情報紙から飛び出した 演劇系エンタメ サイト
Copyright Since1999 情報紙ターミナル
Copyright Since2010 株式会社ERIZUN

『Fly By Night〜君がいた』稽古場レポート 2020年08月

(2020年08月28日記載)

『エンタメ ターミナル』では舞台を中心としたエンターテインメント関連情報をWEB記事として発信しています。
掲載内容は、掲載日付のものとなりますので、最新情報は各自ご確認ください。

※ 記事・写真等の無断使用・無断転載は禁止しています。なお、リンクはフリーです。

 
この記事おススメ!って思った方は   をクリック!(2 人がクリック)
Loading...

Musical Dramaシリーズ第4弾『Fly By Night〜君がいた』稽古場レポート



公演概要


conSeptが、ストレートプレイを観るような感覚で観劇できるミュージカルスタイルとして
2018年から上演しているMusical Dramaシリーズ。
『In This House~最後の夜、最初の朝~』『いつか~one fine day~』に続く第4弾として、
『Fly By Night~君がいた』を、2020年9月に、シアタートラム及び横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホールにて上演します。
今作は、1965年11月9日に実際に北アメリカとカナダを中心に起こった大停電(ニューヨーク大停電)をモチーフにした
ロマンチックな群像劇ミュージカルで、2011年ニュー・アメリカン・プレイ・アワード受賞、
2015年ドラマ・デスク・アワードのベストミュージカルにもノミネートされました。
日本初上陸となる今作も同シリーズでおなじみの板垣恭一さん(日本語上演台本・訳詞・演出)、
桑原まこさん(音楽監督)のタッグが手掛けます。
出演は、ミュージカル『レ・ミゼラブル』のマリウス役(2017年・2019 年)などで
活躍する内藤大希さんが主人公・ハロルドとしてconSept作品に初主演。
その父親役、マックラムに『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャンとしても活躍する福井晶一さん。
ダブルヒロインのダフネとミリアムに様々なジャンルの舞台で活躍目覚ましい青野紗穂さんと万里紗さん。
ダフネに恋する新進作家にミュージカル界で急成長著しい遠山裕介さん。
またハロルドの第2の父親的な存在であるサンドイッチ屋のオーナー・クラブルには自由劇場出身の内田紳一郎さん、
そして物語を進行するナレーター役に近年、演出家としても活躍する原田優一さんと、
ミュージカルをはじめ様々なジャンルで活躍する彩り豊かなメンバーが揃いました。

あらすじ


1964年11月9日。母の葬儀を終えたハロルド(内藤大希)とその父・マックラム(福井晶一)。
ハロルドは遺品の中にギターを見つけ「母さんはギターを弾いていたの?」と驚きつつ、形見として持ち帰ることにする。
一方すっかり気落ちしたマックラムは、妻が大好きだった「椿姫」のレコードを聞きながら毎日を無為に過ごすようになる。
ちょうど同じ頃、人口1000人ほどの田舎町サウス・ダコタで暮らしていたダフネ(青野紗穂)は、
女優を目指してニューヨークに行くことを決意。姉のミリアム(万里紗)に一人では心もとないからと泣きつき、母を説得。
姉妹は一緒にニューヨークで暮らすことになる。行動的なダフネは洋服店で働きながらオーディションを受ける日々を過ごすが、
あるとき、店の近くのサンドイッチ屋で働いていたハロルドと出会い恋に落ちる。ミリアムは星や宇宙が大好きな内気な女性。
そんな彼女が唯一他人と繋がれるのは、カフェでウェイトレスをしているとき。
ある日、ダフネがオーディション会場で若手劇作家のジョーイ(遠山裕介)に見初められ、新作ミュージカルの主役に抜擢される。
その稽古に明け暮れるうちハロルドとすれ違い始めるダフネ。ミリアムは、突然現れた占い師(原田優一)に未来を予言されるが、
その中に出てきた恋人の条件に合致するのはなんとハロルド。彼女は自身の気持ちに戸惑い田舎へ逃げ帰ってしまう。
サンドイッチ屋のオーナー・クラブル(内田紳一郎)は今日も、優柔不断なハロルドに発破をかけている。
孤独を募らせたマックラムはある決心をする。
そして 1965年11月9日、ニューヨーク大停電が起きた。

