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水 夏希さんインタビュー
リーディングドラマ『サンタ・エビータ ~タンゴの調べに蘇る魂』出演
公演にかける意気込みをうかがいました
貧困の中から、あっという間に無名の女優そして大統領夫人へ、
ついには宗教的崇拝の対象へのぼりつめ、権勢絶頂期にわずか33歳で夭逝した
エバ・ペロン=愛称「エビ―タ」は、映画やミュージカルでよく知られています。
本作は、そのドラマティックでスキャンダラスな生涯を、
朗読・芝居・歌・ダンス・タンゴで綴るオリジナル作品です。ご期待下さい!
出会ってほしい、エビータに。
この世を去ってなお、
アルゼンチンで聖女のように崇められ、愛されているエビータ。
同時に、政界の悪女と今でも誹られ続けるエビータ。
永遠に生きることを欲した業の深い女の一生は33年間で終わってしまいました。
この人生の謎に、時を経て、エビータ自身が答え始めます。
魂を呼び戻すのは、かつて生きた喜びや痛みを抱え込んだタンゴの調べ……。
平凡に生まれた女性を、歴史に残る聖女にしたのは、
奇跡や運命の力ではなく、意志と行動の力でした。
自分と他者を愛する比類のない才能、世界を読み取る慧眼、そしてエネルギーに、どうぞ出会ってください。
女はたった一人で、たった一つの人生で、どこまで生きられるのでしょう?
作・演出 石丸さち子
―――リーディングドラマ『サンタ・エビータ ~タンゴの調べに蘇る魂』、
どのような作品になりそうですか?
まず、私は朗読劇スタイルのリーディングドラマは初めての挑戦になります。
とは言っても、朗読だけでなく、歌も踊りもあって最後には台本を離して芝居になるので、
新しい試みだなと思いました。
出演者は私と今井清隆さんの2人で、音楽はバンドネオンの生演奏です。
私はエビータ(エバ・ペロン)役で、今井さんは夫であるアルゼンチン大統領・ペロンのほか、
いろいろな役柄をなさいます。
今井さんは身体も大きくていらっしゃるので、軍人でもあるペロンが
お似合いになりますし、初めてご一緒するので楽しみです。
今回は出演者が2名なので、エビータとペロンを中心に描かれていますが、
エビータのお兄さんが語るという切り口で進んでいきます。
作・演出の石丸さち子さんによると、特権階級の人たちは文字で残せるけど、労働者階級の人たちは
文字で残せないから記録に残らないんだそうです。
ずっと近くにいたお兄さんも記録を残すような人ではなかったけれど、
彼はこんな思いで傍にいたんじゃないか・・・ということで綴ってみました、とおっしゃっていました。
今までとはまた違った角度からエビータを捉えられるのではないかと思っています。
―――水さんの「リーディングが初めて」ということもちょっと意外ですね。
今回挑戦してみようと思ったきっかけは。
最近お芝居をしていなかったですし、動きにとらわれずお芝居をじっくり出来る
チャンスをいただけたことがありがたいですね。
新たな挑戦なのですが、いざやってみるとなかなか大変です。
お芝居であればセリフを頭に入れれば芝居に集中できるのですが、
リーディングなので覚えちゃいけないと言われていて、読みあげるにしても、
字を追っているだけだとただ読んでいるだけになってしまうし、
そのあたりのバランスが難しいなと思いました。
リーディング経験者に聞いたら、セリフを覚えなくていいから芝居が自由に出来るという方もいるし、
その場で言われたことをどんどん台本に書き込んでいくようにしているという方もいるし、
みなさんいろいろな形で工夫しながら作り上げているんだなと思いました。
―――2013年の『SHOW Beyond the Door』のお話をうかがった時、
「この前、ある朗読劇を見て自分が好きな物が分かってきたなと思いました」と
おっしゃっていましたね。
アハハハハ、そうですか(笑)。今回は朗読に加え、タンゴの曲で綴られているので
そこもすごくワクワクしているんです。昨年からタンゴに関わってきたからこそ
今回の舞台に繋がっているのだと思いますし、知れば知るほど奥が深くて
情の深い音楽だなと思います。
―――台本からはどのようなことを感じていらっしゃいますか。
台本は、“サンタ・エビータ”、つまり聖女としての思いがすごく詰まっています。
「貧しきものに幸せを」という精神で、なんて素晴らしい人だったんだろうと思います。
一方でエビ―タ関連の本を読んだら、そのやり方たるや強引で、夫婦そろって独裁者です。
だからこそ批判されることも多かったと思います。エビ―タを愛する人もいる半面、
憎む人も大勢いる中で、それに折れない鋼の精神力を感じました。
33年という短い生涯はドラマティックで、実在の話とは思えないような人生です。
そのエビータを今回演じさせていただけるのは、すごくやりがいがあります。
短く燃え尽きた生涯をどのように演じるか、自分自身とても楽しみです。
―――『エビータ』、つまりエバ・ペロンを題材にした作品は
劇団四季のミュージカルやマドンナが演じた映画も有名ですね。
エビータの人生から最も強く感じるのはどのようなことですか?
