『エンタメ ターミナル』では舞台を中心としたエンターテインメント関連情報をWEB記事として発信しています。
掲載内容は、掲載日付のものとなりますので、最新情報は各自ご確認ください。
※ 記事・写真等の無断使用・無断転載は禁止しています。なお、リンクはフリーです。
明治座 五月花形歌舞伎 制作発表会が行なわれました
明治座 五月花形歌舞伎
【昼の部】
一、月形半平太(つきがたはんぺいた)
幕末の京都。坂本龍馬らと薩長連合を画策する長州藩の桂小五郎は、反対派の説得のため、
帰郷を決意し、京にいる同志を取鎮める役目を月形半平太に託すが、
その行く手には幾多の困難が待ち受ける…。
幕末維新期を背景に、月形半平太と芸妓の梅松、染八を取り巻く恋と剣の物語!
「春雨じゃ。濡れてまいろう」の名せりふでお馴染みの新国劇の代表作の一つ『月形半平太』。
二、三人連獅子(さんにんれんじし)
親獅子と子獅子に加えて母獅子が登場する『三人連獅子』。
清涼山を背景に牡丹の花が咲き乱れ、三人が勇壮な毛振りを見せる華やかな一幕です。
楳茂都流の現家元である片岡愛之助が東京の歌舞伎公演で初めて演じる、
上方情緒あふれる『三人連獅子』を存分にご堪能ください。
【夜の部】
通し狂言 南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)
曲亭馬琴が文化11(1814)年から30年近い歳月をかけて書き上げた98巻、
106冊に及ぶ江戸読本を代表する作品。
時は足利時代。里見家の息女伏姫は、敵方の呪いから犬の子を身籠って絶命すると、
里見家も滅びてしまう。伏姫の血を引く男子たちは散り散りになっていたが、
それぞれが所持する、仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の文字が浮かび上がる
不思議な玉に引き寄せられ、八犬士となって、里見家の再興のために力を合わせ…。
大屋根での立廻りやだんまりといった、歌舞伎味あふれる演出が満載のエンターテインメント作品を、
心ゆくまでお楽しみください。
◆片岡愛之助
五月、明治座で花形歌舞伎に出演させていただきます。明治座は、こけら落としの時に出演させていただき、その頃からのご縁でございます。明治座(自体)についているお客様が好きな歌舞伎って何かな?と色々と相談しておりましたら、(松竹株式会社の)安孫子正副社長から『月形半平太』という演目を提案していただき、この公演はこれしかない!と思いました。私は上方の人間でございますから、ただ殺伐としているのではなく、はんなりとした部分であったり、大立ち回りがあったりと、色々な角度から楽しんでいただける要素があると思います。色々な方々が演じていらっしゃる『月形半平太』は、色々なものを見て学び、みんなで楽しく作っていけたらと思います。そして『三人連獅子』。(自分は)楳茂都流の家元も勤めさせていただいておりますので、先代の家元が歌舞伎舞踊をたくさん作っておりましたが、上演する機会が少のうございました。私が家元を継がせていただいた以上は、色々なところでできる限り上演して皆様のに知っていただきたいと思っております。通常の『連獅子』は、お父さんと子どもが出てきますが、今回の『三人連獅子』は、お父さんとお母さん、そして子どもが出てきますし、セットでは石橋が出てきます。親子の情愛がわかりやすく描かれております。舞踊や狂言は「私には分かるかな?」と心配になられるお客様も多いのですが、非常にわかりやすく初めて観るお客様にもうってつけの演目となっています。夜は古典の『通し狂言 南総里見八犬伝』では、犬山道節を初めて勤めさせていただきます。これも最初から最後まで初めてご覧になる方にもうってつけの作品でございますし、普段歌舞伎をご覧になられている方にも楽しんでいただけるような面白い作品でございます。朝から晩まで頑張りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
―――『月形半平太』で月形半平太役と『南総里見八犬伝』では犬山道節は初役とのことですが、
それぞれの役の魅力と、どのように演じるか教えてください。
◆片岡愛之助
『月形半平太』は行友李風さん原作で、いま色々と書き直しているのですが、
やはり僕のイメージとしては、昔から大先輩から演じられている作品。
色々な資料も拝見させていただいておりますが、二枚目の方々が演じてきた役なので、
