情報紙から飛び出した 演劇系エンタメ サイト
Copyright Since1999 情報紙ターミナル
Copyright Since2010 株式会社ERIZUN

こまつ座戦後80年イベント 井上ひさしの魂を次世代へ 舞台『母と暮せば(2024年版)』上映/富田靖子 トークショー 2025年07月

(2025年07月28日記載)

『エンタメ ターミナル』では舞台を中心としたエンターテインメント関連情報をWEB記事として発信しています。
掲載内容は、掲載日付のものとなりますので、最新情報は各自ご確認ください。

※ 記事・写真等の無断使用・無断転載は禁止しています。なお、リンクはフリーです。

 

こまつ座戦後80年イベント
井上ひさしの魂を次世代へ
舞台『母と暮せば(2024年版)』上映/富田靖子 トークショー


こまつ座戦後80年イベント
井上ひさしの魂を次世代へ
2025年7月27日
紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
写真撮影:夛留見彩

公演概要


7月23日(水)〜27日(日)まで紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて、
こまつ座戦後80年イベント『井上ひさしの魂 を次世代へ』を開催いたしました。

作家・劇作家 井上ひさしが描きたいとしていた、ヒロシマ、ナガサキ、オキナワ。
井上ひさしは『父と暮せば』で原爆から3年後の”ヒロシマ”の夏が舞台の父と娘の物語を書きました。
その後、書くことが叶わなかった”ナ ガサキ”と”オキナワ”は、井上ひさしの意志を継ぎ井上麻矢が企画、
メモや資料をもとに、多くの方々にお力添えをいただき、数年の月日を経て映画・舞台として結実いたしました。

戦後80年を迎えた2025年、こまつ座からの”恩送り”として催された
戦後80年イベント『井上ひさしの魂を次世代へ』は、井上ひさしの想いが込められた「戦後”命”の三部作」に
触れていただける場として、こまつ座として初めてとなる舞台映像の上映会を開催いたしました。
(「戦後”命”の三部作」・・・ヒロシマ『父と暮せば』/オキナワ『木の上の軍隊』/ナガサキ『母と暮せば』)

劇場内には、こまつ座の作品や歴史に触れられるよう、
舞台や映画に関する写真・チラシ・ポスター・資料などを展示したり、
7月23日(水)には、舞台『木の上の軍隊』に出演し、映画版でも歌声で作品を彩った普天間かおりさんのトークショー、
7月26日(土)には、今年初めて映画化され、7月25日(金)より全国の映画館で上映されている
映画『木の上の軍隊』の平一紘監督と津波竜斗さんのトークショーを開催。
そして、最終日となった本日7月27日(日)は、2018年の初演、2021年の再演、2024年の再々演で3度にわたり
舞台『母と暮せば』で母・伸子役を演じた富田靖子さんを迎えてトークショーを行いました。

こまつ座のホームともいえる紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAには、たくさんのお客様が足をお運びくださり、
井上ひさしの 魂が込められた作品、言葉の数々に触れていただける場となりました。

コメント


【富田靖子 コメント】
Q.今回のイベントでは2024年版が上映されましたが、2018年が初演で、2021年に再演、2024年に再々演と、
舞台『母と暮せば』には3度ご出演されておりますが、初めて台本を読んだ時はどんな感想をもたれましたか?

幽霊で現れた息子が母を思う気持ちに「お母さん頑張れ」と思いながら読み進めていきましたが、
ん?今セリフ何ページあったっけ!?と、感動しつつもセリフを覚えなければいけない現実の自分を感じてしまいました。
こんなに覚えられるんだろうかと読み終えた時は不安でしたが、もちろん演出の栗山(民也)さんには聞けないので(笑)、
演出助手の方に「これは覚えられる本なんでしょうか?」と聞いたら「覚えられます」と言われ、
(共演の)松下(洸平)さんにも聞いたら「覚えられます」と言われたので、「わかりました。死ぬ気で覚えます」と
うわずりながらも頑張るぞ!と思った記憶があります。初演、再演は内容を味わうことや役を嚙み砕くという余裕はなくて、
2024年(再々演)は自分の中で新たな課題が見えたので悔いのないようにやろうという思いで演じました。

Q.初演が決定された時は7年ぶりの舞台出演だったようですが、
長い期間が空いていても富田さんが出演したいと思われた作品の魅力はどんなところですか?

お話をいただいた時には『母と暮せば』の映画が舞台になるということと、
こまつ座でやるということしか情報しかなかったのですが、その当時、子供たちの学芸会のお手伝いをする機会があり、
役をもらった子たちが一生懸命セリフを覚えているのを見て、舞台って良いなと改めて思っているタイミングだったので、
井上麻矢さんの「やりませんか?」と強い目線に吸い込まれて、お受けいたしました。
でも、こうして戦後80年のイベントにも参加させていただいて、ご縁がこんなに長く続くとは思っていませんでした。
私にとってはとても意義のある『母と暮せば』との10年だったと思います。

Q.髪の毛を白髪にしなくていいくらいまで続けて演じて欲しいと言われるほど代表作になったと思いますが、
そういう作品 に出逢ったことに関してどう感じられますか?

