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『End of the RAINBOW』彩吹真央さん、小西遼生さん対談 2016年07月

(2016年07月07日記載)

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『End of the RAINBOW』
彩吹真央さん、小西遼生さん対談

作品について

2016年の今もなおロンドンで上演が続いている『End of the RAINBOW』
2015年夏から1年、日本でも好評を博した本作が再演決定!あの熱気が甦る!


初演から引き続き、ジュディの生き様を歌で全身で力の限り見事に表現した彩吹真央、
フィアンセとしてのジュディへの想いとマネージャーとしての苦悩を好演した小西遼生、
2015年本作のアンソニー役で読売演劇大賞優秀男優賞を受賞した鈴木壮麻らが再び集結!
カーテンコールでは、ジュディが歌った名曲をさらにお届けいたします。

◆ジュディ・ガーランド(1922~69年)
2歳半で初舞台。映画「オズの魔法使」(1939年)の可憐なドロシー役で、スターの座を掴む。以降、「若草の頃」(1944年)や「イースター・パレード」(1948年)、「スタア誕生」(1954年)などに主演。歌、踊り、演技の全てに秀でた、実力派ミュージカル・スターとして一世を風靡した。しかし華やかで快活なイメージとは裏腹に、10代の頃から薬物に頼り、私生活は波乱万丈だった。後年はコンサートを中心に活躍。酒とクスリに身体を蝕まれながらも、ひとたび舞台に立つと、持てる力をフルに出し切ったダイナミックな絶唱で観客を圧倒した。1969年に、睡眠薬の過剰摂取が原因で急逝。47歳の若さだった。欧米では死後の今なお非常に人気が高く、天才エンタテイナーの名声は少しも衰えていない。
 この『エンド・オブ・ザ・レインボー』は、ガーランド最晩年の姿を描いた作品で、まず2005年にオーストラリアで初演。その後2010年にウエストエンドで上演され、英国演劇界の権威あるオリヴィエ賞で、主演女優賞、戯曲賞など4部門で候補に挙がった。2012年にはブロードウェイに進出。トニー賞の主演女優賞や助演男優賞など、3部門でノミネートされ高い評価を得た。もちろん劇中では、〈虹の彼方に〉や〈ゲット・ハッピー〉を始め、ガーランドの十八番がたっぷり歌われる。
文=中島薫(音楽評論家)

STORY

1968年のクリスマス・ロンドン。ジュディはコンサートを控え、リッツホテルのスイートルームにチェックインした。
傍らには最愛のフィアンセのミッキー・ディーンズ。ピアニストのアンソニーも駆けつけ、彼女をサポートする。
ジュディはこのコンサートにすべてを賭けている。
輝かしい世の評価とは裏腹に、若い頃からすでにジュディはアルコール依存症と薬に頼る身体になっていた。
ミッキーとアンソニーはその生活から彼女を脱出させようと試みるのだが・・・・・・。
ステージへの執着と恐れを抱き、酒と薬を求めるジュディ。
彼女を救い出そうとするピアニストとフィアンセの愛と葛藤を描く物語。

彩吹真央さん、小西遼生さん対談インタビュー(取材日:2016年6月27日/取材・文 住川絵理)

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―――前回演じてみて、ご自身の手ごたえや、お客様の反響はどのように感じましたか?

◆彩吹
まず個人的なことを申し上げますと、セリフの量、歌の量も多く、ジュディ・ガーランドという素晴らしい
実在のエンターテイナーを演じるということで初めての経験がたくさんあったので、
まず覚えるのが大変でした。稽古場でもそれぞれの役について意見を出し合いました。
だから共演者のみなさんがジュディの役作りをしてくださった、とも言えると思います。
去年の夏は相当集中しましたね。

―――みなさんと一緒に演じながら、ジュディの像が出来あがっていったと?

◆彩吹
そういう感じです。みなさんがいなかったら、私はあの舞台に立てなかったなと思います。

―――すごく集中していたそういう期間の出来事って、記憶に濃く残るものですか?
それとも記憶がないという感じですか?


