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まつもと市民芸術館企画制作『K.ファウスト』
舞台稽古を取材しました
<21世紀のファウストを探して!>
まつもと市民芸術館は、「K.ファウスト」を2012年秋、東京・世田谷パブリックシアター及びまつもと市民芸術館で上演。
この作品はファウストという実在したと言われている人物を元に、串田和美が台本を書き、演出するものです。
串田和美はゲーテが『ファウスト』の題材にした、もともとのファウスト伝説が書かれている民衆本に非常に興味を持ちました。それは人形劇にも仕掛け花火の題材にもなっていて、様々な伝説が生まれていたのです。ファウストを取り上げた画家や詩人たち、音楽家たちも数多くいました。
この『ファウスト』の伝承本を題材にして、2008年『ウル・ファウスト』、2010年『ファウスト イン茅野』とワークショップを開催して、ファウストを題材に様々な演劇的実験を行い、遂に今年10月、本格上演いたします。串田は「ゲーテの『ファウスト』が19世紀の現代劇なら、僕は21世紀の現代劇としての 『ファウスト』を民衆本や当時の人形劇からつくりたいと思うようになった」。と述べてます。<いかなる人間も、いかなる精神労働者も、いかなる芸術家も、いかなる学派も、いかなる国も、いかなる時代もすべて自己の意識の中で、ファウストの神話を再現し、そしてあの復活祭という一夜の苦悶のなかで、メフィストが提示する契約に突き当たるのである。青春か死か。生暖かい大地か、冷たい天空か。情熱的に享楽する強烈な現在か、未来の感覚なき存在への期待か。そのいずれかを選択せねばならない。おのれの魂を悪魔に売り渡すのである。そしてその契約書にしるされた血書の書体はバロック様式の署名なのだ>(エウヘーニー・ドールス『バロックの本質』より)ファウストを元にわたしたちのファウストを探す旅。この目に映る世界の、脳髄の中を駆け巡る宇宙の、とりとめもない叙事詩のように。ファウストとメフィストフェレスの架空の旅、なんともバロックな彼らのロードムービーが始まります。
<芝居・サーカス・音楽が融合する見世物小屋的道化芝居!>
そして今回の『K.ファウスト』の特徴は、サーカスパフォーマーが俳優たち、音楽家たちと紡ぎだす世界の創出です。
2009年6月にパリでオーディションを行い選ばれた現代サーカスのアーティストたち。空中ブランコ、クラウン、アクロバット、オブジェマニピュレーションなど、昔懐かしい道化師たちから現代サーカスのアーティストまで、サーカスは芝居のように、芝居は音楽のように、音楽はサーカスのように展開していきます。まつもと市民芸術館では昨年11月に現代サーカスのアーティストたちとミュージシャンたちとともに『空中キャバレー』を制作し、大好評を得ました。2008年から始まった<ファウストプロジェクト>は、様々な実験を重ね、今年のファウストで大きな実りを得ると確信しています。
<笹野高史、小日向文世、雛形あきこ、coba、串田和美、夢の競演!>
ファウストとメフィストフェレスを演じるのは、笹野高史と串田和美。笹野高史は、平成中村座のメンバーとして、欠かせない存在にまでなった、日本を代表する稀有な俳優です。そして、物語の語り部的道化師カスペル役に小日向文世。映像・舞台で現在、最も輝いている俳優である小日向が演じる道化師が芝居の狂言回しの役を担います。そして、串田作品初出演の雛形あきこ。映像・テレビで活躍する彼女の新たな魅力が発揮されるでしょう。音楽監督は昨年の『空中キャバレー』の音楽と演奏で観客を熱狂させたcobaが担当し、演奏します。そしてサーカスアーティスト。空中ブランコで観客を魅了したヴァネッサ・パウ、美しいフォルムで圧倒的な力を見せたヴァロンタン・ベロ、独自に開発した空中遊泳でオリジナリティを見せるタンタン等に、今年3月に新たにオーディションで選ばれたセシリアとニコラが参加し、演劇とサーカス、音楽の融合が深化します。
