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歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」公演レポート、舞台写真掲載 2024年08月

(2024年08月10日記載)

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歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」公演レポート、舞台写真掲載


★各演目写真及び内容に触れておりますので、ご観劇前の方はご注意ください★

第三部『狐花 葉不見冥府路行』左より
萩之介=中村七之助、中禪寺洲齋=松本幸四郎
提供ⓒ松竹

公演概要(リリースより)


歌舞伎座8月公演「八月納涼歌舞伎」が初日の幕を開けました。
納涼歌舞伎は、平成2(1990)年より
十八世中村勘三郎(当時 勘九郎)と十世坂東三津五郎 (当時 八十助)らを中心に、
花形俳優が活躍する公演として人気を博してきました。
納涼歌舞伎恒例の三部制で、古典歌舞伎の名作から期待高まる新作歌舞伎、
熱の訪れを感じさせる舞踊まで、熱気あふれる舞台が目白押しです!

初日の第一部の開場前には、松本幸四郎、中村勘九郎、中村七之助、坂東巳之助、坂東新悟、
大谷廣太郎、中村米吉、中村児太郎、中村橋之助、中村福之助、中村虎之介、中村歌之助、
市川染五郎、中村勘太郎、中村長三郎が、それぞれ直筆の言葉をしたためたうちわを手に、
そろいの浴衣で劇場前に登場しました。

幸四郎、勘九郎、七之助、巳之助、新悟、児太郎、橋之助が挨拶し、
皆で「歌舞伎座でお待ちしております!」と掛け声をかけると、
集まったお客様から大きな拍手と声援を受けました。
うちわは、公演期間中、出演者31名分を劇場2階ロビーに展示しております。


◆松本幸四郎
皆様暑いですかぁ〜?!暑いですね!この暑さよりもっと熱い舞台がこの中(歌舞伎座)にありますので、
そこですっきりしていただきたいと思います。本日初日を迎えました。
千穐楽まで一生懸命、毎日すべてを出し切っていきますので、
是非ともご来場いただきますようよろしくお願いいたします。

◆中村勘九郎
連日のパリオリンピック…寝られませんね。
(柔道混合団体決勝で日本が敗れ)昨日は悔しくて3時ぐらいまで起きていました。
選手の皆様には刺激と感動をいただいています。しかしながら、
うちわに書いた「金」の文字は、“きん”ではなく“かね”です。
私の演 じる役は、一部、二部、三部ともに、“かね”にまつわる台詞がありますので、
そちらにも注 目していただきたいと思います。
オリンピックに負けないよう、見ている方々にワクワクしていただける舞台を勤めたいと思います!

◆中村七之助
父(中村勘三郎)、(坂東)三津五郎のおじさまたちが作り上げた「納涼歌舞伎」に
今年もかえってくることができ、とても嬉しく思います。
そして、今年は父の十三回忌でございますので、心を込めて一生懸命勤めます。

◆坂東巳之助
私事ではございますが、来月35歳になります。歌舞伎界ではまだまだ若いつもりでおりましたが、
第二部の舞踊『紅翫』におきまして、9名の出演俳優の中でついに最年長がまわってまいりました(笑)
しっかり責任感を持って勤めたいと思います。第一部『ゆうれい貸屋』は、
笑いあり、ホラーあり、シニカルあり、夏らしいお芝居です。

◆坂東新悟
前回歌舞伎座で『ゆうれい貸屋』を上演した平成19年は、私は17歳くらいで、
しゃかりきになんとか食らいついていこうという熱い気持ちを持って8月公演に出演していました。
今もその気持ちは変わっておりませんが、もっともっと客席を盛り上げてお客様に
スカッとした気持ちでお帰りいただける舞台を作っていきたいです。

◆中村児太郎
勘三郎のおじ、三津五郎のおじさま、そして父(中村福助)たちがはじめた「納涼歌舞伎」で
ひと演目任せていただけることをとても嬉しく思っております。
今回の『ゆうれ い貸屋』では、父が監修に入っております。
父にはまだまだ及びませんが、一生懸命演じる気持ちだけは負けないように勤めます。

