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水 夏希さんインタビュー『ラストダンス-ブエノスアイレスで。聖女と呼ばれた悪女 エビータの物語』 2017年09月

(2017年09月21日記載)

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水 夏希さんインタビュー
『ラストダンス-ブエノスアイレスで。聖女と呼ばれた悪女 エビータの物語』主演

公演について



「人生は車輪みたいなものよ。 上になる時があれば、下になることもある。」

エビータの愛称で呼ばれた、アルゼンチンのファーストレディー、エバ・ペロン。
狂信的に回り続けた生涯を、単語の仄白い情熱、深い情念とともに描きます。

出会ってほしい。エビータに。

STORY

小さな田舎町に生まれた貧しい少女、エバ。

女優を夢見てブエノスアイレスにたどり着き、より大きな夢を見て、より高みを目指すうち、
彼女が勝ち取ったのは、大統領夫人という運命でした。
ファーストレディーの域を超えて政治に生きた彼女は、 エビータと呼ばれ、民衆に聖女のごとく慕われました。
悪政を誹られる一方、今なお崇拝されるのはなぜ?
その謎に、エビータ自身が答え始めます。
33年の短い人生では叫び足りない、愛し足りなかった、魂が。

生演奏でお届けするタンゴにのせて、歌とダンスで紡ぐ新しいストレートプレイ。
エバ・ペロン=エビータの魂が、人生を運ぶ車輪の上で踊り続けます。

   

水 夏希さんインタビュー( 2017年9月12日 取材・撮影・文:住川絵理 )



―――約2年半前に朗読劇として上演されたものを、再び練り直し、
今回はストレートプレイとして上演ですね。


セリフ自体は朗読劇の時とほとんど変わりません。そのせいか、稽古が始まったばかりの頃は、
私自身が朗読劇の亡霊にとりつかれてしまって・・・どういう風にセリフを言ったらいいのかが
分からなくなってしまったんです。

朗読劇の時、私は「女」の役としてエビータを語るというポジションでした。
エビータを演じてはいましたけど、語る部分が多かったんです。今回はエビータになるというのがベースにあり、
現在においてエビータの魂として存在することもあれば、そこから過去の時点に戻ってエビータを演じることもあります。
現在の魂が演じているんだけど、過去の時点のやり取りをしているようなこともあります。
ね、ものすごくややこしいでしょ?(笑)

だから、「今はいつ?」「私は誰?」ということを自分の中で整理する必要がありました。
それがもう大変で、石丸さち子さんと何度も相談して、「ここは魂でやりましょう」「ここは当時を演じましょう」と、
ひとつずつ確認していきました。さち子さんが導いて下さるままに歩み、ひとつひとつピースがはまっていく感じで
ここまで進んできました。とりあえずここまでは比較的スムーズでしたが、ここからもうひと山あるかもしれません。

―――朗読劇からストレートプレイになる中で、一番変わったのはどういうところですか?

演技するエリアも変わりましたし、キャストも増え、何もかもが立体的になりました。
空気や色がたくさん溢れ出るようになったような気がします。デスカミサドス(民衆・労働者)の気持ちになって
客席に座って頂けたらと思います。さち子さんは、画を描かれる方だなと思いました。
オープニングも音楽が流れ、そこに牢獄に囚われているアロンソがいて、デスカミサドスの日常が重なる・・・
そういう画が見えるような演出をなさいます。

―――前回、水さんは「お手玉を同時にたくさん投げてやっている位大変」だとおっしゃっていましたよね。

そうでしたね(笑)。前回は座っていたからお手玉に集中出来ていたけど、今回はそういう訳にはいかないですね。
福井さんとも「難しいよね、この台本」って話すのですが、ほんと難しいです。
稽古が始って何日か目かの時点で、その日はまだ4時間しか稽古していないのに、
今日はもうこれ以上無理ですねということになった位、エネルギーを使います。もう、脳が痛いの!!

エビータの映像も資料もかなりたくさん残っていて、それを調べて勉強しようと思うときりがないんです。
昨日も一日休みだったんですけど、二場面ぐらいしか復習出来なかった・・・。
ひと場面やるのにものすごく時間がかかって、どうしようって。一秒たりともなまけていないのに、
なかなか進まないんですよね。

―――おひとりで稽古する時はどういう風に?

