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歌舞伎座新開場十周年「團菊祭五月大歌舞伎」が開幕!公演レポート、舞台写真掲載
★各演目写真及び内容に触れておりますので、ご観劇前の方はご注意ください。★
昼の部『音菊眞秀若武者』左より
藤波御前=尾上菊之助、岩見重太郎=尾上眞秀、大伴家茂=市川團十郎
提供ⓒ松竹
公演概要(リリースより)
5月2日(火)、歌舞伎座5月公演「團菊祭五月大歌舞伎」が初日の幕を開けました。
明治に活躍した九世市川團十郎と五世尾上菊五郎の偉業を顕彰するべくはじめられた「團菊祭」は
歌舞伎座の五月興行恒例の祭典として、長年お客様に愛されてきました。
今年もゆかりの演目、出演者で彩り豊かな歌舞伎の魅力をご堪能いただきます。
公演レポート
昼の部は、江戸歌舞伎の様式美溢れる人気作『寿曽我対面』から。
幕が開くと、中村梅玉演じる工藤左衛門祐経が富士の巻狩りの総奉行に任じられた祝宴を催し、
中村魁春演じる傾城・大磯の虎や、大名たちが居並んでいます。
そこへ、坂東巳之助演じる小林朝比奈の仲介により現れたのは、尾上右近演じる曽我十郎と尾上松也演じる五郎の兄弟。
父の仇を討とうとは やる五郎は、工藤に詰め寄りますが…。
父の仇である工藤を討ち取りながらも若くして散った兄弟の死を悼み、中世以降、広く愛されてきた「曽我もの」の作品の中でも、
特に祝祭性の高い人気の場面が『寿曽我対面』です。どっしりとした貫禄を見せる梅玉の工藤に清新なエネルギー溢れる
十郎と五郎が向かっていきます。梅玉が筋書の聞き書きで「周りが活きのいい後輩ばかりですから新鮮です。
期待している後輩たちに負けないように」と語ったように、若手俳優の活躍も目覚ましい一幕となりました。
昼の部『寿曽我対面』左より
小林朝比奈=坂東巳之助、曽我五郎時致=尾上松也、曽我十郎祐成=尾上右近
提供ⓒ松竹
昼の部『寿曽我対面』左より
大磯の虎=中村魁春、八幡三郎=中村莟玉、梶原平次景高=中村吉之丞、工藤左衛門祐経=中村梅玉
梶原平三景時=大谷桂三、近江小藤太=中村亀鶴
提供ⓒ松竹
昼の部『寿曽我対面』左より
鬼王新左衛門=大谷友右衛門、化粧坂少将=坂東新悟、小林朝比奈=坂東巳之助、曽我五郎時致=尾上松也、曽我十郎祐成=尾上右近、
大磯の虎=中村魁春、八幡三郎=中村莟玉、工藤左衛門祐経=中村梅玉、梶原平次景高=中村吉之丞、梶原平三景時=大谷桂三
近江小藤太=中村亀鶴
提供ⓒ松竹
続いては、「十二世市川團十郎十年祭」
『若き日の信長』です。
文豪・大佛次郎が十一世市川團十郎のために書き下ろし、昭和27(1952)年に初演された本作。
十一世、十二世 團十郎が大切にし、当代の團十郎に受け継がれた成田屋ゆかりの演目で十二世市川團十郎を偲びます。
秋の夕景から始まり、冬の冷たい朝、清州城の堀外、堀内の書院に轟く雷鳴まで、
市川團十郎 演じる信長の複雑に変わりゆく心情に合わせ巧みに変化していく舞台美術も印象的で、
信長が自分の苦しみを理解してもらえず平手中務政秀(中村梅玉)に死なれた悔しさと淋しさを吐露する場面は、
人々の心を惹きつけます。
「信長が亡き父を思う気持ちや、父と息子の関係性や距離感には、自分自身と通じるものを感じています。
父の十年祭で上演できることをありがたく思います」と取材会で語った團十郎。
父・十二世團十郎から教わったという十年祭にふさわしい演目に、客席からは故人を懐かしむあたたかな拍手が送られました。
昼の部『若き日の信長』左より
木下藤吉郎=市川右團次、織田上総之介信長=市川團十郎
提供ⓒ松竹
昼の部『若き日の信長』左より
弥生=中村児太郎、織田上総之介信長=市川團十郎
提供ⓒ松竹
昼の部『若き日の信長』左より
弥生=中村児太郎、織田上総之介信長=市川團十郎
提供ⓒ松竹
続く、華やかな舞踊と豪快な立廻りがみどころの
『音菊眞秀若武者』では寺嶋眞秀が初代尾上眞秀を名のり初舞台を勤めます。
舞台は藤の花が咲き誇る山里曲輪。国守の祝いの宴が催されるなか、剣術指南役に連れられ一人の女童(尾上眞秀)がやってきます。
溌溂とした声を場内に響かせた眞秀演じる女童は、大伴家茂(市川團十郎)、藤波御前(尾上菊之助)と共に可憐な舞を披露します。
やがて、自身が実は岩見重太郎という男子であることを明かすと、
後半では長坂趙範(尾上松緑)やその手下、大狒々を相手に勇ましく立廻り、凛々しい姿を見せる眞秀。
さらには忽然とあらわれた弓矢八幡(尾上菊五郎)の威徳によって重太郎は狒々を退治します。
今回の初舞台のためにシャネルのサポートにより制作された明るい色合いで華やかな祝幕を背景に花道を豪快に引っ込むと、
その堂々とした姿に割れんばかりの拍手が鳴りやみませんでした。
昼の部『音菊眞秀若武者』岩見重太郎=尾上眞秀
提供ⓒ松竹
