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大空ゆうひさんインタビュー こまつ座 第119回公演『円生と志ん生』に出演 2017年08月

(2017年08月31日記載)

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大空ゆうひさんインタビュー
こまつ座 第119回公演『円生と志ん生』に出演


公演について

昭和を代表する噺家、三遊亭円生と古今亭志ん生の二人の生き様を描いた『円生と志ん生』が、
こまつ座 第119回公演として上演されます。

虚実を交え趣向を凝らして描いた、井上ひさしの傑作音楽喜劇。
今回、約10年ぶりのお目見えとなります。
昭和二十年夏から二十二年春まで、戦中から戦後にかけての600日間、この大変な時代に、
円生と志ん生の二人はどのように生き抜いたのでしょうか。

二人は、戦中は連れだって満州各地を流浪していましたが、ついに迎えた8月15日、
強大なソ連軍によって占領された満州南端の大連市に、二人して封じ込められてしまいました。
実直勤勉な円生と、気ままで大酒呑みの志ん生。正反対の性格の二人の、おかしな共同生活が始まります。
今日食べるものにも苦労する時代に、人々を照らして来た噺家の話芸。
逆境をプラスに変え、「笑い」の力を持って人々の原動力として存在する。
噺家二人の生き様からは、現代にも通じるヒントがたくさんありそうです。

二人を取り巻く女性たちが場面ごとに次々と登場し、セリフや歌で二人の背景、町の様子、心境を表現します。
軽妙なテンポで物語が展開しつつ、真の豊かさとは何なのかを、現代の私たちに問いかけるような作品です。

大空ゆうひさんインタビュー( 2017年8月23日 取材・撮影・文:住川絵理 )



―――今回、大空ゆうひさんは、こまつ座初出演となりますが、出演が決まった時どう思われましたか?

日本語を話す仕事をする中で、こまつ座の舞台に参加出来たら絶対に得るものがあるだろうなと思っていたので、
決まった時は本当に嬉しかったです。舞台を拝見していても、こまつ座にしかない空気があって、
役者としての栄養がすごく詰まっているような気がしたんです。

―――実際に、こまつ座公演の稽古に参加して、どのようなことを感じていますか。

こまつ座のスタッフの方々から作品に対する愛情を感じますし、稽古場全体を見渡しても
「みんなで創っていこう」という思いが溢れています。今回はそれぞれの仕事量が多いので、
みんなで協力し合いながら創っています。私自身も、やることは難しいですし、課題はたくさんあるのですが、
温かくて居心地がよく、楽しいお稽古場です。

―――今回、女性キャストの方たちはたくさんの役を務めるそうですね。
大空さんがひとつの作品で多くの役を演じるのも珍しいのでは?


そうですね、珍しいですね。ただひとつのことに集中していればいいというのではなく、
私も5役ありますからやることはとても多いです。ひと場面ひと場面、女性たちが状況を表現しているので、
それをしっかりやりつつ、女性四人の中でのバランスも大事にしていかなければいけません。
各々の役、そして役割を踏まえつつ、絶妙なハーモニーを奏でていくというのが、
いつもとは違うアプローチでもあるのかなと思います。
他のお三方、前田亜季さん、太田緑ロランスさん、池谷のぶえさんは、それをストンと出されるので、
私はひとり稽古場であたふたとしています。

―――そういう時に役立つような「引き出し」は、いつ作られていくのでしょうか。

自分の中から一生懸命ひっぱり出すんですけど、なかなか難しいんですよね。
演出の鵜山さんから頂くリクエストが、とんでもないような変化球で来ます。
あまりにも誰も思い付かないようなことが飛んで来るので、私も一瞬椅子から転げ落ちそうになるのですが、
転げ落ちながらもなんとか拾うみたいな感じで、それはそれはもう必死に返しています(笑)。
鵜山さんの演出が大好きなので、大好きな人の前では自分のこだわりとかは考えず、
即座に「ハイ、やります!」と答え、頑張って必死に考えてひねり出している毎日です(笑)。
その刺激が段々、快感になってきたりして・・・(笑)。
言われた瞬間は「へ?」って目が一回転しちゃうぐらい驚きますが(笑)、
言われたことは全て真に受けて、あ、面白いと思ってやってみるんです。

―――先日、大空さんは「今まで見たことのない景色が見えたらいいね、という言葉を演出の鵜山さんから頂いて、
とにかくワクワクしています」というコメントを出していらっしゃいましたが、
まさに稽古場で新しい世界を見ている最中なのですね。


稽古初日から、作品の素晴らしさと鵜山さんの鋭さを感じています。
今はまだ、気になった所から手を付けていってしまって、一個一個を固めていく作業が出来ていないんですけど、
初日に向けて更に深めてギュっと固めていきたいですね。
今回は時間軸が飛ぶことがあるので、そのジャンプ力は必要かもしれないです。
そういう意味では歌も重要な要素です。積み上げて歌うところもあれば、
一気にボンっと世界を変えるようなマジックになっているようなものもあります。

―――ひとつの役にじっくり取り組むのと、次々に複数の役をやるのとでは、気持ちの上で違いますか?

