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ミュージカル回想録『HUNDRED DAYS』稽古場レポート 2020年02月

(2020年02月12日記載)

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ミュージカル回想録『HUNDRED DAYS』稽古場レポート


ミュージカル回想録『HUNDRED DAYS』あらすじ


実生活でも夫婦でありミュージシャンでもあるベンソンズのメンバー、
アビゲイル(木村花代)とショーン(藤岡正明)は、自分たちに実際に起こった話をベースに、
愛についての物語をミュージカルに仕上げた。 彼らは出会った瞬間互いに一目惚れし、
アビゲイルは当時付き合っていた婚約者同然だった彼と別れ、ショーンの家に転がり込む。
それが出会って2日目のことだ。
だから彼らは二人が互いに出会うまでにどんな人生を送ってきたかを確かめ合う必要があった。
アビゲイルは問題を抱えていた。15歳の頃、家族が離散したため、深い人間関係を作ることに極度の恐れを抱いていた。
ショーンは問題を抱えていた。牧師の息子として生まれ、教会の地下が世界の全てだったような彼は
あらゆるエゴを捨てることに全力を尽くすあまり、人との接触に苦手意識を持っていた。
しかしそんな問題を抱えていても互いを必要とする得体の知れない引力に抗う術はなく、
ショーンは唯一の友人であり幼馴染みであるマックスとの共同生活を断り、3週間後にアビゲイルと結婚するに至る。
ところがある事件をきっかけに、アビゲイルはショーンとの未来に恐怖を感じるようになる。
アビゲイルの夫は、余命100日しかないのだ。
絶望に沈むアビゲイルとそれを引き上げようとするショーン。
2人の冒険の行方は……

ミュージカル回想録『HUNDRED DAYS』稽古場レポート
(2020年2月4日 取材・文・写真:栗原晶子)


2月20日からシアターモリエール、3月4日から中野ザ・ポケットで計14公演上演される
ミュージカル回想録『HUDRED DAYS』の公開稽古を取材しました。

中央に2本のスタンドマイク、後方にピアノが置かれた稽古場。
本番はここにチェロ、ドラム、ベースが加わり、6人のバンドでミュージカル回想録『HUNDRED DAYS』は上演される。
実在するロックバンド、ベンソンズのフロントマン、ギターのショーンとボーカルのアビゲイルは実生活でも夫婦だ。
2人の人生やタイトルのHUDRED DAYSの意味を1ページずつめくるように、物語は進んでいく。
ショーンを演じるのは、多くのミュージカル作品でさまざまなタイプの役をこなし、
シンガーソングライターとしても活動を続ける藤岡正明さん。
昨年はミュージカル『いつか~one fine day』での好演も話題を呼んだ。
アビゲイルは、『ミス・サイゴン』や『メリー・ポピンズ』など多くのグランドミュージカルへの出演をはじめ、
ライブ活動も精力的に行う木村花代さんが演じる。
公開稽古が始まるほんの少し前、ギターをチューニングする藤岡さんのそばで、
パンキッシュで鮮やかな柄のワンピースに身を包んだ木村さんが床にしゃがみ込み、始まりを待っていた。
ストレッチをしたり、発声をしながら準備する場面を見ることが多いミュージカルのお稽古場とはすでに流れる空気が違うようだ。



アビゲイルの語りかけから始まるオープニング。
どうやらライブハウスのような距離感で初っ端から観客をカジュアルに巻き込んでいくらしい。
バンドメンバーの紹介とともに、結婚の誓いを歌うナンバー「♪誓い/Vows」。
藤岡さんと木村さんは正面を向き客席に向かって気持ちよく歌う。
それぞれがソロで歌う時は、パートナーの姿をチラリと視界に入れている。
もちろん、体はリズムに乗りながら。二人で声を合わせる時は、時折見つめあい、呼吸を合わせていた。
その様子でファミリーバンドのあたたかさと、2人が歌うのはラブソングなのだということにすぐに気づくことができる。

2曲目の「♪心のドア/My Skin Is Made of a Thousand Doors」は、アビゲイルがショーンに出会い、
彼に心のドアを開かれたシーンを歌った曲。その日の自分に身を委ねて、大きく息を吸い込むみたいに歌う
木村さんの表情が印象的なシーンだ。

つづけて、アビゲイルとショーンとのジェットコースター級に進展する関係が、テンポよく語られる。
ショーンのパーソナリティーが話し方や姿勢で伝わるのは、藤岡さんの確かな技術とこの役との相性の良さと言えそうだ。


そして二人が歌う「♪あなたを待つ/I will wait for you」は、
耳を澄ますように聞きたいソロからやがて祝祭のテンションへ。
全編を通じて二人の物語が紡がれていくが、一曲一曲の中にも物語が詰まっていてドラマチックだ。
歌詞に耳を澄ますのもいい、歌う彼らの表情を見つめるのもいい、そして演奏と歌声に体を預けるのもいい。
ミュージカルは五感で楽しむエンターテインメントだというが、
この作品はそれをストレートに体感できる作品になるのではないだろうか。

アビゲイルとショーンの語りには、しばしばバンドメンバーの短いセリフも入る。
きっとこれが二人の物語に読点のような役割を果たしてくれる。少しヘビーに感じたり、
難解に思えたりする話の途中で息をつかせてくれるような。
音楽監督の桑原まこさんも含めたバンドメンバーの演奏とセリフも楽しみにしたい。


4曲目の「♪偽りのパレードを抜け出して/Marching in the Wrong Parade」は、
ショーンの友だち、マックスが彼に書いた手紙を歌詞にしていてユニークだ。
この曲は、すでに公開されているPVで聞くことが出来る。
ショーンとアビゲイルが、渋谷の街中を歌いながら歩く姿はロックでカッコイイ。
出演した2人にその時の感想を聞いたところ、「むちゃくちゃ恥ずかしかったけど、気持ちよかった」と木村さん。
藤岡さんは「もう絶対やりたくない!」のだそう。そう聞いて、やっぱり気になった方はコチラをチェック!

