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歌舞伎座「十月大歌舞伎」公演レポート、舞台写真掲載 2021年10月

(2021年10月07日記載)

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歌舞伎座「十月大歌舞伎」公演レポート、舞台写真掲載


第一部『天竺徳兵衛新噺 小平次外伝』左より
女房おとわ=市川猿之助、馬士多九郎=坂東巳之助 提供ⓒ松竹

公演概要(リリースより)


10月2日(土)、歌舞伎座 10月公演「十月大歌舞伎(じゅうがつおおかぶき)」が初日の幕を開けました。
引き続き三部制で上演する「十月大歌舞伎」は、尾上菊五郎、松本白鸚をはじめとした豪華な顔ぶれで、
たっぷりと歌舞伎の醍醐味をご堪能いただける多彩な作品が揃いました。
歌舞伎座では、引き続き出演者・お客様は各部総入替え、
客席数(1808 席)は50%(904 席)を維持して公演を行います。
お客様に安心して歌舞伎をお楽しみいただけますよう、換気や消毒を徹底するなど、
今後も感染予防対策に万全を期してまいります。

公演レポート


第一部は、三代猿之助四十八撰の内『天竺徳兵衛新噺 小平次外伝(てんじくとくべえいまようばなし こへいじがいでん)』
お家追放となった小平次は女房のおとわと故郷の小幡で暮らしていました。
ところが小平次が諸国巡礼の旅に出ている間、おとわは馬士の多九郎と不義密通し、今や夫婦同然の仲に。
ある日、小平次が巡礼から戻ることを知った多九郎は邪魔になった小平次を殺そうともくろみ…。
三代目市川猿之助(現:猿翁)が選定した家の芸「三代猿之助四十八撰」の一つ『天竺徳兵衛新噺』は、
江戸時代にインドに渡った実在の人物天竺徳兵衛を描いた物語に
四世鶴屋南北の小幡小平次の怪談を入れ込んだ荒唐無稽で大胆な展開が魅力の作品。
当月は小平次 の幽霊譚に焦点をあてさらなるブラッシュアップを重ね魅力を凝縮した「小平次外伝」として上演します。
小平次とおとわを演じるのは市川猿之助。猿之助は華麗に二役の早替りを披露し、観客の心をつかみます。
舞台終盤、小平次の幽霊が登場する場面では舞台のあちらこちらから現れるスピーディーな演出や宙乗りに観客の目が釘付けに。
幽霊が暗闇からふっと 現れる怪談物ならではのゾッとする瞬間と幽霊に恐怖する人々の慌てふためく様子がテンポよく展開され、
笑いと恐怖の連続に一瞬たりとも飽きる間がありません。凛々しい今川家の重臣尾形十郎に近年さらに活躍の場を広げる尾上松也、
おとわと不義をはたらく多九郎に「八 月花形歌舞伎」で猿之助の代役を勤めたことも記憶に新しい坂東巳之助、
かわいらしく活躍する小平次妹おまきに注目の若手女方の中村米吉が出演。
今年91歳となった庄屋満寿兵衛役の市川寿猿も元気な姿で登場しました。
歌舞伎座では31年ぶりに上演された本作。
時代の変化に応じて新たな形で生まれ変わった物語に力強い拍手が鳴り止みませんでした。


