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井上芳雄・坂本真綾出演
ミュージカル・ロマンス『ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』
製作発表が行われました
幼いころの誰もが一度は読んだ名作「足ながおじさん」が、さわやかな大人の恋の物語としてミュージカルになりました。永遠に語り継がれる名著が、ミュージカル・プレイに、かつ二人芝居という独創的な構成で生まれ変わります。
2009年、アメリカで初演。『レ・ミゼラブル』『ベガーズ・オペラ』『キャンディード』など多くの傑作を世に送り出してきた演出家ジョン・ケア―ドが脚本、演出。ロサンゼルスの演劇界で最も権威あるOvationAwardの最優秀脚本家賞・作詞作曲賞を受賞した注目作です。
ジーン・ウェブスターによる原作本が発行されてちょうど100年となる本年。
今回、海外では日本が初めての上演となり、
シアタークリエを皮切りに、大阪・大分・福岡で上演されます。
孤児院に暮らす18歳の少女ジルーシャ(坂本真綾)は、
ある夜、大学に進学し勉学を保証するという思いもかけない手紙を受け取る。
条件は、”月に一度手紙を書くこと”。
手紙の主は、その夜に見た、車のヘッドライトに照らされ、
まるで足長蜘蛛「ダディ・ロング・レッグズ」のような影、まさにその人だった。
影でしか見たことのない相手だったが、ジルーシャは心を躍らせ手紙を送り続けた。
影の正体であるジャーヴィス・ペンドルトン(井上芳雄)もまた、
知性ある手紙を毎回送ってくれる彼女に、惹かれていくのに時間はかからなかった。
そしてついにジャーヴィスは、影の正体であることを隠してジルーシャの前に現れる-。
◆ジョン・ケア―ド(脚本・演出)
(後ろに写っているのは通訳の今井麻緒子さん。この作品の翻訳・訳詞も担当。ジョン・ケアードさんの奥様です)
今回、あしなが育英会の玉井さんと、今日一緒にこの場に立てている事をとても光栄に思っています。玉井さんは、ジーン・ウェブスターの小説に基づいて、あしなが基金を作られています。私も同じようにこの小説にインスピレーションを得てミュージカルを作っています。同じように同じ小説から興味を得て、あるものを作ったという二人が今同じ東京に居るということがとても興味深く感じています。
特に、去年あったひどい津波のことを特に深く感じています。多くの孤児があの津波で生まれたと聞いています。ジーン・ウェブスターが小説を書いたきっかけは、お金の無い孤児がちゃんとした教育を受けられないということに心を痛めていた事にあります。限りない孤児たちに今まで「あしなが育英会」が、教育の機会を与えていたことはものすごく素晴らしいことだと思います。ですから、このミュージカルが同じように観客の皆様にそういう孤児たちを助けるというインスピレーションを伝えるということが出来れば嬉しいと思います。
本当に偶然だったんですが、日本に来るまでこの小説を知りませんでした。12年以上前のことなんですけど、私の妻がその小説を手渡してくれました。彼女(通訳者)が私の妻です(笑)。びっくりしたのがこの小説が日本ではとてもよく知られているんですけれども、私は聞いた事も無かったんです。もっと驚いたのがアメリカ人もあんまり知らないのです。世界でも二つの国だけで有名な国で、一つはフランス、もう一つが日本です。ですから、最初にこの小説を知った街である東京にこの作品を持ってこられるということがとても光栄に思っております。
(すでに稽古は始まっていますが)とても素晴らしい時間を過ごしております。50人・60人いるような演出を今までしてきたんですけど、なんか二人しかいない舞台を演出するって、なんか休暇みたいな感じです(笑)。でも、彼らにとっては休暇でもなんでも無いんですよね。なぜなら、他の50人がやっていた仕事を二人っきりでやらなくてはいけない。だからお二人はとても疲れていると思います。本当に二人ともたいへん才能があって魅力的な方たちです。
本日はお越し頂きまことにありがとうございます。ジョン(・ケアード)が今、この話が日本でとても有名だということに驚いたという話をしていたんですが、もっと正確に言うと、この話は日本の女性にとても有名なんだと思うんですよね。僕も名前は知っていたのですけど、どんな話かというとこまでは、なんとなくしか知らなくて。でも、この作品をやるって発表したときに、特に女性の方の反応がとても大きくて、小さいころからの愛読書だったって言う人がたくさんいて、たくさんのプレッシャーを掛けられています(笑)。(坂本)真綾さん演じるジルーシャが援助によってどんどん花開いていく話でもあります。僕がやらせて頂くジャーヴィスはお金を持っていて、社会的にはすべて兼ね備えているような人ではあるんですけれども、でもやっぱり人間として、みんなそうだと思うんですけれどもすべて兼ね備えてはいなくて。その彼がジルーシャと知り合うことによって、変わって救われていくという話でもあるんだなということが分かってから、この人物を演じられるのがとても嬉しくなりました。しっかりやらなければなと思っています。ジョンとは『キャンディード』という作品以来、また一緒に、そしてこんなにも濃い時間を過ごせる事をとても嬉しく思っておりますし、真綾さんとは初めてやらせて頂くんですけれども、もう二人しか居ないので、助け合うしかないという状況で・・・でも素晴らしい女優さんなので、一緒にやらせて頂けて光栄です。