昼の部『音菊眞秀若武者』左より
岩見重太郎=尾上眞秀、弓矢八幡=尾上菊五郎
提供ⓒ松竹
夜の部は、歌舞伎の様式美を堪能できるひと幕
『宮島のだんまり』から。
幕が開くと舞台一面に浪幕が。やがて大薩摩の豪快な演奏が場内に響き渡ると、浪幕が振り落とされ舞台は海辺の厳島神社へ。
いわくあり気な巻物を読みふける傾城浮舟太夫(中村雀右衛門)、巻物を奪おうとする源氏の智将・畠山庄司重忠(中村又五郎)らが
登場します。さらに浮舟を捕えようとする人々、ついには平家一門を率いる平相国清盛(中村歌六)も現れ、
源平物語でおなじみの登場人物たちによる巻物を巡っての「だんまり」となります。
「だんまり」は、暗闇のなか善悪入り乱れた登場人物たちが無言で宝物を探り合う歌舞伎独特の演出の一つ。
美しい絵面で展開される、歌舞伎らしさを感じられるひと時です。本作の特徴である主役の傾城浮舟太夫は、
男の盗賊という自らの正体を明かすと、上半身は男、下半身は女の姿で、男の勇ましさと遊女の色っぽさを同時に表現する
「傾城六方」で花道の引っ込み、独特の風情をみせました。
夜の部『宮島のだんまり』左より
大江広元=尾上右近、傾城浮舟太夫=中村雀右衛門、畠山庄司重忠=中村又五郎
提供ⓒ松竹
夜の部『宮島のだんまり』左より
平相国清盛=中村歌六、相模五郎=中村萬太郎、典侍の局=中村梅枝、悪七兵衛景清=中村歌昇、盗賊袈裟太郎=中村雀右衛門、
畠山庄司重忠=中村又五郎、白拍子祇王=中村種之助、大江広元=尾上右近、御守殿おたき=中村歌女之丞、浪越采女之助=中村東蔵
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続いては、春をよぶ二月堂お水取り
『達陀』。
「お水取り」で知られる東大寺二月堂の修二会の行を題材に、二世尾上松緑が創作し、昭和 42(1967)年に初演された舞踊劇です。
舞台となるのは、修二会の法会が行われている奈良・東大寺の二月堂。法会を取り仕切る僧の集慶(尾上松緑)が
東大寺に所縁ある故人たちの名を記した過去帳を読み上げるところへ、どこからともなく青衣の女人(中村梅枝)が現れます。
この女は、集慶のかつての恋人。やがて女人は幻想の集慶(尾上左近)の手を取り昔の思い出を踊り…。
東大寺に伝わる僧集慶と青衣の女人の伝説が巧みに取り入れられた本作は、幻想的な雰囲気と艶やかな情感が漂う前半から、
降り注ぐ火の粉を物ともせずダイナミックな群舞を見せるクライマックスまで、圧巻の舞台が続きます。
「練行衆の誰一人が欠けても成り立たない集団の芸術」と松緑が話す通り、舞台上に並んだ練行衆が一体となり大きなうねりを生み、
劇場全体がその渦に引き込まれていくかのよう。「お水取りの行をリスペクトしたうえで、皆が共通の意識をもって、
その旗を立てられたゴールに向かっていくと、1日1日研ぎ澄まされたものになるのではないか」と語る
松緑の作品への真摯な思いも伝わる一幕。静と動のコント ラストが美しい舞踊劇に客席からは大きな拍手が巻き起こりました。
夜の部『達陀』左より
青衣の女人=中村梅枝、幻想の集慶=尾上左近
提供ⓒ松竹
夜の部『達陀』(中央)僧集慶=尾上松緑
提供ⓒ松竹
夜の部『達陀』僧集慶=尾上松緑
提供ⓒ松竹
夜の部を締めくくるのは、河竹黙阿弥による名作
『梅雨小袖昔八丈髪結新三』。
白子屋の一人娘のお熊と手代の忠七が恋仲であることを知った髪結新三 (尾上菊之助)は、忠七を騙してお熊を誘拐し、
身代金をせしめようと企みます。新三はお熊を取り戻そうとやってきた俠客の弥太五郎源七(坂東彦三郎)を追い返すも、
続いてやってきた老猾な家主の長兵衛(河原崎権十郎)にやり込められてしまい…。
河竹黙阿弥の没後百三十年、五代目菊五郎の没後百二十年、初演から百五十年という節目の年でもある本年。
今回5年ぶりに再び髪結新三役に挑む尾上菊之助は、場面や関わる相手によって変化していく新三という江戸の市井の人間を
生き生きと体現します。筋書では「幕開きに演目の全体像をご説明する解説がつきます。江戸から 明治への転換期という
混乱の中で生まれた物語で、そこに込められた、何を大切に生きていくべきかというメッセージを感じていただきたい」と
演出へのアプローチも語った菊之助。黙阿弥らしい七五調の台詞も耳に心地よく、初鰹の売り声など、
随所に江戸の市井の人々の姿が感じられる本作。江戸歌舞伎の粋を感じられる一幕となりました。
夜の部『梅雨小袖昔八丈』左より
髪結新三=尾上菊之助、手代忠七=中村萬太郎br>提供ⓒ松竹
夜の部『梅雨小袖昔八丈』髪結新三=尾上菊之助br>提供ⓒ松竹
夜の部『梅雨小袖昔八丈』左より
家主女房おかく=市村萬次郎、髪結新三=尾上菊之助、家主長兵衛=河原崎権十郎
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