ミュージカル『Fly By Night~君がいた』稽古場レポート
2020年8月24日 取材・文・写真:栗原晶子


9月1日からシアタートラムと横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホールで計20公演上演される
『Fly By Night~君がいた』の稽古場をリモート取材しました。

舞台はナレーター(原田優一)の登場で始まる。ナレーターが、時や場所、登場人物たちの設定や心の動きを、
実況するようなスビードで繰り出していき、それに操られるかのように6人の登場人物たちは、
ナレーターに時空ごとかき回されながら動き出す。



ハロルド(内藤大希)とマックラム(福井晶一)は、愛する母、そして愛する妻を失った2人。
悲しみは同じように深いはずなのに、悼む父を見て感情を不器用に持て余す青年を内藤が表現する。
ギターを手に内藤が人生のとまどいを歌う「♪ウミガメの歌」には、気がつくと口ずさみたくなる印象的なフレーズが出てくる。
本番では観客が精一杯の手拍子で盛り上げつつ、心の中で口ずさむことだろう。配信で観るなら、一緒に声に出して歌いたい。


サウス・ダコタに住む姉妹、ウェイトレスの姉・ミリアム(万里紗)と
女優をめざしている妹・ダフネ(青野紗穂)は、対照的な二人。
思ったことは口に出さずにはいられない直球タイプの妹を演じる青野は、歌にも台詞にもシャウトをきかせる。
姉のミリアムを演じる万里紗は、哀愁と天真爛漫さを共存させる。天体が好きだった父が作ってくれた歌を、
星を見上げながら歌うシーンは、ノスタルジックでどこまでもやさしい。


個性あふれる登場人物はまだまだいる。脚本家のジョーイ(遠山裕介)は、ニューヨークで見つけたダフネに急接近。
手に入れたいものにストレートに向かっていく様を、遠山のスレンダーな体型とダンスで鍛えた動きで、
ほどよく暑苦しく、コミカルに見せる。


ハロルドのバイト先のサンドイッチ店の主人・クラブル(内田紳一郎)も気になる存在。
声色一つで感情を自在に変化させつつ、ちょっとした動きにユーモアをプラスする。

マックラムを演じる福井の美声を期待するファンは多いはずだが、それは二幕後半のお楽しみとのこと。
前半は「♪椿姫」の一節をチラ聴きできるくらいだが、妻を亡くした哀しみを体中にまといながら日々をやり過ごす姿は、
福井の広い肩の下がり具合に表されていた。


そして原田優一である。ナレーターのほかに彼が担うのは、姉妹の母、父、ジプシー女やMCなど、数え上げればキリがない。
それらを瞬時に切り替えながら、物語の鍵となるワードを随所で発しつつ、当然ながら美声も聞かせる。
フル回転という表現がぴったりくる。


フル回転と言えば、劇中の場面転換を役者たちが自らする点にも注目したい。 ニューヨークの階段、サンドイッチ店のカウンター、ミリアムやダフネのバイト先など、
時や場所を動かしていく動きにも目を奪われそうだ。
これは役者たち同様、観客にもなかなかの集中力が必要とされるのではないだろうか。


9月1日の開幕を控え、稽古場は感染対策に十二分に気を張りつつ、進められているという。
フェイスシールドやマスクをしながらという負荷のかかる中での稽古は、
ままならない人生とリンクするかのようにも見えるが、もちろん楽しいミュージカルナンバーもあれば、
ロマンチックなシーンもある。
板垣恭一演出のMusical Dramaシリーズ、登場人物の中の誰か、
どこかの感情や台詞に自分を重ね合わせられる作品がまた一つ誕生する予感だ。

リモート取材会で、今作の日本語上演台本・訳詞・演出を担当する板垣恭一さんは、
「ロマンチックな群像劇ミュージカルで、恋愛模様もありますが、いろいろな形で喪失を抱えた人たちの物語です。
1965年に実際に起こったニューヨーク大停電が物語のクライマックスに使われていますが、暗闇というのはメタファーで、
人は誰もが闇を抱えていたり、現代そのものが闇かもしれない。でも人々はまた立ち上がって生きていくよね、
という希望の物語でもあります。」と語った。

