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歌舞伎座『十二月大歌舞伎』昼の部 観劇レポート 2019年12月

(2019年12月09日記載)

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歌舞伎座『十二月大歌舞伎』昼の部 観劇レポート


※以下、内容に触れています。観劇前の方はご注意ください。
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歌舞伎座『十二月大歌舞伎』昼の部 観劇レポート

令和元年を締めくくる12月。歌舞伎座昼の部は、新作歌舞伎、舞踊、古典とさらには、Aプロ・Bプロに分かれての多彩な演目。
Aプロ(2・3・8・9・14・15・20・21・26日)
Bプロ(4・5・6・7・10・11・12・13・16・17・18・19・22・23・24・25日)

昼の部Bプロ。幕開け『たぬき』は小説家・大佛次郎による新作歌舞伎。
舞台は“ころり”と呼ばれるコレラが大流行した江戸の下町「深川十万坪」の火葬場での場面。
思いも掛けずに生き返った柏屋の金兵衛。肩身の狭い婿養子の暮らしに嫌気がさし、
放蕩三昧の日々を過ごしていたが、これ幸いにと別人となり代わり、新しい人生を歩もうとします。
生き返った金兵衛を巡る人々の表向きと本音を知り、「お互いの探り合い」の人間模様ややり取りは絶妙。
人生、これ「狸の化かし合い」のような人間味溢れるこの作品ですが、笑いの中にも、
そこここに人間のリアリティーを描いたストーリーで、登場人物の力量も試されます。
主人公の柏屋金兵衛(甲州屋長蔵)には市川中車。女房おせきに市川門之助、妾 お染に中村児太郎、
太鼓持蝶作は坂東彦三郎、御家人狭山三五郎は坂東亀蔵、隠亡平助中村萬太郎、芸者お駒に市川笑也 他。
人間の欲や本音をコミカルに垣間見る中、ラストシーンは「これもまた人の本音」と思わせホロリとするシーンで終わります。
演出は石川耕士。

続くBプロの演目は『保名』。のどかな春の野、菜の花畑に蝶が舞う…平安の世。
恋人を失った安倍保名は形見の小袖を肩に、春の野をさまよいます。
時折、群れ飛ぶ蝶に心が移りますが、小袖を見ればまた涙。
本作は人形浄瑠璃で演じられている作品を、清元の舞踊に仕立てたものとか。保名を演じるのは坂東玉三郎。
大きな変化のある舞台ではありませんが、保名の心情が切々と迫ります。
大切なのは浄瑠璃の語りには、登場人物のセリフや仕草、想いも含め表現されているので、
保名の心情を理解するには語りに耳を傾けることが大切。清元の名曲に乗せた玉三郎ならではの舞いは人気の舞台。
Aプロは『村松風二人汐汲』で、松風に中村梅枝、村雨は中村児太郎。

昼の部最後の演目は『壇浦兜軍記 阿古屋』。
阿古屋は日替わりで、中村梅枝は4・5・10・11・16・17・22・23日、
中村児太郎は6・7・12・13・18・19・24・25日に出演。Aプロでは坂東玉三郎が演じる。
秩父庄司重忠はA・Bプロとも坂東彦三郎、岩永左衛門はAプロが尾上松緑、Bプロが市川九團次。
堀川御所を舞台に、平家滅亡後、鎌倉源氏方に追われる平家の武将悪七兵衛景清とその恋人で遊女の阿古屋の物語。
景清の所在を知らないという阿古屋に対し、その言葉に偽りがないかを、楽器の演奏で見定めようとする
重忠は古典的な“さばき役”で、地塗りの重忠に対し、敵役の赤面の岩永は人形振りで笑いを誘います。
見せ場は、琴・三味線・胡弓の演奏。景清に対する心情を阿古屋が三楽器を使って見事に演奏し、
「言葉に偽りなし」との判断が下されます。
三つの楽器を役者自身が演奏するという、さしずめライブ感たっぷりの舞台で、景清との馴れ初めから、
心情を細やかに表現する演奏は大役。豪華絢爛な衣裳と演奏、傾城としての貫禄をも見せる阿古屋に、
観劇日は若い中村梅枝が挑戦。伝統とは受け継がれていくもの。
Aプロで大御所の坂東玉三郎が、Bプロでは交互に若手の中村梅枝、中村児太郎が。
ひと月で3人の阿古屋が観られるのも嬉しい舞台です。

◆歌舞伎が楽しめるアイテム「イヤホンガイド」


さて、歌舞伎を観たことのない方、難しいと思っている方も多いのでは。
実は初心者向けにも通の方にも、より歌舞伎が楽しめるアイテムとして「イヤホンガイド」
があるのをご存知でしょうか?「イヤホンガイド」は舞台に合わせて登場人物や時代背景、
衣裳や作法など、セリフの合間の良いタイミングで解説をしてくるもの。
休憩時間には出演者のインタビューやクイズなども聞くことができます。
作品ごとに解説者が変わって個性や味もあり、これはまさに影のエンターテインメント!
指定席では700円、一幕見席500円で、保証金1,000円は返却時に返されるというシステム。
なんと歌舞伎座には約43年前から取り入れられているという、観客にはうれしいサービスです。
またセリフは集中して聞きたいという方には「字幕ガイド」がおすすめ。
ポータブルモニターに表示される文字で解説を読むことができます。
こちらの「字幕ガイド」は、英語版もあります。
イヤホンガイド公式サイト

(2019年12月5日観劇 取材・文 住川禾乙里/住川信子)

 

 

『十二月大歌舞伎』

 

2019年12月2日(月)~26日(木)

昼の部 午前11時~

夜の部 午後4時30分~

会場:歌舞伎座

公式サイト

 

 

 
 

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