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水 夏希さんインタビュー
ドラマティカルシリーズ リーディング vol.1 『パンク・シャンソン』~エディット・ピアフの生涯~
宝塚を退団して6年が経ち、女優としても更なる活躍を続ける水夏希が様々な女性の半生を、
ときに芝居で、ときに歌で、ときにダンスで魅せるシリーズを立ち上げました。
第1回目の今回は、フランスで最も愛されている歌手の一人であり、国民的象徴であった
エディット・ピアフの人生に挑みます。朗読とシャンソンで綴るピアフの世界を是非ご堪能ください!!
―――脚本を拝見し、鈴木勝秀さんがお考えになったエディット・ピアフの要素がぎゅっと詰め込まれた作品だなと感じました。
水さんは脚本を読んでどんな印象を持たれましたか?
スズカツさん(鈴木勝秀)は「リーディングは音楽である。セリフを読むことも全て音楽だと思っている」と
おっしゃいました。私は会話の中に音楽が入っていくのだと思っていたので、
私が想像つかない世界を思い描いていらっしゃるんだなと思いました。
―――確かに、セリフの中にも歌詞をセリフ化したようなところもありますものね。
そういうところも含めてセリフも音楽であるということでしょうか。
そうですね。あとは今回、共演する俳優さんが何人かいらっしゃいますから、
声色が変われば違う音楽になるんだろうなと思います。
スズカツさんは「リーディングをやる時、あまり稽古をしすぎない方がいいんだよ。その時のセッションを楽しむんだ」
ともおっしゃっていました。そう言えば『7DOORS』の時も、稽古時間がそんなに長くなかったなって思い出しました。
―――リーディングをやる面白さ、難しさは?
リーディングは読みあげるという性質上、普段の演劇よりも可能性が広がるところもあるような感じがします。
セリフを覚えた上で日々新しいことに反応していくって、すごく冒険なんです。どう出て来るか分からないですし、
相手にどう伝わるか分からないので。その分、リーディングであれば手綱を持った上で新しいことにチャレンジ出来るので、
リーディングだからこそ出来ることがあるような気がします。
―――水さんがエディット・ピアフを意識したのはいつですか?
タカラヅカ時代、シャンソンの曲を歌うことも多かったのでその頃だと思います。
ピアフの音楽を最初に聞いた時は、正直言ってあまり良さが分かりませんでした。
歌詞もその曲の意味もよく分かりませんでしたから。でも知れば知るほど、ピアフの素晴らしさと奥深さを感じています。
―――今回、「ピアフの生涯のリーディングはいかがですか?」と聞いた時はどう思われましたか?
色々な方が演じていらっしゃいますし、みなさんの中にエディット・ピアフのイメージが既におありだと思うので、
最初は反対したんですよ。ピアフ自身を演じるなんて、私はそんなチャレンジをしなくていいな、
そこは触れてはいけないジャンルだな、と。ピアフを演じるのはそれほど大きな挑戦だなと思っています。
―――最近もエビータやサラ・ベルナールも演じていらっしゃり、
ピアフを演じるのはすごく自然な流れだろうなと思っていたので、ちょっと意外です。
ピアフは歌が人生である。歌なくして彼女を語れない。そこですね。
まず、歌に説得力がなければいけないという大前提がある。
それは私にとって「絶世の歌姫です」と言われて登場するぐらい大きなことなんです。
―――ついにピアフを演じる時が来てしまったという感じですか?
