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歌舞伎座 松竹創業百三十周年「錦秋十月大歌舞伎」 2025年10月

(2025年10月10日記載)

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歌舞伎座 松竹創業百三十周年「錦秋十月大歌舞伎」


©松竹
第三部『義経千本桜』「吉野山」左より、静御前=坂東新悟、忠信実は源九郎狐=市川團子


※舞台写真を多数掲載しております。観劇前の方はご注意ください。

公演概要(リリースより)

歌舞伎座10月公演、松竹創業百三十周年「錦秋十月大歌舞伎」が初日の幕を開けました。
松竹創業百三十周年を記念する本年は、歌舞伎座で松竹百年以来、実に30年ぶりとなる三大名作を一挙上演。
3月『仮名手本忠臣蔵』、9月『菅原伝授手習鑑』、そして今月上演の『義経千本桜』の通し上演が悼尾を飾り、
芸術の秋に相応しい趣向に富んだ舞台をご堪能いただきます。

源平の合戦で平家一門を滅ぼした英雄・源義経――。『義経千本桜』は、兄・源頼朝から謀反の疑いをかけられ、
悲劇的な運命を辿る義経と、滅んだはずの平家の武将たちが実は生き延びていたという着想を絡ませた壮大な歴史ロマン。
義経を軸としながらも、それぞれの場面で活躍する主人公が異なり、ドラマチックな物語が展開します。
第一部『鳥居前』では、義経の忠臣・佐藤忠信の姿を借りた狐忠信が活躍。
『渡海屋・大物浦』では、滅びたはずの平家の武将・知盛の壮絶な生き様をみせます。
数多の名優が上演を重ね、洗練された歌舞伎の様式美が随所に織り込まれた三大名作のひとつにご期待ください。
また、長年にわたり人々の心を捉え、愛されてきた作品を今回は、Aプロ・Bプロと2通りの配役で
世代を超えた豪華競演で上演します。『鳥居前』の狐忠信をAプロでは市川團子、Bプロでは尾上右近、
『渡海屋・大物浦』の碇知盛をAプロでは中村隼人、Bプロでは坂東巳之助の四人の花形俳優が
それぞれ初役で勤めることが話題となります。初日はAプロでの上演です。

公演レポート


◆第一部
【鳥居前】

第一部の幕開きは、義経と愛妾・静御前の別れを哀感豊かに描き、狐忠信が活躍する名場面『鳥居前』から始まります。
兄・源頼朝の疑念を受け、都を落ち延びる源義経(坂東巳之助)。その旅立ちを前に、伏見稲荷の鳥居前では、
愛妾・静御前(市川笑也)が義経に同行を願い出ますが、切なる願いも届かず…。
梅の木に縛られた 静の危機を、忠信実は源九郎狐(市川團子)が姿を現し救います。
初役で狐忠信を勤める團子が花道から登場すると場内からは割れんばかりの拍手と「澤瀉屋!」の大向うが響きます。
祖父・三代目市川猿之助(二世猿翁) への憧れを常に口にする團子の狐忠信は、
仁王襷を掛け、菱皮の鬘に火焔隈を引いた勇壮な姿で身体いっぱいの立廻りを見せ、観客の目を奪う迫力に満ちます。
三代目猿之助の狐忠信でも静を演じた“奇跡の66歳”笑也を はじめ、周囲も充実を見せ、
幕切れの狐忠信の花道の引っ込みでは、歌舞伎ならではの妙技 “狐六法” が披露され、場内を大きな感嘆で包みました。

©松竹
第一部『義経千本桜』「鳥居前」左より、佐藤忠信実は源九郎狐=市川團子、鵜の目鷹六=市川青虎


©松竹
第一部『義経千本桜』「鳥居前」左より、静御前=市川笑也、源九郎判官義経=坂東巳之助


【渡海屋・大物浦】
義経への復讐を図る知盛の壮絶な生き様を描く『渡海屋・大物浦』。
都を落ち行く義経主従が立ち寄った大物浦の廻船問屋「渡海屋」の主人・渡海屋銀平は、実は滅びたはずの平家の武将・知盛で…。
『渡海屋』では、相模五郎(坂東亀蔵)と入江丹蔵(尾上松緑)が登場し、義経(坂東巳之助)を追うための船を用意するよう迫ります。
主人・銀平が留守のため、応じるのは女房のお柳(片岡孝太郎)。二人が詰め寄るその時、颯爽と船頭姿の銀平(中村隼人)が戻り、
力強く二人を退けます。初役で大役を勤める隼人の登場を客 席は大きな拍手で包みます。
相模たちが繰り出す“魚尽くし”の台詞は、苦し紛れながらも洒落味に富み、場内を大きな笑いで包みました。
船出を控える義経一行とお柳とのやり取りへ。お柳が世話女房らしい機知と人情を存分に示し、観客の心を引きつけます。
やがて義経主従が去ると、お柳は娘のお安(守田緒兜)を呼び寄せ、奥にいる銀平へ声を掛けます。
巳之助長男の守田緒兜くんは本公演で初お目見得を果たしました。
やがて姿を現した銀平は一転して白糸縅の鎧姿となり、実は平知盛であることを明かします。
お安が安徳帝、お柳がその乳母・典侍の局であることも同時に顕され、物語は大きな転換を迎えます。