◆中村橋之助
『紅翫』では、巳之助のお兄さんはじめ、若手でひと演目勤めます。
「納涼歌舞伎」でこのような機会をいただけることがとても嬉しく、しっかり結果を出さなければと
プレッシャーも感じています。勘三郎のおじから「早く戦力になってくれ」と常々言われておりましたので、
少しは応えられているのかなと思いつつ、より戦力になれるよう一丸となっ て頑張っていきたいです。

公演レポート


第一部は、『ゆうれい貸屋』から。
山本周五郎原作の人情喜劇で、この度は坂東巳之助の弥六、中村児太郎の染次、中村勘九郎の又造と、
それぞれの父たちが勤めた役々を初役で勤めることで話題の舞台です。
幕が開くと、江戸は京橋の桶屋。お兼 (坂東新悟)と家主平作(坂東彌十郎)が、
仕事もせずに出かけてしまった弥六(巳之助) を嘆いています。
しかし酒に酔って帰ってきた弥六が聞く耳を持たないため、お兼は実家へと帰ってしまう始末です。
やがて日が暮れ、弥六のもとに現れたのは美しい芸者の幽霊、染次(児太郎)。
女房にしてほしいと申し出る染次と戸惑いつつもまんざらでもない弥六のコミカルなやりとりに、
観客からは自然と笑みがこぼれます。やがて染次と夫婦同然の仲となり昼夜逆転の生活を送る弥六は、
平作から店賃の滞りがあれば追い出すと言われてしまいます。
二人が店賃を稼ぐ算段として考え付いたのは、恨みを晴らしたい人に幽霊を貸し出す「ゆうれい貸家」。
染次は、屑屋の幽霊又蔵(勘九郎)をはじめ、爺の幽霊友八 (市川寿猿)、娘の幽霊お千代(中村鶴松)を
呼び寄せ、大いに商いは繁盛しますが…。個性豊かな幽霊たちと弥六の軽快なやりとりに笑いながらも、
人間の本性をも感じさせる哀愁溢れる人情喜劇に、客席からは大きな拍手が送られました。


第一部『ゆうれい貸屋』左より
芸者の幽霊染次=中村児太郎、桶職弥六=坂東巳之助
提供ⓒ松竹


第一部『ゆうれい貸屋』左より
家主平作=坂東彌十郎、桶職弥六=坂東巳之助、魚屋鉄造=中村福之助、鉄造女房お勘=市川青虎
提供ⓒ松竹


第一部『ゆうれい貸屋』左より
弥六女房お兼=坂東新悟、桶職弥六=坂東巳之助
提供ⓒ松竹


続いては、『鵜の殿様』。歌舞伎舞踊としては本年2月に博多座「二月花形歌舞伎」にて初演され、
好評を博しての再演となります。夏の盛り、大名(市川染五 郎)が腰元たち(市川高麗蔵、澤村宗之助、市川笑也)を
相手に舞を舞っています。大名は暑さしのぎに太郎冠者(松本幸四郎)を呼び寄せると、故郷の鵜飼の様子を語らせます。
自らも鵜飼ができるかと尋ねる大名に、容易いことだと答える太郎冠者。
しかし、太郎冠 者は日頃の憂さ晴らしにと、鵜飼をよく知らない大名に鵜の役をさせて…。
鵜匠と鵜が縄でつながれている様子を、幸四郎、染五郎親子がまるで本物の縄でつながれているように
全身いっぱいでダイナミックに表現します。鵜匠と鵜の関係に見立てた可笑しみ溢れる舞踊劇に、
客席からは笑いが沸き起こり、快活な雰囲気に包まれました。

