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歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」開幕!
©松竹 夜の部『一條大蔵譚 奥殿』一條大蔵長成=市川染五郎
公演概要(リリースより)
9月2日(水)、歌舞伎座9月公演「秀山祭九月大歌舞伎」が初日の幕を開けました。
「秀山」は明治から昭和にかけて活躍した名優・初世中村吉右衛門の俳名。
その功績を顕彰し、芸と精神を継承するため、二世吉右衛門が中心となって2006 年に「秀山祭」が始まりました。
それから 20 年目の記念すべき今年は、初世吉右衛門の生誕140 年にもあたり、
初世、二世吉右衛門ゆかりの演目が肩を並べます。
『春調娘七種』:爽やかで可憐な「曽我物」最古の舞踊
昼の部は、『春調娘七種』で幕開き。鎌倉時代初頭、富士の裾野で父の仇を討った、
曽我五郎と十郎の兄弟を主人公とした「曽我物」の舞踊演目として最古の作品と伝わるのが本作です。
仇の工藤祐経の館前を舞台に、勇み立つ曽我五郎(市川染五郎)・十郎(市川團子)の兄弟と、
それを諫める静御前(尾上辰之助)が春の七種を調子よく打ち踊る、明るく華やかな舞台。
舞台『ハムレット』のハムレット役でストレートプレイ初挑戦を果たした染五郎、
5月歌舞伎座での襲名披露も記憶に新しい辰之助、
スーパー歌舞伎『もののけ姫』でアシタカ・シシ神役を勤めた團子と
それぞれ近年活躍が目覚ましい花形三名は今回が初共演。
各々の個性溢れる配役で繰り広げられる舞踊は、会場の老若男女を魅了。
勇壮な五郎と聡明な十郎に彼らを見守る艶やかな静御前と対照的な姿をフレッシュに見せ、
秀山祭の幕開きを華麗に彩りました。
©松竹 昼の部『春調娘七種』左より、曽我五郎=市川染五郎、静御前=尾上辰之助、曽我十郎=市川團子
『三社祭』 :江戸の情緒、歌舞伎らしさ溢れる舞踊
江戸三大祭りにも数えられ、5月の東京の風物詩でもある浅草神社の三社祭。
その縁起譚を描いたのが、本作『三社祭』です。浅草近くの宮戸川に浮かぶ船上で、
愉快な踊りをみせる2人の漁師(中村歌昇・中村種之助)。
すると突然の雷鳴。雷に打たれ気絶した2人に悪玉・善玉がとりつきます。
江戸の情緒が詰まった前半部分に、悪玉・善玉による滑稽で風変わりな舞が繰り広げられる後半部分と、
見どころが溢れる陽気で愉快な舞踊です。
歌昇・種之助の兄弟による、歌舞伎の魅力がたっぷり詰まった舞踊。
江戸の流行唄に乗せて繰り出される軽やかで楽しげな踊りに、お客様の口元も思わずほころびます。
息ぴったりの圧巻の踊りに客席は爽やかな空気に包まれ幕となりました。
©松竹 昼の部『三社祭』左より、善玉=中村種之助、悪玉=中村歌昇
『ひらかな盛衰記』:源平の合戦を描いた名作 戦乱の世の悲哀と葛藤
源平の合戦を主題に、戦乱の世を懸命に生きる人々を劇的に描いた義太夫狂言の傑作『ひらかな盛衰記』。
当月は繰り返し上演される人気場面「逆櫓」に加え、その前場にあたる「大津宿屋」「笹引き」も上演します。
[大津宿屋・笹引き]木曽義仲の妻、山吹御前(上村吉弥)と遺児・駒若丸(中村秀乃介)は、
鎌田隼人(中村錦之助)と腰元お筆(八代目尾上菊五郎)父娘の手引きで鎌倉方から逃れ、大津へ。
そこでは船頭権四郎(中村又五郎)と娘およし(中村雀右衛門)が同宿していました。
すると、鎌倉方の番場の忠太(中村萬太郎)が現れ、駒若丸と誤っておよしの息子槌松を手にかけて…。
