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歌舞伎座新開場十周年「二月大歌舞伎」開幕!公演レポート、舞台写真掲載
★各演目写真及び内容に触れておりますので、ご観劇前の方はご注意ください。★
第三部『霊験亀山鉾』左より
石井下部袖介=中村芝翫、源之丞女房お松=片岡孝太郎、石井源次郎=中村種太郎
藤田水右衛門=片岡仁左衛門、掛塚官兵衛=中村鴈治郎
提供ⓒ松竹
公演概要(リリースより)
2月2日(木)から「二月大歌舞伎」(2月2日初日〜25日千穐楽 休演日:10日、20 日)が開幕しました。
片岡仁左衛門をはじめ充実の顔ぶれで、彩り豊かな演目を上演いたします。
公演レポート
第一部は、河竹黙阿弥作『三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)』。
幕末から明治時代にかけて活躍し、本年没後 130 年を迎えた名作者・河竹黙阿弥は、生涯360もの作品を世に送り出しました。
中でも、盗賊が活躍する「白浪物」を得意とした 黙阿弥が、同じ「吉三」の名を持つ三人の盗賊と百両の金を巡る因果話を、
独特の絵画美 と叙情美豊かに描き出した代表作のひとつです。
今月はすでに定評のある尾上松緑の和尚吉三、片岡愛之助のお坊吉三、中村七之助のお嬢吉三の配役で、
単独して上演されることの多いお馴染みの「大川端庚申塚」からドラマティックな「吉祥院」、大詰「本郷火の見櫓」まで、
巧みに趣向が凝らされた通し狂言のうち、見どころ溢れる三幕五場を抜粋した構成での上演です。
節分の夜更け。大川(隅田川)の川端にある庚申塚で、女に化けて盗みを働きをするお嬢吉三(七之助)が、
夜鷹のおとせ(中村壱太郎)から百両の金を奪い取ります。道を尋ねるふりをして華麗に盗みを働くお嬢(七之助)が
「月もおぼろに白魚の…」から始まり「こいつぁ春から縁起がいいわえ」でしまる黙阿弥独特の七五調の名台詞を披露すると、
季節にぴったりの心地よい七五調の響きが、観客を一気に作品の世界へと引き込みます。
御家人崩れの悪党、お坊吉三(愛之助)が駕籠の中から現れ、お嬢吉三と百両の金を巡って争うと、その二人の仲裁に入ったのは、
吉祥院の所化あがりの盗賊・和尚吉三(松緑)。貫禄ある和尚吉三の取りなしにより、同じ「吉三」の名を名乗る縁から
義兄弟の契りを結ぶことになります。この「大川端」での出会いを発端に、悪事を重ね、追われる身となった三人は、
見えない糸で繋がっているかの如く、百両の金と名刀庚申丸を巡って数奇な運 命に導かれていきます…。
筋書の聞き書きでは松緑が「この三人でどういう科学反応が起こるか楽しみです」と語っているように
松緑、愛之助、七之助が織り成す三人三様の盗賊の姿が観客の心を掴み、大きな拍手に包まれるなか幕を閉じました。
幕末の退廃的な世相や、刹那的な美しさが色 濃く描き出された傑作にご注目ください。
第一部『三人吉三巴白浪』左より
お嬢吉三=中村七之助、和尚吉三=尾上松緑、お坊吉三=片岡愛之助
提供ⓒ松竹
第一部『三人吉三巴白浪』左より
お嬢吉三=中村七之助、和尚吉三=尾上松緑、お坊吉三=片岡愛之助
提供ⓒ松竹
第一部『三人吉三巴白浪』左より
お嬢吉三=中村七之助、和尚吉三=尾上松緑、お坊吉三=片岡愛之助
提供ⓒ松竹
第二部は、清元の舞踊
『女車引』。
歌舞伎三大名作の一つ『菅原伝授手習鑑』より、松王丸、梅王丸、桜丸の三つ子の兄弟が敵味方に分かれて
御所車を引き合うひと幕「車引」。本作は、その名場面をそれぞれの女房に置き替えた趣向の一幕です。
京の吉田神社の社頭で出会ったのは、松王丸の妻・千代(中村魁春)、梅王丸の妻・春(中 村雀右衛門)、
桜丸の妻・八重(中村七之助)。幕が開き、まずは花道から春(雀右衛門)、と八重(七之助)が姿を現すと、
場内がぱっと明るく華やぎます。続いて、上手から千代 (魁春)が現れ、三人は舎人である夫の仕事着を着て、
車を引き合う様子を見せていきます。さらに「賀の祝」の料理を支度する様子を仲良く朗らかに踊り始める女房たち。
仲良く舞う姿は陽気で楽しく、春を待ちわびるこの季節に相応しい一幕です。
第二部『女車引』左より
八重=中村七之助、千代=中村魁春、春=中村雀右衛門
提供ⓒ松竹
続いて、五世中村富十郎十三回忌追善狂言として上演する、新歌舞伎十八番の内
『船弁慶』です。
踊りの名手と言われた富十郎が得意とし、生涯をかけて演じた『船弁慶』の静御前と平知盛の霊を、
