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歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」が開幕!公演レポート、舞台写真掲載
第三部『弁天娘女男白浪』前列左より、南郷力丸=坂東巳之助、弁天小僧菊之助=尾上右近、
後列左より、浜松屋倅宗之助=中村福之助、浜松屋幸兵衛=中村東蔵、日本駄右衛門=坂東彦三郎
提供ⓒ松竹
公演概要(リリースより)
5月2日(月)から「團菊祭五月大歌舞伎」(5月2日初日〜27日千穐楽 休演日:10、19日)を開催いたします。
尾上菊五郎、中村梅玉はじめ充実の出演者が顔を揃え、三部制で初夏にふさわしい多彩な演目が並びます。
歌舞伎座では引き続きお客様に安心して歌舞伎をお楽しみいただけるよう、
換気や消毒を徹底するなど感染予防対策に万全を期して上演しています。
公演レポート
第一部は、時代物の傑作『祇園祭礼信仰記 金閣寺』で幕を開けます。
「国崩し」と呼ばれるスケールの大きな敵役の松永大膳に尾上松緑、歌舞伎の「三姫」と呼ばれる女方の大役・雪姫に中村雀右衛門、
颯爽とした捌き役の此下東吉には今回が初役となる片岡愛之助、金閣寺に幽閉されている将軍の母慶寿院尼に中村福助。
大膳の弟鬼藤太は松 緑の息子・尾上左近が勤めます。多彩な登場人物が繰り広げる絢爛豪華な一幕に、
開演前から期待が高まります。
時代は戦国時代、春爛漫の桜が咲き誇る金閣寺。物語は、松緑勤める松永大膳が、弟の鬼藤太 と碁を打つ場面から始まります。
天下をもくろむ大膳は、金閣寺に将軍の母慶寿院尼と横恋慕する雪姫を幽閉している敵役。
松緑が放つ役の大きさと色気に客席は一気に作品の世界に引き込まれます。
そこへ敵方の愛之助演じる東吉が現れ、大膳への奉公を願い出ます。智将が描く知略とは…。
今回叔父の片岡仁左衛門に役を教わったという愛之助は、筋書のインタビューで「東吉は爽やかさが必要な生締めの捌き役」と
語っているように、颯爽とした姿で観客を魅了します。
一方、雀右衛門演じる雪姫は、大膳に絵師である夫に代わって金閣寺の天井に龍を描くか、
自分の意に従うかと迫られ窮地に立たされます。それを拒むと桜の木に縛り付けられ、さらに夫は処刑を命じられてしまいます。
嘆き悲しむ雪姫が、降りしきる花びらを集めて爪先で鼠を描く場面は、本作最大の見どころ。雀右衛門が雪姫を勤めるのは、
雀右衛門襲名以来約6年ぶり。悲しみにくれる雪姫の健気さと美しさに客席の視線は釘付けとなりました。
さらに東吉が慶寿院尼を救い出す場面で、昨年9月歌舞伎座公演『お江戸みやげ』以来の歌舞伎座出演となる
福助が気品溢れる姿で登場すると、場内は割れんばかりの拍手に包まれました。絢爛豪華な時代物の魅力が発散される舞台に
ご期待ください。
第一部『祇園祭礼信仰記』左より、此下東吉後に真柴久吉=片岡愛之助、松永鬼藤太=尾上左近、松永大膳=尾上松緑
提供ⓒ松竹
第一部『祇園祭礼信仰記』雪姫=中村雀右衛門
提供ⓒ松竹
第一部『祇園祭礼信仰記』左より、十河軍平実は佐藤正清=坂東亀蔵、松永大膳=尾上松緑、此下東吉後に真柴久吉=片岡愛之助
提供ⓒ松竹
『金閣寺』特別ポスターも劇場ほかにて販売中です。
https://www.kabuki-bito.jp/news/7498
続いて、華やかな舞踊
『あやめ浴衣』で打ち出しとなります。菖蒲の花が一面に咲く、端午の節句の頃。美しい景色の中、
あやめ売り(坂東新悟)、船頭(中村鷹之資)、町娘(中村玉太郎)、水売り(中村歌之助)らが賑やかに踊ります。
そこへ現れた中村魁春演じる芸者が艶やかな様子で舞い踊り、やがて皆で隅田川の舟遊びの様子を見せていきます。
この季節に相応しい一幕に、場内に爽やかな雰囲気が満ち溢れました。
第一部『あやめ浴衣』左より、船頭=中村鷹之資、町娘=中村玉太郎、芸者=中村魁春、あやめ売り=坂東新悟、水売り=中村歌之助
提供ⓒ松竹
* * *
第二部の幕開けは、歌舞伎十八番のひとつ
