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歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」上演中 2025年08月

(2025年08月08日記載)

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歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」上演中

©松竹
第三部『野田版 研辰の討たれ』前列左から
姉娘およし=中村七之助、平井九市郎=市川染五郎、守山辰次=中村勘九郎、平井才次郎=中村勘太郎
妹娘おみね=坂東新悟、番人番五郎=市川中車

※舞台写真を多数掲載しております。観劇前の方はご注意ください。

★関連記事→歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」初日劇場前イベント

公演概要(リリースより)

8月3日(日)、歌舞伎座8月公演、松竹創業百三十周年「八月納涼歌舞伎」が初日の幕を開けました。
歌舞伎座での「納涼歌舞伎」は、平成2(1990)年より十八世中村勘三郎(当時 勘九郎)と
十世坂東三津五郎(当時 八十助)らを中心に、花形俳優が活躍する公演として人気を博してきました。
恒例の三部制で、古典から期待高まる新作、豪華競演による舞踊まで、熱気溢 れる舞台が目白押しです。
第一部の開場前には、松本幸四郎、中村勘九郎、中村七之助、坂東巳之助、坂東新悟、大谷廣太郎、
中村米吉、中村隼人、中村橋之助、市川男寅、中村福之助、中村虎之介、中村玉太郎、中村歌之助、
市川染五郎、市川團子、中村勘太郎、中村長三郎がそれぞれ直筆の言葉をしたためたうちわを手に、
揃いの浴衣で劇場前に登場しました。幸四郎、勘九郎、七之助、巳之助、新悟、米吉、隼人、橋之助、
染五郎、團子が登壇者を代表して挨拶し、幸四郎の発声で「歌舞伎座でお待ちしてます!」と呼びかけ、
集まったお客 様から大きな拍手と声援を受けました。
うちわは、公演期間中、出演者30名分を劇場2階ロビーに展示いたします。

公演レポート


【第一部】
今年の「納涼歌舞伎」の第一部は、31年ぶりの上演となる新歌舞伎『男達ばやり』で幕を開けます。
坂東巳之助が町奴の朝日奈三郎兵衛、中村隼人が旗本奴の三浦小次郎、“粋”な男伊達 が互いの意地を張り合います。
上野不忍池で老人六兵衛(嵐橘三郎)が池の中に飛び込むところに出くわした三浦小次郎(隼人)と奴権平(市川青虎)でしたが、
二人は水が苦手。溺れる六兵衛を目前にした可笑しみのあるやりとりに場内からは笑いが起きます。
そこへ現れた船頭があっという間に六兵衛を救い出します。この男こそ、「人助け屋」と名高い朝比奈三郎兵衛(巳之助)。
娘の死後、入り婿の又 兵衛と後妻のとまに疎まれていることを嘆き身投げをしたという六兵衛を助けようと互いの
男伊達を競い合う朝比奈と三浦。又兵衛の茶店では、女房とま(中村米吉)の尻に敷かれている又兵衛(中村橋之助)が痴話喧嘩の最中。
あたふたとして惚けた又兵衛と、次から次へと嘘を並べ立てる口達者なとまの様子に客席からは笑いが。
そんな茶店にやって来た朝比奈と三浦は…。
新作歌舞伎『NARUTO-ナルト-』をはじめ、近年ライバル関係の役柄を多く演じてきている巳之助と隼人。
江戸の“粋”を競い合う二人が、それぞれの男としてのプライドや正義感で、自分を大きくみせようとする言動を
コミカルに描いた作品に、満場の客席は大いに盛り上がりました
©松竹 
第一部『男達ばやり』左より、又兵衛女房とま=中村米吉、茶屋亭主又兵衛=中村橋之助、三浦小次郎=中村隼人
©松竹 
第一部『男達ばやり』左より、三浦小次郎=中村隼人、朝日奈三郎兵衛=坂東巳之助
©松竹 
第一部『男達ばやり』左より、放駒四郎兵衛=中村福之助、朝日奈三郎兵衛=坂東巳之助、唐犬権兵衛=市川猿弥

続いては、松本幸四郎と中村勘九郎という舞踊巧者の二人が、それぞれの個性を見せる注目の舞踊二題。
荘厳な雰囲気で始まる『猩々』は、中国の霊獣“猩々”の伝説をもとにした義太夫節の舞踊です。
酒売り(市川高麗蔵)に勧められるままに大好きな酒を飲む猩々(幸四郎、勘九郎)は、ほろ酔い加減で戯れ、
酒に酔った足取りで見せます。時にかわいらしく、時にダイナミックに、同じ振りでもそれぞれの個性が発揮され、
幸四郎と勘九郎が息の合った踊りを見せると、「高麗屋!」「中村屋!」の大向うと共に、大きな拍手が沸き起こりました。
©松竹 
第一部『猩々』左より、猩々=中村勘九郎、猩々=松本幸四郎