◆彩吹
忘れられない夏ですね。

◆小西
忘れられない夏!(笑)

◆彩吹
熱い夏の経験でした。壮絶な人生をおくってきたジュディ・ガーランドと私は、年齢はそんなに違わないのに
経験値があまりにも違いました。ジュディを演じるというのは、私にとっては大変な日々でしたが、
いつも「ジュディはもっと大変な経験をしていたんだな」と思ったら、
怖くなかったですし、立ち迎えたし、もっとやってください、もっともっとやらなきゃジュディになれない、
と思いました。そんな日々は、大変ではあっても、苦ではありませんでした。
その経験がジュディに繋がって舞台に立てるという自信はありましたから、逃げたいとは思わなかったですね。
そういう意味では、私、M(エム)だと思います。

◆小西
いきなりそこで言う!?(笑)

◆彩吹
うん、Mでしょう(笑)。(小西さんの方を見ながら)S(エス)の人がたくさんいたからね(笑)。
(小西)遼生くんが導いてくれたので、「こうなんじゃないか」「ああなんじゃないか」と
たくさんの方向性で演じてみることが出来たんです。でもそれは初演の時、限られた時間の中での話なので、
再演で同じように演じるつもりはありません。今日もすごく充実したお稽古時間を過ごしました。
そう思えるのは、「今回はこうやってみよう!」と思いながら出来ているからだと思います。
今回も精一杯やって、ステップアップしたいなと思います。

◆小西
前回は本当に稽古も本番も濃密でしたね。時間がないというより、稽古場に早く入って
稽古が始まる前から自分たちでやり始め、稽古終了後もみんな遅くまで残ってやっていましたよね。
高橋亜子さんの台本が素晴らしくて、とてもおしゃれで、大人のお話で、
もちろん実在したジュディを演じる彩吹さんは綺麗なところばかりが描かれているわけではないので
相当大変だと思いますが、僕たち男性陣はジュディを取り巻く人々としてどう存在すればいいかを考えました。
やはりジュディを中心に描かれているので、ジュディの頭の中にいる二人位の感じなのかなと。
彩吹さんがジュディになればなるほど素敵になっていくというのは、稽古が始まって間もない頃から分かりました。
作者のピーター・キルターさんは、物事の裏側を描きたいタイプの方だと思うんです。
僕らはジュディ・ガーランドという人に関しては馴染みが薄いのですが、華やかなところがある分、
裏側は悩みをたくさん抱えている人で、苦悩や葛藤、いろんな想いが渦巻いています。
僕らの存在も通して、ジュディを表していけたらという気持ちです。
アンソニーとミッキーはそれぞれがジュディを必要としています。
自分の中でのジュディはこれだという、譲れない部分を持っています。
彩吹さんが演じるジュディとのシーンを経て、どんどん僕らの中にも芯が出来ていくのが分かりました。

―――フィアンセのミッキーとピアニストのアンソニーが、それぞれの形でジュディに対する想いを吐露しますが、
ジュディを演じる彩吹さんとしてはどのような気持ちで演じていらっしゃいますか?


◆彩吹
ジュディは幼い頃から「愛されたい」と思い続けているので、常に愛が足りないんですよね。
ジュディにとってミッキーは5人目の旦那さんですし、結婚相手以外にもたくさんの恋をしたし、
その対象は男性だけでなく女性の場合もありました。それほど全ての愛を求めてしまうところがあると思います。
いち女性としての愛の求め方と、幼い頃からスターとしてやってきた彼女の「愛されて当たり前」という気持ち。
どうやっても満たされないジュディにとって、ミッキーとの出会いは今までにないような新たな形だったのでしょう。
若くてハンサムで自分に似た何かを感じ、若いのに対等に話す彼にすごく惹かれたんだと思います。
ドラッグに再び手を染めるきっかけを作ったのもミッキーかもしれませんが、そこにいくまでにどん底だったので、
彼と共に表舞台に返り咲くという思いは否定しつつも、ジュディの心の中にあったと思うんです。
一方、アンソニーはゲイで、どちらかというとアンソニーとの関係は人間愛という感じですよね。
ミッキーとアンソニーはジュディに対する愛の色が全然違ったんだと思います。
ジュディには必要な二人ですね。演じていて思うのは、この二人の意見が割れた時、
言い争っているのは嬉しい面もありつつ、自分が知らないところでそれをやられていたら腹が立つし。
永遠に自立できない幼さが残り、成長しきれず求め続けてしまう、そこがジュディの魅力でもあるのではないかと思います。