音楽の演奏者には、東京交響楽団の首席クラリネット奏者である十亀正司、シカラムータの大熊ワタルたちも参加し、これ以上ないベストキャストで挑む作品です。他にも自由劇場時代から串田作品に出演している俳優陣、オーディションで選ばれた若者たち、まつもと市民芸術館を拠点に活動するTCアルプから選ばれた俳優。多方面で活躍するアーティストが集結した、魅力的な座組みで挑みます。
<豊饒なる演劇の力を信じて!>
ファウストの追い求めた未知なる自然を支配したいという欲望は、現代科学の基礎となり、その後の人間世界に多大な貢献をもたらしました。人間は真実の探求、飽くなき欲望の追求をやめることのできない生き物でもあります。私たちの生きている今、現代を、ファウストという類いまれなる知識人、そして飽くなき欲望に支配された男の物語を軸に世界を俯瞰し、見つめなおす。ファウストとメフィストフェレスの旅、笹野高史と串田和美が入れ替わりながら、架空の物語、串田ファウストが展開します。そしてそれは見世物小屋的道化芝居。今年8月古希を迎える串田和美が、探し求め続けている、演劇をめぐる旅に他なりません。「この芝居は音楽のように演じられるといい」。「演劇の宇宙にある、とりとめのない叙事詩。若き日の衝動を想うセンチメンタルな叙事詩のように」。豊饒なる演劇の力を信じて、2012年秋、まつもと市民芸術館が放つ、芸術監督串田和美の渾身の作品です。
ファウストという男がいた。彼は化学者であった。
だが彼が生きた時代、科学という概念は曖昧だったので、人々は彼を錬金術師、占星術師、魔術師などと呼んだ。また彼の恩恵を受けたことのない者たちは(ほとんどの人がそうだが)彼を大ボラ吹き、ペテン師、詐欺師などと呼んでいた。
彼は星を見つめ宇宙の真理を知りたいと願った。生き物を見つめ生命の神秘を知りたいと願った。物体を見つめ、新しい原子の誕生を夢見た。だがそれらの欲望は渾然一体となって、彼を苦しめるばかりであった。なにひとつわからない。なにひとつ理解することができないということばかりがわかって来るのだった。
ある日ファウストは遊園地に迷い込む。
そこには賑わいの気配だけがあり、誰の姿も見えない。回転木馬のようなストリートオルガンの音楽。気がつくと袋のような仮面をかぶった人々に囲まれる。ああ、悪魔たちだなと、彼は直感する。こんな様子で彼はメフィストフェレスに出逢う――メフィストは曖昧な謎のような言葉でファウストと契約をかわす。
24年間あらゆる欲望を満たすこと。若く精気に満ちた肉体。この世の謎を解き明かすこと。24年間が過ぎたら、魂をメフィストに譲ること。――ファウストの掌から血が流れる。血の契約書。
メフィストとファウストがハイウェイの脇に、ヒッチハイカーのように立っている。
高速で通過する車の音。これが悪魔の旅か?どこが瞬間移動だ。
――ギリシア神話の絶世の美女ヘレナ、パルマ公国での狂宴、人工生命体ホムンクルス、村娘マルガレーテとの出会い――
ファストとメフィストのロードムービー的旅は、時には物悲しく、時には滑稽に続く。
そして、約束の時期が近づく――
▲ロードムービーの幕開け。やっぱり、串田ワールドに音楽は必須!
▲ここが世田谷パブリックシアターだと言うことを忘れてしまうような臨場感溢れるサーカスシーン
▲客席の目の前で色々な技が繰り広げられます
▲ファウストとメフィストフェレスを演じるのは、笹野高史と串田和美。絶妙な掛け合いで物語をひっぱります。
▲物語の語り部的道化師カスペル役は小日向文世。どこまでがアドリブ?と思わせるひょうひょうとした芝居で笑いを誘います。
▲串田作品初出演の雛形あきこ。この絶世の王女に色仕掛けで迫られるのは・・・
まつもと市民芸術館企画制作
『K.ファウスト』
作・演出・美術・出演:串田和美
音楽・演奏:coba
出演:笹野高史/小日向文世/雛形あきこ/小西康久/さとうこうじ/内田紳一郎/片岡正二郎 他
東京公演
2012年10月6日(土)~14日(日)世田谷パブリックシアター
お問い合せ ぷれいす 03-5468-8113(平日11時~18時)
松本公演
2012年10月19日(金)~21日(日) まつもと市民芸術館特設会場
お問合せ:まつもと市民芸術館 0263-33-3800
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