続く『団子売』は、『猩々』から一転、賑やかな天神橋を舞台に、仲睦まじく愛嬌のある団子売りの夫婦、
杵造(幸四郎)とお福(勘九郎)が明るく朗らかに踊ります。
花道から餅屋台を担いでやって来た杵造とお福が餅をつき始めると、まるで本物のような餅つきの様子と、
その小気味のよさに場内が沸き立ちます。杵造がひょっとこ、お福がおかめの面を付けて夫婦愛と長寿を祝いお目出度い踊りを披露。
それぞれが手にする団扇には、幸四郎・勘九郎の家の紋が描かれています。
二人の踊りで幸福感に満ちた雰囲気に客席が包まれると、第一部は華やかに打ち出しとなりました。
©松竹 
第一部『団子売』左より、杵造=松本幸四郎、お福=中村勘九郎
©松竹 
第一部『団子売』左より、杵造=松本幸四郎、お福=中村勘九郎

【第二部】
第二部は、日本神話の八岐大蛇(ヤマタノオロチ)退治をもとにした『日本振袖始』で幕を開けます。
今回の上演では、これまで岩永姫を演じてきた坂東玉三郎が監修をつとめ、
『天守物語』富姫ほか玉三郎の芸を継承してきた中村七之助が初役で岩永姫を勤めます。
八つの頭と尾を持つ八岐大蛇に悩まされる人々は、毎年美しい娘を生贄として捧げています。
稲田姫 (中村米吉)のもとへ、どこからともなく岩長姫(中村七之助)が姿を現すと、
素盞嗚尊(スサノオノミコト)(市川染五郎)が仕込んだ毒酒を飲み干して…。
花道から岩永姫が登場すると、場内からは大きな拍手が起き、その一挙手一投足を固唾をのんで見守ります。
壺に入った酒を飲み干し、舞に興じながら岩永姫は徐々に本性を現します。
素盞嗚尊が登場すると、その凛々しい姿に場内の空気が引き締まり、大蛇の分身も加わった八岐大蛇との
迫力ある立廻りに客席のボルテージは上がります。
妖しくも美しく、豪奢で古風な雰囲気の漂う舞踊劇をお楽しみくださいませ。
©松竹 
第二部『日本振袖始』岩長姫実は八岐大蛇=中村七之助

続いては、『火の鳥』。永遠の生命を授けるという「火の鳥」伝説をもとにした新作歌舞伎として、
坂東玉三郎が演出・補綴、オペラ演出などで活躍する原純が初めて歌舞伎を手掛け、演出・ 補綴・美術原案をつとめる話題作です。
病に伏せった大王(松本幸四郎)は、国土のさらなる拡大、その治世を望み、永遠の力を持つという
火の鳥の捕縛を息子のヤマヒコ(市川染五郎)とウミヒコ(市川團子)に命じます。
二人の王子は、火の鳥を求める道中の大河、山、砂漠を越える過酷な旅の中で互いの絆を深めていきます。
黄金の実をつけた林檎の樹の枝で羽を休めるという火の鳥(坂東玉三郎)に出会った二人は…。
幕開きから、衣裳や鬘、照明、舞台装置など、新作『火の鳥』の世界観が表れた歌舞伎座の空間に客席からはため息が漏れます。
二人の王子の旅路の場面では、舞台上の出演者の動きに映像が融合し、火の鳥が登場する場面では、
舞踊家・森川次朗の振付のもと男性ダンサーが舞台を彩ります。
作曲家・吉松隆の壮大な音楽が全編にわたり鳴り響き、幻想的な世界をつくり出します。
“永遠とは何か”を説く火 の鳥の出現によって、心を改める人間の姿。玉三郎が演じる火の鳥が歌舞伎座の空間に舞い上がると、
場内からは割れんばかりの拍手が送られました。
©松竹 
第二部『日本振袖始』左より、素盞嗚尊=市川染五郎、岩長姫実は八岐大蛇=中村七之助
©松竹 
第二部『火の鳥』左より、ウミヒコ=市川團子、ヤマヒコ=市川染五郎、大王=松本幸四郎
©松竹 
第二部『火の鳥』左より、ウミヒコ=市川團子、ヤマヒコ=市川染五郎
©松竹 
第二部『火の鳥』左より、ウミヒコ=市川團子、ヤマヒコ=市川染五郎、火の鳥=坂東玉三郎

【第三部】
第三部は、賑やかな舞踊『越後獅子』から。江戸は日本橋。
舞台上には獅子頭をかぶった角兵衛獅子の中村橋之助、市川男寅、中村福之助、中村虎之介、中村玉太郎、
中村歌之助、市川青虎と華やかな顔ぶれが揃い、浜唄やおけさ節、布を波に見立てた布さらしを披露して、
華やかに踊ります。越後獅子とは、毎年初夏から秋にかけて越後国の月潟村からやって来る大道芸人のこと。
花形俳優7人の角兵衛獅子が披露する様々な踊りが目に楽しく、若々しいエネルギーが躍動し、
歌舞伎座は華やかな空気に包まれました。
©松竹 
第三部『越後獅子』左より、角兵衛獅子=中村玉太郎、中村歌之助、中村虎之介、中村橋之助、中村福之助、市川青虎、市川男寅