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―――確かにそれほどいろんなエピソードがある方だからこそ、このような作品が出来たのかもしれないですね。

◆小西 
ピーターは、「ミッキーとはもっとひどい関係性だった」と言っていましたが、これは物語であり、
ノンフィクションではないんですよね。そこも踏まえた上での話なのですが、ミッキーとアンソニーが後半にいくにつれて
ハッキリと「ジュディがどちらを求めるのか」という話になりますが、ジュディの中ではどちらの選択肢も
あり得ると思います。たぶんジュディはどちらも欲しいものなんですよね。

◆彩吹
どちらも欲しいです(笑)。

◆小西
アンソニーは一般的に聞いたら魅力的なことをたくさん言っています。
セリフの中にもありますが、ジュディ・ガーランドがそれを受け入れてしまったら、
ジュディを埋葬してしまうということになると思います。それってスターにとっては切実な話だと思います。
僕たちもジュディほどの人物ではないにせよ、同業者として、「芸能界を引退する」という話になると、
そりゃ大変な問題だよねと思います。「一般家庭に入るために芸能界での仕事を辞めます」という方も
たくさんいらっしゃいますが、唯一無二の存在のジュディだったらなおさら、
切実だったろうなと。そういうところも描かれていて、物語としてはすごく面白いなと思います。

―――小西さん自身が(芸能界と一般家庭)どちらかを選択しなければいけなくなったら迷いますか?

◆小西
迷いません。好きなことを選択してやっているので、この仕事は辞めないです。今のところはそう思っています。
でも、そのことで葛藤する気持ちは分かります。そういう部分にも共感する方はいらっしゃるんじゃないかなと思います。
ジュディの最後の選択は共感出来ない方もいらっしゃるかもしれないですよね。
「あっち(アンソニー)に行けば良かったのに!」と思う方もいるでしょうね。

◆彩吹
頼りたいタイプの人だったら、もちろんアンソニーを選んでいるかもしれないですよね。

◆小西
僕たちとしてはどんな選択であれ、ジュディが最期までハッピーであって欲しいと思っているんです。
ピーターさんはジュディとお知り合いだったそうなので、愛情を注いで作っていらっしゃるから、
最期はハッピーであってほしいという、祈りのような願いが込められているような気がします。

―――彩吹さんは(芸能界と一般家庭)どちらかを選択しなければいけなくなったらどうしますか?

◆彩吹
私もジュディと一緒ですね。

◆小西 
え?(笑)

◆彩吹
未来のことは分かりませんが、今現在はそう思っていますし、そういう想いじゃなければ
今舞台に立っていないかもしれないですよね。

◆小西
どうするにしても、後悔しない選択をしていきたいと思いますよね。

◆彩吹
そう思います。私も宝塚時代から後悔をする選択はしないようにしてきています。
後悔するかもしれないと思ったら、じゃあ後悔しない選択をしようと思うので、今のところ後悔はないです。

―――小西さん、ジュディを演じる彩吹さんをずっと間近でご覧になって、どのようなことを感じますか?

◆小西
なんとなくではなく、彩吹さんはジュディになろうとして役に立ち向かっているので、
僕たちもそれにすごく引っ張られています。初演の時は「みんなで作ろう!」という風にやっていたので
僕ら自身も思い入れが強いです。前回そこまで濃密に作って来た経験があるので、
今回更に馴染んできているような気がします。そんな気がしない?

◆彩吹
する!

◆小西
ひとつひとつシーンを作っていって、ジュディを大げさに捉えなくなったというか、
同じ人間として、作りこめるような気がするんです。それって本質だなと思います。
もっともっと挑戦していけるような稽古が出来ています。すごくいいセリフがたくさんあるので、
そこをすごく大切にやっていこうと思います。
ジュディの彩吹さんからもそういう気持ちが前より更に色濃くにじみ出ています。お稽古がすごく楽しいです。

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―――お気に入りのセリフは?