(司会の方にも)言って頂きましたけれども、今年、自分自身の事だけで言えば、とても深刻なシリアスな役を演じることが多く、舞台の最後は、だいたい息絶えている、っていう話ばっかりなんですけれども・・・それはそれでやりがいがあるんですけど、こんなに年中死んでいるのはどうかなって思って(笑)。この話のラストを言うのもなんなんですけど・・・とても嬉しいなと思って幸せに稽古をしています。
以前、『レ・ミゼラブル』という作品で、エポニーヌ役を7年ほど務めさせて頂きましたが、それ以来の久しぶりのミュージカル出演になるのでとても緊張しています。『レ・ミゼラブル』でジョン・ケアードさんと出会い、初めてお会いしたのが多分10年ぐらい前になりますが、すごく勉強になりましたので、またジョンさんと一緒に一つの作品に向き合っていけるっていうのが、嬉しいなと思っています。
「足ながおじさん」は、やはり私も日本人の女性なので、すごく好きな作品でしたしよく知っているつもりでいました。ジルーシャを演じられるという事になった時には本当に嬉しかったんですけれども、なんとなく、やっぱり子供の時に初めて読んだ印象では児童文学というイメージが強くて、ラストシーンがどうだったんだっけ?ってちょっとあいまいな記憶しかなくて。改めて原作を読みなおしたら、これはラブストーリでもあったんだ、ということと、女性が社会に進出していく・自立心が芽生えていく成長の物語ということに、昔読んだ時より一層ジルーシャを好きになりましたし、共感もたくさんすることができました。
日本人の女性が良く知っているこの物語は、やっぱりジルーシャ目線でしか書かれていないので、その時ジャーヴィスがどう思っていたかってのは想像することしかできないんですが、今回は井上(芳雄)さんがジャーヴィスを一幕の最初から演じていく中で、ジャーヴィスの気持ちやジャーヴィス側から見たジルーシャを見る事ができるのはすごく新しいなと思いますし、初めて見る・初めて知る物語に触れるような新鮮な気持ちで、今稽古をしているところです。
私はちょうど50年間、親を失った9万人の子どもたちを進学させてきました。お金の事を申してなんですが、900億円ぐらいのお金を集めて参りました。はじめ、母親を交通事故で亡くした子どもの進学問題を、ジャーナリストとしてペンで訴え、それから実際の遺児の救済活動、特に教育支援をやってまいりました。
昭和51年~53年の間、その時お金が無くなって参りまして、何か工夫が居るなということで、「教育里親募集」と、大きい新聞で大きいスペースをもらって報道して頂いたんですが、一人も応募者が無く、これはいかんなと思って半年くらい考えましたときに、実は私の姉が私が子供の頃、この「足ながおじさん」の読み聞かせをしてくれておりました。その時に、さまざまな面白い挿絵があったのをふと思い出しました。あしながさんという、自分の名前を言わずに、継続的に子供に奨学金を送る人を求めればよいんじゃないか、これでいこう!と思い「あしながおじさん募集」と言ったところ、前の時には一本も鳴らなかった電話がジャンジャン鳴って、数日間鳴りっぱなしでした。私はたまたま森光子さんの電話を受けました。売名行為と思われたら嫌だから、名前は伏せておいてくださいと言われました。そのようにあしながさんと名前を変えただけで、すごい支援者ができました。会の名前も遺児という言葉を取って、「あしなが育英会」としてすべての遺児に奨学金を与えるように範囲を広げまして、かれこれ50年になるんです。
今回、ジョン・ケアードさんがあしながさんをこんな形で再現されて、大変感謝しております。おっしゃるように私たちあしなが育英会が世界中で話しても、「足ながおじさん」という物語はあまり読まれておりません。アメリカでも読まれておりません。日本だけって言って良いくらいですね。驚きです。森光子さん、芸術座でずいぶん長く公演されましたが、名前は変わりましたがその場所にある劇場で、ケアードさんの素晴らしい演出とあいまってこの公演が大成功に終わる事を、祈るというよりもそれを期待して私の挨拶とかえさせて頂きます。
――― 井上さんにお聞きしたいのですが、二人っきりで舞台が進行するのがちょっとイメージし辛いんですが、具体的にどのように進行していくのかをご説明頂きますか?