続く『大物浦』では、典侍の局となったお柳が帝を守る乳母としての気品と覚悟を示します。
そこへ再び相 模・入江が登場し、今度は知盛の家臣として戦況を伝えることで、舞台は一層の緊張感に包まれます。
満身創痍の知盛が壮絶な立廻りを繰り広げ、客席もヒートアップ。巳之助と長男・緒兜くんの二人が顔を揃える親子共演を果たし、
初お目見得の緒兜くんが歌舞伎座の隅々に届くハキハキとした声での台詞に客席は聞き入ると、温かい拍手に包まれました。
大役を務めた隼人が大碇を担いで海へと沈む姿に観客は息を呑み、第一部は圧倒的な迫力のうちに幕を閉じました。

©松竹
第一部『義経千本桜』「渡海屋・大物浦」渡海屋銀平実は新中納言知盛=中村隼人


©松竹
第一部『義経千本桜』「渡海屋・大物浦」渡海屋銀平実は新中納言知盛=中村隼人


©松竹
第一部『義経千本桜』左より、銀平娘お安実は安徳帝=守田緒兜、源九郎判官義経=坂東巳之助



◆第二部
【木の実・小金吾討死】

運命に翻弄される庶民の哀切、親子の情と葛藤が胸に沁みる『木の実・小金吾討死・すし屋』。
幕開きは『木の実』から。大和国にある吉野下市村の茶店で、親切ごかしに若葉の内侍(中村魁春)と
嫡子の六代君(中村種太郎)、家来の主馬小金吾(坂東新悟)に近づいた権太(尾上松緑)は、
鮮やかに小悪党の本性をあらわし、金を巻き上げます。
このように悪事を働く権太ですが、女房の小せん(中村種之助) と息子の善太郎(中村秀乃介)に見せる姿は愛情に溢れます。
家庭の温かみをお客様に伝えることで、後の 『すし屋』での別れのつらさをより感じ、
この場面がのちに起きる悲劇の伏線となるところも見逃せません。
『小金吾討死』では、小金吾が大勢の捕手たちとの立廻りを勇ましく披露。
そして舞台は、世事に翻弄さ れる庶民の哀切が胸に響く名場面「すし屋」へと繋がります。

©松竹
第二部『義経千本桜』「木の実・小金吾討死」左より、いがみの権太=尾上松緑、主馬小金吾=坂東新悟


©松竹
第二部『義経千本桜』「木の実・小金吾討死」左より、権太女房小せん=中村種之助、善太郎=中村秀乃介、いがみの権太=尾上松緑



【すし屋】
大和国下市村の釣瓶鮓屋を舞台にした『すし屋』は、奉公する弥助(中村萬壽)と弥左衛門(市村橘太郎)の
娘のお里(尾上左近)が祝言を挙げることになった場面から始まります。お里は田舎娘の大胆さと可愛さを、
弥助は典型的な「やつし」の役柄で和事の柔らかみを魅せます。二人の仲睦まじいやりとりに客席からは笑みがこぼれ、
多幸感が歌舞伎座の空間を充たします。そんなところへ姿を現したのは、勘当の身である 権太(尾上松緑)。
平成31(2019)年2月歌舞伎座での父・初世尾上辰之助三十三回忌追善で『すし屋』のいがみの権太を初めて勤め
好評を博して以来の上演となる松緑、今回は妹・お里の役を長男の左近が勤める親子共演が話題です。
松緑と左近が初めて兄妹役を勤める舞台となりました。権太が登場し、母おくら(市川齊入)から金をだまし取る、
可笑しみあるやりとりで、“いがみ”と二つ名の付く悪党ながらも、ふとした仕草一つ一つには、
ならず者でありながらどこか憎めない魅力が溢れ、観客の心を掴みます。母に甘える 姿には客席から笑みがこぼれる一方、
ある決意をした権太がすし桶を抱えて花道を引っ込む場面は緊迫感が 広がり、緩急ある展開で魅了。
松緑は筋書のインタビューで「『義経千本桜』の主人公の中で、権太は自分 のキャラクターに一番近いと思える愛着のある役」と
コメントしています。家を勘当された権太が父弥左衛 門に抱く本心が涙を誘い、家族の情愛が心に沁みる名作に、
鳴りやまない拍手に包まれました。

©松竹
第二部『義経千本桜』「すし屋」左より、いがみの権太=尾上松緑、娘お里=尾上左近


©松竹
第二部『義経千本桜』「すし屋」いがみの権太=尾上松緑


©松竹
第二部『義経千本桜』「すし屋」左より
鮓屋弥左衛門=市村橘太郎、娘お里=尾上左近、いがみの権太=尾上松緑、弥左衛門女房おくら=市川齊入



◆第三部
第三部では【吉野山】【川連法眼館】が上演されました。

©松竹
第三部『義経千本桜』「川連法眼館」左より
亀井六郎=市川青虎、佐藤忠信=市川團子、駿河次郎=市川右近、源九郎判官義経=中村梅玉


©松竹
第三部『義経千本桜』「川連法眼館」左より、静御前=坂東新悟、源九郎判官義経=中村梅玉


©松竹
第三部『義経千本桜』「川連法眼館」左より、静御前=坂東新悟、忠信実は源九郎狐=市川團子、源九郎判官義経=中村梅玉


©松竹
第三部『義経千本桜』「川連法眼館」忠信実は源九郎狐=市川團子

 

松竹創業百三十周年

錦秋十月大歌舞伎

 

2025年10月1日(水)~21日(火)

劇場:歌舞伎座

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/938

 

 

 
 

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