『暫』。
市川海老蔵が、江戸時代から人々の心を魅了し続けてきた英雄・鎌倉権五郎として、
昨年7月以来10か月ぶりに歌舞伎座の舞台に立ちます。海老蔵は筋書のインタビューで「父との思い出、成田屋の大切な演目、
荒事であるということを胸に、当代の海老蔵として一所懸命に勤め、2022年の『團菊祭』に相応しい『暫』になるようにしたい、
そんな強い気持ちを抱いています」と想いを述べています。舞台は早春の鶴ケ岡八幡宮。
市川左團次勤める清原武衡が、周囲を睥睨しています。
これに従う中村又五郎勤めるなまず坊主の鹿島入道震斎、片岡孝太郎勤める那須九郎妹照葉、市川右團次勤める家臣の東金太郎など、
特徴に富んだ役柄が舞台にずらりと並び、歌舞伎ならではの色彩美に溢れます。
武衡が、意に従わぬ中村錦之助勤める加茂次郎らの首を刎ねるよう命じたその時…揚幕内より「暫く、暫く」と響く大音声。
その声に、客席のボルテージが高まっていきます。衣裳、かつら、太刀諸々合わせて約60キロを身にまとった鎌倉権五郎が
花道に勇ましい姿を現すと、満席となった客席からは待ってましたとばかりに万雷の拍手が送られ、
権五郎が花道を進む間鳴り止みません。そして花道で本作の見どころである雄弁なツラネを披露。
「一年ぶりの歌舞伎座にて、お目見得叶う身の喜び、オリンピックの開会式より、一年ぶりのこの扮装(こしらえ)、十八番の筋隈に、
すじをとおすは親父譲り親父の口まね口拍子ちったァ似たか三なずび……」という台詞を披露し、場内を沸かせます。
見事に悪人たちを退けた権五郎は、最後に1人花道に残ると、豪快な六方で花道を引っ込み、
会場の盛り上がりは最高潮となる中、幕を閉じました。
第二部『暫』全景(花道)鎌倉権五郎=市川海老蔵
提供ⓒ松竹
第二部『暫』前列左より、加茂次郎=中村錦之助、鎌倉権五郎=市川海老蔵、
後列左より、東金太郎=市川右團次、成田五郎=市川男女蔵、清原武衡=市川左團次
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続いては、松羽目物の名作
『土蜘』です。音羽屋の家の芸である新古演劇十種のひとつで、変化に富んだ舞踊劇。
尾上菊五郎が源頼光、尾上菊之助が叡山の僧智籌実は土蜘の精、尾上丑之助が太刀持音若を勤めます。
昭和62(1987)年6月歌舞伎座では、七世尾上梅幸の源頼光、菊五郎の叡山の僧智籌実は土蜘の精、
菊之助(当時丑之助)の太刀持音若という配役で上演されており、それ以来35年ぶりとなる音羽屋三代による
『土蜘』上演となります。
さらに今回は、中村時蔵の侍女胡蝶、中村梅枝の巫子榊、小川大晴の石神実は小姓四郎吾と、萬屋三代も出演。
親子孫の三代が同じ舞台に二組出演することでも話題の舞台です。幕が開くと、病床に伏せる源頼光(菊五郎)の館へ、
忽然と姿を現す叡山の僧智籌(菊之助)。その本性は実は土蜘の精で、頼光の命を狙っています。
音もさせず、いつの間にか花道に佇む智籌の出は妖しさが漂い、場内も緊迫した空気に包まれます。
異形の恐ろしさを持つ智籌と気品あふれる頼光の対峙は見どころのひとつ。
また、太刀持音若(丑之助)は、智籌の妖しさにいち早く気づく重要な役どころです。頼光に「ご油断あるな」と伝える
堂々とした姿に、客席の視線は釘付けとなりました。後半には本性を顕した土蜘の精が、豪快な立廻りを繰り広げます。
土蜘の精が千筋の糸を鮮やかに繰り出すと、歌舞伎座は華やかな雰囲気に包まれました。
第二部『土蜘』左より、叡山の僧智籌実は土蜘の精=尾上菊之助、太刀持音若=尾上丑之助、源頼光=尾上菊五郎
提供ⓒ松竹
第二部『土蜘』左より、源頼光=尾上菊五郎、叡山の僧智籌実は土蜘の精=尾上菊之助 提供ⓒ松竹
第二部『土蜘』左より、
坂田公時=中村種之助、平井保昌=中村又五郎、叡山の僧智籌実は土蜘の精=尾上菊之助、渡辺綱=中村歌昇 提供ⓒ松竹
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第三部は