(井上)二人ミュージカルというもの自体が珍しいと思うのですけれども、その上に今回真綾さんもおっしゃっていましたが、原作では本当にジルーシャの手紙だけで進んでいくんですが、舞台も実はほぼその形をとってます。なので、ジルーシャは、主に自分の大学、今いる学校で手紙を書いていて、僕はニューヨークのオフィスというか書斎でその手紙を読んでいるというのが同時進行していくという、とても面白い構成になっています。僕もたまに自分の想いとか自分のセリフを喋ったりするんですけど、主にジルーシャの手紙を一緒に読んでいます。手分けして。大変なのは真綾さんは手紙の部分も全部セリフを覚えなきゃいけないんですけど、僕は手紙を読むだけで良いんです(笑)。ちょっとそこが申し訳ないくらいですけど、そうやって僕はジャーヴィスとしての気持ちでそのジルーシャの手紙を読むってことをして、でも、劇中で何回か僕と真綾さんの役が実際に会う時があります。エキサイティングな構成になって面白いなあって思いながら毎日ジョンの演出を見ています。
――― 坂本さんにお聞きしたいのですが、ミュージカルナンバーの魅力についてお話頂ければと思います。
(坂本)今回の作品に関しては、個人的にとても大好きな曲ばかりです。それで、6人のミュージシャンによる演奏になります。時代というかその場所、国、景色にすごく合うようなちょっとカントリーっぽい、緑の匂いがしてきそうなサウンドになっています。ジルーシャも歌う曲が多いんですけれども、セリフの後ろでバックミュージックとして気持ちを支えるように音楽が入ってきて、そのままセリフだけでは表現しきれないような、言葉の奥にある気持ちまでも音楽で一緒に寄り添って表現してくれるようなそういうナンバーがとても多いです。
あとは、私と井上さんの役は実際は一緒の場所に居ることが、井上さんもおっしゃったようにあまりないんですけど、一緒に歌う場面は本当にそれぞれ違う場所で違う思いで、それでも一緒に同じハーモニーを歌っていく、その構成がすごく本当に綿密に練られている感じがして、本当によくできているなあって思います。何度も歌うたびに新たなことを発見できる面白い曲が一杯あります。
――― 井上さんと坂本さんにお伺いいたします。今回初共演ということですが、お互いの印象と、今回の作品で楽しみにしていることなどございましたら教えてください。
(坂本)井上さんと初めてお会いしたのがこのチラシ用のスチール撮影だったんですけど、本当に足が長い、背の高い人が来たってのが第一印象です。それと、実は同じ年代・たぶん同学年になると思うんですけれども、私が18歳の役で井上さんがおじさんの役でいいのかな?っていう(笑)不安もありました。けれど、実際に稽古が始まって、まだ5日くらいしかご一緒していないんですけども、やっぱりセリフもたくさん覚えたり本当に自分の事でいっぱいいっぱいになりつつも、同じステージ上に井上さんがいらっしゃるというだけで、すごい安心感と言うか心強さがあって、この作品は本当にパートナーと一緒に作っていくんだっていう・・・そういう気持ちで今、もっと仲良くならなくてはなと思って一日一個質問をしようと思っています(笑)。
(井上)その一日一個質問っていうのは知らなかったんですけど、さっき舞台袖で直前に唐突に「風邪とかひかないんですか?」と質問されたんで(笑)それがそうだったんだな(笑)。でもそんな努力をしてくださってとても嬉しいです。本当にまだ稽古が始まって一週間もたたないぐらいなんです。しかも鬼のような量のセリフと歌詞をお互い覚えている所なので、もっと余裕があれば、僕も一日一個質問ができると思うんですけれど(笑)、今はまだ無駄話ができないくらい必死です。今回はほとんど目を合わせてお芝居することがなくて、だいたい僕は舞台の奥の方に僕の部屋があるのですけれども、真綾さんはまず僕の姿が見えない状態。僕も直視してはダメだと言われているんで、お互いを感じてやるしかないのです。でももしかしたら見られる状況よりも、たくさんの事が感じ取れるんじゃないかなとも思います。坂本さんと一緒にやらせて頂いて、とっても聡明な方だなと思います。歌手・声優さんでもいらっしゃり、僕はあまりお会いしたことのないタイプの女優さんで、それがとても面白いなと思いますし素敵だなと感じています。