第一部『天竺徳兵衛新噺 小平次外伝』左より
小佐保天南=市川猿三郎、小平次=市川猿之助、馬士多九郎=坂東巳之助 提供ⓒ松竹


第一部『天竺徳兵衛新噺 小平次外伝』左より
馬士多九郎=坂東巳之助、小平次=市川猿之助、小佐保天南=市川猿三郎 提供ⓒ松竹


第一部『天竺徳兵衛新噺 小平次外伝』左より
尾形十郎=尾上松也、馬士多九郎=坂東巳之助、女房おとわ=市川猿之助、小佐保天南=市川猿三郎 提供ⓒ松竹

第一部『天竺徳兵衛新噺 小平次外伝』前列左より女房おとわ=市川猿之助、尾形十郎=尾上松也、妹おまき=中村米吉
後列、馬士多九郎=坂東巳之助 提供ⓒ松竹


第一部『天竺徳兵衛新噺 小平次外伝』左より
小平次=市川猿之助、尾形十郎=尾上松也 提供ⓒ松竹


第一部『天竺徳兵衛新噺 小平次外伝』左より
妹おまき=中村米吉、馬士多九郎=坂東巳之助 提供ⓒ松竹



続いては、『俄獅子(にわかじし)』です。
廓情緒と江戸前の粋な味わいを楽しむ長唄の舞踊。
「俄」とは江戸から明治にかけて流行ったコントのような即興喜劇で、
吉原の三大行事の一つとして親しまれていた「吉原俄」の雰囲気を感じる華やかな作品です。
舞台は江戸の吉原仲之町。幕が開くと賑やかな祭囃子が聞こえてきます。
そこへ艶やかな芸者たち、尾上松也演じる粋でいなせな鳶頭が次々と登場すると客席からは待ってました!
とばかりに大きな拍手が送られました。
続けて、吉原の様子を描いた洒落た歌詞に合わせながら芸者と鳶頭が息の合った踊りを見せていきます。
吉原のさらなる繁栄を願い舞い納めると劇場はめでたい雰囲気に包まれ幕となりました。

第一部『俄獅子』より
鳶頭=尾上松也 提供ⓒ松竹


第一部『俄獅子』より
芸者=市川笑也、鳶頭=尾上松也、芸者=坂東新悟 提供ⓒ松竹


第一部『俄獅子』より
芸者=市川笑也、鳶頭=尾上松也、芸者=坂東新悟 提供ⓒ松竹

     *     *     *

第二部の序幕は、『時平の七笑(しへいのななわらい)』です。
時は平安時代。右大臣の菅原道真は、身に覚えのない謀反の疑いをかけられます。
そこへ現れたのは左大臣の藤原時平。時平は道真を庇いますが、ついには謀反のあらぬ証拠が…。
多くの傑作を残した人気作者・並木五瓶による『天満宮菜種御供』の二幕目にあたる『時平の七笑』は
通称「笑い幕」とも呼ばれ、幕切れに見せる時平のさまざまな笑いが見どころの時代味あふれる一幕。
『菅原伝授手習鑑』などで敵役として描かれることの多い時平が白塗りの善人の姿で登場し、
見るものに新鮮な驚きを与えます。今月は79歳にして未だ衰えることのないチャレンジ精神の
持ち主松本白鸚が初役で藤原時平役に挑みます!白鸚自身のアイデアを盛り込み新たな演出も加わった形での上演です。
終盤、紅梅の枝を手折りどっかりと座った時平が「フフフ、」と笑い、悪の片鱗を見せる姿に観客はぐっと引き込まれます。
幕が引かれてもなお聞こえてくる笑い声は人々に強い印象を残します。
公演に先駆け「歌舞伎の悪の華はスケールの大きさが要求される」と語った白鸚。
スケールの大きな悪役の存在が人々を惹きつけるミステリアスな魅力あふれる作品となりました。

第二部『天満宮菜種御供 時平の七笑』左より
藤原宿祢=大谷廣太郎、菅原道真=中村歌六、藤原時平=松本白鸚、頭の定岡=大谷友右衛門 提供ⓒ松竹


第二部『天満宮菜種御供 時平の七笑』左より
判官代輝国=市川高麗蔵、三好清貫=澤村宗之助、藤原宿祢=大谷廣太郎、菅原道真=中村歌六、藤原時平=松本白鸚
頭の定岡=大谷友右衛門、左中弁希世=大谷桂三、春藤玄蕃=松本錦吾 提供ⓒ松竹


第二部『天満宮菜種御供 時平の七笑』左より
藤原時平=松本白鸚 提供ⓒ松竹


第二部『天満宮菜種御供 時平の七笑』左より
藤原時平=松本白鸚 提供ⓒ松竹



続いては、『太刀盗人(たちぬすびと)』
都の新市にやってきた田舎者からすっぱの九郎兵衛が太刀を盗み…。
物真似の滑稽味が笑いを誘うユーモアたっぷりの舞踊劇。能や狂言の演目を歌舞伎にした「松羽目物」の一つで、
能舞台を模した舞台に田舎者の万兵衛と尾上松緑演じるすっぱの九郎兵衛が登場します。
盗んだ太刀の名前や由来を二人が踊りで説明し答えていく見せ場となる場面では、
そのコミカルな様子にふっと笑みがこぼれます。悪者ながらもどこか憎めない愛嬌ある姿を見せる松緑の九郎兵衛。
「お客様に、何も考えないで喜んでもらうような演目です。
ほんわかと、そしてうきうきとした舞台をつくっていきたい」と松緑が語った言葉の通り、
客席は明るく楽しげな空気に包まれました。

