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歌舞伎座『六月大歌舞伎』が開幕! 公演レポート、舞台写真掲載
歌舞伎座「六月大歌舞伎」 第二部 『桜姫東文章 下の巻』
左より、桜姫=坂東玉三郎、釣鐘権助=片岡仁左衛門 ⓒ松竹
公演レポート
第一部の序幕を飾るのは、『御摂勧進帳(ごひいきかんじんちょう)』。
歌舞伎十八番の『勧進帳』より以前につくられた作品で、
中村芝翫演じる武蔵坊弁慶が勇猛かつ稚気のある役柄として描かれる、
大らかな江戸歌舞伎の味わいに満ちた一幕です。
中村雀右衛門演じる主君・源義経を命懸けで守る弁慶の姿に心打たれた中村鴈治郎演じる富樫左衛門は、
義経一行と見破りながらも関所の通行を許します。
しかし、中村亀鶴演じる斎 藤次祐家の疑いは晴れません。
そこで一計を案じた弁慶は、松の木に縛られると、めそめそと子どものように泣き出しますが…。
一転、高らかに名乗りを上げ、勇猛な姿を現した弁慶は、番卒たちの首を次々に天水桶へ投げ入れます。
「芋洗い弁慶」と通称される通り、舞台中央の大きな天水桶の上に仁王立ちした弁慶が、
金剛杖で芋を洗うように番卒たちの首を掻き 回す場面は最大のみどころです。
江戸歌舞伎の大らかな雰囲気と、荒事の豪快さに満ち溢れ、客席からは大きな拍手が起こりました。
歌舞伎座「六月大歌舞伎」 第一部 『御摂勧進帳』
左より、源義経=中村雀右衛門、武蔵坊弁慶=中村芝翫、富樫左衛門=中村鴈治郎 ⓒ松竹
続いては、清元の舞踊
『夕顔棚(ゆうがおだな)』です。
のどかな田舎の風景のなか、夕涼みを楽しむ老夫婦を情感豊かに描いた秀作。
湯上がりの夕涼みを楽しむ尾上菊五郎演じる婆と、市川左團次演じる爺夫婦のもとに聞こえてくる盆踊りの唄。
昔を思い出して踊り出す婆に促され、爺も踊り出します。
そこへお揃いの浴衣姿でやって来た坂東巳之助演じる里の男と中村米吉演じる里の女が、
久しぶりの盆踊りに心躍る気持ちを若者らしく踊ってみせます。
婆がくしゃみをした拍子に飛ばしてしまった入れ歯を爺が探して拾う場面や、
二人で仲睦まじく頬を寄せ合う姿に客席の空気もほころびます。
のどかな田舎の景色の中、仲睦まじい老夫婦の情愛と初夏の風情が歌舞伎座いっぱいに広がり、安らぎを感じられる一幕となりました。
歌舞伎座「六月大歌舞伎」 第一部 『夕顔棚』
左より、婆=尾上菊五郎、爺=市川左團次 ⓒ松竹
第二部は、
『桜姫東文章 下の巻(さくらひめあずまぶんしょう げのまき)』。
清玄と釣鐘権助、白菊丸と桜姫の役を、実に36年ぶりとなる人気の配役で上演し大きな話題となった
4月公演の「上の巻」に続き、当月は「下の巻」として上演。
当月も片岡仁左衛 門が清玄と権助を、坂東玉三郎が桜姫を勤め、チケットは発売開始早々に完売となる盛況ぶり。
「大南北」と称される四世鶴屋南北の鬼才が余すことなく発揮される名作をご覧いただきます。
清玄の桜姫への妄執、中村歌六演じる残月と上村吉弥演じる長浦による清玄殺し、
桜姫と権助の再会、下級娼婦となった桜姫の悪婆さながらの台詞とお姫様の言葉遣いが入り混じった台詞など、
見どころ満載で息もつかせぬ展開が続きます。
仁左衛門と玉三郎が魅せる、四世鶴屋南北ならではの退廃的で残酷な美の世界にご期待ください。
