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スタジオライフ『アドルフに告ぐ』特別対談および製作発表のレポート 2015年06月

(2015年06月16日記載)

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『アドルフに告ぐ』特別対談および製作発表のレポート

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「戦後70年、今『アドルフに告ぐ』を上演するということ」
特別対談(提供写真/記事)


スタジオライフ創立30周年記念公演第3弾となる『アドルフに告ぐ』。
手塚治虫氏の不朽の名作の舞台化上演に先駆けて、映画監督の山本晋也氏とスタジオライフで
脚本・演出を手がける倉田淳との特別対談「戦後70年、今『アドルフに告ぐ』を上演するということ」が開催されました。

山本氏との対談は「日本ペンクラブの会合で山本さんとお会いして、第二次大戦中・戦後のご経験や
アウシュヴィッツに行ったときの話を伺ったんです。それがとても興味深くて、
今回ぜひ山本さんにお話を伺いたかった」という倉田のたっての希望で実現したもの。
山本氏は幼いころから手塚治虫氏の漫画を愛読していた。
「初めて読んだのが『メトロポリス』。未来都市の話で、高速道路も出てくる未来像を描いていた。
『リボンの騎士』は、天使の間違いで一人の子に男の子と女の子のハートを吹き込んでしまったという設定。
いわば、ジェンダーを扱った最初の漫画だったんじゃないでしょうか」と初期の手塚作品に触れる。
さらに、手塚氏との知られざるエピソードも。
「僕は落語家の立川談志師匠の門下(立川談遊)。手塚さんは談志師匠と親しかったから、
よくご一緒したんですよ。あんなに気楽に一緒にいたんだから、今考えるとサインでももらっておけばよかったな(笑)」と語る。
「青年期には、いい絵、いい小説、いい映画を見る。この三つがあればいい」と当時の手塚氏が語っていた言葉も紹介された。

山本氏は1939年生まれで、1945年の東京大空襲のときは6歳。
「空がB29戦闘機でいっぱいになるんです。それを見ていると、自然と奥歯がカタカタカタ…と音を立ててね。
焼夷弾が落ちる音は花火とまったく一緒。だから今も、花火は嫌いです」と当時を振り返る。
そして、「手塚さんは、自分の経験を元に『アドルフに告ぐ』で神戸の空襲を描いた。
もし僕が(映画で)描くなら、東京大空襲だな」と語る。

「『アドルフに告ぐ』は子供向け雑誌でなく、成人向けの週刊文春で連載された作品。
最後まで読んで手塚さんが言いたいことがわかった。アドルフ・カウフマンの最後の台詞、
“おれの人生は一体なんだったんだろう。あちこちの国で正義というやつにつきあって。
そして何もかも失った…肉親も…友情も…おれ自身まで…おれはおろかな人間なんだ。
だが、おろかな人間がゴマンといるから国は正義をふりかざせるんだろうな”が言いたかったんだろうと思う」と
山本氏が言うと、倉田も「私もそう思います。カウフマンの“おれの人生はなん だったんだ”という台詞が響いてくるし、
これから誰にもそんな思いをさせたくないと思うんです」と同意。
「“国家という怪物が正義という呪文を唱えている。その呪文にだまされてはいけない”というのが手塚さんの言いたかったこと。
大切なのは個人が幸せであることだし、自分が大切にしている家族や恋人、友人を亡くすことが最大の不幸。
国家の呪文に引っかかって、個人の幸せを失ってはいけない。政治的発言をしない手塚先生だけど、作品の中で語っているんだね。
タイトルの『告ぐ』というのは手塚先 生のメッセージ。誰に告ぐかというと、これは日本国民に告ぐということなんですよ」という
山本氏の言葉から、『アドルフに告ぐ』を今、この時代に上演する意味が伝わってきた。

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『アドルフに告ぐ』の製作発表が行われました。(提供写真/記事)


『アドルフに告ぐ』は、ドイツ人の少年アドルフ・カウフマンとユダヤ人の少年アドルフ・カミル……
二人のアドルフが育てた友情が、アドルフ・ヒットラーの支配する暗黒の時代の波に翻弄される様を描いた傑作漫画。
スタジオライフでは2007年に初演されたが、今回は「日本篇」「ドイツ篇」そして初演の構成を生かした
スタジオライフオリジナルの構成による「特別篇」としてリブート上演される。

倉田は「(昨年他界したスタジオライフの代表)河内(喜一朗)が5年ほど前から“戦後70年という節目の2015年に上演したい”
と言っていた作品。河内が決めていった最後のプログラムです。
遠くに軍靴が聞こえつつある今、この作品は後に受け継いでいかなければいけないと思う。
やらせていただく意味を考えながら上演したい」、スタジオライフ代表の藤原啓児は「先代の河内が並々ならぬ思い入れを
持った作品。どうぞ皆様に思いをお汲み取りいただき、応援していただきたい」と上演にかける熱い思いを語った。
また、劇団員からは「今、山本監督の言葉を伺って、僕らが作る『アドルフに告ぐ』のテーマ性が間違っていないことを
確信した」(曽世海司)、「手塚先生のたくさんのメッセージにあふれた作品を、劇団員が魂を込めて演じ切ることで
平和への思いを未来へつなげていきたい」(松本慎也)、「昨年、高校の芸術鑑賞会で『アドルフに告ぐ』の特別篇を
上演したとき、芝居に興味のない生徒もいるのに、物語が進むにつれてどんどん前のめりになってくれた。
作品の力と芝居の力を感じた」(仲原裕之)「歴史の大きな流れの中でただ演じるのでなく、いかに本当に生きられるか。
ライブ感を出すことが課題」(山本芳樹)など、力強いメッセージが寄せられた。

スタジオライフ『アドルフに告ぐ』は7月11日〜8月2日紀伊國屋ホール、
8月22日〜23日梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演される。


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スタジオライフ『アドルフに告ぐ』

 

原作:手塚治虫

脚本・演出:倉田 淳

 

【東京公演】7月11日(土)~8月2日(日)

紀伊國屋ホール

 

【大阪公演】8月22日(土)~23日(日)

梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

 

http://www.studio-life.com/stage/message-to-adolf2015/

 

 

 
 

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