『エンタメ ターミナル』では舞台を中心としたエンターテインメント関連情報をWEB記事として発信しています。
掲載内容は、掲載日付のものとなりますので、最新情報は各自ご確認ください。
※ 記事・写真等の無断使用・無断転載は禁止しています。なお、リンクはフリーです。
第三十三回『四国こんぴら歌舞伎大芝居』
中村芝雀改め 五代目中村雀右衛門襲名披露 制作発表会が行なわれました
第三十三回『四国こんぴら歌舞伎大芝居』
中村芝雀改め 五代目中村雀右衛門襲名披露>
【第一部】
一、神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)
六郷川の矢口の渡し。そこで渡し守をしている頓兵衛は、先の足利と新田の争いで、
褒美の金欲しさに足利方の手先となり、新田義興の命を奪いました。
そしてこの家に、義興の弟の義峯が、恋人の傾城うてなを伴って訪れ、一夜の宿を乞います。
義峯の姿を見た頓兵衛の娘のお舟は、ひと目惚れしてしまい、連れの女性が妹だと聞くと、
お舟は義峯をかき口説きます。しかし、義峯を新田の落人と知った頓兵衛が、再び金目当てに、
義峯の命を奪おうと座敷の下より刀で突き刺すと、そこにいたのは娘のお舟で…。
お舟のクドキや頓兵衛の強欲非道ぶりなど、見せ場に富んだ作品です。
二、忍夜恋曲者(しのびよるこいはくせもの)
将門>
朝廷に反旗を翻し、滅んでいった平将門。将門がかつて御殿としていた古御所に蝦蟇の妖術を使う
妖怪が出没すると聞き、大宅太郎光圀が征伐にやって来ます。ところが、光圀の前に現れたのは、
島原の傾城如月と名乗る妖艶な美女でした。光圀に怪しいと悟られた如月は、
実は平将門の遺児滝夜叉姫でその本性を顕すと、大蝦蟇を従えて光圀に抵抗します。
しかし、光圀に追い詰められた滝夜叉姫は妖術で姿を消すのでした。
古風な味わいと屋体崩しと呼ばれる大仕掛な道具など、みどころにあふれた舞踊劇をお楽しみください。
三、お祭り(おまつり)>
山王祭の日。屋台囃子が賑やかに聞こえる中、町に戻ってきたのは、ほろ酔気分の鳶頭です。
上機嫌の鳶頭は、なじみとなった女性との惚気話を始めます。
そして、若い者たちが鳶頭に打ってかかるのを振り払う賑やかな所作立てとなります。
江戸の大祭を題材にした、粋で洒脱な華やかな清元の舞踊です。
【第二部】
一、芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)
葛の葉>
陰陽師の安倍保名に命を救われた白狐は、保名の許嫁の葛の葉姫に化けて夫婦となり一子をもうけます。
しかしある日、本物の葛の葉姫とその両親が訪ねてきたことで、葛の葉は身を引く決心をします。
そして葛の葉は、泣く子をあやしながら、家の障子に「恋しくばたづね来てみよ和泉なる信田の森のうらみ葛の葉」
という歌を書き残して、古巣の信田の森へと帰って行くのでした。
葛の葉と葛の葉姫の早替りや、筆を口に咥えての曲書きなどの演出も見どころとなる、子別れの愁嘆など親子の情愛あふれる作品です。
二、五代目中村雀右衛門襲名披露 口上(こうじょう)>
裃姿の俳優が舞台に並び、皆様に五代目中村雀右衛門の襲名披露のご挨拶を申し上げる華やかな一幕です。
三、新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん)>
大名の山蔭右京は、愛人の花子がはるばる都へやって来たと恋文をもらい、なんとか会いたいと思っています。
しかし、奥方の玉の井が、片時もそばを離れようとしません。そこで一計を案じた右京は邸内の持仏堂で
一晩座禅をする許しをもらうと、家来の太郎冠者を身替りにして花子のもとへと向かいます。
このことが玉の井に知られてしまい…。
浮気な恐妻家の夫とやきもち妬きの妻とのユーモラスな一幕です。