第一部『鵜の殿様』左より
腰元菖蒲=市川高麗蔵、大名=市川染五郎、腰元撫子=市川笑也、腰元浮草=澤村宗之助
提供ⓒ松竹


第一部『鵜の殿様』左より
太郎冠者=松本幸四郎、大名=市川染五郎
提供ⓒ松竹


第二部は、河竹黙阿弥による生世話物の傑作『梅雨小袖昔八丈 髪結新三』で幕を開けます。
この度は、祖父十七世中村勘三郎、そして父の十八世勘三郎が当たり役とした新三に、
満を持して勘九郎が初役で挑みます。幕が開くと、そこは材木問屋の白子屋。
身代が傾きつつある白子屋では、一人娘のお熊(中村鶴松)に婿を迎えようとしています。
仲人の加賀屋藤兵衛(市川中車)と奉公人の車力善八 (片岡亀蔵)が結納品を持参し、
後家お常(中村扇雀)が迎えます。しかし店の手代忠七 (中村七之助)と恋仲のお熊は、
縁談を受け入れることができません。白子屋に出入りする髪結の新三(中村勘九郎)はその事情を盗み聞き、
慣れた手つきで髪を撫でつけながら、忠七に駆け落ちを唆します。
その晩、お熊を連れ出した忠七は永代橋のたもとで豹変した新三に蹴飛ばされ、額に傷をつけられてしまいます。
手練れた髪結姿から一変し、忠七を罵る新三の「傘づくし」の名台詞。
悪党の本性をあらわにしながらもどこか色気のある新三の姿に、客席は一気に引き込まれました。
新三が颯爽と立ち去ったあと、身投げしようとする忠七を引き留めたのは侠客の弥太五郎源七(松本幸四郎)。
お熊を取り返すため新三との交渉を引き受けます。
悠然とやってきた親分の源七を新三と下剃勝奴(坂東巳之助) はうやうやしく迎えます。
源七は新三に啖呵を切ったものの追い返されしまい、ふたりの間には遺恨が残ります。
代わって交渉を引き受けたのは長屋の家主・長兵衛(坂東彌十郎) で…。
老獪で言葉巧みな長兵衛に新三が次第にやり込められる、打って変わったおかしみある展開に、
客席の雰囲気もがらりと変化。さらに、小気味良いやり取りの中では、「それはうちの親父だよ」と
今年が十三回忌となった十八世勘三郎を思わせる台詞も飛び出す など、客席からは大きな笑いが起こりました。
初鰹を売る魚売りの声や、湯上りの浴衣姿の新三など、季節感に溢れ、江戸市井の生活を活き活きと描き出す本作。
筋書に向けたアンケートで新三を「エッチで悪い男」と語った勘九郎が、初役の新三を粋で鯔背に勤めあげ観客を魅了しました。

第二部『梅雨小袖昔八丈』髪結新三=中村勘九郎
提供ⓒ松竹


第二部『梅雨小袖昔八丈』
(前)手代忠七=中村七之助、(後)髪結新三=中村勘九郎
提供ⓒ松竹


第二部『梅雨小袖昔八丈』左より
下剃勝奴=坂東巳之助、髪結新三=中村勘九郎、家主長兵衛=坂東彌十郎
提供ⓒ松竹


続いては、夏の江戸風俗を軽妙洒脱に描いた舞踊『艶紅曙接拙紅翫』
幕が開くとそこは富士山の山開きで賑わう、浅草・富士浅間神社。庄屋の銀兵衛(坂東巳之助)、
団扇売りのお静(中村児太郎)、朝顔売りの阿曽吉(中村 福之助)、蝶々売留吉(中村虎之介)、大工の駒三(中村歌之助)、
町娘のお高(市川染五郎)、角兵衛獅子の神吉(中村勘太郎)らが揃ってそれぞれ踊ります。
何か面白いことはないかと口々に言う皆に呼び出されてやってきたのは、
江戸で評判の遊芸を見せる紅翫 (中村橋之助)。虫売りのおすず(坂東新悟)に続いて面を使った踊りや
多彩な芸を披露すると、客席からは大きな拍手が送られます。最後には賑やかに勢ぞろいの踊りとなり、
花形俳優が揃った清新な舞台の華やかな雰囲気で第二部を締めくくりました。

