情報紙から飛び出した 演劇系エンタメ サイト
Copyright Since1999 情報紙ターミナル
Copyright Since2010 株式会社ERIZUN

大鳥れい 笠松はる 岡田達也 村松みさき(脚本・演出)『花火の陰』座談会 2017年05月

(2017年05月17日記載)

『エンタメ ターミナル』では舞台を中心としたエンターテインメント関連情報をWEB記事として発信しています。
掲載内容は、掲載日付のものとなりますので、最新情報は各自ご確認ください。

※ 記事・写真等の無断使用・無断転載は禁止しています。なお、リンクはフリーです。

 
この記事おススメ!って思った方は   をクリック!(1 人がクリック)
Loading...

大鳥れい 笠松はる 岡田達也 村松みさき(脚本・演出)座談会
ハルベリーオフィス特別公演『花火の陰』

7311

脚本・演出・出演 村松みさき

1986年7月27日生まれ。2009年、脚本『軍艦島―負けないみんなの鎮魂歌―』で日大学部長賞を受賞。同年『近づく星の光うるわし』でドラマ21最優秀作品賞を受賞。2011年、日本大学芸術学部大学院・舞台芸術専攻を修了。修了時の論文タイトルは『戯曲創作における伏線技法』2013年、同大学院・文芸学専攻を修了。卒院制作は小説『猫との併走』。
20代前半、東京セレソンデラックスにて演出助手を務める。2007年から「村松みさきプロデュース」を主宰。脚本・演出・キャストの三役を務めながら、映画作品への出演、舞台に女優として出演するなど活動の幅を広げている。また、他劇団への脚本提供も積極的に行っており、これまでに書いた脚本、小説、朗読劇、シナリオ、エッセイの数は習作を含めると、90本以上になる。(2017年2月現在)
村松みさきオフィシャルサイト

 

STORY

とある田舎の廃屋。その隣にはもう使われていない廃ロケバスが停まっている。

20年前、ここでは映画の撮影が行われていた。それに関わる漫画家や俳優、
女優や映画監督たちが作品を創る目的で身を寄せ合って暮らしていたのだ。
しかしとある事件をきっかけにロケバスは動かなくなり、表現者たちはバラバラになってしまった。

それから20年、かつてこのロケ地で撮影隊の助手として地を這うような生活をしていた女が、
大物女優として大きく成長して戻ってきた。
彼女が時を越えてかつてのロケ地に足を踏み入れたその瞬間、目の前に当時の人間たちが現れる。
過去を回想していく中で、長年自分の中でひた隠しにしてきた想いに次々と巡り合っていく女優。

―『花火みたいな人生を歩めて、羨ましいです』

―『花火が綺麗なのは一瞬だけだから。そのあとの行方を、誰も知らないし、知ろうともしないでしょ』

遠い過去から誰かの声が聞こえた気がした。
田舎の空に花火の音が鳴り響くとき、過去と現在が静かに交錯し、
そこで暮らしていた人間たちの生き様がじわりじわりと浮き彫りにされていく……。

hanabi1hanabi2

座談会インタビュー(2017年5月12日 取材・撮影・文:住川絵理)

7268

ハルベリーオフィス特別公演として『花火の陰』が上演されます。
リアルでありながら、どこかファンタジー。
郷愁漂う不思議な世界へと誘います。

人はみな、何かを抱えて生きている。
一生という限られた時間をどのように過ごすのか。
ちょっとした心の持ち方は、
その後の人生に大きく影響を及ぼす。
ある時ふと掴むもの、失ってから分かること・・・
信念を持っていればきっと何かが見えてくる。
誰かが誰かの役に立つ。人は一人では生きられない。
そんな人生のキラメキが詰まった作品です。

今回は、姫川春子役:大鳥れいさん、
サクマ俊介役:岡田達也さん(演劇集団キャラメルボックス)、
白幡由梨役:笠松はるさん、
脚本・演出・星野文子役:村松みさきさん、
以上4名の方にお集まりいただきお話を伺いました。

