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中村勘九郎さん、中村七之助さん『八月納涼歌舞伎』への思いを語る 2015年07月

(2015年07月23日記載)

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松竹創業120周年『八月納涼歌舞伎』歌舞伎座
中村勘九郎さん、中村七之助さんが公演についての思いを語りました

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『八月納涼歌舞伎』公演チラシ

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中村勘九郎さん、中村七之助さんが公演についての思いを語りました(取材日:2015年7月16日)

―――お二人とも八月は四演目ずつご出演となりますが、
一部・二部・三部、全てがお芝居と踊りの組み合わせになっているのも珍しいですね。


◆中村勘九郎
そうですね。八月納涼歌舞伎は、父(中村勘三郎)をはじめ、(坂東)三津五郎のおじさまがいらした時には、
『野田版 研辰の討たれ』『野田版 鼠小僧』などの前に、必ず踊りを付けていました。
やはり初めて観に来て下さるお客様が居る中で、歌舞伎が持っている力のひとつとして色々なジャンルのものを
観ていただきたいという「見取り狂言」(複数の作品を並べて上演すること)にこだわっていましたので、
今回のこのラインナップもなかなか他では出来ない、いい狂言立てになったと思います。

―――演目選びでこだわったのは。

◆中村七之助
三津五郎のおじさまの縁あるものを絶対にやりたいねという話をしました。

―――珍しいものでは『祇園恋づくし』でしょうか。

◆中村勘九郎
これは、小山三さんの遺言なんです。(今年4月に亡くなったので)遺言になっちゃった。
三月に小山三さんのお見舞いに行って病室に入ったら、僕の顔を見たとたんに
「あなた、八月に祇園恋づくしやりなさいよ。宇野先生の方ね」(うちの祖父がやっていた方)と言って。
小山三さんは4月6日に亡くなったのですが、すぐに扇雀さんが来て下さり、
そのいきさつを話したら「やろうか」と言って下さったので、これに決まったんです。
実は今回上演するのは宇野先生版ではないのですが、今回の脚本も面白いですよ。
ほんと、何でもない話なので(笑)、楽しんでもらえればいいなと思います。

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―――八月と言えば納涼歌舞伎ということで定着しましたけれど、
お父様と三津五郎さんの作られたものを引き継いで公演が行われるということについての想いをお聞かせ下さい。


◆中村勘九郎
(三津五郎さんとは)去年、納涼歌舞伎で一緒に踊って名古屋も一緒に行ったのに、信じられないですよね。
なんだかすごく複雑です。八月納涼歌舞伎というのは歌舞伎の興行がなかった月に作り、
それが定着して今の形になったので、宝物のような興行です。だからこそなくしちゃいけないし、
この精神は引き継いでやりたいなと思いますね。これがずっと続いていけばいいなと思います。
本当にねぇ、柱が二本無くなっちゃったんだからね。
気を引き締めてしっかりやらなければいけないなと思います。

―――今年は若い出演者が増えましたね。

◆中村勘九郎
僕たちも子どもの頃からやらせていただきましたが、学生でもこの時期は学校が休みで出られるのでね。
苦しい思いと芝居が好きな気持ちをここで教えてもらったので、下の世代にもそういう経験をしてもらいたいですね。
僕らももっともっと苦しまないといけないなと思いますけれど。

◆中村七之助
とても大切な興行ですし、父と三津五郎のおじさまが全力でやっていたものですからそれは、
おこがましいですけど引き継がないといけないなと思います。今の話にもありましたが、
若い役者が多くなってきました。私たちが子どもの頃先輩方を観て「やりたいな」と思ったように
後輩たちにも「いつか歌舞伎座の八月納涼歌舞伎で興行がやりたいな」と思ってもらえるように
していかないといけないなと思います。


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―――演じる側も若い方が増えましたが、観客も若いお客さんに来ていただけるのが
納涼歌舞伎かなと思います。特に『おちくぼ物語』はアニメや漫画もあって
萌え系女子が喜びそうな演目だなと思いました。


◆中村七之助
シンデレラですものね。こういうお話は世界中どこにでもあるような分かりやすい演目ですし、
歌舞伎ならではの良い要素がたくさん入っていると思います。
一番楽しみなのは隼人くんと一緒にお芝居をすることで、「そういう日が来たか」という感じですね。
今まで納涼では僕が一番若かったですからね。

◆中村勘九郎
『おちくぼ物語』は分かりやすいから、一番とっつきやすいんじゃないですか。

◆中村七之助
美男美女が出て来て、旦那は何も言わず、最後はしゃれていますよね(笑)。
歌舞伎らしいですよね。最後の「ごめんあそばせ」の言い方ですごく面白くなると思います。


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―――「十世坂東三津五郎に捧ぐ」という演目が二つありますね。勘九郎さんは『棒しばり』ですね。

◆中村勘九郎
これは(巳之助くんと)絶対にやりたいねと言っていたのが叶いました。
いつかねと話していたのですが、こんなに早くやれる喜びと、やれる(二人が居ないという)悔しさがあります。
でも『棒しばり』は、三津五郎のおじさまとも踊らせていただいたし、
棒もしばられも両方習っているので想い出深い役です。しっかり踊りたいです。

