『エンタメ ターミナル』では舞台を中心としたエンターテインメント関連情報をWEB記事として発信しています。
掲載内容は、掲載日付のものとなりますので、最新情報は各自ご確認ください。
※ 記事・写真等の無断使用・無断転載は禁止しています。なお、リンクはフリーです。
Bunkamura25周年記念 西本智実
『イルミナートフィル オーチャードホール定期演奏会』会見
▲写真左より、升田高寛(株式会社東急文化村代表取締役社長)、西本智実(指揮・映像台本)、大野一興(映像担当)
演奏会について(資料より)
国際的に活躍する指揮者として絶大な人気を誇る西本智実。
彼女が率いるイルミナートフィルハーモニーオーケストラとの定期演奏会がオーチャードホールで開催されることになりました。ロシア国立交響楽団首席客演指揮者、サンクトペテルブルク国立歌劇場首席客演指揮者を外国人として初めて歴任、その他にも英国ロイヤル・フィル、リンツ・ブルックナー管、モンテカルロ・フィル、ブダペスト国立管、アメリカ交響楽団他、数々の外国オーケストラから招かれ、オペラ指揮者としてもハンガリー国立歌劇場、プラハ国立歌劇場、ウクライナ国立オデッサ歌劇場などで成功を収めるなど華々しい活動を続けています。昨年のヴァチカン国際音楽祭2013にアジアの団体として史上初めて招聘され絶賛を浴び、そして今年はウィーンフィルと共にメインオーケストラとして異例の再招聘をされております。
記念すべき第1回定期演奏会を飾るプログラムとして選ばれたのは20世紀ドイツを代表する作曲家、カール・オルフの「カルミナ・ブラーナ」です。ソプラノ、テノール、バリトン歌手、混声合唱団、少年合唱団、大編成オーケストラを要するカンタータで、音楽だけでは伝えきれない作品本来の意図を、字幕と映像も駆使して表現する“新総合芸術”として披露します。
渋谷の街からオーチャードホールの特性を最大限に生かした“新総合芸術”を、回を重ねながら世界に発信していくことも視野に入れ、幅広い層の方々にお届けしていきます。
今後は年に2回のペースでこのシリーズを続けていきたいとのことです。
会見が行われました(2014年9月9日)
◆升田高寛(株式会社東急文化村代表取締役社長)
Bunkamuraが出来ましたのは1989年、今から25年前です。以来、世界中のアーティストを呼んで演奏会を開いてまいりました。この25年間はサントリーホールなどと足並みをそろえて、「東京に世界の芸術を持ってこよう」ということで、西洋の音楽芸術を日本に紹介する形でやってまいりました。(しかし、世界のものを紹介するだけでなく)日本にも素晴らしいものがたくさんあると思います。さかのぼりますと、葛飾北斎の絵を見てドビュッシーが作曲をしたような話が結構あります。焼物などもそうです。世界の中での日本の役割。そういうことを考えまして、Bunkamuraは音楽だけでなく芸術全般を行っておりますので、あらゆる「人脈」、と言いますか世界につながる「世界脈」を生かしていろんな形でこれからやっていけたらと思っております。私どもはいろんなアーティストに注目しておりますが、西本智実さんはその土地に根差した舞や楽器を取り込んだコラボレーションしたコンサートなども行っております。そういう姿を拝見していて、今後ご一緒できないかなと思いお声掛けさせていただきました。(新たな形として)11月に第1回目の演奏会を行い、その後もあらゆる形を取り込んでいいものを創ってゆきたいと思っております。
◆西本智実(イルミナートフィルハーモニーオーケストラ芸術監督・首席指揮者)
今、升田社長からもお話がありました通り、Bunkamuraさんから「一緒に何か複合的なことが出来ないか」というお話をいただき、「喜んでやらせていただきます」ということで第1回目を開催することになりました。1回目に行う「カルミナ・ブラーナ」は、今この時代にこの作品を通じて伝えたいことを盛り込みたいと思って創ったものです。私自身30代からずっと世界中20カ国をまわり、いろんなオーケストラや劇場と一緒に仕事をしてまいりました。ダイレクトに海外から仕事が来る中で、バチカンからも依頼が来て、バチカンで史上初めて第九を演奏しました。長崎の平戸に、フランシスコ・ザビエルが456年前に持ってきた「オラショ(祈り)」という曲があり、口伝で残しているので日本の民謡のようになっています。言葉からたどっていって、これは「グレゴリオ聖歌」だという研究もありますので、バチカンからお声を掛けていただいたのであればこの曲を復元して本山のバチカンでやりたいと思いました。ヨーロッパでヨーロッパの曲を演奏させていただくのは光栄なことですが、それだけでなくもうひとつ先のことが必要だと思いますし、そのひとつとして復元して演奏したわけです。そのことにより、バチカンはこの曲を初めて知り、このことは法王様のスピーチで世界中に発信されました。新しい動きが始まったのです。