そう、そんな感じです。ついにピアフに挑む時が来てしまったのかと。
シャンソンは音域などの面ではそれほど難しくない、でも、だからこそどう表現するかがとても難しいんです。
その曲にどれだけ歌い手の人生が重ねられるか、それが常に求められている。奥が深すぎて果てしないなと思います。
エンターテインメントを仕事に選んだ人生という意味ではピアフと重なるところもあるので、
今の自分が持っているものを最大限に活かして演じなければいけないなと思います。
むしろ、持っていないものも捻り出して挑まなくてはいけないなと。
―――確か、大竹しのぶさんの演じるピアフもご覧になったことがおありでしたよね。
大竹さんのピアフ、本当に素晴らしいですよね。それを考えると、私が演じるのは、えらいこっちゃですよ(笑)。
大竹さんのピアフは憑依型だと思います。ピアフという人物も知れば知るほど、本能で生きている人なんじゃないかなって。
私自身、タカラヅカ時代は男役というフィルターを通して演じていましたが、
退団後はそれとは違った表現方法が求められるので、役作りをしていくのは楽しみもありますが、
難しさも毎回感じています。
―――水さんは、本能型というよりは考えてから動かれるイメージがあります。
「稽古は嘘つかない、筋肉は嘘つかない」と、コツコツ積み重ねて行くタイプのように思います。
そうそう、本当にそうなんです。タカラヅカは「こうせねばならない」「こうあるべき」というものがたくさんありました。
退団後はそういうものが取っ払われ、自分の性別に嘘を付くこともないんですよね。
特に今回は本能をむき出しにするような役なので、自分の中で通ったことがないような道のりになるだろうなと思います。
日常の中でどれだけ感じ、どれだけそれを表していけるか。
自分の本能の扉をノックして、もしもその扉が開かれたら、
新たな自分に出会えるような気がします。
―――ピアフは数多くの男性と関係を持ちますが、そのあたりはどう捉えていらっしゃいますか。
根本に、親の愛情を知らないというのがあるのだろうなと思います。人から愛されたい、
自分の存在を認めて欲しいという純粋な感じなのかなと。それを相手に求め続けているんだろうなと。
私の中にもそういう感覚はなくはないですけど、ピアフほどの寂しさや孤独感、所在なさは味わったことがないので、
想像するしかないんです。まずはその部分を紐解いていかなければ全てが嘘になってしまうので、
資料などを読んで深めていきたいです。
―――ピアフはその人のいいところを見出して活かしていきたいという、母性のようなものもあるのかなと思いました。
それはあると思いますね。私も(タカラヅカ時代)下級生を見ては、「こういうところいいのにな」と、
もどかしく思ったり、時にはおしりを叩いて励ましたりして来ました。そういう意味では重なります。
でも、映画では開演前に「出て行って」と激しく叫ぶシーンがあり、
私はそういうタイプではないので、本能をむき出しにした時にどれほどそれに近付けるか、ですよね。
―――生誕してから100年以上の時を経て今なおこれほど多くの作品になり、
愛され続けているピアフの魅力をどう感じますか?
週刊誌などのゴシップ記事を見ていると、人間って本当に変わらないんだよねって思います。
人間がサルのようなものからどんどん進化して知能を付けて、頭脳が発達し、AIなどの人工知能が開発されても
人間にしか出来ないこと、人間にしか共感出来ないことがあると思います。
100年前も今も、不倫や二股は存在する。男女の悲喜こもごも、
親子の確執、職場でのごたごた、これも存在する。ピアフは、愛情を求める心、真摯にそれと向き合って
追い求めながら生きてきた、これがものすごくピュアなので、共感を得られるんだと思います。
ピアフは酒とたばこと薬をやりながらも歌うことが出来た。普通の人だったら声が出なくなるであろう時にも
歌い続けました。これは神が彼女に与えた才能なんだろうなと思います。
―――歌があったからこそ、やってこられたというのもあったのかもしれないですね。
47年という短い人生だったけど、ずっと歌い続けられたというのは才能ですよね。
今回、そのピアフの歌を歌わないといけないのだから、大変よ!!(笑)
―――先日、「越路吹雪に捧ぐ」というコンサートに出演なさいましたね。
越路吹雪さんの偉大さを感じました。越路さんは、あの日生劇場でリサイタルをやり続けていらした。
時代が越路さんのようなドラマティックなものを求めていたというのもあると思いますが、
越路吹雪さんが亡くなった後もそれを愛する人たちが数多くいらっしゃるというのを改めて感じました。
私自身も、そのことに触れ、シャンソンの奥深さを知り、自分の人生を改めて感じるという、
良い連鎖が生まれているなという感覚がありました。
―――シャンソンは自分自身も投影されるような曲が多いですね。
シャンソンに限らず、芝居も歌も踊りも、与えられているセリフや歌詞はただの記号で、
その裏にあるサブテキストの感情、意味、関係性が一番大事だと思うんです。
そこをどれだけ表に込められるかが私たちの仕事だと思いますので、果てしないですよね。
無限大の可能性がある、どこまで自分が出来るのか、大変ですけど楽しくもあります。
―――今回の脚本にピアフは「私は歌う為に生まれて来たのかもしれない」というセリフがありますが、
水さんはそういうことを感じる瞬間はありますか?
