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「壽 初春大歌舞伎」開幕!公演レポート、舞台写真掲載
★各演目写真及び内容に触れておりますので、ご観劇前の方はご注意ください★
夜の部『京鹿子娘道成寺』白拍子花子=中村壱太郎
公演概要(リリースより)
1月2日(火)、歌舞伎座1月公演「壽 初春大歌舞伎」が初日の幕を開けました。
昼夜ともに歌舞伎座の初芝居ならではの豪華顔合わせで、歌舞伎の魅力溢れる多彩な舞台を上演いたします。
公演レポート
令和6年の歌舞伎座は、華やかな舞踊二題『當辰歳歌舞伎賑』で幕開きです。
まずは、「五人三番叟」から。
江戸歌舞伎では、天下泰平、国土安穏を祈念する能の「翁」をもとにした「三番叟物」の一つ、
「式三番叟」を正月の仕初式で舞うのが恒例でした。この度は、5人の三番叟が踊る趣向で、
中村福之助、中村虎之介、中村鷹之資、中村玉太郎、中村歌之助の若手花形が新年を寿ぎます。
5人の三番叟が舞台に登場すると、客席からは大きな拍手が送られ、場内はおめでたい気分に満たされます。
花形が躍動感溢れる踊りを魅せ、清新なエネルギーが場内に満ち溢れました。
昼の部『五人三番叟』左より
三番叟=中村歌之助、三番叟=中村虎之介、三番叟=中村福之助、三番叟=中村鷹之資、三番叟=中村玉太郎
提供ⓒ松竹
続く
「英獅子」は、初春の江戸情緒を粋な芸者といなせな鳶頭が魅せる華やかな一幕です。
正月を迎えた吉原にやって来たのは、中村雀 右衛門の芸者と、中村又五郎、中村鴈治郎の鳶頭。
芝居町である木挽町や浅草寺、吉原など江戸の名所を詠み込んだ変化に富む長唄に合わせて、芸者と鳶頭が踊ります。
芸者が正月の獅子舞をあしらい、鳶頭は紅白の扇獅子を手に獅子の狂いを披露。
祝祭性に溢れる舞踊二題に場内は一層華やぎました。
昼の部
『英獅子』左より
鳶頭=中村鴈治郎、芸者=中村雀右衛門、鳶頭=中村又五郎
提供ⓒ松竹
続いては、
『荒川十太夫』です。令和 4(2022)年 10月、人間国宝の講談師・神田松鯉の口演による
「赤穂義士外伝」を尾上松緑主演で新作歌舞伎として初演。
その年の「大谷竹次郎賞」や「文化庁 芸術祭賞・優秀賞」を受賞するなど大きな反響を呼び、
早くも再演となる話題の舞台です。
物語は、主君の仇である吉良上野介を討ち本懐を遂げた赤穂義士四十七士のうち、
伊予松山藩松平家に身柄を預けられた堀部安兵衛 (市川中車)の切腹の場面から始まります。
身分の高い安兵衛に対して、介錯を務める荒川十太夫(尾上松緑) は「徒士」という低い身分の侍。
この身分の差が物語の展開に深く関わっていきます。十太夫の武士としての覚悟を感じる姿や、
絞り出すように発する熱のこもった言葉のひとつひとつが観る者を惹きつけ、心を揺さぶります。
義を通そうとしたがゆえに葛藤する十太夫の姿と、藩主の松平隠岐守(坂東亀蔵)をはじめとする
人々との 関わりが本作の大きな見どころ。
松緑の長男・尾上左近が初演時に引き続き、大石主税役で毅然とした姿を見せました。
松緑は再演について、「こんなにも早く、しかも初春から上演することができ、大変ありがたく嬉しく思います。
それも神田松鯉先生の原作が素晴らしいからこそ、です」と話しています。
義に生きる十太夫の誠実さ が胸を打つ、「忠臣蔵」の後日譚に温かい拍手が送られました。
昼の部『荒川十太夫』左より
荒川十太夫=尾上松緑、杉田五左衛門=中村吉之丞、松平隠岐守定直=坂東亀蔵
提供ⓒ松竹
昼の部『荒川十太夫』左より
荒川十太夫=尾上松緑、杉田五左衛門=中村吉之丞、堀部安兵衛=市川中車、松平隠岐守定直=坂東亀蔵
提供ⓒ松竹
昼の部の切は、北條秀司作の傑作喜劇
『狐狸狐狸ばなし』。
当月は、祖父である初世松本白鸚 も勤めた伊之助を、松本幸四郎が初役で勤めます。
元は上方の女方役者で、今は浅草で手拭染屋を営む伊之助(松本幸四郎)は、
以前は女郎で芝居の下座を弾いていた女房のおきわ(尾上右近)に首ったけ。
しかし、酒飲みで怠け者のおきわは、深い仲の重善(中村錦之助)と一緒になりたい一心から伊之助を毒殺。
ところが、翌朝、死んだはずの伊之助がひょっこりと現れたものだから大騒動となり…。
女房のおきわに執着する伊之助と奔放なおきわ、なまぐさ坊主の重善、どこか抜けている雇人又市(市川染五郎)など、
個性豊かな登場人物たちがテンポ よく繰り広げるやり取りに、場内は大きな笑いに包まれます。
伊之助、おきわ、重善の三角関係を軸に、推理劇 の様相も呈しながら物語が展開。
今月公開される「鬼平犯科帳」の親子共演が話題を呼ぶ幸四郎と染五郎が、
歌舞伎座では“笑いを呼ぶ”抜群の親子共演を魅せ、客席を沸かせます。
狐と狸の化かし合いよろしく、男と女の色 と欲が絡んだ騙し合いが怪談仕立てで描かれる喜劇の傑作に、
