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ミュージカル『GREY』主演 矢田悠祐さん、演出家 板垣恭一さんインタビュー
日本ミュージカル界大注目のコンビ、板垣恭一(脚本)と
桑原まこ(音楽)による初の書き下ろし完全オリジナル新作が、
2021年12月に俳優座劇場で開幕!
リアリティ番組に出演していた新人歌手が自殺した。
なぜそれは起きたのかの顛末を、エモーショナルな楽曲に乗せて送る群像ミュージカル。
藍生(あおい/矢田悠祐)は小説家志望で構成作家。欠員の出た番組に、学生時代のバンド仲間
shiro(しろ/佐藤彩香)を推薦する。
同じくバンド仲間だったカメラマン金銀(きらり/竹内將人)はそんな展開を喜びつつも心配げ。
番組プロデューサー橙(ともる/遠山裕介)や、局アナの茜(あかね/梅田彩佳)に可愛がられ、
shiroはたちまち人気者になる。
しかし番組スポンサーの一押しタレントより目立ち過ぎるという問題が起きる。
一方、テレビ局の報道局員、紫(ゆかり/高橋由美子)はshiroに別の思いを持っていた。
彼女は三年前に交通事故で亡くした娘みどりと似ているのだ。
紫の別れた夫で、番組を作った広告代理店の局担当、黒岩(羽場裕一)は番組存続のため
shiroの人気を下げる命令を現場に下す。皮肉なことにその責任が藍生に回って来ることで、物語は動き出す。
2021年12月16日から26日まで俳優座劇場にて上演されるconSeptによるミュージカル・ドラマシリーズ第6弾『GREY』。
精力的に舞台出演を続ける主演の矢田悠祐さんと、
本作の脚本・作詞・演出を手がける板垣恭一さんに
『GREY』に関するキーワードをピックアップしながら作品に向けての思いをお話いただきました。
ーーー 『GREY』は書き下ろしの完全オリジナル新作ですが、まずは作品の着想からお聞かせください。
◆板垣恭一
現代劇を作りたいと思っていたんです。conSeptの作品として
2019年に初演、今年再演された『いつか~one fine day』は韓国映画が原作でしたが、
オリジナルの登場人物も加えて作り上げた現代劇でした。
これを踏まえて、次は完全オリジナル作品が作りたいと宋プロデューサーと話を進めてきました。
現代劇を作りたいと思った理由は、今の演劇の世界が現代から目を背けすぎていないかと思っているから。
多くのお客様に気軽に観てもらえる現代劇が少ない気がしています。
僕が見てきた先輩方は、ちゃんと現代とエンタメを結び付けて、社会問題も練り込んだ作品を作っていたと思うんです。
井上ひさしさんしかり、つかこうへいさんしかり……。
90年代に入って作品の傾向は個人的な話と歴史大河ロマンに二極化したように思います。
数年前に二兎社が『ザ・空気』という現代劇を上演しましたが、これがとてもいい作品で、
お客様が多く観に来られていたんですよね。その事実もとても僕自身に刺さりました。
実は現代劇って求められているんじゃないかなと。
『GREY』はリアリティー番組に出演した若者がSNSの誹謗中傷によって自殺するという物語です。
架空の話ですが、皆が知っている事件などを組み合わせています。
こういう題材を真っ直ぐやってみようかなと思ったのが今作の着想の源です。
ーーー作品にはSNSが大きく取り上げられますが、今や皆さんにとってもSNSはとても身近なツールです。
どのように向き合い、どのように活用されていますか?