また、キャストはこの物語の魅力を次のように解説してくれた。

内藤 「楽曲がキャッチーで頭に残り、ワクワクする。生のバンドから出るグルーヴ感を楽しんでいただけるのではないか」

青野 「ダフネはごまかして生きないで、弱いけど強がってしまう女の子。
いい具合にすれ違っていく人間関係がたくさん出てくるのがこの作品の魅力」

万里紗 「ものすごく劇的なシーンではない箇所でも、素朴なのにグッと胸を打つ、あたたかさがたくさんある」

遠山 「家族愛や仕事へのプレッシャーなど、それぞれのキャラクターに観ているお客様が共感できるところが多く、心に残る作品」

内田 「恋愛の話も親子の問題もあるけれど、すべてが終わった時に夜空が輝いているだろう、そんなことを感じさせてくれる作品」

福井 「それぞれのキャラクターが魅力的で、皆にぴったり。楽曲もいろいろなタイプがあって、
これからバンドが入ってくるのでますます楽しみ」

原田 「展開が早くてキャストが自分たちの力で、物語を動かしていくところが魅力。
語り部として、格言・メッセージの連続。言葉で伝えることの大事さを皆さまにお伝えたい」

また、時系列が複雑な今作について「実際の僕らの脳みそは時系列で時間が進んでいないのが事実。
他人が話している時に昔のことを考えていたりもする。作品タイトルの「Fly By Night」を「刹那の」とか
「束の間の」と解釈しており、人生は断片的なもののかき集めなのではないか」と問いかけ、
物語が行ったり来たりすることの説明になるのではと演出家。

時間軸の複雑さについては、口々に「大変だけど楽しい」「ものすごい集中力が必要」などの声があがるなか、
内田「瞬間、瞬間に切り替えて潔く演じる感じが面白い。段取りは把握しつつも、
人生と同じで先のことはわからないようにやろうと思っている」

原田「時間軸に一番翻弄されているのが、自分。しかし、エピソードが入れ替わりで出てくることで、
人間同士の関係性がより濃くわかるようになる。つまり、2回目3回目を観ても楽しめますよ」と、メッセージした。

この作品は全20公演の配信が決定している。これについては
板垣 「劇場で観て頂くことが演劇にとっては一番の幸せ、それはお客様もご存じだと思います。
一方でこの数か月で新しいコミュニケーションの形が生まれ、演劇でも同じ可能性を感じている。
「劇場で観るのが演劇」と括るのではなく、実体験として映像で演劇を観ていただけることは素晴らしいこと。
ぜひ楽しんでください」

宋プロデューサー 「劇場には行けないけれど、劇場にいつでも行けるという状態を作りたいと思い、
全公演配信を決定しました。今日、ちょっと時間が空いたから劇場に行くという感覚で配信をご覧いただけれたらと思います」。

最後に、7人のキャストの魅力をのぞき見するクエスチョン!
Q.「稽古期間も含め、この数か月で進化したことは何ですか?」

内藤 「今作で初めてギターに挑戦しています。緊張に支配されていますが、
きっと本番では進化していると思うので楽しみにしてください」

遠山 「食事を一日一食にしています。集中力があがる気がして、体が進化しているっぽいです」

原田 「パソコンも持っていなかったほど、めちゃくちゃアナログ人間だったのですが、
ちょっとデジタル人間になりました。この期間にSNSやZoomだったりも出来るようになりました!」

内田 「私も、フェイスブック始めました。食べた甘いものなどをあげて楽しんでました!」

青野 「夏は外に出てキャーキャー遊びたいタイプだったけど、インドアでも大丈夫なことがわかり、
ゲーム狂になりました。ゲームの腕がむちゃくちゃあがりました!!」

万里紗 「昔、文章を書くのが好きだったことを思い出して、私ってこういうことをやってみたいんだということを発見しました」

福井 「人生で初めてオペラを習っています」(今作で披露されます)

個性あふれるキャスト7人による群像劇ミュージカルはまもなく開幕する。



 

 

『Fly By Night~君がいた』

 

東京公演:2020年9月1日(火)~9月13日(日)

会場:シアタートラム

 

横浜公演:2020年9月19日(土)~9月22日(火・祝)

赤レンガ倉庫1号館3Fホール

 

チケット料金:9,000円(全席指定・税込)

チケット発売日:東京公演、横浜公演共通 4月15日(水)

 

Streaming+

視聴券 5,500円

初日割引 3,000円(9/1のみ)

 

https://www.consept-s.com/fbn/

 

 

 
 

情報は書き込んだ時点のものですので、実際の内容と異なる場合があります。
あらかじめご了承下さい。

[ PR ]