◆小野正人(琴平町 町長)
『四国こんぴら歌舞伎大芝居』は、昭和60年の第1回目から数えて今年33回目を迎えます。この間、多くの歌舞伎ファンの皆様、松竹株式会社様、そして何よりもこの舞台を彩っていただきました多くの歌舞伎俳優の皆様のお陰と琴平町を代表して厚くお礼申し上げます。本年の33回目には中村雀右衛門襲名披露記念公演と銘打って、何と15年ぶりとなります片岡仁左衛門丈そして五代目中村雀右衛門丈のお二人を迎えて、桜満開の4月に華々しく開催することとなっております。琴平町の住民の皆様はもとより、全国の歌舞伎ファンの皆様から「いつ仁左衛門さんは来るのかな?」「雀右衛門さんは襲名して初お目見えするのはいつかな?」との声を多くの聞かせていただいております。その多くのファンの皆様の夢が、この4月に叶うということで、琴平町あげて、この歌舞伎を大いに盛り上げていきたいと思っております。また、我々の金丸座は国の重要文化財であり、江戸時代のそのままの機構を残した小屋でございます。現代風に言いますと、電気仕掛け、動力というものはございません。すべて人力によるアナログの小屋でございますが、木の温もりと当時の江戸の雰囲気を楽しむことができるのは、全国でも我が金丸座しかないと自負しております。この空間で、皆様に江戸の情緒を楽しんでいただきたいと思う次第でございます。近年、琴平では日本人観光客のみならず、海外からのお客様も多くのお越しでございます。またそういった方々にも伝統芸能である歌舞伎を通じて日本の良さというものをPRしていきたいと思っておりますので、皆様のご指導を賜ればと思っております。桜が咲く春の風物詩としてのこんぴら歌舞伎が益々発展していきますように、精一杯取り組んで参りますので、ご支援のほどよろしくお願いいたします。
◆片岡仁左衛門
とにかく大好きな金丸座に15年ぶりに出させていただく、こんなに嬉しいことありません。今からワクワクしております。今回は、京屋さんの襲名披露ですが、私は狂言に出してもらえないんです(笑)とにかく、芝居全体が盛り上がるように一生懸命頑張りますので、よろしくお願いいたします。
◆中村雀右衛門
五代目・中村雀右衛門を襲名披露させていただきます雀右衛門でございます。この度は、松嶋屋のお兄様からお力をいただき、いわば松嶋屋の一座の中で襲名披露をさせていただくというようなことでございます(笑)そう申しますのも、私の襲名興行3月を始めとしまして、各地で(公演を)させていただきましたが、全部の公演に松嶋屋のお兄様にご出演いただきました。(仁左衛門さんに向かって)色々とお世話になりましてありがとうございます。今回は父が何回も勤めさせていただきました『芦屋道満大内鑑』で葛の葉と、『忍夜恋曲者将門』という大役を勤めさせていただきます。お兄様と一緒に(今までの襲名興行の)舞台を勤めさせていただいて、色々と勉強させていただきました。今回は、お兄様とは絡まずにということで、とっても不安ではございますが、一生懸命舞台を勤めて皆様に喜んでいただけたらと思っております。皆様お越しいただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
―――国指定の重要文化財である金丸座の印象を聞かせてください。
片岡仁左衛門
金丸座の好きなところは、あの場所にある、江戸時代の、あの雰囲気が魅力だと思います。
楽屋でも裏山からウグイスの声が聴こえたり、楽屋を含めて舞台に立っている時でも、
私たちの先祖はこういうところでお仕事させていただいていたんだなと思います。
頭ではわかっていても、歌舞伎の原点を改めて体で感じることができるというのが、
とても貴重なことだと思います。やはり行くたびに思い出すのは澤村藤十郎さん。
彼がいなかったら、果たしてこの公演がここまであるかどうかもわからない。