<公式ホームページ movie>

もう一曲披露してくれたのは、タイトルチューンの「♪100日の奇跡/100days」。
二人がピアノを挟んで歌う姿に、この日の稽古にはまだ全員が参加していなかったものの、
バンドが一体となってこの曲を演奏する時のあふれるパワーが想像できた。
髪を振り乱し、ピョンピョンしながら歌い、アビゲイルとして生きる木村さんのカッコよさは、
これまでの作品では見せたことがない新たな姿だ。
ギターをかき鳴らす藤岡さんはアーティスト藤岡正明とショーンとしての姿が融合して独特の光を放つのだろう。


つづけて日本語上演台本・訳詞・演出を担当する板垣恭一さんも加わり質疑応答が行われた。
この作品との出会いや印象について、藤岡さんは「とても実験的で挑戦的な作品だと感じた」といい、
木村さんは「二人の物語を知って、なんて素敵な夫婦なんだろうと、台本の後半を読んだとき、
人目をはばからず泣いてしまったほどでした」と語った。

今作にお二人をキャスティングした理由について尋ねると

◆板垣恭一
「この役(アビゲイル)はブチ切れられる人じゃないとダメだねと、プロデューサーと話していて、だから花代ちゃん。
ショーンはギターが弾ける人じゃないとダメだから、誰がいいか探していたところ、
ちょうど前作の『いつか~one fine day』で藤岡君とご一緒していて、目の前にいるじゃん!ってことになりました(笑)。
ショーンの心根の優しさや繊細さを表現できるし、何よりギターが弾けるしね」

◆藤岡正明
「僕の勝手な印象なんだけど、花代さんって引っ越し好きじゃない?
僕は引っ越し嫌い、新天地嫌い、ビールも焼酎もずっと同じ銘柄が良くて、冒険しないタイプなんです。」

◆木村花代
「私、逆、逆」

◆藤岡正明
「そうでしょ?新しいことを求めている部分がある種アビゲイルの渇きや苦悩に近いと思って、
僕にはそういうのがないから、ショーンに近いのかなって。派手に見られるんですけど、僕、意外と地味なんですよ(笑)」

◆木村花代
「そうだね、私、同じことが嫌だ。新しいことにどんどん挑戦したいタイプ」 と分析してくれた。
本番に向けての意気込みを聞くと、

◆板垣恭一
「なんとなくではできない作品だし、冷や汗かかないと出来ない役。彼らの奮闘を祈るだけです。
トリッキーに役を演じることより、何もしていないように見えたらいいと思っています」

◆藤岡正明
「セリフはもちろんだけど、本番までにもっともっとブラッシュアップして、
ライブで起こるトラブルも楽しめるようなバンドになっていたいし、夫婦に見えていたい」

◆木村花代
「もっともっと彼女に向き合って、寄り添って、アビゲイルという人を理解してあげたいと思います」
最後にあえて言うならどんな方にこの作品を観に来て欲しいかという質問には、

◆板垣恭一
「ちょっとでも生きづらいなと感じたことがある人に観に来て欲しいです」

◆藤岡正明
「年配の方に観て欲しいです。50代以降、60代くらいの人に伝わるものがたくさんあると思うので」

◆木村花代
「孤独だなと感じている人、若い人にも多いかもしれないけれど、そういう方にふらっと観に来ていただいて、
人生ってなんだろうってアビゲイルと一緒に考えてもらえたら素敵だなって思います」

と答えてくれた。

ただのミュージカルでもないし、かといってライブでもない、
ミュージカル回想録とタイトルされている『HUNDRED DAYS』。
言葉と音楽と感情のシャワーを存分に浴びることが出来そうな予感がする新たな作品の開幕が待ち遠しい。

※なお、公式サイトでは、ザ・ベンソンズ・ジャパンによる『HUNDRED DAYS』の日本初演を記念して、
アンコール曲のリクエスト(ポップス限定)を受付中。
二人の声で聞きたい曲のリクエストは公式サイトのリクエストコーナーから。
https://www.consept-s.com/100days/

 

 

ミュージカル回想録『HUNDRED DAYS』

 

会期・会場:

2020年2月20日(木)~2月24日(月・祝)at.シアターモリエール

2020年3月4日(水)~3月8日(日)at.中野ザ・ポケット

 

日本語上演台本・訳詞・演出:板垣恭一

音楽監督:桑原まこ

出演:藤岡正明、木村花代

 

https://www.consept-s.com/100days/

 

 

 
 

情報は書き込んだ時点のものですので、実際の内容と異なる場合があります。
あらかじめご了承下さい。

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