情報紙から飛び出した 演劇系エンタメ サイト
Copyright Since1999 情報紙ターミナル
Copyright Since2010 株式会社ERIZUN

歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」観劇レポート 2025年05月

(2025年05月05日記載)

『エンタメ ターミナル』では舞台を中心としたエンターテインメント関連情報をWEB記事として発信しています。
掲載内容は、掲載日付のものとなりますので、最新情報は各自ご確認ください。

※ 記事・写真等の無断使用・無断転載は禁止しています。なお、リンクはフリーです。

 

歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」観劇レポート

昼の部『京鹿子娘道成寺』左より、
白拍子花子=八代目尾上菊五郎、白拍子花子=六代目尾上菊之助、白拍子花子=坂東玉三郎

※舞台写真を多数掲載しております。観劇前の方はご注意ください。

公演概要(リリースより)


5月2日(木)、歌舞伎座5月公演、「團菊祭五月大歌舞伎」が幕を開けました。

【昼の部】

尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎襲名披露興行の幕開きを飾るのは、『寿式三番叟(ことぶきしきさんばそう)』
「翁」の品格と儀式性、「三番叟」の祝儀性を併せ持ち、五穀豊穣を祈るおめでたいひと幕。
中村又五郎の翁、中村雀右衛門の千歳をはじめとして、尾上松也、中村歌昇、中村萬太郎、尾上右近、
中村種之助の三番叟、中村米 吉の附千歳という花形が揃い、襲名披露の幕開きを寿ぎます。
翁と千歳の厳粛な舞ののちに、躍動感溢れる三番叟。清新さのなかに厳かさをも感じさせる舞台に、
客席は襲名披露興行への期待に満ち溢れ、おめでたい雰囲気に包まれました。

昼の部『寿式三番叟』左より、三番叟=尾上松也、千歳=中村雀右衛門、翁=中村又五郎、附千歳=中村米吉

昼の部『寿式三番叟』(前)左より、三番叟=中村萬太郎、三番叟=中村歌昇
(後)左より、三番叟=尾上右近、三番叟=尾上松也、三番叟=中村種之助



続いては、『勧進帳(かんじんちょう)』。歌舞伎十八番屈指の人気作です。
智勇を兼ね備えた武蔵坊弁慶を市川團十郎が、颯爽とした風姿で弁慶と対峙する富樫左衛門を
八代目尾上菊五郎が、気品と憂い漂う源義経を中村梅玉が勤めます。
襲名披露狂言より前の演目に、襲名する俳優が出演することは極めて異例のことですが、
“令和の團菊”の共演で「團菊祭」の幕を開けたいという八代目菊五郎たっての希望で実現しました。
幕が開くと、奥州安宅の関。関所を警護する富樫(八代目菊五郎)が登場すると、
場内からは襲名を祝福する大きな拍手と「音羽屋!」「八代目!」の大向うが場内に響き渡ります。
名乗りを終え、花道からは都を落ち延びてきた義経(梅玉) と四天王の亀井六郎(尾上松也)、
片岡八郎(尾上右近)、駿河次郎(中村鷹之資)、常陸坊海尊(市川男女蔵)が登場。
続いて、花道に弁慶(團十郎)が登場すると、主君を守る弁慶と富樫の間に張り詰めた緊張感が場内に漂います。
ここから弁慶による白紙の勧進帳の読み上げ、富樫が弁慶を追及する「山伏問答」など、
物語は息もつかせずに次々と展開。弁慶と富樫の火花が飛び散るようなやり取りの応酬、
弁慶の「延年の舞」を経て、幕切れで盛り上がりは最高潮に達し、
弁慶が飛び六方で豪快に引っ込むと大きな拍手が鳴り響きました。
昼の部『勧進帳』左より、武蔵坊弁慶=市川團十郎、富樫左衛門=八代目尾上菊五郎

昼の部『勧進帳』左より、駿河次郎=中村鷹之資、武蔵坊弁慶=市川團十郎、常陸坊海尊=市川男女蔵、源義経=中村梅玉

昼の部『勧進帳』武蔵坊弁慶=市川團十郎



三幕目は、『三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)』より「大川端庚申塚の場」。
中村錦之助の和 尚吉三、坂東彦三郎のお坊吉三、中村時蔵のお嬢吉三の三人の盗賊が運命的に出会い、
義兄弟の契りを交わす名場面です。節分の宵、朧月夜の大川端で、夜鷹のおとせ(中村莟玉)に
声をかけるお嬢吉三。道案内を頼みますが、突然お嬢吉三は豹変し…。
三人の盗賊による河竹黙阿弥による七五調の流麗なせりふの応酬、独特の頽廃美 溢れる世界観が
客席を包みました。
昼の部『三人吉三巴白浪』左より、お嬢吉三=中村時蔵、和尚吉三=中村錦之助、お坊吉三=坂東彦三郎



