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舞台『アーモンド』主演 長江崚行さん、眞嶋秀斗さんインタビュー 2022年02月

(2022年02月17日記載)

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舞台『アーモンド』主演 長江崚行さん、眞嶋秀斗さんインタビュー





あらすじ


怪物と呼ばれた少年が、愛によって生まれ変わるまで――。

感情を司る脳の部位、偏桃体(形状が似ていることから、原作内ではアーモンドと表現される)が人より小さく、
怒りや恐怖といった感情をうまく感じることができない十六歳の高校生、ユンジェ(Wキャスト:⻑江崚行/眞嶋秀斗)。
祖母(伊藤裕一)は彼を“かわいい怪物”と呼んだ。母親(智順)は感情がわからない息子に「喜」「怒」「哀」「楽」
「愛」「悪」「欲」などの感情を丸暗記させることで、なんとかユンジェを“普通の子”に見えるようにと訓練してきた。

そんな彼は、十五歳の誕生日に、目の前で祖母と母親が通り魔に襲われ死傷したときも、
ただ黙ってその光景を見つめているだけだった。事件によって母親は植物状態になり、ユンジェはひとりぼっちに。

そんなとき現れた、もう一人の“怪物”ゴニ(Wキャスト:⻑江崚行/眞嶋秀斗)。
激しい感情をもつその少年との出会いは、ユンジェの人生を大きく変えていく――。



舞台『アーモンド』主演 長江崚行さん、眞嶋秀斗さんインタビュー
(2022年2月9日 取材・文:栗原晶子)


2022年2月25日から3月13日までシアタートラムにて上演される
conSeptヤング・アダルトシリーズ第1弾『アーモンド』。
この作品は2020年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位にも輝き、世界13カ国で翻訳された韓国の人気小説を舞台化。
感情をうまく感じることができないユンジェと、激しい感情を持つ同級生のゴニ、
大きく異なる2つのキャラクターを二人の若手俳優が役替わりで演じることでも話題となっています。
オーディションでこの役を得た長江崚行さんと眞嶋秀斗さんに、立ちはだかる壁に向かって挑む只中の稽古場にてお話を伺いました。

―― 役替わり(二役をそれぞれ回替わりで演じる)での舞台出演はお二人とも初めてということですが、
今感じている難しさと面白さについてお聞かせください。


◆眞嶋秀斗
ユンジェとゴニは、キャラクターの性格として両極にいるようなタイプなので、とにかく感情の振り幅が激しいです。
一人はユンジェで感情が動かない、もう一人のゴニは感情が激しい荒くれもの。
2つの役のバランスを取る前に一つの役を演じることの難しさに直面しています。
そもそも感情を感じられない子を演じることに、まだ自分でも答えが出せていないんです。
役者としてはどうしても自分の感情が動いてしまうので、どう表現していけばいいんだろうと。
崚行とも表現方法は違ってくると思うので、そういう意味でも僕たち二人がこれを役替わりで演じる意味が
あるんだろうなと思っています。つまりそれが難しさでもあり、面白さなのかな。それを楽しめて演じられたらいいなと思っています。

◆長江崚行
まるっきり違うキャラクターを回替わりで演じられるのは、役者としてはとても筋肉が鍛えられることですし、
それを経験させてもらえる現場はなかなかありません。もちろん、セリフ量という意味では大変なことも多いです。
いつも自分が出来ないことやどうしたってうまくいかない状況すらもどこかで楽しんで取り組んでみようと思いながら
稽古場にいますが、難しさと面白さも2倍に感じています。

―― お二人は舞台での共演は2度目とのことですが、
『アーモンド』の稽古の中で感じたご自身の変化と相手の変化についてお聞かせください。


◆眞嶋秀斗
『アーモンド』というこの作品をもっと好きになりました。
原作と脚本を読んだ段階では、ユンジェやゴニの視点で見ることが多かったのですが、
ほかのキャラクターを皆さんが演じられているのを見て、ユンジェとゴニ以外、例えばお母さんの物語、
おばあちゃんの物語があるなと感じています。それくらい密度の濃い作品だと実感し、
ほかの役も見えるようになってきたというのが、自分の変化なのかなと思います。
崚行の変化か……。

◆長江崚行
教えてよ、俺のことどう見えてるの?