第二部『艶紅曙接拙』角兵衛神吉=中村勘太郎
提供ⓒ松竹


第二部『艶紅曙接拙』左より
蝶々売留吉=中村虎之介、朝顔売阿曽吉=中村福之助、角兵衛神吉=中村勘太郎、庄屋銀兵衛=坂東巳之助
提供ⓒ松竹


第三部は、ミステリー界の鬼才・京極夏彦脚本による新作歌舞伎『狐花葉不見冥府路行』が遂に開幕。
小説家デビュー30周年を迎える 京極夏彦が、初めて歌舞伎の舞台のために書き下ろした本作は、
累計発行部数1000万部を超える「百鬼夜行」シリーズ、そして文学賞三冠を果たした
「巷説百物語」シリーズにも連なる物語。
「百鬼夜行」シリーズの主人公・中禅寺秋彦の曽祖父である中禪寺洲齋を主人公に、
美しい青年の幽霊騒動と作事奉行らの悪事の真相に中禪寺が迫ります。
歌舞伎の上演に先駆け7月26日(金)には小説も発売され注目が集まる中迎えた初日、
「京極夏彦×歌舞伎」というファン待望の組み合わせがついに実現するとあって客席からも興奮が伝わります。
物語は呪詛を生業とした信田家当主の妻・美冬に横恋慕した上月監物(中村勘九郎)らが
信田家の一族郎党を皆殺しにした残虐な事件から始まります。
事件から 25年後、監物の 娘雪乃(中村米吉)、近江屋の娘登紀(坂東新悟)、辰巳屋の娘実祢(中村虎之介)、
そして上月家女中お葉(中村七之助)の周囲に現れたのは彼岸花を染め抜いた小袖を着た謎の男・萩之介(中村七之助)。
いくつもの謎をはらむ幽霊事件を解き明かすべく、“憑き 物落とし”を行う武蔵晴明神社の宮守・中禪寺洲齋(松本幸四郎)が
監物の屋敷に招かれ ます。やがて明らかとなる真実とは――
作中では鮮やかな赤の曼珠沙華の花が物語の重要なモチーフとして登場し、
「死人花」 「墓花」「彼岸花」「蛇花」「幽霊花」「火事花」「地獄花」「捨子花」「狐花」と、
曼珠沙華の別称で章立てされ、歌舞伎座の舞台を印象的に彩ります。
そして、暗闇の中に赤く浮かび上がる曼珠沙華と共に人々を妖しくも、美しく哀しい物語の世界に誘う舞台音楽。
公演に先立ち行われた取材会で「京極さんの作品は、小説でありながら、優しく、怪しく、 艶っぽい
音楽が聞こえてくるような感覚があります。」と語った幸四郎の言葉にもつながる、
小説から聞こえてくるかのような音色が、歌舞伎座を包み込みます。
初日を観劇した京極夏彦氏からは「小説は書かれていないところこそが大事。読者が小説の行間や紙背をいかに生み出すか。
一方で、歌舞伎を含めた演劇というのはそこをどう作るか。舞台づくりは役者さんと舞台を作られるみなさんに
全幅の信頼をおいて一任していましたので、本日拝見して、見事に小説の行間を埋めて紙背を描いてくださっていたと思います。」
とコメントが届きました。
まさに“京極歌舞伎”が誕生した瞬間を目撃した観客からは、割れんばかりの拍手が贈られました。

第三部『狐花 葉不見冥府路行』中禪寺洲齋=松本幸四郎
提供ⓒ松竹


第三部『狐花 葉不見冥府路行』上月監物=中村勘九郎
提供ⓒ松竹

 

 

「八月納涼歌舞伎」

 

公演日程:2024年8月4日(日)~25日(日)

【休演】13日(火)、19日(月)

会場:歌舞伎座

 

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/878

 

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