このたびは長男である中村鷹之資が本興行で初めて勤めます。
昨年、自身の勉強会「翔之會」で初めて同役を勤めたことを振り返り、「お稽古で行き詰まったとき、
夜中に父の映像を見ながら稽古をしていたのですが、ふと父はここに至るまでどれだけ長い年月をかけて、
試行錯誤をしたのだろうと、その歳月や父の思いに感動して、涙が止まらなくなってしまいました。」と明かした鷹之資。
今回の公演を、「1日1日を大切に、自分の『船弁慶』を深めていけたら」と語っています。
兄の頼朝に疎まれ、都を追われて九州を目指す源義経(中村扇雀)と武蔵坊弁慶(中村又五郎)ら家来一行は、
大物浦まで同道してきた静御前(鷹之資)に都へ帰るようにと告げると、静は悲しみを堪え、都名所を詠みこんだ舞を舞い始めます。
前半の見どころである「都名所」の舞からは、しなやかな動きの一つ一つに義経への想いが溢れ、観客の視線を引き込んでいきます。
やがて、舟長三保太夫(尾上松緑)の音頭で漕ぎ出した一行の前に、義経に滅ぼされた平知盛の霊(鷹之資、二役目)が
恨みを晴らそうと凄まじい勢いで迫りきます。知盛の霊と義経主従が対峙する場面は緊迫感に溢れ、
弁慶に祈り伏せられた知盛の霊の花道の引っ込みは、渦潮とともに水底へ姿を消す壮絶な様子を描いています。
約2メートルにもおよぶ大きな長刀を華麗に振りかざす知盛。その大きさに、万雷の拍手が響き渡りました。
歌舞伎座場内 1 階ロビーには、五世中村富十郎十三回忌追善の祭壇が飾られ、懐かしそ うに写真を眺めたり、
手を合わせるお客様の姿も見られました。
第二部『船弁慶』左より
武蔵坊弁慶=中村又五郎、静御前=中村鷹之資、伊勢三郎=澤村宗之助、源義経=中村扇雀、亀井六郎=中村松江
提供ⓒ松竹
第二部『船弁慶』左より
平知盛の霊=中村鷹之資
提供ⓒ松竹
第三部は、片岡仁左衛門が一世一代で勤める話題作、四世鶴屋南北の
『霊験亀山鉾(れいげんかめやまほこ)』を通し狂言として上演。
元禄年間に実際に起きた仇討ち事件(「亀山の仇討」)が題材で、仇による“返り討ち”を描いた異色の物語です。
平成 14(2002)年に初めて演じ、藤田水右衛門と隠亡の八郎兵衛の二役を当り役とする仁左衛門は、
今回の上演では監修もつとめ、「片岡仁左衛門一世一代にて相勤め申し候」と銘打ち、本作を演じ納めます。
歌舞伎座で初めての上演となる、鶴屋南北の仇討ち物の傑作にご注目ください。
序幕は、甲州石和宿のはずれ。兄を闇討ちした藤田水右衛門(片岡仁左衛門)と巡り合った遠州浜名の家中、
石井兵介(坂東亀蔵)が仇討ちを行うとあって町人たちが噂しています。いよいよその刻限となっても余裕綽々の様子を見せる
水右衛門は、仇討ちを前に交わす水盃に毒薬を仕込むという卑怯なやり口で兵介を殺害。
開幕直後から、仁左衛門演じる水右衛門が放つ“悪の魅力”が、観客の視線を釘付けに。
さらに、水右衛門に瓜二つの 隠亡の八郎兵衛(片岡仁左衛門、二役)が登場し、水右衛門との早替りを披露します。
石井源之丞(中村芝翫)を水右衛門が返り討ちにする場面では、その悪党ぶりが美しさや色 気を滲ませ、観客の心を奪います。
また、八郎兵衛と八郎兵衛が恋するおつま(中村雀右衛門)の臨場感溢れる立廻りや、八郎兵衛からの早替りで
水右衛門が棺桶の中から現れるという南北ならではの奇抜な趣向が凝らされた舞台を展開。
仁左衛門が、「初めて演じた際の稽古で、雨を降らせることを考えつきました」という二幕目の「中島村焼場の場」では、
雨が降りしきるその臨場感で観客を引き込みました。
公演に先立って行われた取材会で仁左衛門は、「水右衛門は陰、八郎兵衛は陽」と、それぞれの“悪”の違いを表現しています。
「水右衛門も八郎兵衛も好きなお役です。本当に寂しいですが、今ならみっともなくないものをお見せできるだろうと
思いましたので、これを最後とさせていただきました。最後ですから、ぜひお一人でも多くの方にご覧いただきたいです」と、
かみしめるように一世一代への思いを語りました。
第三部『霊験亀山鉾』左より
藤田水右衛門=片岡仁左衛門、芸者おつま=中村雀右衛門、石井下部袖介=中村芝翫
丹波屋おりき=上村吉弥、掛塚官兵衛=中村鴈治郎
提供ⓒ松竹
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情報は書き込んだ時点のものですので、実際の内容と異なる場合があります。
あらかじめご了承下さい。