彼が最初に、あそこで歌舞伎をできるように努力してくれたということに感謝しています。
中村雀右衛門
お兄様がおっしゃったようにお芝居の原点ということを自分が感じましたのは、
前に『白浪五人男』の勢揃いで花道に傘を持ちまして立っていたら、
お客様と距離がとても近くて、お客様が恥ずかしくて目を下に向けてしまうくらい、
お客様との距離が近い印象があります。
―――演目の見どころを教えてください。
◆片岡仁左衛門
『お祭り』と『身替座禅』。今回はお芝居させてもらえなくて、舞踊専科みたいなね(笑)
江戸前の華やかさ、ほろ酔いの鳶の頭、そして世間話を交えて、
スカッとしているので、お客様が好まれる構成になっているんですよね。
見どころはご覧になる方によって違うと思うので、あくまでも品良く仕上げたいと思っております。
お客様を笑わすのではなく、笑っていただくようにできたらと思います。
中村雀右衛門
片方は妖術使いですし、片方は狐が化けている役。
劇場の古めかしい雰囲気と風情、灯りの明るさや暗さというものにも
合っている演目ではないかなと思います。
―――滞在中に楽しみにしていることを教えてください。
◆片岡仁左衛門
私はうどんが大好きなので、楽しみです。
中村雀右衛門
お兄様と同じおうどんでございます。何杯も食べたくないるような味わいであると思います。
―――金丸座ならではの演じ方など、何か予定されていますか?
◆片岡仁左衛門
私は金丸座だから特に何をしようという考えはありません。
ただ、舞台に立てばおのずと変わってくるもの。
歌舞伎座の寸法でお客様に訴えるのと、金丸座の空間で訴えるのとでは、
自然とお芝居が変わると思いますが、計算はしておりません。
中村雀右衛門
父が勤めた通りに勤めるのが襲名だと思っておりますので、
そういった意味で金丸座だからということはございませんが、
葛の葉では、差出にロウソクが出まして引っ込むという父が勤めたやり方ですが、
あの劇場に合っているのではないかなと考えております。
―――金丸座の出演が15年ぶりということですが、ご自身では長かったですか?
◆片岡仁左衛門
それは長かったですが、振り返ると短かった。
毎年「来年は行きたいな」という気持ちを15回数えていたわけです。
金丸座の嬉しいところは、お客様が芝居を楽しみたいという気持ちで小屋に入ってきてくださる。
客席と舞台とは相乗効果がありますから、お芝居もやりやすいというのが魅力の1つですね。
―――こんぴらで襲名興行をすることについて。
中村雀右衛門
3月から襲名披露をさせていただいて、同じところで長く公演させていただくのは、
今回の金丸座が最後だと思いますが、最後の締めくくりということで、
父が生前に『道成寺』を勤めさせていただいていたところで
締めくくりができるということは、とてもありがたいことだと感じております。
―――最後にメッセージをお願いいたします。
◆片岡仁左衛門
15年ぶりに伺いますので、私も楽しみにしておりますし、
また皆様のご期待を裏切らないように頑張りますので、
とにかくお芝居を1回でも多く見てください。
中村雀右衛門
それぞれの、その年の気候により違うとは思うのですが、ちょうど桜が満開で、
いつも劇場に入る時に花吹雪の中で坂を登りながら劇場に入っていくことを
いつも楽しみにしておりました。そういう華やかな場所へ行かせていただくことは、
自分にとりまして幸せだなと思います。
また、町民の皆様にお目にかかることも多いかと思いますので、
気軽に声をかけていただければと思っております。
第三十三回 四国こんぴら歌舞伎大芝居
中村芝雀改め 五代目中村雀右衛門襲名披露
日程:2017年4月8日(土)~23日(日)
会場:旧金毘羅大芝居(金丸座)
情報は書き込んだ時点のものですので、実際の内容と異なる場合があります。
あらかじめご了承下さい。