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歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」レポート 2026年01月

(2026年01月09日記載)

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歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」レポート

昼の部『蜘蛛絲梓弦』左より
坂田金時=坂東巳之助、女童扇弥=尾上右近、碓井貞光=中村隼人

※舞台写真を多数掲載しております。観劇前の方はご注意ください。

リリースより


初春にふさわしく華やかな演目が並ぶ、歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」
昼の部の幕開きは、おめでたい三題 が揃う『當午歳歌舞伎賑』から。
初春興行で曽我兄弟の仇討ちを題材とした作品を上演するのは、江戸歌舞伎で吉例とされていました。
その伝統は令和にも受け継がれ、序幕は曽我物の舞踊 『正札附根元草摺』でお客様をお迎えします。
松竹梅と富士山が描かれたおめでたい雰囲気の舞台に曽我五郎時致(坂東巳之助)と小林朝比奈(中村歌昇)が登場すると、
客席も一気に華やぎます。五郎が兄の十郎と共に父の仇を討つべく、鎧を持って駆けだそうとすると、
力自慢の朝比奈がそれを押しとどめ、鎧の草摺を引き合います。
張りのある声と身体いっぱいで力強さを見せる巳之助の五郎と、
廓の遊女の真似事をして五郎の逸る気持ちを鎮めようとおかしみを見せる歌昇の朝比奈という花形二人の姿に、
観客からは大きな拍手が送られました。
続いては、人々に福を招く祝祭的な舞踊『萬歳』
花道から鮮やかな衣裳に身を包んだ萬歳(中村梅玉)が才造(松本幸四郎・中村勘九郎)を引き連れて現れると、
歌舞伎座は新年の華やかな雰囲気に満たさ れます。
大らかな梅玉の萬歳に、浮き立つような踊りを見せる幸四郎と勘九郎の才造が、幸多き一年を祈り舞い踊る華やかなひと幕。
浅葱幕が振り落とされると、『木挽の闇爭』の華やかな顔合わせが登場し、
客席からは感嘆の声が漏れます。廓の見世先には、秩父庄司重忠(尾上右近)と梶原平次景高(大谷廣太郎)の行く手を阻む、
曽我十郎祐成(中村隼人)。大磯の虎(坂東新悟)と片貝姫(中村米吉)が取りなすところへ、
花道から曽我 五郎時致(坂東巳之助)が駆けつけてきます。
そこへ月小夜お玉(市川笑三郎)と共に廓から姿を現したのは、曽我兄弟の父の仇である工藤左衛門祐経(中村歌昇)。
曽我兄弟にゆかりの人物が揃うと、源氏の宝刀・友切 丸を巡って、暗闇のなかで繰り広げられる
歌舞伎独特の「だんまり」の演出に。
歌舞伎座の旧町名「木挽町」を織り込み、花形が顔を揃えたひと幕に客席からは大きな拍手が送られました。
昼の部『當午歳歌舞伎賑』「正札附根元草摺」左より
小林朝比奈=中村歌昇、曽我五郎時致=坂東巳之助
昼の部『當午歳歌舞伎賑』「萬歳」左より
才造=中村勘九郎、萬歳=中村梅玉、才造=松本幸四郎
昼の部『當午歳歌舞伎賑』「木挽の闇爭」(前)左より
曽我五郎時致=坂東巳之助、曽我十郎祐成=中村隼人、工藤左衛門祐経=中村歌昇
(後)片貝姫=中村米吉、大磯の虎=坂東新悟、月小夜お玉=市川笑三郎、秩父庄司重忠=尾上右近、梶原平次景高=大谷廣太郎
昼の部『當午歳歌舞伎賑』「木挽の闇爭」左より
梶原平次景高=大谷廣太郎、大藤内成景=中村松江、片貝姫=中村米吉、大磯の虎=坂東新悟、
曽我十郎祐成=中村隼人、工藤左衛門祐経=中村歌昇、箱根の閉坊=市川荒五郎、曽我五郎時政=坂東巳之助、
月小夜お玉=市川笑三郎、秩父庄司重忠=尾上右近