頑張って二枚目に作り込んで勤めていきたいと思います。
また、ちょっと色気のある部分や強さ、そして忠義の心を持ち合わせています。
まだお稽古に入っていないので、分からない部分も多いのですが、
昨日、里見浩太朗さんが『コメディ・トゥナイト』を観にきてくださってビックリしました。
そういえば里見さんも月形半平太を演じていらっしゃったので、
先輩に「演じさせていただきます!」と報告をしました。
そして「(演じる上で大切なことを)教えてください」とお話ししたら、
「〝春雨じゃ。濡れてまいろう〟という有名な台詞があるのですが、
これを七三で言ったら笑われました。そこで、先輩に電話して聞いてみたら歌いなさと言われたのです。
僕は歌うという意味がちょっと分からなかったのだけど、(愛之助さんは)歌舞伎役者だから
台詞を歌うという意味がわかるでしょ?その日から恥ずかしなが歌う台詞回しに変えたら、
拍手がくるようになって、あ、そういうことなのか!と。だからあの台詞は歌った方がいいよ」と、
その場でドバイスしてくださいました。そうやって皆様から色々な知恵を拝借して作って行こうと思います。
『南総里見八犬伝』は、通し狂言で犬山道節という初役。皆で作り上げていく八犬士の1人なので、
普段出ていないような場面にも出ております。色々な意味で皆で見つめ直しながら、
また新しい八犬伝の形ができたらいいんじゃないかな思っているので、稽古が楽しみです。
―――今回は若手役者さんがとても多い公演になりますが、若手を束ねて行く立場になって、
演じるというのはどういう心境でしょうか。
◆片岡愛之助
歌舞伎の中では〝40、50は鼻垂れ小僧〟と言われておりますから、
45歳になってやっと鼻垂れ小僧になってきたなというころなのですが(笑)
この(今回の公演)チラシも今日始めて見たのですが、若手がこんなにたくさんいると思ってビックリしました。
でも、中村鴈治郎兄さんや片岡亀蔵さんがいらっしゃるので安心して舞台に出られます。
やはり自分たちの経験してきたことを踏まえて、皆やることは同じなんですよね。
先輩たちもおっしゃっていましたが、自分はこういう風にしたから、
恐らくこうするだろうという風にやっていく。それが経験なので、
自分がわかる範囲で色々話し合っていきながら、また彼らから学ぶこともあるかもしれませんし、
そういう意味では先輩とか関係なく良い舞台を皆で作っていけたらと思っております。
―――若手が入ることで稽古場の雰囲気も変わるものですか?
◆片岡愛之助
そうですね。僕はどちらかというとそれぞれの役を楽しんで膨らませて欲しいと思うんですよ。
今回、初ミュージカル(『コメディ・トゥナイト』)のチャンスをいただき、
歌舞伎以外のお仕事をさせていただく時に、とても勉強になります。
もちろん皆さん真摯にがんばっていらっしゃいます。それ以上に歌舞伎だと役は決まっていますが、
それ以外のお芝居って、重要な役どころでも流動的な場合があるんです。
演出家はそこに出ている皆を見てこの人でいけるかな?と思う人に役をつけるんです。
そうなると若手の彼らが稽古を見る眼差しが半端じゃないんです。
例えば僕が仕事でこの日はどうしても行けないという場合、稽古をキャンセルします。
では代役入ってくださいとなったら、見てる誰もが台本を離して代役をしてくれるんです。
それくら一挙手一投足を勉強しようと真剣なんです。
そんな真摯なお稽古場の雰囲気をうちの弟子(片岡)愛一郎にも学びなさいと言っているんです。
そうやって人ってがんばって行くものなのですよね。
私はこういうチャンスをいただいた時、若手の皆に上から全部ああしなさいこうしなさいと
言って統率をとるのは簡単なんです。それをやりすぎると全部僕一色になってしまう。
彼らの思いやアイディアが出てきたりするので、ある意味自分らの役を膨らませていく
スペースを作ってあげること。それではみ出し過ぎたら、それはおかしいんとちゃうの?
と注意をすることにしているんです。そうすれば彼らも楽しみながら自分の役を膨らませていける。
そうすればお芝居の中でも、役を楽しみながら演じているのが、お客様に伝わると思うんですよね。
みんなのびのびと楽しんでお芝居ができれば、明日につながっていくんじゃないかなと思うんです。
座頭の責任はそういうものじゃないかと勉強させていただきました。
情報は書き込んだ時点のものですので、実際の内容と異なる場合があります。
あらかじめご了承下さい。