自分の信念を貫く強さですね。砂利道の田舎町から出てきて大都会で国の頂点に立つ、
その中でいろんなことを乗り越えたり犠牲にしたりしてきたんだろうなと思うんです。
そういうものがいっぱいある中で、めげずに自分の信念を貫き通したのは
「一人でも多くの人に生きる権利を感じて欲しい」という、
強い思いがあったからなんだろうなと思います。
でも実際のところはエビータ本人にしか分からないので、
「エビータ、あなたに聞きたい!」ということがたくさんあります(笑)。
台本にもありますが子供の頃の貧しい時代、虐げられ蔑まれ、無視し続けられた
自分の人生に対して無念を晴らしたい気持ちもあったのかなと。
「私を見て」というところではなく、「特権階級の全てを見返し、貧しき底辺の
労働者たちに生きる意味や喜びを感じて欲しい」というのが
エビータの根底にある原動力だったんじゃないかな、と想像しています。
でも、そのやり方は無茶苦茶なんですよね。自分も着飾って、
お金持ちの人たちからお金を巻き上げてはばら撒き、
はむかう者は容赦なく投獄する。いろんな人が批判したと思いますが、
「じゃあ他に誰だったら、民衆や国を動かせたのか」ということなんですよね。
そんなエビータの姿を見て貧しい人たちは「頑張ったらエビータのように
豪華な毛皮や宝石で着飾れる」と思ったでしょうし、エビータ自身も「国民のために」と言いつつも、
どこかで自分自身の優越感も味わっていたんじゃないかなとも思います。
今回の作品では、いい面ばかりでなく複雑に絡み合ったいろんなものを含めて
“サンタ・エビータ”でした、ということが、
タンゴの調べと相まって、お客様に届けられたらいいなと思っています。
―――33歳で亡くならなかったら、歴史が変わっていたかもしれないような話ですよね。
そうなんです。最後に「副大統領に」という話が来たときは、ペロンの返事を聞く事が出来ず、
聞かずに断るんです。そこが自分のゴールではない、という思いがあったのかもしれません。
33歳で亡くなったからこその“サンタ・エビータ”でしょうし、夫ペロンに愛人がいたという話もあるので、
生き続けていたらそういう人に対する嫉妬心も出てきたでしょうね。
エビータの最後の演説を動画サイトで見たのですが、
民衆もうわぁ~と叫び、声高らかにそれに応えていて、死に直面している人とは思えないパワーなんです。
―――作・演出の石丸さち子さんはどのような方ですか。
今回初めてご一緒するのですが、エネルギッシュで
講演会のようにいろんな話をして下さいます。
確固たるイメージをお持ちなので、迷わず付いていけるなと感じています。
声だけで芯の強いエビータという女性をどのように演じるか。
石丸さんにいろいろと引き出していただけるのではないかと思います。
―――演出の石丸さんも、共演の今井さんも、リーディングドラマも、
水さんにとっては今回初めてのことづくしですね。
そうなんです。あと、振付・ステージングの前田清実さんとは宝塚退団後初めてなので
「前回ご一緒したのは何年前かな?」と思うほど久しぶりです。
―――歌やダンスはどのような形で盛り込まれているのでしょうか。
歌は全部で6曲で、私がエビータとして歌うのは4曲の予定です。
それ以外にもバックでタンゴが流れているので音楽の要素も強いですね。
ダンスは本格的なアルゼンチンタンゴではなく、そういうニュアンスを出せる振付になりそうです。
エビータとして、またエビータの魂が踊るという感じでしょうか。
ガルデルやピアソラなどのタンゴの曲です。
タンゴは哀愁漂うものだけでなく、すごく明るい曲もありますので多彩な音楽シーンになりそうです。
タンゴは知れば知るほど奥深いです。
英語は出来ないと言っても中学校高校で学んだので、なんとなくは雰囲気で分かるじゃないですか。
スペイン語で言われても全く何の事だか分からないですから。
タンゴらしさが消えないように歌うにはどうしたらいいか、というのが難しいんです。
スペイン語のニュアンスを知らないと歌いこなせないので非常に情緒的だなとも思います。
バンドネオンの生演奏も楽しみです。
―――アルゼンチンと言えば昨年『Argentango アルジェンタンゴ』で
妖艶なダンスシーンを見せましたが、アルゼンチンは行かれたことがありますか?