7278

―――村松みさきさん、どのような想いを込めて、この『花火の陰』を書かれたのでしょうか。

◆村松みさき
表現をする人たちが抱える寂しさを、どうしても描きたかったんです。
演劇を続けていくのはすごく難しいこと。
途中で弱い気持ちに負けて、続けていくことが困難になる人もたくさんいます。
続けながらも「自分は特別な存在でなければならない」という観念がその人を追い詰めていく。
私自身、そういうことで悩んでいる仲間をたくさん見て来ました。
表現者の人たちは自分の思っていることを表現する仕事なのだけど、どこか寂しさを抱えています。
表現者が抱える重み、そして覚悟を、この作品にぶつけたいなと思いました。

―――今、村松さんから「表現する者たちの重みや覚悟、寂しさを描いた」という言葉がありましたが、
みなさんも表現者としてこういう問題に直面することも多いのではないかと思います。
そのあたりどのようにお考えになっているかを伺えたらと思います。


◆大鳥れい
私は小学生の頃から「宝塚歌劇団に入る!」と思っていたので、強い気持ちで宝塚音楽学校に入りました。
入ってからも競争の中でやってきたので、退団と同時にその気持ちが一度完結してしまって。
その後、タカラジェンヌとしてではなく、ひとりの女優としてどのように過ごして来たのかな、
これからどのように過ごしていくのかな、ということをこの『花火の陰』の台本を読んで、改めて考えました。
退団後、オファーして頂いたのでまずは一作出演しました。男性と共演するのも初めてで新たな刺激がありました。
正直、気後れしている部分もありました。その後、女優として活動を続けながらも、今もまだ、
自分自身探っているような気もします。 このカンパニーはみんな不器用な感じがして、(そんなことない人もいるかもしれませんが)
今の自分と重なることが多く、『花火の陰』で姫川春子という役をやらせて頂くことにより、
私自身にとっても、また新たな節目になるだろうなという予感がしています。
身につまされるところも多いのですが、こういう役に巡り合えてありがたいなと思います。

◆岡田達也
この話をすると怒られちゃうんですけどね。
大鳥れいさんとは真逆で、僕にとって演劇は全く望んでいない世界なんです。
僕は鳥取出身で大阪の大学に行き、どうしても東京に来てみたかったんです。
だから鳥取に帰ってサラリーマンをやる前に、2年か3年はフリーターでもやりながら東京で過ごしたいなと
思っていたので就職活動もしませんでした。たまたま大学時代の先生が趣味でお芝居をされていて、
「やりたいことがないのだったらお芝居をやってみたら?」と言われ、「僕は先生の言うことを聞いて、
お芝居をやるために東京に行きます」と答えました。東京に来て、普通にアルバイトを始め、
役者になるつもりもなかったのですが、先生に嘘を付くことになるのも嫌だなと思って、
お芝居を観てみたら、これが面白かった。役者になる努力はしたけど失敗したということにしようと思い、
文学座や俳優座の養成所の資料を取り寄せたものの自分が払える額ではなく、
そんな時に(今も所属している)キャラメルボックスに出会い、オーディションも無料だったので受けました。
結果、落ちたのですが「君は役者としての才能はないけど制作に向いている」と言われ制作として入りました。
でも役者のことも諦めきれず、1年後にもう一度オーディションを受けさせてもらって役者になりました。
でも、演出家も厳しいし、役者になって面白いことなんてひとつもなかった。
毎日稽古場に行くのが嫌で、死なない程度に事故にでも合わないかなんてことも考えました。
この生活を辞めてしまえば楽にはなるのだろうけど、
演出家に「お前がいないと芝居が成立出来ない」と言わせてから辞めようと思い、
それを言わせるのに15年位かかってしまい、気付けばもうすぐ50歳です。
いまだにこの世界にいるのは不向きだなと、自分でも思います。
サラリーマンになっていたら、出世しただろうなって(笑)。役者として苦しんできたので、
今回の台本に書かれていることはすごくよく分かります。
でも、25年やって来て、最近ようやくお芝居が好きになってきたので、
こうして声をかけて頂けることはすごくありがたいですし、出演するからには結果を残したいなと思います。
役者である以上、いつまでも鍛錬していきたいです。