続いては、「尾上右近八変化にて相勤め申し候」と銘打ち、令和八年の幕開きに、末広がりの八変化で魅せる
『蜘蛛絲梓弦』。鮮やかな早替りで魅せる、エンターテインメント性に溢れる変化舞踊です。
平安時代、武勇の誉れ高き源頼光(市川門之助)が物の怪に取り憑かれ、床に伏せっているため、
宿直の番をする坂田金時(坂東巳之助)と碓井貞光(中村隼人)。
眠気を催し濃茶を所望している二人のもとへ、突然として女童扇弥(尾上右近)が現れると、
その鮮やかな登場に観客は驚きの声を上げます。蜘蛛の糸 を撒いて消える女童に続いて、
薬売り、番頭新造、座頭が現れ金時と貞光を翻弄します。
奇想天外な登場、退場に観客は大いに沸き、時に宙乗り、様々な姿を披露し華麗に踊る右近に「音羽屋!」の
大向うがひっきりなしにかかります。
太鼓持栄寿として現れると、今度は貞光と金時の女房(市川笑也・市川笑三郎)も手玉に取ります。
そして、花道のすっぽんから妖艶な姿を現したのは、頼光の寝所へ向かう傾城薄雲。
その美しい姿で 頼光に馴れ初めを語り出しますが…。女郎蜘蛛の精が本性を顕し、蜘蛛の糸が歌舞伎座を舞うと、
豪快な立廻りに観客からは割れんばかりの拍手が。そこへ、「待て、待ちやがれ」という声が客席に響き渡ると、
花道から平井保昌(尾上右近)が登場します。「七草ならぬ七役を、カレーに勤めた出たがり屋の右近によく似た化け物め。
明けて目出度き令和八年、末広がりの八役目で、押戻したる花舞台」と女郎蜘蛛の精に討ちかかると、
かつてない八役の早替りをこれでもかと見せつけた尾上右近に万雷の拍手が客席から送られました。
昼の部『蜘蛛絲梓弦』左より
番頭新造四つ輪=尾上右近、坂田金時=坂東巳之助
昼の部『蜘蛛絲梓弦』左より
源頼光=市川門之助、女郎蜘蛛の精=尾上右近

そして、源平合戦の時代を描く時代物の大作『源平布引滝』より、主人公・実盛の才気が冴えわたる名場面、
『実盛物語』。平家全盛の世、近江の国。源氏方の葵御前(坂東新悟)を匿っている
百姓九郎助(嵐橘三郎)と女房小よし(中村梅花)のもとへ、平家方の武将・斎藤実盛(中村勘九郎)と瀬尾十郎 (尾上松緑)が
詮議にやってきます。実は密かに源氏に心を寄せる実盛。
源氏の白旗を託された九郎助の娘小 万(中村七之助)のことを実盛が語り出すと…。
これまで大阪松竹座、明治座、平成中村座で演じてきた勘九 郎が、満を持して歌舞伎座で実盛を上演することが
話題となる今月の舞台。
花道の出から、馬に乗っての花道の引っ込みまで、知勇を兼ね備えた武将・実盛を勘九郎が颯爽と演じると、
初日から満場の歌舞伎座に「中村屋!」の大向うと割れんばかりの拍手が響き渡りました。
中村勘九郎、中村七之助、そして尾上松緑という充 実の競演が客席を沸かせ、
また、源氏の白旗を手にした片腕が鍵となる意外性のある展開ながら、
昨年11月の歌舞伎座『義経千本桜』で初お目見得を果たした坂東巳之助の長男・守田緒兜が、小万の子・太郎吉を溌剌と演じ、
客席からは温かな拍手が送られました。
昼の部『実盛物語』斎藤別当実盛=中村勘九郎

夜の部は、歌舞伎十八番のひとつ『暫』を女方で描く『女暫』で幕開きです。
京都の北野天満宮を舞台にした、勧善懲悪の華やかな祝祭劇の幕が開くと、豪華な顔合わせの
舞台に客席からは大きな拍手が送られます。帝位を狙う蒲冠者範頼(中村芝翫)は、轟坊震斎(坂東巳之助)をはじめ、
女鯰若菜(坂東新悟)、猪俣平八六義延(中村歌昇)らと宴を催しています。
そこへ連なる清水冠者義高(中村錦之助)、木曽太郎公綱(中村松江)は、傲慢な態度の範頼を諫めますが、
聞く耳を持たず、さらには成田五郎(坂東亀蔵)も呼び出し、義高は窮地に陥ります。
そこへ「暫く」と声が響き、巴御前(中村七之助)が花道から現れると、割れんばかりの拍手と「中村屋!」の大向こうが。
個性豊かな登場人物たちが揃い、巴御前が交わすコミカルなやりとりに客席は大いに笑い、
初春のおめでたい雰囲気が劇場を満たしました。見事に悪人たちを退けた巴御前は、幕切れで舞台番(松本幸四郎)から六方を習い、
恥じらいながらも花道を引っ込んでいきます。大らかな歌舞伎らしい様式美に溢れたひと幕を大いに観客も楽しみ、
新年の夜の部が賑々しく開幕。また、午年生まれの年男、現役最年長95歳の市川寿猿が茶後見の役で出演し、
元気な姿を見せました。
夜の部『女暫』巴御前=中村七之助
夜の部『女暫』