◆眞嶋秀斗
崚行とは知り合って長いので、いつ見ても「長江崚行です」というイメージがしっかりあるんですが、
今回、稽古している時は崚行ってことは忘れるくらいユンジェ(ゴニ)として見ていますね、休憩時間も含めて。
それくらい役に入り込んでいるのが見えるので、その姿を見ると自分も自然に反対の役に入れます。

◆長江崚行
秀斗くんと出会って長いんですけど、2度目の共演と言っても1度目は割とコメディーというか、
コントチックな部分も多い作品だったので、ここまでがっつりお芝居をすることはありませんでした。
日に日によくなっていく秀斗くんの芝居を間近で見て、正直ずっと嫉妬している感じです。

◆眞嶋秀斗
ホントかよ、それー。

◆長江崚行
それはもちろん、秀斗くんの真っ直ぐさと、ひたむきさを周りの先輩方や演出の板さん(板垣恭一さん)が
汲み取ってくださっているからこそなんだけど、稽古場の需要と供給がマッチングしている状態だと思えるんです。
たとえその場で出来なくても絶対に出来るようになりたいし、どうにかして応えたいという真っ直ぐさを持っていて、
一方通行になっていない秀斗くんの現場の居方を見ていてうらやましいな、すごいなと思っています。
個人的な変化としては、今までは舞台上で音楽やセットの動きに引っ張ってもらっていた演技方法だったんですけど、
今回は違う感覚の中で生きています。ユンジェからこの人はどう見えているんだろうと考えれば考えるほど
わからないことが増えていきますが、それもユンジェの心理状態に近いのかなと思ったり、言語化出来ない、
鏡の中の世界を生きているようなユンジェの感覚を自分自身も毎日味わっています。
一方で、秀斗くんの頑張りをうらやましいと思っている自分は、ある種ゴニの感覚が芽生えてきているのかなとも思います。

◆眞嶋秀斗
音楽に引っ張られないように……と言えば、今回、音楽が生演奏で入りますけど、楽器が二人で違うんです。
これ、どうなるんだろうね。

◆長江崚行
すごいことだよね。音色が違うわけだから、普通に舞台上で混乱する可能性があるよね。
でももしかしたらチェロの音が聴こえているってことは僕がユンジェだって自然に反応できる感覚もあるのかもしれないね。

◆眞嶋秀斗
そうか!そういうねらいがあるのかも?

※長江さんがユンジェを演じる回はチェロ、眞嶋さんがユンジェを演じる回はヴァイオリンがキーボードとともに生演奏で入ります。

―― 演出の板垣さんからの言葉で印象的だったことはありますか。

◆長江崚行
お客さまから見て今なにを見せたいか、何を伝えようとしているのかっていう目線をたくさん教えてくださいます。
例えば、「音楽にユンジェが引っ張られてしまうと、お客さまは何を見たらいいかわからなくなる。
しんみりとした曲がかかっていたり、セリフはすごく悲しいことを話しているのに、
ユンジェはその悲しさとか辛さ、絶望を感じられない。
だからただ淡々と話しているほうがお客さまは悲しいよね……」とか、すごく具体的にアドバイスいただいています。
今までやってきた僕の演技方法ではない、新しいモードをユンジェで見つけて欲しい、
そうすればもっともっといろんな芝居が出来る役者になれるんじゃないかとか、
すごく前向きな言葉で僕らの芝居の熱を高めてくださるので、ちょっとドーピング剤というか、
エナジードリンクみたいな方ですね。嬉しいんですけれど(効きすぎて)実は時々不安になります(笑)。

◆眞嶋秀斗
「自分の枠組みにはまってないで、広げて演技出来たらいいね」と言ってくださったのが印象的でした。
最初の稽古の時に「この物語はユンジェの話でもあるし、観たそれぞれの人の話でもあるというところを
お客さまにも感じていただきたい」と板垣さんがおっしゃったんです。
確かに、自分もこの物語を読んだ時に、何か自分の中の痛いところをつつかれているような感じがして
とてものめり込んだので、その時の感覚をお届けしたいと思うことができました。
あとは、自分がとまどったり、感情がよくわからなくなってしまっている時に、
板垣さんがふっと一言声をかけてくださると糸口が見えてくることが多いですね。
崚行は板垣さんをエナジードリンクみたいと言いましたが、僕、アイスが好きなんでアイスクリームかな、いろんなフレーバーの。