あります。8月に行ったのですが、向こうは秋口ぐらいかなという服装で行ったら
真冬だったので寒くてとても乾燥していたという印象があります。
治安も悪く地元の人でも靴下などにお金を挟んでおかないと
盗まれちゃうんだそうです。銀行の壁には預金がおろせない時期書かれたという
大きな落書きがありました。着ているものも黒か茶色で地味なものばかり。
私は青や緑の洋服を着ていたら、同行者に「目立ちすぎるからやめてくれ」と
言われたほどです。21世紀になっても、いまだに混乱している国なんですよね。
それを考えるとエビータの時代はもっと大変なことになっていたんだろうなと思います。
―――3月に入りましたが、今年はどんな年にしたいですか。
宝塚を退団して9月で6年目に入ります。2年目位までは長く感じましたが、
そこから後はあっという間です。最近は『Argentango アルジェンタンゴ』や
『CHICAGO』で足を出す衣裳も着て、女性らしい役もやらせていただきました。
エビータは男性的な強い精神力の人だとは思うのですが、女性としての
武器を使ってのし上がっていった人なのでそのあたりが出せたらいいなと思います。
自分としても、男役であったことを生かした女優としてやっていきたいです。
―――水さんが思う“素敵な理想の女性像”は。
表面をいくら着飾っても内面が磨かれていなければダメだと思いますし、
だからといって表面を何もしないのも心の乱れが表れているような気がします。
内面から美しくいることが、結果的に外見も美しくなる、というのが理想です。
もちろん私も心が揺れる時もありますが・・・一回の“まぁいっか”が命取りです!(笑)
まぁ、またいっか、まだいっか、もういっか・・・になってしまいますから(笑)。
退団後は「女性とはなんぞや」ということをずっと考えてきて
5年経って自然と自分に身に付いていることもあるなと。
やはり、小さな積み重ねが大事ですね。その中で自分らしさを失わないでやっていきたいなと思います。
―――それでいて突然“男役”にも戻れるんですよね。
そうなんですよ。突然戻れるの。怖いわ(笑)。
―――ところで、最近何か面白いことはありましたか?
今回リーディングドラマをやるということで、ストレートプレイを何本か観ました。
とても面白かったです。やっぱり言葉ってすごく大事ですね。
『藪原検校』を観たのですが、役者さんがうまくて引き込まれて、退屈している暇がないんです。
難しい話かなと思っていたのですが、どんどんのめり込んで観ました。
セリフも、役者からこぼれ出る言葉に聞こえるんです。
舞台が簡略化されている場合、お客様の想像力を掻き立てるパフォーマンスで
あるべきだと思うのですが、そのあたりもすばらしくて、これは今回のリーディングドラマにも通じるなと
感じました。今回私も、“言葉を紡ぎ出す”ということに挑戦したいなと思います。
リーディングドラマ
『サンタ・エビータ ~タンゴの調べに蘇る魂』
作・演出:石丸さち子
出演:水 夏希、今井清隆
バンドネオン演奏:渡辺公章
日程:2015年3月25日(火)~3月29(日)
会場:DDD AOYAMA CROSS THEATER
問い合わせ:アーティストジャパン 03-6820-3500
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