そして昼の部は、八代目尾上菊五郎、六代目尾上菊之助襲名披露狂言
『京鹿子娘道成寺(きょうかのこむすめどうじょうじ)』で打ち出しとなります。
六代目以来、菊五郎家が当り役としてきた本作は、平成4(1992) 年11月には、七世梅幸、七代目菊五郎、
八代目菊五郎(当時丑之助)の音羽屋三代による『京鹿子娘三人道成 寺』として上演。
その後、玉三郎と八代目菊五郎の共演によって『京鹿子娘二人道成寺』として平成16(2004)年1月に
歌舞伎座で初演され、以降再演を重ねています。
この度は、八代目尾上菊五郎、尾上菊之助の白拍子花子に、坂東玉三郎も白拍子花子を勤め、
襲名に華を添える「三人花子」の趣向で上演されました。
八代目菊五郎も事前の取材会で玉三郎の出演について「今年は祖父(七世梅幸)の没後30年。
祖父も喜んでくれているものと思います」と語ります。幕が開くと、道成寺でとり行われる
鐘供養のために、所化たちが集まっています。花道七三に白拍子花子(八代目菊五郎、菊之助)が現れ、
竹本の演奏に合わせて華やかに踊ります。親子が息をぴったり合わせて娘心と鐘への恨みを踊る姿。
一気に客席が道成寺の世界に引き込まれます。所化と花子の禅問 答ののちに紅白幕が上がると、
玉三郎、八代目菊五郎、菊之助の三人花子が揃い踏み。桜花爛漫の道成寺に三人の花子が揃う豪奢な舞台に、
客席からはため息がもれます。
三人の花子が揃って華やかな手踊りを披露し、浅葱色の衣裳に鮮やかに引き抜くと、
客席からは大きな拍手が響きます。その後も花子が入れ替わり、目まぐるしく踊りが展開。
襲名披露興行ならではの豪華絢爛な道成寺に、客席からは惜しみない万雷の拍手が送られました。
昼の部『京鹿子娘道成寺』左より、白拍子花子=八代目尾上菊五郎、坂東玉三郎、六代目尾上菊之助_31S3391


【夜の部】

夜の部の幕開きを飾るのは、『義経腰越状(よしつねこしごえじょう)』
兄頼朝に謀反の疑いをかけられた九郎判官源義経(中村萬壽)は都に戻り、
悪臣の錦戸太郎(坂東亀蔵)と伊達次郎(中村種之助)の兄弟に唆され、遊興にうつつを抜かす日々。
忠臣たちの諫言も聞き入れない義経の機嫌を直そうと、泉三郎忠衡(河原崎権十郎) が
日本一の音頭取りとして五斗兵衛盛次(尾上松緑)を迎え入れます。
名軍師ながら、刀の目貫師として世を忍ぶ五斗兵衛を、泉三郎は軍師に取り立て
鎌倉方の軍勢に備えようとしているのです。
しかし大の酒好きの五斗兵衛は、禁酒の誓いを破り、つい盃に手をのばしてしまい…。
次第に酒に酔った五斗兵衛が、竹田奴を相手に三番 叟を披露。
おおらかながらも、襲名を寿ぐおめでたく厳かな雰囲気漂う舞台に、惜しみない拍手が送られました。
夜の部『義経腰越状』(前)左より、伊達次郎=中村種之助、五斗兵衛盛次=尾上松緑、錦戸太郎=坂東亀蔵
(後)左より、泉三郎忠衡=河原崎権十郎、九郎判官義経=中村萬壽

夜の部『義経腰越状』五斗兵衛盛次=尾上松緑



続いては、『口上(こうじょう)』。舞台上には、
尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎、尾上丑之助改め六代目尾上菊 之助をはじめに、
七代目尾上菊五郎、中村梅玉、坂東玉三郎、坂東楽善という襲名披露口上ならではの歌舞伎界を代表する
豪華顔合わせに加え、尾上松緑、市川團十郎ら新菊五郎の同世代の俳優が並び、ご来場のお客様に挨拶を述べました。
八代目菊五郎は、「親子二代で盛大に襲名興行を催せること、ご列座の皆々様のお力添え、関係各位のご厚情、
いずれも様方のご後援の賜物と、篤く篤く御礼申し上げ奉りまする」と挨拶し、
「歴代の菊五郎が 大切にしてまいりました、伝統と革新に則りまして、精進してまいる覚悟」と決意を固めます。
また、この度の襲名について「初代が菊五郎を名乗りまして、約三百年。ここに、史上初めてふたりの菊五郎が
並び立つことに成りましてござりまする」とも述べ、客席から暖かい笑い声が響く場面も。
菊之助は「大きな名跡を襲名させていただく感謝とともに、立派な歌舞伎俳優になれますよう、いずれも様、
この後もご後援のほど、お願い申し上げ奉りまする」と凛々しく挨拶しました。
七代目菊五郎も、「こうして親子三代揃って舞台に立てること、この上 の喜びはございません」と感謝を述べ、
「八代目!」「音羽屋!」の大向うが響き、親子の襲名を祝福するなか、万雷の拍手のうちに襲名披露口上は幕を閉じました。
夜の部『口上』(前)左より、六代目尾上菊之助、八代目尾上菊五郎、七代目尾上菊五郎