◆長江崚行
秀斗が今食べたいのコレでしょって出してくれる。

◆眞嶋秀斗
「あ、そうでした、今、レモンシャーベットでした」みたいな感じで板垣さんの一言がスーッと入ってきて納得できる。
で、稽古場を出る時もちゃんと、おうちで食べる用のアイスクリームも出してくださいます。

◆長江崚行
宿題という名のね!

◆眞嶋秀斗
そうそう。

―― この作品には「ぼくは怪物でしょうか。」というキャッチコピーがついていますが、
作品と出会って「怪物」という言葉のイメージに変化はありましたか? 今、どう捉えていますか。


◆長江崚行
僕、天才とか才能とかいう言葉が大嫌いなんですよ。アイツ天才だよな、とかアイツ才能あるよなって言って
その人をカテゴライズしてしまうことって、その人が生きてきた環境とか努力をその言葉で片づけて
理解をやめたことにしてしまうんじゃないかと思うから。
自分がその言葉を認めて負けたくないという負けず嫌いもあると思うんですけど。
「怪物」もそうで、理解できない部分があったり、怖いからと遠ざけようとそうやって括るんだと思います。
実際にユンジェを演じていて彼は「怪物」じゃないんですよ、絶対に。人より感情を感じる細胞が小さいから
人とのコミュニケーションがうまくとれないというだけで。だから「怪物」ということで理解しようとすることを遠ざけてしまう
言葉にしたくはないなと思っています。

◆眞嶋秀斗
原作を読んだ時に思った「怪物」というのは、日常のなかで目を背けたり、
何かから逃げたりという心のゆらぎとか、ゆがみみたいなものでした。
感情が反対方向に引っ張られている時のような状態がもしかしたら「怪物」に近いのかなと思いました。
ゴニも生まれた時から愛というものを受けずに育ってきて、そういう自分の感情が揺らぐ瞬間にいっぱい出会ってきていると
思うので、そういうところに「怪物」がいたというか、あったのかなと思うんです。
自分も日常で思うようにいかないことや、ちょっとイヤだなと思うことをはっきり言えないことはありますし、
そういう心のむず痒さみたいなものに近いのかなと捉えています。

―― 今作をどのような方にご覧いただきたいですか。読者の方にメッセージをお願いします。

◆長江崚行
僕を好きでいてくれる方が観に来てくださるのはもちろん嬉しいですし、この作品(原作)を元々好きな方に
ご覧いただけるのも嬉しいです。
そして、今、ネットサーフィンしながらこの記事を何も知らずに偶然読まれた方にこそぜひご覧いただきたいですね。
何も知らない人が興味を持つって難しく大変なことですが、『アーモンド』は何気ない瞬間に出会ってくれたあなたこそ、
観るべき作品だと思います!!劇場でお待ちしています。

◆眞嶋秀斗
2022年がスタートしてから、なんだかまだ物足りないと思っている方、もう一歩踏み出してもいいよな、
踏み出したいなと思っている方にこの作品を観ていただきたいと思います。
そうすればこの作品に登場するキャラクターの中に自分を見つけられるかもしれません。
あなたがユンジェと出会ってどう思うのか、とても気になります。ご覧いただいたあなたの声をぜひ聞かせてください。




 

 

conSeptヤング・アダルトシリーズ#1 『アーモンド』 

 

日程:2022年2月25日(金)〜3月13日(日)

会場:シアタートラム

 

原作 ソン・ウォンピョン(チャンビ刊) 

翻訳 矢島暁子(祥伝社刊)

脚本・演出 板垣恭一

音楽 桑原まこ

 

長江崚行 眞嶋秀斗

智順 伊藤裕一 佐藤彩香 神農直隆 今井朋彦

 

https://www.consept-s.com/almond/

 

 

 
 

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