去年の秋ぐらいからお芝居のワークショップに行っているので、そこでやった通りにまずは台本の分析をします。
「私」について、「投獄された」について、こうやってセリフをひとつひとつ分析していくので進まないんです。
でも明らかに以前とは、台本を読みとるということに対しての意識が変わりました。



―――今回はタイトルに聖女と呼ばれた悪女と入ってますよね。
ここがまた興味深いなと思いました。


前回の朗読劇の時には『サンタ・エビータ』というタイトルで、聖なる部分をフォーカスして作っていましたので、
私も聖なる部分に目を向けて、悪女の部分にはあまり目を向けないようにしていました。
今回は台本にも悪女の部分のセリフが足されています。「あんな女、許さない」という立場の人が
たくさんいたでしょうし、そういう人たちにも共感します。
エバ(エビータ)も分かっていたと思うんですよね。でもそうせざるを得ないし、
そうすることが自分の道だと思っていた。そうすることで喜んでいる人たちが何百万人もいたことを確信に
繋げていったんだろうなと。反対派の圧力を受けつつもまだ前に進んで行く、
ガリガリ音を立てて車輪を進めて行く強さを出せたらいいなと思います。

―――反対派の圧力、そして喜んでくれる人たちの声をエネルギーに変えていったのでしょうね。

日本でも大きなライブに行くと、駅も満杯で会場に辿り着くのが大変な位の人がいますよね。
でもそれって数万人の規模じゃないですか。それを考えると、百万人の労働者が駆け付けるって想像を絶しますよね。
昨日はグーグルマップで民衆が集まった五月広場に自分を置いて、はるか彼方まで民衆が埋め尽くしている様子を
想像してみました。

―――エビータの演説のシーンもありますよね。

昨日、さち子さんが演劇を教えているクラスの方たちが「エビータ、エビータ」って叫ぶ
労働者たちの声を録音して下さったのですが、1分間叫ぶだけでもヘトヘトになって
それ以上は続けられなかったと聞きました。
実際、演説している間中、民衆は叫んでいたのでそのエネルギーは相当ですよね。

―――前回は「家で演説シーンの練習を一回やったら声がかれた」と
おっしゃっていましたよね。


今も、立つと感情が高ぶっちゃうから、危ない危ないと思いながらやっているんです。
演説シーンでは特に、エビータが自分の人生に酔いしれている部分があるというのが分かります。
実際には、最初演説が上手くなくて高い声だったのに、亡くなる半年前のパワーたるやものすごいですよ。
野太い声で、国民に怒りをぶつけているかのような勢いなんです。
でも、アルゼンチンの友人に「これ何て言ってるの?」と聞いたら、国民に感謝を伝えているって言っていました。
スペイン語の語気というのもありますが、感謝を伝えるのにこの強さなの?!と驚きました。
やればやるほど、知れば知るほど、エビータの存在は実話なのだろうかと思っちゃいますね。

―――民衆をまとめる立場に立つと言うのはトップスターの頃の自分とも重なるとおっしゃっていましたよね。

朗読劇をやった2年半前に比べると、宝塚時代のことを最近は引き出しにしまって生きてきたので、
忘れてはいませんが、どこにしまったっけ?
あ、これこれ!という感じで探しながらやっています。

今日たまたまなんですけど、(宝塚歌劇団)退団記念日なんです。丸7年経って、明日から8年目に突入します。
エビータが大統領就任のパレードに一緒に付いて行くんですけど、彼女にとっては民衆の前に見せた
輝かしい最期の姿がその日です。私も、退団の日の楽屋出の時のパレードを思い出しますね。
規模は全然違いますが自分の記憶と重なるところもあるので、そういうところをうまくつかって
表現出来たらいいなと思います。

―――前回、石丸さんに「水さんも自分も女性であることを武器にするタイプではないし、
そういう人たちとは遠い存在なので、真似から入ってみたらどうだろう」と言われたとのことでしたよね。


今回も言われました。エビータもあからさまに媚を売るのではなく、実際に男性がそこに魅力を感じて愛が生まれ、
愛し合ったんだなという実感を男性自身も感じている。媚を売ってそれをうまくころがしているだけでは、
男性も見透かしますよね。昨日も「女性の魅力って何だろう?」と思って、思わずネット検索しましたよ。
「女性の魅力」って打ち込んでね(笑)。

子供時代にも、なんか魅力があるなと思われるためにはどうしたらいいんだろうと思って。
そうだ、あれだ、映画の「レオン」のマチルダの感じだ!と思って、映画の「レオン」も見ました。

33年って短い人生ですけどその一生をやるってことは大変なことなんですよね。
色々なものを見たり読んだりしつつ、自分の人生と紐付けて行く作業が大事だなと思います。
いくら考えても終わりがないので、演劇って果てしないなと思います。

―――前回、「エビータに聞いてみたいことたくさんあるのよ」とおっしゃっていましたが、
今エビータに聞いてみたいことはありますか?