第二部『太刀盗人』左より
すっぱの九郎兵衛=尾上松緑、田舎者万兵衛=中村鷹之資 提供ⓒ松竹


第二部『太刀盗人』左より
尾上松緑、従者藤内=尾上左近、目代丁字左衛門=坂東彦三郎、田舎者万兵衛=中村鷹之資 提供ⓒ松竹


第二部『太刀盗人』
前方:すっぱの九郎兵衛=尾上松緑、後方:従者藤内=尾上左近 提供ⓒ松竹


第二部『太刀盗人』左より
従者藤内=尾上左近、すっぱの九郎兵衛=尾上松緑、田舎者万兵衛=中村鷹之資 提供ⓒ松竹

     *     *     *

第三部は、『松竹梅湯島掛額(しょうちくばいゆしまのかけがく)』で幕を開けます。
一途な恋心を募らせた八百屋お七の実話を題材に描かれた作品の一つで『松竹梅雪曙』の名前で初演された本作。
不思議な粉「お土砂」が笑いを生む「吉祥院お土砂の場」と降りしきる雪の中
お七が激情を表現する「火の見櫓の場」で構成されています。
最初の舞台は本郷駒込の吉祥院。尾上菊五郎演じる「紅長(べんちょう)」の名で知られる紅屋長兵衛が、
叶わぬ恋に嘆くお七を手助けしようと面白可笑しく活躍する喜劇的な一幕。
お七を逃がすために紅長がお土砂をかけ、追手たちがぐにゃぐにゃになってしまう姿が大きな笑いを生みます。
長沼六郎を演じる片岡亀蔵による「うっせぇうっせぇうっせぇわ」や、オリンピック開会式で話題となった
ピクトグラムを披露する演出も飛び出し、菊五郎の孫・寺嶋眞秀も丁稚長太役で出演し側転を披露するなど
溌溂とした姿を見せます。
さらに初日である10月2日は菊五郎の79歳の誕生日!
作中でも尾上右近演じるお七から「お誕生日おめでとうございます」とお祝いの言葉が。
終盤でも舞台上に迷い込んだ少女に扮した市村橘太郎がバースデーソングを歌うなど
今日ならではの演出に客席は大いに盛り上がりました。続く「火の見櫓の場」は文楽人形の動作を真似た
“人形振り”でお七が募る恋心を表現する姿が切なくも美しい場面です。
八百屋お七は憧れの役であったと語る右近の熱演に大きな拍手が送られました。

第三部『松竹梅湯島掛額』左より
丁稚長太=寺嶋眞秀、紅屋長兵衛=尾上菊五郎 提供ⓒ松竹


第三部『松竹梅湯島掛額』左より
月和上人=市川團蔵、紅屋長兵衛=尾上菊五郎、母おたけ=中村魁春、八百屋お七=尾上右近 提供ⓒ松竹


第三部『松竹梅湯島掛額』左より
紅屋長兵衛=尾上菊五郎、八百屋お七=尾上右近、小姓吉三郎=中村隼人 提供ⓒ松竹


第三部『松竹梅湯島掛額』左より
紅屋長兵衛=尾上菊五郎、釜屋武兵衛=河原崎権十郎 提供ⓒ松竹


第三部『松竹梅湯島掛額』左より
八百屋お七=尾上右近 提供ⓒ松竹



続いては、桜満開の京都を舞台にした舞踊『喜撰(きせん)』
『六歌仙容彩』は天保 2(1831)年に初演された、小野小町をめぐる恋模様を描いた変化舞踊。
なかでも「喜撰」は単体でも上演を重ねる人気舞踊です。喜撰を初役で演じるのは中村芝翫。
ほろ酔い気分で足取り軽く舞台に現れると美しい茶汲み女お梶を口説き始めます。
桜の枝を錫杖に見立ててのチョボクレや、迎えの坊主が登場してからの華やかな住吉踊りなど
みどころの多い、洒脱で軽快な舞踊で華やかな初日となりました。

第三部『六歌仙容彩 喜撰』
前方:喜撰法師=中村芝翫、後方:祇園のお梶=片岡孝太郎 提供ⓒ松竹


第三部『六歌仙容彩 喜撰』左より、
喜撰法師=中村芝翫、祇園のお梶=片岡孝太郎 提供ⓒ松竹


第三部『六歌仙容彩 喜撰』左より、
所化=中村吉之丞、所化=市村橘太郎、所化=坂東亀蔵、喜撰法師=中村芝翫、所化=片岡亀蔵 提供ⓒ松竹

 

 

『十月大歌舞伎』

 

公演日程:2021年10月2日(土)~27日(水)

【休演】7日(木)、19日(火)

会場:歌舞伎座

 

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/728

 

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