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平成中村座「十月大歌舞伎」華々しく開幕!

©松竹 第一部『連獅子』
(前)狂言師右近後に親獅子の精=中村勘九郎(後)左より、狂言師左近後に仔獅子の精=中村長三郎、中村勘太郎
平成中村座「十月大歌舞伎」が本日、浅草・浅草寺本堂裏の仮設劇場にて幕を開けました。
「平成中村座」とは、平成 12(2000)年、かつて江戸の人々を熱狂させた江戸の芝居小屋「中村座」の
感動と興奮を現代に復活させるべく、十八世中村勘三郎が浅草に立ち上げた期間限定の仮設劇場です。
以降、 浅草を飛び出して全国、さらには世界各地にかつてない観劇体験を届けてきた「平成中村座」が、
令和 4(2022)年以来 4 年ぶりに誕生の地、浅草へ帰ってきました。
今回も「平成中村座」らしい、豪華で江戸情 緒がたっぷりの演目が揃い、
前売りと同時に即完売の大盛況ぶり。大入満員の初日となりました。
◎初帆上成駒宝船
午前 11 時開演の第一部は、中村橋之助・中村福之助・中村歌之助の成駒屋三兄弟による、
鮮やかで楽しい舞踊『初帆上成駒宝船』で幕開き。
平成 28(2016)年 10 月歌舞伎座の成駒屋親子同時襲名に際して作られた新作舞踊で、初演以来10年ぶりの上演となります。
三人の漁師、橋彦・福彦・歌彦が実りの秋に出航し、大海を目指すという明快な内容の舞踊。
暗闇に包まれた舞台が柝の快活な音色を合図に一気に明るく照らされる“チョンパ”の演出で、
彩り豊かな拵えに身を包んだ三兄弟が登場すると、拍手とともに「成駒屋!」の大向うが掛かりました。
それぞれが陽気に 踊り、歌詞の中には成駒屋や三人の名前に掛けた言葉遊びが登場するなど、朗らかな空気が芝居小屋に流れます。
さらに客席を大海に見立てての海にちなんだ愉快な振付に、“お目出度い”愛らしい小道具など、観客の頬も思わず緩みます。
やがて舞台奥が開く平成中村座ならではの演出で、晴れやかな青空の中から大船が登場すると大きな拍手とどよめきが。
今回の「平成中村座」の船出を祝う晴れ晴れしい舞台に大きな拍手が起きました。
©松竹 第一部『初帆上成駒宝船』左より、歌彦=中村歌之助、橋彦=中村橋之助、福彦=中村福之助
◎仮名手本忠臣蔵 九段目 山科閑居
続いては、赤穂浪士の討ち入り事件を題材とした、歌舞伎三大名作のひとつ『仮名手本忠臣蔵』より、
討ち入りの裏で揺らぐ人々の心を重厚に描いた「九段目 山科閑居」の名場面。
松の廊下の刃傷事件で、高師直に切腹を申し付けられた塩冶判官。塩冶家の国家老、大星由良之助は浪人となったのち、
妻・お石と息子・力弥とともに、山科で隠遁生活を送りながら仇討ちの機会を伺っています。
そんな由良之助の元を訪れたのは、戸無瀬と小浪の母娘。二人は、小浪の許嫁である力弥との婚姻を願い出ますが、
お石は戸無瀬の夫・加古川本蔵の過去の行いを引き合いにそれを拒絶します。
婚約破棄という苦しみの中で、やがて死を決意する母と娘。そこへ、一人の虚無僧が姿を現し…。
これまで数多の名優が演じてきた女方の大役、戸無瀬には中村七之助。平成 20(2008)年11月に平成中村座で通し上演された
『仮名手本忠臣蔵』では、父・勘三郎が初役で演じた思い入れの深い戸無瀬の役を、今回、七之助が初役で勤めます。
娘への強い思いと武家の妻としての誇りを胸に、決死の覚悟でお石に向かう迫力たっぷりの演技で、観客の涙を誘います。
可憐でありながら芯の強い娘・小浪には中村鶴松。七之助演じる戸無瀬に連れ立って、白無垢姿で登場した小浪が顔を見せると、
拍手とともに「中村屋!」の大向うが。戸無瀬とともに母娘の情愛を情感豊かに演じました。
そして物語の鍵を握る加古川本蔵には、 平成中村座初出演となる中村鴈治郎。
主君への忠義と娘への愛、ふたつの思いに心を揺らす役柄を、存在感たっぷりに演じ、亡き主君のため本性をひた隠しにする
