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シアタートラム『愛するとき 死するとき』が開幕！ 公演レポート、舞台写真掲載

シアタートラム『愛するとき 死するとき』が開幕！ 公演レポート
（2021年11月14日　取材・文：栗原晶子）

11月14日（日）に舞台『愛するとき 死するとき』がシアタートラムで開幕しました。
本作は社会主義体制下のやるせない愛と人生を描いたドイツ発の戯曲（フリッツ・カーター作）を、
ドイツに生まれ育ち、近年は『ロボット・イン・ザ・ガーデン』や『ローズのジレンマ』、『ブライトン・ビーチ回顧録』など、
さまざまな作品の演出で知られる小山ゆうなさんが翻訳・演出を手がける意欲作です。

出演は、ミュージカルから演劇まで精力的に活動を続ける浦井健治さんをはじめ、高岡早紀さん、前田旺志郎さんほか、
個性派ぞろいの7人のキャストがさまざまな役を演じる仕掛けたっぷりの3部構成で展開します。

第二次世界大戦後の東西ドイツの分断、1989年のベルリンの壁崩壊。
異国の過ぎし日の出来事として記憶されていたとしても、そこに暮らしていた若者、男性、女性が
抱えていたことや暮らしを知る人は多くはないのではないでしょうか。
『愛するとき 死するとき』の【1部】「ある青春／コーラス」は、
東西統一前の東ベルリンでの僕（浦井健治）を中心とした若者たちの日常が綴られています。

コーラスと名付けられている通り、音楽と歌声がふんだんに出てくる、音楽劇のような形式。
舞台上には、ベルリンの壁に見立てた、光る「棒」が並び、その壁を背に若者たちの等身大の悩みや葛藤が交錯します。
特徴的なのは、彼らが時にマイクを手にして歌うこと。
それは若者たちの叫びだったり、バカ話であったり、愛のささやきや内に秘めた心の声など、
さまざまな表現で発せられる青春そのもの。
僕を演じる浦井健治さんは、愛されキャラに毒や窮屈さを重ねた独特の若者像を好演。
高岡早紀さん、岡本夏美さん、山﨑薫さんは、それぞれキャラクターの濃い何役かの女性をキュートに演じ分けます。
前田旺志郎さん、小柳友さん、篠山輝信さんも、それぞれ6役を入れ替わり立ち替わり演じたり、操ったり、歌ったり。
音楽を手掛ける国広和毅さんによる舞台上での生演奏が、作品に迫力とユニークさを注入し、
ライブ体験をしながら登場人物たちの日常を忙しく追う、あっという間の40分です。



【2部】「ある古い映画／グループ」は、1部の「僕」が映画監督になり自らの人生を映画化したら……という設定。
前田旺志郎さんと小柳友さん演じるペーターとラルフの兄弟たちの無邪気さと、高岡早紀さん、浦井健治さん演じる
ペーターの母とブロイアーおじさんの、大人が抱えた荷物のようなものの温度差が、東ドイツが抱えてきた月日に重なります。


その中でも岡本夏美さんと山﨑薫さんが演じるクセの強い女子たちが、可愛らしいけれどやけにたくましく見えたのは、
ドイツも日本もなく、世界中の女性の本来持つ強さやしたたかさにも感じ、ニヤリとさせられます。
クセの強さで言えば、篠山輝信さんが演じる学生もまた、こういう同級生いたかもと思わせる、
なぜか気になるキャラクターをのびのび見せてくれます。



【3部】「ある愛／2人の人物」は、彼と彼女を浦井健治さん、高岡早紀さんが朗読のように紡ぎ合い展開します。
ベルリンの壁が崩壊した後の世界であることは、【1部】【2部】にあった「棒」がそこにもう立っていないことから
知ることができますが、恋に落ちる男女の行く末は、ほの暗さに覆われ、知らなかった歴史と現在を見せられるよう。



【3部】の上演時間は【2部】の半分の25分。1～3部を通じて決して簡単にバランスを取らせないこの構成さえも、
観客に『愛するとき 死するとき』とは何かを突きつけ、想像を巡らせるトリックのようです。
東京公演は12月5日（日）までシアタートラムにて上演中です。