続いては、古風な味わいの舞踊劇『鬼次拍子舞』です。
京の都から離れた、のどかな山中。山樵姿に身を窶した平家の武将・長田太郎(尾上松緑)が、
見目麗しい白拍子(中村萬壽)と出会うと…。松緑の力強くも軽やかな踊り、萬壽の美しくしなやかな姿、
そして軽快な拍子に合わせて舞う二人に客席は見入ります。
後半では、ぶっ返りで衣裳を変化させ、それぞれが正体を現し、客席からは盛大な拍手が送られました。
長唄に合わせ、息の合っ た立廻りを披露する二人。江戸の粋を感じさせる味わい深い舞踊劇を観客は堪能しました。
夜の部『鬼次拍子舞』左より
白拍子実は松の前=中村萬壽、山樵実は長田太郎=尾上松緑

そして夜の部は、近松門左衛門が実話をもとにして描いた世話物の名作『女殺油地獄』で打ち出しとなります。
今月はAプロとBプロのダブルキャストでの日替り上演で、初日はAプロ。天下泰平の世。
大坂は天満、油屋河内屋の放蕩息子の与兵衛(松本幸四郎)は、遊び惚けて借金三昧。
遂に勘当の身となった与兵衛は、親切にしてくれた同じ油屋で豊嶋屋の女房お 吉(坂東新悟)を頼りますが…。
平成 25(2013)年に新開場した第五期歌舞伎座で初めての上演となる『女殺油地獄』。
今回が六度目となり、すでに定評のある幸四郎の与兵衛が、ほっかむりをかぶって登場すると、
その美しく色気のある姿に客席からはため息がこぼれます。
どうしようもないダメ男なのに、なぜか憎めない与兵衛。表面は強がっていても根は弱気で短期な若者の与兵衛は、
喧嘩で騒動を起こして、家族 にも暴力を振るう始末。複雑な家族環境のなか、勘当しながらもその行状を心配する
父・徳兵衛 (中村歌六)の姿が印象的です。
序幕の「徳庵堤茶店の場」では喧嘩の挙句、与兵衛が投げた泥が通りかかった駕籠に当たってしまいます。
駕籠から姿を現したのでは、小栗錦左衛門(松本白鸚)。白鸚が歌舞伎座に響く声を聞かせ、白鸚と幸四郎、
高麗屋の親子競演に客席は沸きます。見どころとなる殺しの場面では、油がどくどくと流れ出し、狂気的な雰囲気の与兵衛に
客席は圧倒されます。まるで現場を覗き見してしまったかのような衝撃的な殺しの場さえも様式美で魅せる歌舞伎の真骨頂、
まさにここにあり。歌舞伎座の初日は、鳴り止まない拍手で打ち出しとなりました。
夜の部『女殺油地獄』(Aプロ)左より
芸者小菊=市川笑也、河内屋与兵衛=松本幸四郎
夜の部『女殺油地獄』(Aプロ)(前)左より
河内屋与兵衛=松本幸四郎、山本森右衛門=松本錦吾(後)小栗錦左衛門=松本白鸚
夜の部『女殺油地獄』(Aプロ)
(左より)母おさわ=中村梅花、河内屋与兵衛=松本幸四郎、父徳兵衛=中村歌六、妹おかち=澤村宗之助
夜の部『女殺油地獄』(Aプロ)
夜の部『女殺油地獄』(Aプロ)河内屋与兵衛=松本幸四郎
夜の部『女殺油地獄』(Aプロ)
(前)豊嶋屋お吉=坂東新悟、(後)河内屋与兵衛=松本幸四郎


★ニュース=歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」松本白鸚 休演のお詫びと配役変更のお知らせ

 

壽 初春大歌舞伎

 

2026年1月2日(金)~25日(日)

劇場:歌舞伎座

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/962

 

 

 
 

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