この芝居の中で「死んでも言えないことって死んだ後も言えないのよね」と死んだ後のエビータの魂が言うんです。
これはさち子さんが書いた言葉であって、エビータの言ったエピソードではないけれど・・・、
でもきっとそうだろうなって思うんです。エビータに聞いてもきっと答えてくれないし、
答えてくれてもそれが本当かどうかは分からないですよね。
私が家に帰って何をしたか誰かに言わない限り誰も知らない、それと同じ。たとえそれが何かの形で世に出ても、
どの角度から見ているかによっても伝わり方が全然違います。そういうことって世の中にいっぱいありますよね。

全部が見えないからこそ人を惹き付ける魅力になっているんだと思います。私は宝塚の時もそう思っていたんです。
下級生にも「全部提示しなくていいんだよ、ミステリアスな方がいいんだよ」と言ってきました。
自分の中に何もないのに隠しているんじゃなくて、何かがあった上で隠してるから魅力的に見えるんだと思います。
エビータを演じる上で、その何かを自分の中で決めないといけないなと。
あれかなこれかなと考え始めたらどんどん時間が経っていくのですが、
自分の中ではこれじゃないかなというものを決めて演じたいです。



―――退団から7年が経ち、水さん自身も色々と変化してきていますね。

色々変化しましたよ。あの夏の人とは全然違います(笑)。
今回のセリフにも出てきますが、私も以前は何だって出来るって信じていたし、
実際に何だってやってみようと思ってやってきました。
ギターもヒップホップもやれば出来るんじゃないかって思っていました。全然出来ませんでしたけどね(笑)。
一生懸命やったからこそ、出来ないっていうことが分かったんです。そういう経験を重ねました。

―――水さんは探究心のかたまりですものね。

そうなんです。だからエビータも言っているけど、時間がいくらあっても足りないんです(笑)。
だって人生は限られているし、これからあと何作の舞台に出られるんだろうと思うと、
時間がない、時間がないって思います。

―――タンゴも最近縁がありますね。

今回「アルゼンチンタンゴ」というジャンルのダンスはありませんが、タンゴの曲は流れます。
日本人の情緒に合っているなって思います。

―――来月、タンゴのコンサートも控えていますね。

その時は「ザ・アルゼンチンタンゴ」も踊ります。
タンゴのダンス公演をやらせていただいた時から3年位経っていますから久しぶりで大変なんですよ。
歌うのは「アルゼンチンよ泣かないで」で、この曲はCDにも入っています。先日収録したのですが、
この公演が終わってからコンサートで歌うとまた違う感じになるだろうなという気がします。

―――最近興味があるのは?

美容と健康はいつでも興味あります。最近は頭が疲れているので、全然関係ない世界の写真を見て
妄想するのが好きです。海辺のリゾート写真を眺めていることが多いかな。
ゆらぎで癒されたいんでしょうね。こんなリゾート行ってみたいなとひたすら妄想旅行しています(笑)。
それもキリがないです。あとはかわいい動物動画ね。これも見始めると止まらない!!あ~癒されたい!!(笑)

昨日はたまたま出てきた劇団四季の『夢から醒めた夢』の映像も観ました。高校時代ミュージカル部でやったんです。
女子校だったので男役で、霊界のキャラクターでしたが劇団四季の舞台には出てこないオリジナル役でした。
『ミー&マイガール』もやりましたよ。マリア侯爵夫人もいたのだけど、別にまた新たなキャラクターを作って
教育係の先生役でした。懐かしいなぁって思いながら色々観ちゃうと、ほら、やっぱり時間がない(笑)。

 

『ラストダンス-ブエノスアイレスで。
聖女と呼ばれた悪女 エビータの物語』

 

作・演出:石丸さち子

出演:水 夏希、福井貴一、伊万里有、大村俊介

演奏:渡辺公章(バンドネオン)、大西孝明

 

公演日程:2017年9月28日(木)~2017年10月9日(月・祝)

会場:DDD AOYAMA CROSS THEATER

 

公式サイト

 

 

 
 

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