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『楽屋―流れ去るものはやがてなつかしき―』に出演する
彩吹真央さん、小野妃香里さんのインタビュー
(左から)小野妃香里さん、彩吹真央さん
公演について(リリースより)
日本を代表する劇作家で、残念ながら今年4月に逝去した清水邦夫。
彼の残した作品群の中でも、特に人気が高いのが『楽屋―流れ去るものはやがてなつかしき―』。
チェーホフの『かもめ』を上演中の劇場の楽屋で繰り広げられる女優4人の会話劇は、
多くの演劇人たちに愛され、「日本で最も上演されている戯曲」とも言われています。
この名作に、主にミュージカルの世界で活躍する実力派女優4人、彩吹真央、大月さゆ、小野妃香里、木村花代が挑みます。
女優Cを演じる彩吹真央さんと、女優Aを演じる小野妃香里さんに話を伺いました。
彩吹真央さん、小野妃香里さんインタビュー(2021年5月27日 取材・文:平野祥恵)
――勝手ながら、仲のよいイメージがあるのですが、お互いの印象を教えてもらえますか。
◆彩吹真央
最初にご一緒したのはミュージカル『COCO』(2010年)。
そのあとに『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(2014年)、『ボクが死んだ日はハレ』(2019年)で共演しています。
◆小野妃香里
3回一緒にやっていて、今回で4回目ですね。
◆彩吹真央
私にとっては「おねえちゃん」です。『COCO』の時は私は宝塚をやめたばかりで、
女性を演じるのが初めてで、色々なことががんじがらめな時期でした。
あまり同じシーンはなかったのですが、秘書のひーさん(小野)が私を呼びに来てくれる一瞬の、
その背中がめちゃくちゃかっこよくて。私が若い女性の役だったということもあり「ついていきます!」って気持ちになりました。
そもそも稽古場からして、すらりとしたひーさんはとてもかっこよくて、それこそ「女優さんだ!」という印象があったんです。
頼りになるお姉さんだなという印象はその時からずっと変わらず、いまも頼りにさせていただいています。
◆小野妃香里
私も「ついていきます!」と思っているのですが(笑)。ゆみこ(彩吹)はポジティブなんですよね。
平気じゃなくても「やるよ!」って言うタイプ。私なんかは「やるよって言ってもさぁ……」と思うんだけれど、
ゆみこが言うと「あ、いけるかもね」って思える強さがある。基本、明るいし。
◆彩吹真央
そうかな~?
◆小野妃香里
最初に(宝塚から)外に出てきた瞬間を知っていて、退団したてのキラキラした感じを見ていて。
その次に少し迷っているのかも? という時期もあって、その後「あ、抜けたね」っていうのも見ているから。
……偉そうですみません(笑)。でもそんな共演経験があり、「ゆみこ」って呼ばせてもらっています。
――『楽屋』という作品に対しての印象は?
◆小野妃香里
私は最初にこの戯曲に出会ったのが、16、7歳の頃、ワークショップでやりました。
その時は「女優って怖いお仕事だな」と思ったのですが、いま改めて戯曲を読むと「全部わかる」(笑)。
いまふたたび出会ったことで、さらに面白さを感じています。
◆彩吹真央
私も戯曲の面白さを感じています。私たちがなりわいにしている“女優”という職業は、
板の上のパフォーマンスを見てもらって、満足していただくこと。でも、楽屋という、その裏側を見せる赤裸々感が、刺激的。
そしてそれを演じることで、自分たちの何があぶり出されていくのだろう、自分は何が表現できるんだろうと、そこが楽しみです。
――演じるのは、彩吹さんが女優C、小野さんが女優Aですね。それぞれの役を、現時点ではどう捉えていますか?
◆彩吹真央
Cは、4人の中では、普通に生きることができている人。
ただ、演じていて、彼女の人生の深みが私自身にはないなと痛感しています。
女優として生きる上でCが犠牲にしてきたもの、手放さざるを得なかったもの、挫折したことなどが、
私の人生の引き出しから引っ張り出しても、ぜんぜん足りない。そこをもっと埋めたいなと思っています。
◆小野妃香里
これまでのカンパニーなどを見ていても、Aは強くて、Bを引っ張って行っている人だと思っていたのですが、
実際にやってみると実はへなちょこなんだなと思っています(笑)。ただ、あまり執着心がなく、
“流されるままに”というところが、少し自分に似ているかも。
自分はこの4人の中でどのタイプかと訊かれたら、Aだなとは思います。
――ご自身も女優であるおふたりが、女優を演じる。いつもの役作りと違う部分はありますか?
◆小野妃香里
私、いまAのことを女優と思ってやっていないかもしれません。
私自身、鏡前にいる、ここでメイクをするということが日常茶飯事すぎて、あまり特別感がないというか。
私の普段もそうなのですが、「女優だから」というようなことを意識していないですね。
演じること、踊ること、歌うこと、(脚本を)書くこと、演出すること……
すべて「表現したいこと」であって、境目がそんなにないのかもしれません。
今回も女優を演じるというより、Aという人格に取り組んでいます。
◆彩吹真央
女優が女優を演じる機会ってなかなかないですよね。
Cは楽屋の中でセリフの練習を真剣にやっているのですが、それはつまり、舞台でやることを楽屋でやっている。
……ということをお客さんが見ている。
だからニーナのセリフを口にしている時は、何層にも虚構が重なっている構造になっています。
それに加え、素のCの部分もある。そこを明確にしないと、この作品の中のCの役割が曇ってしまうなと感じているところです。
ただそれは、自分が実際女優としてやっていて、生活もしているわけですから、普段の自分の中で使えるところは存分に使いたい。
普段の人間らしい部分の暴露と、女優として本気のスイッチが入っているところは、
私自身女優であるからこそ、ちゃんと伝わるようにしたいですね。
それは簡単なことではないとも思いますが、こんなことを舞台に乗せるのは初めてですし、ワクワクもしています。
思いっきり、満喫したいです。
◆小野妃香里
でも本当に有名な戯曲で、特に俳優さんはこのセリフをしゃべったことがある人もたくさんいる。
みんな知っているからこそ、この作品に取り組むのは最初はすごく怖かったです。
役のイメージがすでにあるだろうし「私だったらこう演じるな」という目で見る方もいらっしゃるだろうし。
◆彩吹真央
でも清水先生のこの戯曲は、女優というものに対する視線が辛辣でもあるんだけれど、いとおしさが散りばめられています。
役者じゃない人が観ても、共感してもらえる、愛してもらえる作品になればいいですよね。
私個人としては久しぶりに“密”なお芝居です。
少しずつ“蓄積”されていく感じが肌で感じられる創作過程が、いま、とても楽しいです。
◆小野妃香里
お芝居が出来るって、本当に楽しいですよね。
「楽屋 ー流れ去るものはやがてなつかしき」
作:清水邦夫
演出:稲葉賀恵(文学座)
出演:彩吹真央/大月さゆ/小野妃香里/木村花代(五十音順)
日程:2021年6月9日(水)~13日(日)
会場:博品館劇場
https://gakuya2021.tokyo/
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