退団した後に「私はタカラヅカに入るために生まれて来たのかもしれないな」と思いました。
タカラヅカに出会えたことは、私にとってそれほど大きな財産です。
「タカラヅカの男役は私の天職だったな」と、自分で言っちゃいます(笑)。
―――それはみなさんうなずきますよね(笑)。
でもまたそこに戻ることは出来ないので、「次に自分が与えられたものは何だろうか?」と思います。
今、第一興商の役員という仕事もさせていただいていますが、それ一本にするというのはやっぱり違うなと思うんです。
歌も踊りも芝居も好きなので、自分のモチベーションを保てているうちはやり続けるべきことなのかなと思います。
タカラヅカの頃もそうでしたが、自分の根底にあるのは変身願望なんだろうなと。自分ではない人生を生きられる、
そういう意味でこの仕事に魅力を感じています。激動の人生を疑似体験出来るのは、難しいけど楽しいです。
―――話は変わりますが、今年の桜はどんな気持ちで眺めましたか?
今年はなかなか見に行けていないんですけど、桜って一斉に咲くのがかわいいですよね。
―――桜がかわいいという表現を、水さんがなさるところがかわいいです(笑)。
だって、一斉に(急にセリフのように)「春だ~!!!」って咲くでしょ。
「春だと思って咲いているのね、みんな頑張っているのね」と思ったら、かわいくてね。
まだ寒いのに咲いちゃった桜を見ると「ちょっと早く咲いちゃって、間違っちゃったのね」って。
この間久しぶりに大好きなコンテンポラリーの先生のレッスンを受けたんです。
まず、足の指を開くところから始めるんです。そして、足の裏から大地のエネルギーを吸って動くんです。
どんなに文明が発達しても自然と離れちゃいけないなって、改めて感じました。
自然と共に生きて行く、それによって人との対話も生まれていくものなんだなと思います。
―――たくさんのアンテナを張り巡らせて行動なさっているので、常にお忙しいですよね。
観たい映画も舞台もたくさんあるし、本も読みたいし音楽も聞きたいので、暇な時はないですね。
―――最近ハマっているのは?
精製水美容です。私の髪と肌には合っているみたい。
(急にコマーシャル口調で)「もうすごい、髪がツルツル!」ってなりますから(笑)。
私がハマるのはだいたい3か月周期なのですが、もうここのところずっとハマっていますね。
40歳を過ぎて、年を重ねるってこういうことなんだ、と思うことがいっぱいあるんですよ(笑)。
加齢を受け入れつつ、自分に出来ることはやってみようかなと。だから忙しいんですよ(笑)。
―――そう考えると、悩みも楽しくなりそうですね(笑)。
この間もエステに行って肌細胞を顕微鏡で見てもらったんですよ。最高に楽しかった(笑)。
―――自分の知らないジャンルを知りたいという、水さんの溢れ出る探究心。
だってね、自分の肌に足りないものはね・・・
(ここで詳しく説明して下さいましたが、編集の都合でカットさせていただきます。笑)
足りないものが分かれば自分の中で「傾向と対策」をしていけばいいのですから。
―――なんだか受験勉強のような話になってきましたね(笑)。
全てのことについて、それが大事。だからピアフのことも、どのアプローチでやっていったらいいんだろう、
どんな経験をしたらピアフの気持ちと重ねられるのかなと、それを常に考えながらしばらく過ごしていきたいと思います。
―――急に、ピアフの話でまとめて下さいました(笑)。今回も楽しいお話をありがとうございました。
ドラマティカルシリーズ リーディング vol.1
『パンク・シャンソン』~エディット・ピアフの生涯~
日程:2017年5月2日~5月6日
日程:よみうり大手町ホール
構成・演出:鈴木勝秀
アコーディオン演奏:アラン・パットン
出演:水夏希/福井貴一・山路和弘・石橋祐
日替わりゲスト:辻本祐樹・牧田哲也・渡辺大輔(五十音順)
※5/6 14時回は出演者4名での特別バージョンとなります。
主催:東京音協
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あらかじめご了承下さい。