[逆櫓]数年後、およしは夫・松右衛門(松本幸四郎)と共に、息子と取り違えた駒若丸を
大切に育ててきました。松右衛門の正体は義仲の忠臣・樋口次郎兼光で、伝説の槽法「逆櫓の法」を習得し、
仇の義経を討つべく権四郎の家へ婿入り。
遂に、義経の船頭となる好機を得た松右衛門のもとへお筆が現れ、あの日の真実を語り…。
物語の鍵を握る人物・船頭松右衛門実は樋口次郎兼光は、初世、二世吉右衛門がともに得意とした、
代表的な役の一つです。今回初役として挑むのは、二世吉右衛門の甥にあたる松本幸四郎。
本人も「歌舞伎の得意技が詰まった演目だからこそ、しっかりと自分の歌舞伎の芸を見つめ直して勤めたい」
と語った通り、陽気で快活な船頭の松右衛門と、主君への静かな思いと苦悩を見せる樋口次郎兼光を
見事に演じ切りました。同じく初役の八代目尾上菊五郎は、 主君への忠義の思いを胸に、
懸命に生きる腰元お筆を、「大津宿屋」では優しい佇まいの腰元、そして「笹引き」では軽やかな立廻りに加え、
場名の由来となった笹を引く場面での覚悟に満ちた表情を、巧みに表現しました。
そして、船頭権四郎とおよしの父娘には中村又五郎と中村雀右衛門。乱世に翻弄されながら
自らの運命を必死に受け入れようとする市井の人々を、力強く演じ切ります。
さらに畠山重忠の尾上松緑は、短いながらも強烈な印象で懐の広い敵役を存在感たっぷりに演じます。
このほか船頭には市川染五郎、尾上辰之助、市川團子も顔を並べます。
「大津宿屋」「笹引き」の場面により役柄にも一層深みが加わり、最後は幸四郎のダイナミックな見得で力強く幕引き。
大入りの客席からは惜しみない拍手が送られ。大盛況の初日となりました。
©松竹 昼の部『ひらかな盛衰記 逆櫓』左より
腰元お筆=八代目尾上菊五郎、船頭松右衛門実は樋口次郎兼光=松本幸四郎、駒若丸=中村 秀乃介
©松竹 昼の部『ひらかな盛衰記 大津宿屋』左より
腰元お筆=八代目尾上菊五郎、駒若丸=中村秀乃介、山吹御前=上村吉弥、鎌田隼人=中村錦之助
©松竹 昼の部『ひらかな盛衰記 笹引き』腰元お筆=八代目尾上菊五郎
©松竹 昼の部『ひらかな盛衰記 逆櫓』船頭 松右衛門実は樋口次郎兼光=松本幸四郎
©松竹 昼の部『ひらかな盛衰記 逆櫓』左より、樋口次郎兼光=松本幸四郎、畠山重忠=尾上松緑
『雛鶴三番叟』 :女方による軽妙洒脱な舞踊
夜の部最初の演目は、『雛鶴三番叟』。五穀豊穣への祈りを込めた祝儀舞踊「三番叟物」のうち、
すべての登場人物を女方で踊る趣向が特徴的な優美で華やかな作品となります。
翁(中村魁春)が千歳(中村雀右衛門)を伴って現れ、天下泰平を祈念して格調高く厳かに舞います。
そこへ三番叟(中村萬壽)が躍動感溢れる踊りを見せ、舞台を彩ります。
「三番叟物」らしい見応え溢れる舞踊を、3人の女方によって彩り豊かに魅せるひととき。
翁、三番叟が女方に置き換わったことによるゆかしくも優美な魅力が溢れます。
51年ぶりとめったに観られない稀少な演目の上演。三番叟物らしい神聖な空気に包まれ幕となりました。
©松竹 夜の部『雛鶴三番叟』左より、三番叟=中村萬壽、翁=中村魁春、千歳=中村雀右衛門
『沼津』:敵討ちと親子の情愛に挟まれ、抗えぬ宿命を辿る
続いては『伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)』より悲劇の中での
家族愛を重厚に描く人気演目『沼津』。
荷担ぎの平作(中村歌六)から荷物持ちをさせて欲しいと頼まれた呉服屋十兵衛(片岡仁左衛門/Aプロ)。