歌舞伎座で初笑いをお楽しみください。
昼の部『狐狸狐狸ばなし』左より
法印重善=中村錦之助、おそめ=市川青虎
提供ⓒ松竹
昼の部『狐狸狐狸ばなし』左より
手拭い屋伊之助=松本幸四郎、女房おきわ=尾上右近、雇人又市=市川染五郎
提供ⓒ松竹
昼の部『狐狸狐狸ばなし』左より
手拭い屋伊之助=松本幸四郎、女房おきわ=尾上右近
提供ⓒ松竹
昼の部『狐狸狐狸ばなし』左より
法印重善=中村錦之助、女房おきわ=尾上右近、手拭い屋伊之助=松本幸四郎
提供ⓒ松竹
夜の部は、新年を寿ぐ祝祭舞踊
『鶴亀』で幕を開けます。
舞台は、新しき春を寿ぐ節会が行われ る宮廷。
女帝(中村福助)が廷臣(松本幸四郎、尾上松緑)と従者(市川染五郎、尾上左近)を伴って出御します。
そして、古来より吉祥を象徴する動物として尊ばれると共に、長寿を保つ生物と位置づけられてきた
鶴(幸四郎)と亀(松緑)に扮した廷臣が、嘉例の舞を舞い始め、やがて従者(染五郎、左近)も加わって
国土安穏、 五穀豊穣を願って舞います。気高く美しい佇まいの福助勤める女帝が格調高く舞い、
幸四郎と染五郎、松緑と 左近、二組の親子が競演。場内は晴れやかな空気に包まれました。
夜の部『鶴亀』
従者=尾上左近、亀=尾上松緑、女帝=中村福助、鶴=松本幸四郎、従者=市川染五郎
提供ⓒ松竹
続く
『寿曽我対面』では、幕開きから工藤祐経(中村梅玉)をはじめ、傾城の大磯 の虎(中村魁春)、
小林朝比奈(坂東彌十郎)ら諸大名など様々な役柄が居並び、歌舞伎ならではの色彩美豊かな景色が広がります。
そこへ花道より、曽我十郎(中村扇雀)と五郎(中村芝翫)の兄弟が登場。
2人の父は、18年前に工藤の不意打ちにより落命。その仇を討とうとはやる五郎は、工藤に詰め寄りますが…。
江戸歌舞伎 で初春に上演することが吉例となっていた「曽我狂言」の中でも集大成と位置づけられる『寿曽我対面』。
幕切れは舞台全体が絵画的な美しさを見せる「絵面の見得」で、場内のお正月気分も高まり、
歌舞伎の様式美をじっ くりと味わうことが出来る充実の一幕となりました。
夜の部『寿曽我対面』左より
曽我五郎時致=中村芝翫、曽我十郎祐成=中村扇雀
提供ⓒ松竹
夜の部『寿曽我対面』左より
曽我五郎時致=中村芝翫、曽我十郎祐成=中村扇雀、大磯の虎=中村魁春、八幡三郎=中村虎之介、
梶原平次景高=大谷桂三、梶原平三景時=松本錦吾、工藤左衛門祐経=中村梅玉、近江小藤太=中村松江
提供ⓒ松竹
『息子』は、英国の戯曲を小山内薫が翻案し、大正 12(1923)年に初演した作品で、歌舞伎のみならず、
新劇などでも愛されてきました。登場人物が3人という本作で、この度は、松本白鸚が火の番の老爺、
松本幸四郎が金次郎、市川染五郎が捕吏と、高麗屋三代で上演されることでも話題となる舞台です。
雪が降りしきる冬の夜、江戸の入り口にある火の番小屋。ここで詫び住まいをする老爺(白鸚)のもとへ
捕吏(染五郎)と 入れ替わるようにやって来たのは、金次郎(幸四郎)という若い男。
実は金次郎は、今はならず者となった老爺 の息子で…。白鸚は、息子幸四郎、孫染五郎との共演について、
「今しかないですし、息子と孫に伝えたいこと が、火の番の台詞に出てきますので、
後々ふたりが思い出してくれれば良いですね。」と語っています。
はから ずも再会した親子の台詞の応酬に観客はぐっと聞き入り、2人の置かれた状況や互いを想う心情が胸に迫ります。
高麗屋三代が織り成す親子の情愛が感動を巻き起こし、客席からは鳴りやまない大きな拍手が送られました。
夜の部『息子』左より
金次郎=松本幸四郎、火の番の老爺=松本白鸚
提供ⓒ松竹
夜の部『息子』左より
捕吏=市川染五郎、金次郎=松本幸四郎、火の番の老爺=松本白鸚
提供ⓒ松竹
夜の部は、歌舞伎舞踊屈指の大曲
『京鹿子娘道成寺』で打ち出しとなります。
当月は、2〜14日に中村壱太郎、15〜27日に尾上右近が白拍子花子を勤めます。
鐘供養のため所化が集まる道成寺に、白拍子の花子が現れ、鐘を拝みたいと申し出ます。
所化たちは舞の奉納を条件に入山を許しますが、花子は切ない恋心を艶やかに踊るうち、次第に形相が変わり…。
娘の様々な恋心を変化に富んだ踊りで表現する、みどころ尽くしの華やかな一幕。
可憐ながらも美しさと迫力を漂わせる壱太郎の白拍子花子が、引抜きで衣裳を変えるたび、客席からはため息が。
切ない恋心を情緒たっぷりに表現する「クドキ」や躍動的な踊りなど様々に舞い踊り、
執念の化身である蛇体に姿を変えての幕切れまで、終始客席を魅了し続けました。
夜の部『京鹿子娘道成寺』白拍子花子=中村壱太郎
提供ⓒ松竹
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