若い頃はひとつの役だけを通して演じる機会はなく、ひと場面ひと場面違う役で、
ちょっと通行するだけということも多かったです。たとえ一瞬しか出ていないセリフのない役でも、
どういう人物なのかを考えていたなということを思い出しました。
今回、このように複数の役を演じることになり、初心を思い出しました。

―――井上ひさしさんの作品に出演し、井上さんの書かれたセリフを体験してみて、
改めて「井上ひさしさんの戯曲」の魅力をどう感じていますか?


日本人として、心に灯がともるような、光を感じるような…、人肌のような温もりを感じます。
でもきっとそんな生ぬるいものではなく、その裏にいろんなことがあるから、ずっと心に残るような奥の深さ、
恐ろしさもあるような気もします。
鵜山さんは「井上先生の作品はストライクゾーンがとても広い」とおっしゃっています。
これは、楽なようでいて、実はとても難しいんですよね。正解はここだよというのがなくて試されている感じがします。
自分なりにこういうイメージだなと思って演じてみても、「白を黒にひっくり返しても成立する」と言われると、
もっと違う色もハマるのかもしれないとも思いますし、いろんな可能性があるなと感じます。
バランスを考えつつ、無心で演じられるところまでいきたいですね。

―――井上ひさしさんの戯曲は、いつの時代にも当てはまるところがあったり、
現代にするどく斬り込んだりしますよね。


ほんと、そうですね。自由に言葉が使えなくなる時代って、今もそういう気配も感じますし、
決して他人事ではないなと思います。

―――現段階で『円生と志ん生』という作品の魅力をどのように感じていますか?

今回の作品の魅力としては噺家さんお二人の「言葉への愛」を感じます。
言葉を仕事にしている人間としては、いちいち頷いてしまいます。苦しい時代をおかしみに変えて乗り越えた、
このお二人の魅力がとてもうまくこの作品に入っています。鵜山さんは「浮力」とおっしゃったのですが、
苦しい時にそれをプラスにポンっと変える力が噺家さんたちの言葉にうまく繋がって、
周りの女性たちもそれに救われるところがあって、辛い状況を言葉で事態を反転させちゃうような、
景色をぱっと変えちゃうような、そういうところがたまらない魅力だと思います。

―――円生さんと志ん生さん、お二人の噺家さんが出て来ますが、自分がもしも落語家だったらを想像してみると、
大空さんはどちらのタイプに近いですか?


私、両極の要素があると思います(笑)。感性でやっているところと、
ものすごくコツコツやっているところとがある。
だから、円生さんと志ん生さん、どちらのエッセンスもあるような気がします。

―――登場人物たちがそれぞれのやり方で人々を笑顔にしていくような話でもあると思いますが、
大空さんご自身が「笑顔」や「笑い」に救われたなという経験は。


宝塚時代、お芝居の方では大きな役を役替わり公演でやり、その後のショーもハードだったことがありました。
本番終演後も毎日稽古をするようなスケジュールで、ものすごく体力が必要だったんですけど、
その時に(初舞台以来)瀬奈じゅん、貴城けいという同期二人と初めて共演し、
三人で毎日馬鹿みたいに、しゃべって笑って乗り切ったんです。笑いで乗り切った経験と言えば、
その時のことを思い出します。たぶん疲れ過ぎて限界を超えたところに何かがあったんだと思います(笑)。
でも笑っていなかったら、泣いていたと思うので、笑いで乗り切った経験として、すごく印象に残っています。

―――改めて、初日に向けて抱負をお願いします。

今の時代の今の日本にいて稽古場に通っているんですけど、自分が今どこにいるのかな?と思うような、
不思議なところにいるような感じがしています。今回私にとってハードルは高いのですが、
その感覚がフワフワしてしまうのではなく、もうちょっとこれを超えたら何かが見えて来そうな感じもします。
この作品の中にグッと入って、場面場面で生きたい、血を通わせたいというのが今の目標です。
それが作品の中で味わいとして少しでも何かにじませることが出来たらと思います。
大森博史さん、ラサール石井さんという師匠を演じるお二人も素晴らしく、私が出ていない場面は
すごく微笑んで観ちゃうんです。是非たくさんの方に観て頂きたいと思います。



【スペシャルトークショー】
★9月11日(月)1:30公演後 樋口陽一(比較憲法学者)― 井上ひさしにとっての笑い ―
★9月14日(木)1:30公演後 大空ゆうひ・前田亜季・太田緑ロランス・池谷のぶえ
★9月17日(日)1:30公演後 大森博史・ラサール石井
★9月21日(木)1:30公演後 雲田はるこ(漫画家)―『昭和元禄落語心中』ができるまで ―
 ※アフタートークショーは、開催日以外の『円生と志ん生』のチケットをお持ちの方でも
  ご入場いただけます。ただし、満席になり次第、ご入場を締め切らせていただくことがございます。
 ※出演者は都合により変更の可能性がございます。

 

こまつ座 第119回公演『円生と志ん生』

 

作:井上ひさし

演出:鵜山 仁

音楽:宇野誠一郎

 

出演:大森博史、大空ゆうひ、前田亜季、太田緑ロランス、池谷のぶえ、ラサール石井

ピアノ演奏:朴勝哲

 

【東京公演】

日程:2017年9月8日(金)~9月24日(日)

会場:紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA

 

9月30日(土) 兵庫公演

10月8日(日) 仙台公演

10月14日(土) 山形公演

 

公式サイト

 

 

 
 

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あらかじめご了承下さい。

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