4月に引き続き、昭和57年2月南座公演に向けて大倉舜二によって撮影され、当時話題となったスチール写真が、
“復刻版”として特別ポスターでよみがえります。特別ポスタ ーは劇場売店やネットで販売しています。
https://www.kabuki-bito.jp/news/6748/
歌舞伎座「六月大歌舞伎」 第二部 『桜姫東文章 下の巻』
左より、桜姫=坂東玉三郎、清玄=片岡仁左衛門 ⓒ松竹
歌舞伎座「六月大歌舞伎」 第二部 『桜姫東文章 下の巻』
左より、釣鐘権助=片岡仁左衛門、桜姫=坂東玉三郎 ⓒ松竹
歌舞伎座「六月大歌舞伎」 第二部 『桜姫東文章 下の巻』
左より、釣鐘権助=片岡仁左衛門、桜姫=坂東玉三郎 ⓒ松竹
第三部は、
『京人形(きょうにんぎょう)』で幕を開けます。
松本白鸚が演じる左甚五郎は名高い彫物師。廓で見染めた花魁の車太夫が忘れられず、生き写しの京人形を彫り上げます。
市川高麗蔵演じる女房のおとくに仲居の役をさせてお大尽気分で酒を飲んでいると、
市川染五郎演じる京人形が不思議なことに動き始め…。
劇場空間を支配する白鸚の硬軟自在な姿は圧巻です。白鸚の孫・染五郎は、本作で初めて本格的な女方を勤めます。
京人形の精の懐に太夫の鏡を入れると女らしく踊り、鏡を取り上げると男らしい仕草に戻ってしまう切り替わりが楽しく、
甚五郎が右腕を斬りつけられながらも左腕一本で大工道具を用いて大工たちを追い払う粋な立廻りまで、
高麗屋の競演でおくる見どころの多い華やかな舞台をお楽しみいただきます。
歌舞伎座「六月大歌舞伎」 第三部 『京人形』
左より、左甚五郎=松本白鸚、京人形の精=市川染五郎 ⓒ松竹
続いては、
『日蓮(にちれん)』。
主演の市川猿之助が、構成・脚本の横内謙介とともに演出を勤め、「日蓮聖人降誕八百年」 を記念して上演される一幕です。
戦乱が続き、地震や津波といった天災が相次いだ鎌倉時代。飢餓や疫病が流行り、混乱を極める中、
人々が救われぬ世に疑問を抱いた蓮長が、強い信念を胸に「日蓮」へと名を改めるまでがドラマティックに描き出されます。
先日の取材会に出席した猿之助は、日蓮の強い信念や世の中に対しての憤りは「根本には愛があります」と語り、
日蓮が生きた時代とコロナ渦にある現在の状況に重なる部分があるとしながら、「心に沁みる芝居を」と意気込みを語りました。
若き日の日蓮が自らの心の内と向き合い、男女貴賤、貧富身分に差別なく、誰もが皆幸せに暮らす世を創り上げるため、
愛情を持って信念を貫く姿が描き出され、この憂き世に希望の光を照らすこと間違いなし。
本日初日より、今月の公演に合わせた特別ポスターが作られ、劇場売店やネット販売が行われています。
https://www.kabuki-bito.jp/news/6807/
歌舞伎座「六月大歌舞伎」 第三部 『日蓮』
左より、阿修羅天=市川猿弥、善日丸=市川右近、賤女おどろ=市川笑三郎、蓮長後に日蓮=市川猿之助 ⓒ松竹
歌舞伎座「六月大歌舞伎」 第三部 『日蓮』
左より、蓮長後に日蓮=市川猿之助、成弁後に日昭=中村隼人 ⓒ松竹
歌舞伎座「六月大歌舞伎」 第三部 『日蓮』
蓮長後に日蓮=市川猿之助 ⓒ松竹
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