続いては『野田版 研辰の討たれ』を上演。歌舞伎作品として上演されてきた『研辰の討たれ』を当り役としていた
十八世中村勘三郎(当時・五代目勘九郎)が演劇界の奇才・ 野田秀樹とタッグを組み、野田の脚本・演出により
平成 13(2001)年8月の歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」で初演。
古典作品を現代的な視点と野田独自の解釈で生まれ変わらせる「野田版」歌舞伎の第一弾 の上演は大きな話題に。
さらに、平成 17(2005)年には、歌舞伎座と松竹座の十八代目中村勘三郎襲名 披露狂言で再演。
それから20年――父勘三郎が当り役として演じた主人公の辰次、“研辰”を中村勘九郎 が勤め、初演以来、
松本幸四郎(当時・七代目染五郎)が勤めてきた平井九市郎役を幸四郎の長男・市川染五郎が、
勘九郎(当時・二代目勘太郎)が勤めてきた平井才次郎役を勘九郎の長男・中村勘太郎が 勤めるなど、
新世代による“新たな研辰”が誕生します。
物語の始まりは、赤穂浪士による討入り数日後。江戸から離れた近江国・粟津藩の剣術道場もその快挙の話題で持ちきりです。
そんな中でたった一人、赤穂浪士を非難するのは、元は町人で研屋あがりの守山辰次(中村勘九郎)。
研屋の辰次で、“研辰”です。お調子者の辰次は家老の平井市郎右衛門(松本幸四郎)に叱りつけられた挙句、
散々に叩きうちにされると、市郎右衛門に仕返しを企みます。
抜け目なく口達者でありながらどこか憎めない魅力を放つ勘九郎演じる辰次は観客の心を惹きつけます。
幸四郎演じる平井市郎右衛門が、辰次の仕掛けに引っかかる場面では客席から大きな笑いが起り、
初演時から強烈な存在感で観客に衝撃を与えた片岡亀蔵によるからくり人形も健在。
不本意にも市郎右衛門を殺めてしまった辰次は、市郎右衛門の息子である平井九市郎(市川染五郎)、
才次郎(中村勘太郎)兄弟の“仇”として、追われる身に。
粟津藩主奥方萩の江(中村七之助)の勧めで仇討ちの旅に出ることになるまだ若い兄弟二人。
今回、初演時から父が演じてきた役をそれぞれ受け継いだ染五郎と勘太郎は、ひたむきな存在感を溌剌と放ち、
キレのある立ち合いを披露する場面も。「若い! そしてエモい!!」と 勘九郎が言うと、場内は笑いと温かな空気が広がります。
勘九郎の次男・中村長三郎は、辰次が逃げた 宿屋の子・蔦屋長三郎役で登場し、舞台を盛り上げます。
七之助は、辰次の口車に乗せられるほど真っ すぐな萩の江と、人を蹴落としてでも幸せを掴もうとするおよしという
異なる二役を演じ分け、舞台を 引き締めます。「英雄の妻になりたい」と願うおよし、おみね(坂東新悟)姉妹の存在は、
コミカルで ありながら群衆の怖さを象徴し、そんな大衆の声を背に、真っ直ぐに辰次への仇討ちと向き合う九市郎と才次郎。
生きることを願う辰次の運命は…。
怒涛の如く繰り出される膨大なせりふ、躍動感あふれるエネルギッシュな姿、さまざまな表情を見せる勘九郎演じる辰次をはじめ、
個性豊かな登場人物が生き生きと描かれ、幕切れには鳴り止まない拍手 と共に大きな感動に包まれると、
野田秀樹も舞台に駆け付けてのカーテンコールも。
コミカルな展開の中に、現代社会にも通じる群衆の怖さが描かれた、
笑って泣ける極上のエンタテインメント『野田版 研辰の討たれ』。
「野田版歌舞伎」に新たな歴史を刻みます。
©松竹 
第三部『野田版 研辰の討たれ』(前)左より
家老平井市郎右衛門=松本幸四郎、守山辰次=中村勘九郎(後)左より、八見伝内=市川中車、小平権十郎=中村吉之丞
©松竹 
第三部『野田版 研辰の討たれ』左より、姉娘およし=中村七之助、守山辰次=中村勘九郎
©松竹 
第三部『野田版 研辰の討たれ』左より、平井九市郎=市川染五郎、平井才次郎=中村勘太郎

 

松竹創業百三十周年

八月納涼歌舞伎

 

2025年8月3日(日)~26日(火)

劇場:歌舞伎座

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/936

 

 

 
 

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