◆笠松はる
私も子供の頃からミュージカルが好きで、舞台に出演するという選択肢以外は考えられませんでした。
劇団四季が好きで好きで入団したのですが、めちゃくちゃ厳しい現実が待っていました。
私自身が劇団四季の大ファンだったので「自分なんかがこの役をやらせて頂くのはどうなんだろう」という気持ちが
常にあり、舞台上ではニコニコしながら頑張っていましたが、内心は葛藤し続けていました。
3年位経った頃、『サウンド・オブ・ミュージック』で主演させて頂き、
その頃から少しずつのびのびと出来るようになりました。劇団四季退団後、みどりさん(大鳥れい)と同じで
燃え尽きた感じがあり、これから何をしようかなと考えました。在団中はずっと舞台に立っていたので、
何もやることがない自分の時間が持てたことに喜びを感じました。穏やかに過ごす時間って大事だなと。
でもやっぱり舞台に出演すると、ずっとこの場所にいたいなとも思うんです。表現している人たちは
同じようなことを考えているんじゃないかなと思います。

7274o 7274oka

―――今回、村松さんはそれぞれのどういうところを引き出したいと
思っていらっしゃいますか?


◆村松みさき
笠松さんが演じる白幡由梨は、一見フワッとしているけど陰があり、その陰に他の人たちが
魅力を感じて吸い寄せられている。陰のところから新たな人間ドラマが始まるきっかけになるような役です。

◆笠松はる
村松さんと20分位お茶しながら面談のような形でお話しました。
その後、当て書きして下さったのですが、これがまたちょっと、やばめの役で・・・(笑)。
村松さんは私の中にそういう部分を見たんだなと思ったら面白くて(笑)。
舞台上で明るく努めていても、周りの人には見せない自分の姿ってあると思うんです。
そういうところを自然な形で出せたらいいなと思います。
表のところだけでなく陰の部分、今回はそこを意識して演じたいなと思います。
私はこれまでコスチュームプレイが多かったので、
普通の洋服で女性を演じるというのは今回が初めてなのではないかと思います。

◆村松みさき
大鳥れいさん演じる姫川春子は、白幡由梨とは180度視点を変えて、けがれを知らずに一生懸命頑張って
やってきた女の子が変化していく役です。演出助手としてやってきた女の子がいろんな人と触れ合い、
サクマというカリスマ映像クリエイターと出会うことによって変わっていき、最終的にはサクマを超えていきます。
のし上がっていこうとする春子を(大鳥)れいさんに演じて頂きたいなと思いました。
れいさんに「女優以外の生活はどぶに捨ててもいいと思っているんです、私」というのを言って頂きたくて
セリフに入れていたのですが、その部分は昨日カットになりました(笑)。もしかしたら戻すかもしれませんが、
そういうイメージで書きました。すごく綺麗な女の子が、女優以外のことはどぶに捨ててもいいという覚悟、
引き返せない寂しさを表現して頂きたいなと思っています。

◆大鳥れい
私自身、子供の頃から憧れていた宝塚音楽学校にワクワクした気持ちで入りましたが、
毎朝早く起きて掃除をするのがつらくて、授業中は睡魔との戦いでした。そういう意味では
這いつくばってきた経験があります。そんな中でも私はずっと意志が強く、
ことあるごとに「この役を掴みたい」とか「この衣裳を着たい」とか、そういう具体的な目標を周囲に
言っていたらしいんです。自分では覚えていないので、最近いろんな人に「私ってどういう人だった?」と
聞いて回ると「そういうこと言っていたよね。何言っているんだろう、この子は、と思っていたよ(笑)」と
言われます(笑)。
春子も「サクマ先生の作品に出演する!なんなら主役をやってやるわ!」と思っていたと思うんです。
そういう気持ちの強さは重なります。やっぱり若さってすごいなと思いますし、夢を持った人の強さってありますよね。
今だったらとてもそんなことは言えません・・・(笑)。

7292

◆村松みさき
岡田さんは面談ではなく舞台を観に行ってご挨拶させて頂きました。
私の中で岡田さんのイメージはすごく爽やかです。その場にいるだけで岡田さんに夢を見るような方が
いらっしゃるだろうなと、初めてお会いした時に思いました。その惹きつける何かを、
カリスマ映像プロデューサーという役にあてはめてみたら成立するのではないかと思って
サクマ俊介という役を書きました。