◆小西
アンソニーのセリフに、いいのがたくさんあるんですよね。
ミッキーとしては「アンソニーは理想ばかりを言って」と思うけど、
僕個人としては、アンソニーいいこと言うなぁと思います(笑)。ジュディも辞めたい辞めたいと言うけど
その言葉の切なさとか、言っていることと実際求めているものは違うでしょという、そういう直訳じゃない
繊細で複雑な深層心理がセリフにも表現されているので、本当に台本が素晴らしいなと思うんです。
演じていてとても楽しいです。

――小西さん、今年は『ブラック メリーポピンズ』『End of the RAINBOW』『ガラスの仮面』と
再演が続きますが、再演の面白さ、怖さはどう感じますか?


◆小西
再演をやりたいかやりたくないかと聞かれたら、そこまで惹かれる方ではなかったのですが、
この間『ブラック メリーポピンズ』をやった時も、演出の鈴木裕美さんが再演としてではなく、
いちから作って行こうというスタンスでしたし、「前はこうだったという言葉禁止!」ということで、
徹底的にいちから作ることですごく深まったと思います。前に気付けなかったことにたくさん気付いたし、
たぶんそれは僕だけでなく他のみんなもそれをすごく感じていたと思います。
いい作品かどうかはステージ上で表現されるものからしかお客様は判断出来ないですよね。
でも少なくとも完成された役者ではないので、もっともっといいものが出来るだろうと思うので
再演は「より本物になれる」「本物の作品が作れる」と思っています。だから『End of the RAINBOW』は、
前回の感じでこの作品の本質を届けたと思ってはいけないな、何倍もよくなる要素があるな、と思います。
今は、再演っていいなと思っています。

―――彩吹さん、小西さんのミッキーについて感じていることは?

◆彩吹
遼生くんがミッキーを生きていると、ミッキーはこんな感じの人だったんだろうなって思います。
遼生くんのミッキーは、自分だけではなく周りのことをちゃんと考えていて、そういうスタンス、愛情で
ジュディを愛していたんだろうなと思います。ジュディからみたら頼りになる男性、
そういう男らしさに魅力を感じたんだろうなと思います。

◆小西
でも、ジュディは都合悪くなるとすぐガキンチョ扱いするんだよね。

◆彩吹
遼生くんは実際に年下ですが、頼れる男性だなと思いますが、
たまにいたずらしてふざけているのを見ると、ガキンチョだなって・・・まあそれは冗談ですが(笑)。
『End of the RAINBOW』、ご好評いただいて再演をするということは、期待以上のものをお見せしないといけない、
でも必ずや昨年以上のものをお見せ出来ると思います。ジュディ・ガーランドも私が思うやり方で精一杯生きたけれど、
それよりもっと複雑だったり、単純だったり、心のひだがもっとあって、いろんな色があって、
その色はレインボーにも出せるんですよ、というところを今回お見せしたいなと思います。
今回がラストと言われても悔いがないような気持ちで『End of the RAINBOW』に挑みたいですが、
3回、4回と再演を重ねる度にマジックのようにそういう部分が出て来る作品じゃないかなとも思います。
それぐらい、いろんな魅力を秘めた作品なので、皆様是非観にいらして下さい。

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▲前回舞台より。写真提供:シーエイティプロデュース
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▲前回舞台より。写真提供:シーエイティプロデュース

 

『End of the RAINBOW』

作:ピーター・キルター

演出:上田一豪

上演台本・訳詞:高橋亜子

音楽監督・ピアノ:岩崎廉

ステージング・振付:TETSUHARU

出演:彩吹真央 小西遼生 ・ 寺元健一郎 / 鈴木壮麻

 

【東京公演】

日程:2016年7月9日(土)~7月24日(日)

会場:俳優座劇場

 

【大阪公演】

日程:2016年7月27日(水)

会場:サンケイホールブリーゼ

 

【水戸公演】

日程:2016年7月30日(土)

会場:水戸芸術館 ACM劇場

 

企画・製作:シーエイティプロデュース

 

 

HP http://www.stagegate.jp/

twitter https://twitter.com/EotRAINBOW_CATP

 

 

 
 

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あらかじめご了承下さい。

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