夫・由良之助にそっと寄り添うお石を、平成中 村座おなじみの中村扇雀が気丈に演じます。
そして中村勘九郎が初役で大星由良之助を勤めることも話題に。
本蔵の苦難を推し量りながらも、由良之助自身も仇討ちへの思いを胸に秘める重要な役どころを堂々と勤め上げると、
芝居小屋に江戸の空気が流れ込みます。また、仇討ちの本懐達成を強く願いながらも、
愛しい許嫁に思いを馳せる力弥を中村歌之助が清新に勤め、充実の舞台に客席からは力強い拍手が送られました。
©松竹 第一部『仮名手本忠臣蔵 九段目』(前)左より
大星力弥=中村歌之助、大星由良之助=中村勘九郎、お石=中村扇雀(後)
左より、小浪=中村鶴松、加古川本蔵=中村鴈治郎、戸無瀬=中村七之助
©松竹 第一部『仮名手本忠臣蔵 九段目』左より
小浪=中村鶴松、戸無瀬=中村七之助
◎連獅子
第一部の最後を飾るのは、十七世勘三郎と十八世勘三郎が演じた伝説的な『連獅子』以来、
中村屋にとって大切に演じ継がれてきた舞踊の大作『連獅子』。
十八世勘三郎と勘九郎・七之助の親子三人による『連獅子』は、歌舞伎座さよなら公演をはじめ国内外で幾度となく上演され、
熱狂を巻き起こしてきました。そしてこの度、満を持して中村勘九郎と二人の息子、勘太郎・長三郎の三人による『連獅子』が
初めて上演されます。勘九郎と勘太郎、勘九郎と長三郎という親子競演による『連獅子』は、すでに歌舞伎座で経験済み。
平成中村座で『連獅子』が上演されること自体が初めてとなり、上演発表以来、話題を集めています。
獅子頭を手に、格調高い踊りを見せる三人の狂言師は、やがて花道を引っ込むと、厳粛な雰囲気の中に獅子の精へと姿を変え…。
勘九郎が堂々たる佇まいで親獅子の精を表現。厳しく力強い獅子を演じる一方で、子供たちを思う優しい眼差しを垣間見せます。
さらに勘太郎、長三郎の二人は親獅子に懸命に食らいつく仔獅子の姿を力いっぱいに演じ、父の姿を追いかけながらも、
前回の上演からさらにグレードアップした演技で、受け継がれてきた中村屋の魂を感じさせ、客席もヒートアップ。
また、前シテと後シテの間に澤村宗之助、市川男寅 の二人がコミカルな演技で会場を沸かせました。
平成中村座の空間で繰り広げられる大迫力の毛振りは、舞台から花道までを目いっぱい使い、
今にも客席に飛び込んできそうなダイナミックな表現で客席を圧倒。
ここでしか味わえない、平成中村座らしい特別な『連獅子』の上演に観客は大盛況。割れんばかりの拍手は
1分以上にわたって鳴りやまず、大熱狂の中、幕となりました。
©松竹 第一部『連獅子』左より
狂言師左近後に仔獅子の精=中村勘太郎、狂言師右近後に親獅子の精=中村勘九郎、狂言師左近後に仔獅子の精=中村長三郎
◎御存 鈴ヶ森
午後4時開演の第二部は、年齢も立場も異なる二人の男の友情を描いた、四世鶴屋南北による人気作『御存 鈴ヶ森』から。
品川宿に程近く、不気味に広がる鈴ヶ森。お尋ね者となった美少年・白井権八に 大勢の雲助たちが襲いかかります。
闇夜の中で襲いかかる刺客をバッタバッタと返り討ちにする権八。
するとそこへ、ただならぬ風格を漂わせる俠客・幡随院長兵衛が姿を現し…。
白井権八を勤めるのは、中村勘太郎。15歳9ヶ月での権八は最年少とされ、美しく可憐な一方で、
若くはつらつとした権八を清新に勤め上げます。記者会見で勘太郎自身も強い意欲を見せていた、
暗闇の 中で繰り広げられるだんまりの立廻りは、舞台と客席の距離が近い、平成中村座らしい迫力満点で見どころとなり、
客席を盛り上げました。対する幡随院長兵衛には、中村芝翫。情熱に溢れる若き剣士を広い心で受け止める重厚な役どころを、
風格たっぷりに表現し、勘太郎とのコントラストも客席に強い印象を残します。
「ゆるりと江戸で会いやしょう」という二人での名セリフが平成中村座の空間に響き渡り、
江戸と令和の今を繋ぎ、第二部の幕開きにふさわしい、爽やかで見応えたっぷりの舞台に、客席も大いに湧き立ちました。