◆岡田達也
村松さんがみなさんと面談して当て書きしていたというのを今知りました(笑)。
僕はカリスマでもなんでもなく、ただお酒が好きな人間です。
だから、役にシンクロするところはそんなにないのですが、
「人の記憶に残るものを創りたい」という思いは同じですね。
僕自身がお芝居を観に行った時、昔は「この人面白いな」とか「この役いいな」と思っていたのですが、
年を重ねるにつれ役を演じる俳優さんに目がいくようになりました。
舞台の上で演じている人たちは、人間性が透けて見える。
同じ役でも違う人が演じれば他者との関係性が変わってきますよね。
そういうところに芝居の面白さを感じます。
僕は器用ではないので、単純に岡田達也がサクマという映像クリエイターになったらどうなるだろうという
発想で役を創っていきます。このやり方でいくと、全ての役が遠いし、全ての役が近いんです。

7274k 7274m

―――ダムに沈む村、花火、人の命、俳優としての表現など、この作品には
「確かにそこにあったけど儚いもの」がたくさん描かれていますね。
改めてそれぞれが感じるこの作品の見所を教えて下さい。


◆村松みさき
私は数多くの現場で演出助手や撮影助手も務めて来ました。
私自身の感覚だと下積みが長い方の作家だと思っています。
理不尽な思いをすることも多かったけど「絶対手放すものか」と思ったし、
演劇以外の仕事についている自分を想像出来なかった。これしか出来ないと思って生きてきて、
今は引き返せないところに立たされているような感じもあります。
最近そんな自分を見て「ここまで来られたのだからこれからはいろんな仕事がたくさん出来るはず」と
思えるようになりました。最近は、「自分の演劇人生はこれから始まる」と、常に思っています。
今書いているものが心の一作目だと。部屋の本棚には自分で書いた脚本が90本位並んでいます。
日の目を見ずにただ置かれている脚本をを眺め、一人で夜中に泣いてしまうようなこともあります(笑)。
『花火の陰』を上演する機会を与えて頂き、私自身も表現者として生きていく覚悟をしました。
それと同じように、この作品の見所も「厳しい環境で生きていく覚悟をした人たちの生き様」だと思います。

◆大鳥れい
お客様は時間を作り、お金を払って観にきて下さるので、皆様を楽しませる、夢を見させる、
というのが私の使命だと思っています。やっぱり観にきて下さった方には喜んで頂きたいんですよね。
女優という仕事は「すごいね」とか、「かっこいいね」と言われることも多いけど、
それだけでない部分ももちろんあります。本当はそういうところはあまり見せたくないけれど、
この作品ではファンタジーとして描かれているので、オブラートがかかって、夢のあるものとして
演じられたらいいなと思っています。お客様に感想を聞くのが楽しみです。

7300

◆笠松はる
今回お話を頂いた時、プロデューサーさんが「村松みさきさんの脚本が素晴らしいので
村松さんの作品を上演して世の中に出していきたい。何年か経った時に、あの村松さんの作品に
出演したことあるんですねと、みなさんが言われるようにしていきたい」とおっしゃいました。
頂いた台本を読んだ時、品があるなと思いました。私は品のある作品が好きなので、
この作品の為に全力で奉仕しようと思いました。笠松はるとしてとか、白幡由梨という役としての存在も
もちろん大事ですが、「『花火の陰』という作品は素晴らしかったね」と言ってもらえるように
頑張りたいなと思います。
観終わった後にもう1度冒頭の第一場、第二場を観たら、全然違って映るような気がします。
だから、よろしければ是非2度位ご覧頂けると嬉しいです!

◆岡田達也
本当に素敵な脚本です。
あがいている人がたくさん出てくるので、この作品を観て自身を投影してもらってもいいですし、
苦しいのは自分だけじゃないと思って頂けるような作品になるのではないかと思います。
物語と登場人物の両方を楽しんで頂けたら嬉しいです。僕自身の理想としては、
観終わった後、この作品について語り合ってもらうこと。何かを感じ、語って頂く、
それこそが芝居の醍醐味だなと思います。

7305

ハルベリーオフィス特別公演

『花火の陰』

 

脚本・演出:村松みさき

出演:大鳥れい / 笠松はる / 岡田達也 /
宮吉康夫 / 篠原功 / きよこ / 村松みさき ほか

 

日程:2017年5月31日(水)~6月4日(日)

会場:中野テアトルBONBON

 

お問い合わせ:合同会社ハルベリーオフィス 

電話 03-6450-8280

メールアドレス info@haruberry.com

 

ハルベリーオフィス サイト

 

 

 
 

情報は書き込んだ時点のものですので、実際の内容と異なる場合があります。
あらかじめご了承下さい。

[ PR ]