『市原野のだんまり』で幕を開けます。
舞台は、都のはずれの市原野。秋草が美しく月光に照らされる満月の宵に、景色に魅せられた
中村梅玉勤める平井保昌が笛を吹きながら歩いています。その様子を中村隼人勤める盗賊の袴垂保輔、
さらに牛の皮を被った中村莟玉勤める鬼童丸が窺います。
互いに闇の中で探り合う様子を描いた本作は、「今昔物語」の中にある話を題材にした舞踊劇です。
本興行では18年ぶりの上演。梅玉は、筋書のインタビューで「古風な風情を楽しんでいただけたらと思います」と語り、
「保昌は“受け身”ですので、日頃から可愛がっている隼人君、うちの莟玉には頑張ってもらい、
きっちりと攻めてきてもらいたいですね」と花形俳優2人に期待を寄せます。
歌舞伎ならではの様式美に満ちた「だんまり」が美しい情景を際立たせる一幕です。
第三部『市原野のだんまり』左より、平井保昌=中村梅玉、袴垂保輔=中村隼人
提供ⓒ松竹
第三部『市原野のだんまり』左より、袴垂保輔=中村隼人、鬼童丸=中村莟玉、平井保昌=中村梅玉
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続いて、
『弁天娘女男白浪』。
鎌倉雪の下の浜松屋に、尾上右近演じる美しい武家の娘(実は弁天小僧菊之助)が、
坂東巳之助演じる供の若党四十八(実は南郷力丸)を連れ立ってやって来ます。
娘は婚礼の品物を選ぶうちに万引きをしたとの疑いをかけられ、打ち据えられてしまいますが、
万引きは誤解だったことが知れると、中村東蔵演じる浜松屋幸兵衛から詫びの百両を手に入れます。
金を手にして悠々と立ち去ろうとする娘と四十八。しかし、そんな二人の前に坂東彦三郎演じる
玉島逸当(実は日本駄右衛門)と名乗る侍が現れ、娘の正体が明らかに…。名作者・河竹黙阿弥による人気作。
当月は、尾上右近が自主公演で勤めて以来、歌舞伎座では初めて弁天小僧菊之助を演じる話題の舞台。
右近は、本性がばれた菊之助の「知らざあ言ってきかせやしょう」という七五調の名台詞を、粋に溌溂と披露。
その後、花道で見せる南郷力丸との息の合ったやり取りも見どころです。
右近が取材会で、「弁天は不良の役。なので真面目になりすぎないよう、役を大事にしながらも、自由にやりたい。
自分が演じることを楽しむことで、お客様にも楽しんでいただきたいです」と語った通り、
傍若無人な二人の様子は魅力たっぷりで、客席は作品の世界観に引き込まれます。
続く「稲瀬川」の場では、揃いの小袖を着て「志ら浪」の傘を持った五人男(弁天小僧菊之助=尾上右近、南郷力丸=坂東巳之助、
忠信利平=中村隼人、赤星十三郎=中村米吉、日本駄右衛門=坂東彦三郎)が花道に勢揃い。
華やかな雰囲気が場内いっぱいに広がります。それぞれが手にした番傘を捌きながら名乗りを上げる場面は、
錦絵にも描かれる五人の姿と、役にはめてつくられた唄や囃子に酔いしれる名場面。
清新な顔合わせならではのエネルギッシュな五人男の姿に、客席からは拍手が鳴り止みませんでした。
第三部『弁天娘女男白浪』前列左より、南郷力丸=坂東巳之助、弁天小僧菊之助=尾上右近、
後列左より、浜松屋倅宗之助=中村福之助、浜松屋幸兵衛=中村東蔵、日本駄右衛門=坂東彦三郎
提供ⓒ松竹
第三部『弁天娘女男白浪』左より、
日本駄右衛門=坂東彦三郎、南郷力丸=坂東巳之助、赤星十三郎=中村米吉、忠信利平=中村隼人、弁天小僧菊之助=尾上右近
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第三部『弁天娘女男白浪』左より、
南郷力丸=坂東巳之助、赤星十三郎=中村米吉、日本駄右衛門=坂東彦三郎、忠信利平=中村隼人、弁天小僧菊之助=尾上右近
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『弁天娘女男白浪』特別ポスターも劇場ほかにて販売中です。
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