©松竹 第二部『御存 鈴ヶ森』左より
白井権八=中村勘太郎、幡随院長兵衛=中村芝翫
◎助六曲輪初花桜
続いては、曽我兄弟の仇討ちを題材とした「曽我物」のうち、
歌舞伎らしい趣向がふんだんに盛り込まれた華麗で豪華絢爛な『助六曲輪初花桜』。
江戸の中村座でも幾度となく上演されてきたご当地・浅草ゆかりの「助六」が、晴れて「平成中村座」にて初めての上演となります。
江戸一の遊郭、吉原。花川戸助六は、花魁たちの人気を独り占め。けれども彼には心に決めた恋人である、
吉原一の花魁・揚巻がいました。そんな揚巻に言い寄ろうとする髭の意休が現れると、助六は彼に喧 嘩を吹っ掛けます。
実は助六の正体は、曽我五郎。亡き父の仇・工藤祐経を討つべく、
白酒売新兵衛を装う兄・十郎とともに手がかりである源氏の宝刀・友切丸を探しています。
そんな兄弟の元へ、網傘を被った侍が姿を見せ…。
平成中村座での『助六』の上演は、亡き十八世中村勘三郎の悲願でした。そんな大切な演目を、
この度 は勘三郎の長男・勘九郎による花川戸助六、次男・七之助による三浦屋揚巻での上演。
勘九郎は初役での 助六で、父・勘三郎が「習いたい」と言っていた片岡仁左衛門から稽古を受けました。
仁左衛門自身、十七世勘三郎に習った助六の大役を今回勘九郎に継承し、
半世紀ぶりとなる中村屋の助六が復活となりました。
勘九郎らしい粋な男伊達っぷりで観客を魅了しつつも、父・勘三郎の夢が詰まった「平成中村座」 で見事に現実のものに。
そして、平成30(2018)年2月歌舞伎座で仁左衛門演じる助六の相手役として勤め、すでに定評のある七之助の揚巻。
艶やかで気品に満ちた美しい花魁として、そして思い人であ る助六のため、誇り高く生きる強い女性として舞台上で華を咲かせ、
観客の視線を釘付けにしました。そして、中村扇雀の白酒売新兵衛は豪胆な助六とは対照的で、品がありながらも要所で笑いを誘い、
客席に 強い印象を残しました。また、中村芝翫の髭の意休は、花道での登場からラスボス感満載のいでたちで
助六の前に立ちはだかります。
揚巻の思い人である助六のことを口汚く罵り、いやらしさを見せ、スリリングな展開に。
そして、助六が探す刀・友切丸を保持しており…。
中村鴈治郎が演じるのは、通人里暁。物 語の中盤、鴈治郎が勘九郎演じる助六に股くぐりを促させられると、
「亡き勘三郎に瓜二つの、いい男! 助六を演りたがっていたから、今頃あっちで羨ましがっているよ、ほら、蝿が飛んできた!」と、
勘三郎が蠅になってこの世にやってくるという逸話を交え、場内を沸かせます。
さらに弟・扇雀演じる白酒売に 続けて股くぐりを促させられると、「どこかで見たことがある…おとう…と、そんなことはない」と
兄弟ネタで笑わせました。福山かつぎの中村長三郎は、花道から威勢よく登場し、くわんぺら門兵衛の中村橋之助と
気風の良いやり取りで観客の心を掴み、短い時間ながらも平成中村座にその存在感を示しました。
さらに今回は、久しぶりの上演となった「水入り」の場がつくのも見どころ。勘九郎が天水桶に飛び込 む本水を使った
ケレン味溢れる演出に、手に汗握る立廻りで大盛り上がり。
歌舞伎のエンターテイメン ト性が高まった一場に客席からは惜しみない万雷の拍手が鳴りやみませんでした。
大盛況の中初日の幕となりました。
©松竹 第二部『助六曲輪初花桜』花川戸助六=中村勘九郎
©松竹 第二部『助六曲輪初花桜』左より
くわんぺら門兵衛=中村橋之助、福山かつぎ=中村長三郎(後)髭の意休=中村芝翫
©松竹 第二部『助六曲輪初花桜』左より
花川戸助六=中村勘九郎、三浦屋揚巻=中村七之助、髭の意休=中村芝翫_01S1860
©松竹 第二部『助六曲輪初花桜』三浦屋揚巻=中村七之助
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