーロッパの美術館のよう。私は中庭の芝生と噴水があるところが好きで、休憩毎に癒やされに行っています。大学時代は京都にいましたが、あとは東京で暮らしていますので、こういう景色を眺める時間が大切だなって思います。土の香りを嗅ぐとホッとしますし、田舎がある方はこういう気持ちになるんだろうなと感じました。先日、茶色いものが飛んだので何?と思ったら、バッタでした。私は自然が好きで登山もするのですが、普段なかなか街中にいるとそういう光景は見られないので、そういうひとつひとつのことが新鮮です。一度、自転車で木曽川の方まで行ってみました。昨年までライン下りがあったそうなのですが、今はやっていないらしくちょっと残念です!
▲ala(可児市文化創造センター)中庭の景色
―――小林さんのお誕生日が8月と言うことで、稽古初日にバースデーカードが手渡されたそうですね。
そうなんです!そういう心遣いをしてくださるala(可児市文化創造センター)さんはすごいなと思います。皆さん優しくて親切で、「何か困ったことはない?」と聞いてくださるのです。手作りのバースデーカードで温かい気持ちになりましたし、そういう方に囲まれた中で稽古が出来るというのは幸せだなと思います。この仕事をやらせていただいて良かったなと思います。
―――『秋の螢』の台本を読んだ時の感想を。
お話はとても素敵で是非やりたい!と思ったのですが、いざ自分がマスミを演じるとなると、今までやったことがない役どころなので、どういう風に演じたらいいかなと、正直言って不安がよぎりました。
―――その不安を払拭するために、どのようなことをなさいましたか?
マスミという役どころは結婚詐欺にあって傷ついた女性だそうですね。
子どもの頃は児童劇団に入っていましたので演技の勉強をしてはおりましたが、「おしん」をやらせていただいて以降は、先生から指導を受けるような形での演技の勉強はほとんどしていませんでした。芝居をする時には感性や直感、そして相手とのキャッチボールが大事だと思うので、そういう経験を現場で培いながら現在までやってまいりました。
もちろんそれも大事だなと思っておりますが、「おしん」を演じてから今年で30年が経ちましたので、ただ現場に行って演じるだけでははなく、もっと幅を広げたり自分を変えたりする努力をしなければいけない、という思いが最近強くなってまいりました。そのタイミングでこの作品のお話をいただいたんです。可児という土地で、じっくりみなさんと芝居を創り上げていくのを楽しみに、役作りに臨みました。
―――普段、役作りをなさる時は、どのようなところから入りますか?
もし原作があれば原作を読みます。敢えてイメージを作りたくないから読まないとおっしゃる方もいらっしゃいますが、私は原作を読んでそれを捉えた上でイメージを膨らませて演じたいタイプです。
―――今回の『秋の螢』で共感するところは。
今回演じるマスミは、私が全く話したことがないような口調なんですよ。例えばご飯を作っているところでも「飯(めし)」と言うので、こんな言葉を使っていていいのかな、と思うこともあるのですが(笑)、こういう役なので役に徹して務めたいと思います。マスミの「弱い部分を隠したいから強く笑い飛ばすようなこと」って自分にもありますので、そういうところは共感しますね。表現の仕方は自分とマスミでは全然違いますが、恥ずかしいから笑って言ったり、泣きたい時に明るく言ってみるというのは、ありますよね。
―――今まで演じたことがないような役どころを演じてみて、自分自身の新たな発見はありますか?