―――『芋掘長者』も三津五郎さんと橋之助さんだったのが、橋之助さんと巳之助さんですね。

◆中村七之助
父の襲名の時に復活上演されて、『棒しばり』もそうですが、父と三津五郎さんの踊りを観て僕たちは育ったので、
兄が言った通り、もう見られないのかという思いもありますが、二人でやっていくということは
お客様も喜ばれるのではないかと思います。『芋掘長者』は内容というより華やかさが重要な物なので、
第三部はくだらなさもあるけど楽しいね、という感じでいいのではないでしょうか。
「十世坂東三津五郎に捧ぐ」という形で、面白さもあるけど身体を使って見せるかっちりした踊りと、
ふわっとしたものとで、両作品に三津五郎のおじさまらしさが出ているような気がします。

―――七之助さんは『おちくぼ物語』も『芋掘長者』も嫁取りのような話ですね。

◆中村七之助
そうですね。『芋掘長者』は上から目線という感じですけどね(笑)。
巳之助くん、そして国生や鶴松という若い三人は踊りの名手という設定ですから、
頑張ってくれるんじゃないかと思います。


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―――『京人形』は兄弟お二人で踊られるのですね。

◆中村勘九郎
今回は坂東流の振付でやらせていただきます。この人の性格は結構分かると言うか、近いと言うか、
だからとても入りやすいですね。

◆中村七之助
僕もやったことがないので、どうやったらいいかを聞きたいなと思っています。
操られている訳ではないので人形振りともまた異なるのかなと。坂東流の方に習ったり本を読んだりして
自分なりに勉強したいです。変わり目変わり目をぱぱっとやるのがミソなんだと思います。

―――『逆櫓』の重忠は初めてですか?

◆中村勘九郎
そうですね。『逆櫓』も全然縁がなかったんです。時代物の大きさをお腹の中にもってやれたらいいなと思います。

―――三津五郎さんの教えで、思い出されることは。

◆中村勘九郎
身体を使え、ということですね。自分にも厳しく人にも厳しかったので、厳しさの目を忘れないようにしています。
八月は必ず楽屋に行くと(テレビに)高校野球が流れていたので、今回は毎日高校野球を観ようと思います。


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―――七月は歌舞伎NEXT『阿弖流為』を新橋演舞場でなさっていて、
赤坂大歌舞伎、平成中村座公演と、今年は各地でいろいろな形での歌舞伎が上演されますが、
改めて歌舞伎座で上演される八月納涼歌舞伎への思いを。


◆中村勘九郎
父や三津五郎のおじさまが僕たちと同じぐらいの時に作って確立してきたものなので、本当に大事です。
八月納涼歌舞伎があることによって、いろんな演目、いろんな役に挑戦出来る場なので、大事です。

◆中村七之助
八月納涼歌舞伎が僕たちのスタートです。家族やチームの雰囲気、温かい中で突き進んでいるのを
初めて感じたのがこの興行です。その後ちょっと大人になってコクーンや平成中村座などが出来て今がある訳ですが、
僕たちが初めて感じたこの感覚は八月納涼歌舞伎で知ったので、八月はすごく思い出のある月です。


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―――八月納涼歌舞伎で勘三郎さんとの思い出は。

◆中村勘九郎
いっぱいありますね。『野田版 研辰の討たれ』『野田版 鼠小僧』などを作っている時は大変でしたよね。
でも船頭というか、前に立って「よし、みんな行こう」と父が言えばみんな同じ方向に向かって漕いでいたので、
同じ方向を向くと言うことが大事なことだなと思いますね。向かせていたのではなく、みんなが自然と向いていたんです。

◆中村七之助
僕のイメージだと八月は楽屋に行きやすかったんです。だからすごくよく楽屋に行っていた記憶があります。
父が「おもしろかったかい?やりたいだろ」と言われるんです。
35歳だと、他の場所では出来ないかもしれないけどこの興行では「これがやりたい」というのが
出来たのかもしれないですね。三津五郎のおじさまと一緒にそういう話をしながら「楽しくしようぜ」という
パワーが劇場中にみなぎっていて、子どもながらみんなが優しくしてくれましたし、ワクワクしました。
みんながキラキラしていて、父は特にキラキラしていて。観終わった後に「お疲れさまでした」と挨拶に行くと、
「やりたいだろこれ」と言う声がすごく耳に残っています。

◆中村勘九郎
『怪談乳房榎』の時なんて毎日のように言われていたよね。「やりたいだろ」と。

◆中村七之助
今でもあの声ははっきり覚えていますね。顔を落としながら、羽二重の毛の癖まで覚えています。
父の姿がすごく光っていましたね。

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▲中村勘九郎『棒しばり』次郎冠者

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▲中村七之助『おちくぼ物語』おちくぼの君

 

松竹創業120周年

『八月納涼歌舞伎』

 

日程:2015年8月6日(木)~28日(金)

会場:歌舞伎座

 

第一部  午前11時~

第二部  午後2時40分~

第三部  午後6時15分~

 

http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/2015/08/_1_4.html

 

 

 
 

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