イルミナートは、オーケストラ、オペラ、バレエ、など劇場の中身の部分がそろっております。これをいろんな形で打ち出し、既成概念を超えた活動をしております。今回東急文化村さんからお話をいただき、この場所でどういったものを打ち出そうか考えたときに、私の中で「カルミナ・ブラーナ」が浮かびました。今の時代と150年前は似たような動きがあると思います。外国で仕事をしていく中で実感として感じることもありますし、世界の機関の会議などの会話の中からもそう感じます。そのひとつとして「蝶々夫人」を京都の南座で上演しました。「カルミナ・ブラーナ」は、字幕を出しますが、古いイタリア語やドイツ語など様々な言語が出てくるのでなかなか訳しにくいのです。もとは教会の落書帳のようなものを使って作られているので、すごく人間的な部分と運命や宿命などを感じるようなことも含まれています。これを音楽や字幕で説明する中でも表現しきれない部分を映像を使っていきたいなと思っております。映像は大野一興さんにお願いしました。かなりエッジを利かせたものを作ろうと思います。今この時代に生きているという普遍的な部分を描きだしたいと思います。
「カルミナ・ブラーナ」は約1時間の作品なので、「その前に何か序曲などを付けないか?」と、Bunkamuraさんからご提案をいただきました。「カルミナ・ブラーナ」の訳詞をする中でその出だしが「おお運命の女神よ」という歌詞なので、「天の岩戸みたいだな」と思いました。それで作曲家の方に依頼したのですが、時間が足らず難しいと・・・。プロットは私自身が書いていましたし、8分くらいの短い曲ですから最終的には自分自身で作曲することになりました。天の岩戸の前で「ひ、ふ、み」の祝詞を詠んだという伝承があります。10年前からヘブライのことを調べている中で、「この“ひふみ”は日本語ではないのではないか。ヘブライの言葉ではないのか?」と考えました。ヘブライの言葉で「おお美しい女神よ。どんな言葉を言えばここから出てくるんだ」というのが「ひ、ふ、み」に近いんです。こういうことから、天の岩戸と「カルミナ・ブラーナ」を関連付けました。「ひ、ふ、み」とヘブライ語の歌詞を交差させていきます。西洋の楽器で日本の音を出します。文化力はダイレクトにあるいはシンボリックに世界に発信できるとても力のあるものだと確信しています。
◆大野一興(映像)
西本さんからやりがいがある、そしてとても難しいオーダーを拝命しました。「指揮者・西本智実」としてお目にかかったのが最初ですが、すぐに芸術家そのもので、アーティストであり、音をまとめるだけでない方だなと思いました。異なる時代や異なる文化の中に偏在するいろいろなものを、独特の感覚で一瞬でアプローチする方です。今回の「カルミナ・ブラーナ」に関してもディスカッション、セッションを重ねています。普通は、ロジカルに組み立てていくと全く関係ないものに対しては後付けをしていくことが多いと思うのですが、西本さんは世界を飛び越えて、共通テーマやそこにある心理にアプローチし、自分の持っている表現方法で舞台の上で再構成して皆さんに提供する、そういう芸術家だと思います。それをどのように感じるかはお客様自身なのです。西本さんが思われていることを、どういう形だったら五感に訴えるものが出来るのかなということを今考えています。テクニカルな部分はもちろん必要なのですが、技術的なことよりも西本さんのお考えになる空間を再現できる映像はどのようなものなのかを考えています。今回は時間と空間を超える舞台芸術になると思いますので、“超時空舞台芸術”というとらえ方を、自分の中ではしています。
―――Bunkamuraという場所は西本さんにとってどのような場所ですか?
Bunkamuraにはホールだけでなく美術館などもあり、渋谷という年齢層のあらゆる幅がとても広い街に
マッチする場所だと思います。
どこの国の劇場もそうですが、劇場は街の顔になります。
近くのレストランで打ち合わせていても街の人と触れ合って、
街ごとサロンのような感じもあり、Bunkamuraには複合的な面の導入があると感じています。
ひとつのコンサートで終わりではなく、息吹があり、つながっていく、
そういう場所だと思います。そういうことを目指してこられたこの場所で
私自身もここから新たな面を出せる時が来たと感じております。
情報は書き込んだ時点のものですので、実際の内容と異なる場合があります。
あらかじめご了承下さい。