一見私は真面目そうに見えるようなのですが、意外とひょうきんなところがあるのです。自分で言うのもおかしいのですが・・・(笑)。オヤジギャグを言うこともありますし、天然ボケなところがあって周りに突っ込まれることも・・・(笑)。芝居の中でデフォルメ出来るなと思いますし、実生活にも活かせるなと思うこともあります。こういう風に言えば自分も一緒になって面白くなれるんだ、と改めて感じることがありました。今は稽古中なので皆さんが色々な方向から演じて来るので、そこでまた新たな発見があります。皆さんそういうやり方に慣れていらっしゃるので、どんどん引き出しが出てくるのですが、私はあまりそういうことには慣れていないので、実は結構動揺しています。大変ですが、すごく勉強になります。
―――芸能生活も30周年を超えて、新たな挑戦が色々あるということで
小林さんにとってもターニングポイントの作品になりそうですね。
初心に返るいい機会になりました。新たなスタートかな、という位の気持ちでやらせていただいています。可児に来た時と帰る時ではきっと自分の中の何かが違うでしょうし、そういう環境にいられることが幸せです。
―――地方からの文化発信に携わって、どのような魅力を感じますか。
このala(可児市文化創造センター)を中心に文化的な町づくりが行なわれていますよね。稽古の休憩中に散策すると、本を読んだり、お話ししたり、くつろいでいる方もいるし、子どもがはしゃいだり、バレエの衣裳を来ている子がいたり、音楽が流れていたり。いろんなことを思い思いにやっていて活気があるのです。地方発信ってとてもいいことだと思います。町の人たちのエネルギーをいただいて私たちも頑張らなきゃと努力しますし、そういう姿や作品を通して何かを感じていただけたらいいなと思います。
―――製作発表で小林さんがマスミ役の印象として「強さの裏にある弱さ」「孤独の隣にある幸せを見付けられる人」と
おっしゃったのが印象的でしたが、小林さんご自身はどのような性格だと自己分析しますか。
そうですね。辛いことや苦しいことを消すのではなく、バネにして幸せを見いだせる方向に考えようといつも思っています。誰にでも嫌なことや辛いことはあるわけで、それをどう捉えて生きていくかは自分次第だと思うのです。
―――今年「おしん」を演じた時からちょうど30年ということですが、
大人になってからも「おしんに出ていた小林綾子さんよ」と言われることが多いのではないかと思います。
改めて今「おしん」という作品から影響を受けていること、もしくは「おしん」の生き様を見て感じることはありますか。
30年経ってもまだこれだけ反響があり今年また映画化されるので、とても大きな作品に私は子どもの頃出会ったのだなと改めて感じています。出演したことによって人生が大きく変わりました。確かに大きな作品に出演したことにより生活しにくくなったことも多少はありましたが、それ以上に色んな人との出会いや貴重な経験をさせていただけるのは、「おしん」に出演したからだと思います。そう思うと、自分にとって財産であり宝物だと思います。
―――小林さんが生きていく上で「大切にしていること」は何ですか。
人との繋がりを大事にしたいと思っています。役者としても普通の生活でもそうですが、自分だけでは生きてはいけないですし、人と関わっていないとつまらないですよね。私は旅が好きで時間があると一人でも行くのですが、そういう時に何が楽しみかっていうと、人との出会いなんですよ。今回ala(可児市文化創造センター)で初めてご一緒する方ばかりですが、この機会を大切にまた色んな場所で再会できるようにしたいです。
―――旅するのは、海外と日本どちらが多いですか。
自分で決めて行く時は海外ばかりです。2年ぐらい前までは毎年ニューヨークに行ってお芝居を観たり、ダンスレッスンや演劇のレッスンを受けていました。あとは美術館が好きなので、この間はフェルメール巡りをしました。昨年は家族とロシアに行き、どうしても行きたかったエルミタージュ美術館(ロシアの国立美術館)を訪れましたし、本場のバレエをマリインスキー劇場で観ました。バレエは3才の頃から私も習っていて、途中少し抜けて社交ダンスをしていた時期もありますが、今も続けています。以前やったことがある「ドン・キホーテ」の振りを、本場の方がやるとこういう風になるんだ!!!と驚きました。あれはかなり衝撃を受けましたね。やはり各地に行ったらその場所にあるライブは観たいです。人形劇、芝居、ミュージカル、コンサート、オペラ、何でも良いのですが現地でしか観られないものを観て、人と触れあって。そんな楽しみ方をしています。
―――製作発表で演出の松本さんが「見終わった後にちょっと忘れていた繋がりを大事にしたいと
思っていただける作品になれば」とおっしゃっていましたが、
稽古を通して最近「これは大切だな」と改めて思うことはありましたか?
「おもいやり」ですね。登場人物それぞれの「おもいやり」が感じられる作品になると思います。
幸せそうに見えてもどこか寂しさを感じていたり、成功しても孤独を感じていたりする方って、たくさんいらっしゃると思います。この作品はどこか自分や身近な人と重ね合わせて、何かを感じられる作品になっていますので、多くの方にご覧いただけたらいいなと思います。
<稽古場写真/提供:可児市文化創造センター>
ala Collectionシリーズvol.6
『秋の螢』
作:鄭義信
演出:松本祐子
出演:細見大輔、渡辺 哲、小林綾子、福本伸一、粟野史浩
可児公演
2013年9月28日(土)~10月6日(日)
可児市文化創造センター・小劇場
東京公演
2013年10月10日(木)~10月16日(水)
吉祥寺シアター
地方公演
【徳島】10月23日 【盛岡】10月26日 【栃木】10月29日 【長岡】10月30日
http://www.kpac.or.jp/collection6/
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