自分自身が舞台で代表作を持てるとは思っていなかったので心から嬉しいと思います。
初演の時は映画『母と暮せば』と同じように、舞台も皆さんに認められるようにという一心で演じていたので、
今はこうして舞台 も愛していただけるだけでなく、ましてや代表作とまでも言っていただけて光栄でしかないです。
麻矢さんが戦後100年まで伝えようとされているということは、私たちの肉体がなくなっても続けていくということ
だと思うので、次の世代にバトンを渡すべく、より良い作品になるようにできるだけ長崎弁に磨きをかけ、
身体を鍛え、頑張ろうと思っています。
ただ、欲張ってはいけないと律してはいるんですが、心の中ではずっとやりたいと思っている自分もどこかにいます。

Q.膨大なセリフはどうやって覚えたんですか?
半泣きになりながら布団の中にくるまって、忘れたら台本を見て、またブツブツ言って、
というのを2週間昼も夜も永遠とぶっ続けでやっていました。
セリフを覚えてから長崎弁の特訓が待っていたのでスポコン漫画のように苦しくても悲しくてもやっていた記憶があります。
初演の時は脳で覚えるというのではなく、ひたすら身体の細胞隅々にセリフを覚えさせるという作業だったと思います。
ここまで追い込まれたのは今回が初めてだったので、初めての通しの時に緊張と不安で汗が止まらなかったのですが
最後までやった記憶があります。怖かったですが、怖さを乗り越えて究極な追い込まれ方をしたのは良かったと思います。

Q.オファーを受ける前に井上ひさしさんの作品の印象や感想はありますか?
音楽が印象的です。戦争で大変な時期でも、どんなに辛い状況でも、歌って、どこか前向きであったり明るい状況が見えて、
どの作品も現代の私たちの背中をポンと押してくれるような明日への力をもらえる作品が多いと思います。

Q.『母と暮せば』以外でこまつ座の他の作品で出演してみたい作品はありますか?
チャンスがあれば…とは思っていますが(笑)、まずは『母と暮せば』を全うしたいと思っています。

【井上麻矢(こまつ座 代表) コメント】
Q.7月23日から始まり、本日最終日を迎えたこの戦後80年イベントは、こまつ座さんにとって
初めての舞台映像の上映会だったそうですが、開催してみていかがでしたでしょうか?

ただのイベントではなく井上ひさしの言葉を通じて、もう戦争を起こしてはいけないんだという思いを
少しでも持ち帰っていただけ たらと思いこのイベントを開催しました。
そのため、お芝居の映像を上映するだけでなく、(富田)靖子さんをはじめいろいろな方にゲストとしてお越しいただき、
ロビーでは井上ひさしの言葉を、特に苦しみのセリフを多くセレクトして展示しています。
思いのほかたくさんの方が来てくださって、今振り返ってみて、凄く有意義なイベントだったなと感じています。

Q.井上ひさしさんがヒロシマを題材に書かれた『父と暮せば』、ナガサキが題材の富田さんが出演された『母と暮せば』、
オキナワが題材で今年初めて映画化されて一昨日の7月25日から全国の映画館で上映されている『木の上の軍隊』。
「戦後”命”の三部作」と銘打った三作ですが、『母と暮せば』と『木の上の軍隊』は、メモや資料などをもとに
井上さんご自身が手掛けられたそうですが、作品を完成させるのは大変だったのではないでしょうか?

『母と暮せば』と『木の上の軍隊』は、作品についてのメモや構想しか残っていない状況だったのですが、
『母と暮せば』に関してはすでに井上ひさしが演出のディテールを栗山民也さんに話していて、
『木の上の軍隊』もセットの話まで出ている段階だったので、この2作品をどのように若い世代に繋いでいくか、
その想いを手渡すことが出来るかということを考えていました。
『父と暮せば』を含め、俳優さんやスタッフさんをはじめとする、作品に関わる方々と井上ひさしが
何をここで言いたかったのか、世界観を 壊すことなくどう創っていけばよいのかを
みんなで探ってみんなで創り上げた他にはない醍醐味のある三部作となりました。
苦労というよりも、自分はこれをやり遂げるんだという強い意志だけを持って、
皆さんに創り上げていただいた作品だなと思って います。

Q.『母と暮せば』について、あと何回上演したいなど今後のビジョンはありますか?
演出の栗山さんからは、「次はアジアだね」と言われています。
まだ届けたい場所はもちろんありますが、日本のいろいろな会場 を隅々まで回って、
すごくたくさんの方々に作品を届けることが出来たので、今度は世界に行きたいという気持ちがあります。
私の野望として、アジアの方々にこの作品を見せたいという思いがあるので、富田さんにはあと一回と言わず、
ずっとやっていただきたいです。

Q.もしチャンスがあったら、他の作品で富田さんに演じてみて欲しいものはありますか?
将来、(富田)靖子さんにこれがピッタリなんじゃないかと思う作品はたくさんありますが、
今は言わないでおきたいなと思っています。

Q.今後予定している作品などについてお聞かせください。
今年は「恩送り」というテーマで演目を選んでおりまして、次の上演は戦争前夜までの1年間の
小さな家族の物語を描いた『きらめく星座』という作品なのですが、
「戦後“命”の三部作」と時代感が似ているというところで色々な方に観ていただきたいです。
また、永遠の青春少年だった石川啄木に対する井上ひさしの深い愛を評伝劇にした
『泣き虫なまいき石川啄木』の上演も予定しています。
今年はこれを「恩送り」として、私たちが誰かから受けた恩を、社会や自分の大切な人にちゃんと
戻していくということをテーマにした演目が続きますので、ぜひまた皆さんに来ていただきたいと思います。


舞台『母と暮せば (2024年版)』より/舞台写真(撮影:福岡諒祠)


舞台『母と暮せば (2024年版)』より/舞台写真(撮影:福岡諒祠)


舞台『母と暮せば (2024年版)』より/舞台写真(撮影:福岡諒祠)

 

 
 

情報は書き込んだ時点のものですので、実際の内容と異なる場合があります。
あらかじめご了承下さい。

[ PR ]