――― ジョン・ケアードさんのこれまでの作品というと、群像劇であるとか、アンサンブルワークが印象的だったんですけれども、この作品では二人芝居、二人のミュージカルということですが、まず、なぜ二人ミュージカルにしようと思ったのか、そして、その二人に井上さん、坂本さんをキャスティングした理由についてお聞かせください。
(ジョン)最初にこのミュージカルを書いたときはたった一人のための舞台でした。一人だけの出演者でやることもできますよね。なぜなら、ジルーシャが書いた手紙だけだからです。でも、一人だけだとあまりにも難しい。ずっと一人、演目の間ずっと歌い続けていたりというのたり、とかは難しいですよね。週に何回も公演をするのだから。一つの声を聴き続けていかなければいけない観客にとってもちょっと辛い部分があると思います。一人以上の役者を使わなきゃと思ったとたんに、もっと他にいっぱい使おうかっていう考えも浮かんだんですね。ジーン・ウェブスターは小説を書いた時にとても成功したので、彼女はブロードウェイ用にお芝居のバージョンも書いている。そうすると手紙に書いてあるキャラクターが全員出てくるんですね。15人くらい。でもあんまりそのキャラクターはあんまりおもしろくない。小説のジルーシャの面白い点は、書物を読めば読むほど彼女がどういう人間かっていうことが分かり魅了されていってしまうところです。書いている人が面白い事と思ったことを書いている時と、もう一つは、相手が読んでいる時っていうところがまた面白いんですね。そうすると同じ手紙なんだけど、書かれた時と読まれた時のギャップが生まれてきます。時間もそうです。今はEメールの時代なので、時間のギャップがとても少ないのでそこまで面白くないのですが、それまでは手紙を書いてから読まれるまでの間が少なくとも何日かかかるわけです。そうすると、手紙を書いた人の期待というものや、読まれた時の反応ですが、時間差が生まれてくるわけです。だからそれがこの作品の心臓部になっていると思うのです。若い女の子が知らない男性に手紙を書いている。その男性は、彼女が書いている事と同じぐらいの興味を持っている。だけど、全然違う方法、これは教育の物語という風な事を最初は思うけれども、その結果として、ジャーヴィスにとっての教育にもなっていく。何も持っていない女の子の話で、何でも持っている男性、だけど、それがどんどん立場が入れ替わっていくっていう感じになっていく。結末として、彼女が彼を必要とするよりも彼がより彼女を必要としていくのです。玉井さんはご存じだと思いますけど、チャリティーは、知らない相手にお金をあげる行為なので、感謝という壁を作り上げてしまうんですね。受け取った側から見ると。
この作品のドラマの素晴らしいところは、この二人は実際に会います。彼女は彼が誰だか分かっていない状態で恋に落ちてしまうわけですね。彼女は自分が孤児という事を恥ずかしくて言えない。彼は自分がお金を彼女にあげているという事を言う事ができない。言うと彼らの間に溝を作ってしまう。それは、ものすごくドラマティックな状況なんですね。ですからこれは二人の間の物語でないといけないと思いました。
どうして、芳雄と真綾かというと、これだけ頭が良い役をやるということは、やっぱり頭が良い女性でなくてはいけない。同等にジャーヴィスの側もその頭の良い手紙を楽しめる程に頭の良い男性でなくてはいけない。それでこの二人がここに居るわけです。
(井上)足の長さは、関係ない?(場内笑)
(ジョン)それも。そういうことにしておきます(笑)。もちろん足が長い人でないと困ります。だからキャスティングは難しかったんです(笑)。でも足の長さよりも頭の良さの方がより大事です。
「チャリティー」 井上芳雄
「幸せの秘密」 坂本真綾
「卒業式」 井上芳雄・坂本真綾
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ミュージカル・ロマンス
『ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』
【東京公演】
2012年9月2日(日) ~ 9月19日(水)
会場:シアタークリエ
【全国公演】
公式HP http://www.tohostage.com/ashinaga/index.html
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