先を急ぐ十兵衛ですが、平作の娘お米(片岡孝太郎)に一目惚れ。
そのまま立ち寄った平作の家で、衝撃的な事実が明らかになり…。
呉服屋十兵衛は片岡仁左衛門(Aプロ)と松本幸四郎(Bプロ)のダブルキャスト。
初日はAプロ・仁左衛門の十兵衛での上演です。これまで様々な劇場で好評を博してきましたが、
歌舞伎座での上演は初役で勤めた平成13(2001)年以来、25年ぶり。
コミカルな冒頭から緊張感溢れる幕切れまでを風格たっぷりに演じ切り、
場内に素朴で美しい沼津の景色を映し出します。
そして中村歌六の雲助平作は爽やかな十兵衛と対照的な滑稽で憎めないキャラクターで客席を魅了し、
物語の佳境では涙を誘います。
さらに片岡孝太郎のお米は凛として芯のある演技で、確かな存在感。 豪華俳優陣による胸を打つ舞台に、
客席からは惜しみない拍手が送られました。
©松竹 夜の部『沼津』左より、呉服屋十兵衛=片岡仁左衛門、平作娘お米=片岡孝太郎
©松竹 夜の部『沼津』左より、雲助平作=中村歌六、呉服屋十兵衛=片岡仁左衛門
©松竹 夜の部『沼津』左より
池添孫八=中村隼人、雲助平作=中村歌六、平作娘お米=片岡孝太郎、呉服屋十兵衛=片岡仁左衛門
『京人形』: 伝説の彫師・甚五郎と、魂を吹き込まれた人形の舞踊劇
夜の部3番目の演目は『銘作左小刀(めいさくひだりこがたな)』より『京人形』。
日光東照宮の「眠り猫」の作者としても知られる名彫工・左甚五郎の手で作られた
人形に命が吹き込まれ動き出す、楽しく盛り上がりに満ちた舞踊劇。
左甚五郎(尾上松緑)は京で見た小車太夫が忘れられず、彼女に似せた傾城姿の人形(中村時蔵)を作り出します。
すると不思議なことに、人形は動き出し…。
愉快で軽やかに魅せる尾上松緑の左甚五郎と、艶やかで美しい京人形の精の対照的な
二人が織りなすコントラストで、舞台を華やぎます。
さらに後半では、甚五郎の左手にまつわる伝説が語られ、甚五郎の妻・おとくを坂東新悟、
娘おみつ実は義照妹井筒姫に尾上辰之助と、多彩な俳優陣が揃った粋な雰囲気溢れる一幕となりました。
©松竹 夜の部『京人形』左より、左甚五郎=尾上松緑、京人形の精=中村時蔵
『一條大蔵譚』「奥殿」:源氏再興への思いを胸に秘め、味方をも偽る裏の顔
夜の部の最後を飾るのは、『鬼一法眼三略巻 』 より『一條大蔵譚』「奥殿」。
平家栄華の時代、かつての源義朝の妻常盤御前(中村雀右衛門)は、阿呆として知られる
一條大蔵卿(市川染五郎)に嫁ぎます。源氏方の吉岡鬼次郎(中村歌昇)と妻お京(中村種之助)は、
館に潜り込み常盤御前の真意を知ることに。すると現れたのは家老の八剣勘解由(松本幸四郎)。
平家への逆心を感づかれ、絶体絶命の一同。そこへ、勘解由の首に迫る一筋の刃…。
一條大蔵卿は、 初世吉右衛門が最も好きな役の一つに挙げたゆかりの演目。
玄孫にあたる市川染五郎が初役として挑みます。
狂気と確固たる信念とが同居した大蔵卿を体現し、作り阿呆っぷりと、真意とが虚実入り乱れる
終盤は見応え十分です。松本幸四郎は敵役・勘解由として、なかなか見られない強欲な憎まれ役で出演。
さらに、堂々たる立ち居振る舞いの中村雀右衛門の常盤御前、中村歌昇・中村種之助による
息の合った夫婦役も見どころ。多彩な配役で魅せる『一條大蔵譚』に客席から万雷の拍手が送られ
初日を締めくくりました。
©松竹 夜の部『一條大蔵譚 奥殿』左より、一條大蔵長成=市川染五郎、常盤御前=中村雀右衛門
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