夜の部は八代目尾上菊五郎、六代目尾上菊之助襲名披露狂言
『弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)』で締めくくりとなります。
五世菊五郎が初演で弁天小僧菊之助を演じて以降、音羽屋ゆかりの芸として受け継がれてきた河竹黙阿弥による名作。
八代目菊五郎も平成8(1996)年5月の菊之助襲名披露興行で「浜松屋見世先」の場を初演し、繰り返し演じてきた演目です。
この度は「浜松屋見世先」「極楽寺屋根立腹」の場で八代目尾上菊五郎が、「稲瀬川勢揃い」の場で
尾上菊之助が弁天小僧菊之助を勤めます。幕が開くと、鎌倉雪の下の 浜松屋。
娘に姿を変えた弁天小僧菊之助(八代目菊五郎)と南郷力丸(尾上松也)が婚礼の準備として店にやってきます。
娘の万引きを疑う店の番頭(市村橘太郎)が額に傷を負わせてしまいますが、持っていた品は別の店の物。
浜松屋幸兵衛(中村歌六)の詫びや鳶頭清次(尾上松緑)のとりなしで、店主が娘にお詫びの百両を渡すと
ふたりは帰ろうとします。そこに侍に扮した日本駄右衛門(市川團十郎)が現れ、
ふたりの正体を盗賊白浪五人男の弁天小僧と南郷力丸と見破り…。
弁天小僧菊之助の名台詞「知らざァ言って聞かせやしょう…」が朗々と 響き、
場内からは威勢の良い「音羽屋!」の大向うがかかります。ツラネ(七五調の名台詞)を白浪五人男が述べる
名場面「稲瀬川勢揃い」の場では、菊之助の弁天小僧菊之助に、市川新之助の日本駄右衛門、坂東亀三郎の忠信利平、
尾上眞秀の南郷力丸、中村梅枝の赤星十三郎という新菊之助と同世代の俳優が勢揃い。
彼らの父八代目 菊五郎(当時丑之助)、團十郎(当時新之助)、彦三郎(当時亀三郎)も、
子役時代、昭和58(1983)年2月 の歌舞伎座での菊五郎劇団35周年の天地会や、平成元(1989)年5月の歌舞伎座興行で勤めています。
新菊之助世代の堂々とした演技に、客席は大盛り上がり。盛大な拍手が送られました。
大詰「滑川土橋」の場では、七代目尾上菊五郎の青砥左衛門藤綱と、その子分の伊皿子七郎を八代目尾上菊五郎が勤め、
團十郎の日本駄右衛 門と対峙します。七代目と八代目、ふたりの菊五郎が並び立って團十郎と共演し、
襲名披露興行の初日を象徴的に締めくくりました。
夜の部『弁天娘女男白浪』
(前)左より、南郷力丸=尾上松也、弁天小僧菊之助=八代目尾上菊五郎
(後)左より、浜松屋倅宗之助=中村萬太郎、浜松屋幸兵衛=中村歌六、日本駄右衛門=市川團十郎

夜の部『弁天娘女男白浪』
(前)左より、南郷力丸=尾上眞秀、赤星十三郎=中村梅枝、忠信利平=坂東亀三郎、弁天小僧菊之助=尾上菊之助
(後)日本駄右衛門=市川新之助

夜の部『弁天娘女男白浪』左より
日本駄右衛門=市川新之助、南郷力丸=尾上眞秀、赤星十三郎=中村梅枝、忠信利平=坂東亀三郎、弁天小僧菊之助=尾上菊之助

夜の部『弁天娘女男白浪』青砥左衛門藤綱=七代目尾上菊五郎

夜の部『弁天娘女男白浪』日本駄右衛門=市川團十郎

 

松竹創業百三十周年

尾上菊之助改め 八代目 尾上菊五郎襲名披露

尾上丑之助改め 六代目 尾上菊之助襲名披露

團菊祭五月大歌舞伎

 

2025年5月2日(金)~27日(火)

劇場:歌舞伎座

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/890

 

 

 
 

情報は書き込んだ時点のものですので、実際の内容と異なる場合があります。
あらかじめご了承下さい。

[ PR ]