◆矢田悠祐
SNSは今の時代では必要不可欠なものだと思います。手軽に自分のことを知ってもらえますし、
発信したい情報を広げやすい、何かを介さなくてもストレートに届けられるのが利点です。
一方で、どこの誰かもわからない人の意見が簡単に目に入ったり、SNSがなかったら知る由もないことが
自分に届いてしまうという点は、自分の使い方が正しい正しくないに関わらず起こりうることで怖いですよね。
とはいえ、この先SNSなしで生きるっていうことは無理かなと思うので、難しいところです。
僕自身は発信に関しては、かなり注意深いほうだと思います。
もしかしたら、気をつけすぎて無難な発信になっているかもしれません。
◆板垣恭一
SNSって誰もが「何か言った気になれちゃうメディア」なんじゃないかと思っています。
「何か言った気にさせちゃえ」と思った人がいて、「誰が書いていい新聞の投書欄」のようなものを発明したんだと思います。
受け手がいる限りは自分の心のままに喋っているようでいて、「いいね」がつきやすいとか、
共感されやすい方に流れてしまいがちなんですよね。だからよほど強い意志を持ってコントロールしない限り、
自分の思ったことを言っているようで言わされちゃうという危険性を感じます。
この作品でも書きましたが、なぜバッシングが起きるのかと言うと、ほぼ間違いなく書いている人は、
正義の裏付けを探しながら人を叩いている。「皆が叩いているからいいと思った」というのはその典型で、
誰も裏なんて取らずに叩いているんですよね。匿名性のメディアの怖さです。
本来であれば発信するなら記名性にするべきものですよね。
ーーー作品のタイトル『GREY』からイメージすることを教えてください。
◆矢田悠祐
気分がグレイであることが多いかなと思っています。今、ありがたいことに舞台に続けて出演させていただいていますが、
コロナ禍でさまざまな条件もありますし、やはり閉塞感は続いているので。
稽古に入る前の今は、グレイと聞くとそんなイメージを抱いてしまいますし、
周りの皆さんもそう感じている人は多いんじゃないかなと思います。
◆板垣恭一
「グレイ=灰色」なんですけど、灰色と言ってしまうと世界はとても限定的になってしまう。
でも「白と黒の間」と言えば無限の灰色を表現できると思うんです。歌詞にも出てきますが、人生は白黒つくものじゃない、
だからすべての人の人生は白と黒の間にある。限りなく白に近い灰色もあれば、その逆もある。
だから矢田君が言ってくれたような、暗中模索の霧の中のようなネガティブな意味も込めながらも
グレイには無限の可能性もある……、そんな意味をタイトルにしています。
◆矢田悠祐
白と黒の間といえば、昔、アルバイト先の服屋の先輩が、いろんな濃さのグレイを組み合わせて
全身グレイでコーディネートしていてめちゃくちゃカッコよかったんですよね。
それを真似して僕もグレイの服をよく着ていたのを思い出しました。
ーーー今作は7人の登場人物による群像劇ですが、作品を作る上で心がけていることや、
群像劇を演じる上で意識することがあればお聞かせください。
◆板垣恭一
単純に群像劇が好きで、物語っていうのはいろんな人間がいて、それぞれに人生があり正義があるんだと言いたい。
だから利害関係がバッティングするような関係を組み込んでいきます。
全員がその場に対して間違ったことをしているわけではないのに、
集まるとヤバイことが起きたりする、これは僕たちが日常で体験していることでもあるかなと思うんです。
今回も学生時代の仲間との間に利害関係があるから事件が起きていく。どっちが正しいかといえば、どっちも正しい。
7人の登場人物に7つの正義をつけたいんです。
◆矢田悠祐
特に群像劇だからと構えて演じることはないかもしれないですね。
でも僕、役に向き合う時、常にしんどくないとおかしいなと思っちゃうタイプなんです。
◆板垣恭一
あ、それ、変態だ!(笑)。
◆矢田悠祐
(設定が過酷だったり)しんどい作品をたくさんやってきたからなのかもしれないですけど、
自分に負荷がかかる部分を探しながら役に向き合いますね。
群像劇では、それぞれの人物の考えていることや、経験してきたことが絡み合ってはじけたりする瞬間が観ていて納得できたり、
気持ちが動くと思うので、その交差する部分を大切にしながら演じることを心がけています。
ミュージカル『GREY』
日程:2021年12月16日(木)〜26日(日)
会場:俳優座劇場
脚本・作詞:板垣恭一
作曲・音楽監督:桑原まこ
出演者:矢田悠祐 高橋由美子
佐藤彩香 竹内將人 梅田彩佳 遠山裕介 羽場裕一
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