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歌舞伎座「六月大歌舞伎」が開幕!公演レポート、舞台写真掲載 2022年06月

(2022年06月03日記載)

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歌舞伎座「六月大歌舞伎」が開幕!公演レポート、舞台写真掲載


第一部『猪八戒』左より
沙悟浄=市川青虎、童女一秤金実は猪八戒=市川猿之助、孫悟空=尾上右近
女怪緑少娥=市川笑三郎、霊感大王実は通天河の妖魔=市川猿弥、女怪紅少娥=市川笑也

公演概要(リリースより)


6月2日(木)から「六月大歌舞伎」(6月2日初日〜27日千穐楽 休演日:9日、20日)を開催いたします。
松本白鸚、中村梅玉、坂東玉三郎はじめ充実の出演者が顔を揃え多彩な演目が並ぶ三部制での上演です。
歌舞伎座では引き続きお客様に安心して歌舞伎をお楽しみいただけるよう、換気や消毒を徹底するなど
感染予防対策に万全を期して上演しています。

公演レポート


第一部は、『菅原伝授手習鑑 車引』で幕を開けます。
歌舞伎三大名作の一つである『菅原伝授手習鑑』の三段目にあたる本作。
今回は梅王丸を坂東巳之助、桜丸を中村壱太郎、藤原時平を市川猿之助、松王丸を尾上松緑という
清新な顔合わせでお届けします。それぞれ異なる主人に奉公する三つ子の兄弟、松王丸、梅王丸、桜丸。
主人たちの対立により、今は敵味方となった三人。ある日、梅王丸と桜丸は主人の無念を晴らそうと、
敵である時平が乗る牛車の行く手を阻むと松王丸が止めに入り…。
梅王丸と桜丸が出会う場面では、それまで深編笠をかぶっていた二人が顔を見せると、会場がパッと華やかな雰囲気に。
観客も日常から歌舞伎の世界へとぐっと入り込んでいきます。梅王丸の勇壮な荒事の演技と、
桜丸の和事味ある柔らかな演技の対比も楽しく、梅王丸が豪快な飛び六方で花道を引っ込んでいくと
大きな拍手と共に会場の熱量も一気に上がります。
この場面の松王丸について「忠義と情のジレンマの中で色々な思いがあるのだと思う」と語る松緑は巳之助、
壱太郎とともに若々しい三兄弟のやり取りの中にもどっしりとした落ち着きをみせ、「いつか機会があればと思っていた」と語る
猿之助が初役で勤める時平も凄みのある姿が作品に奥行きを加えます。
三兄弟が揃い様々な見得をみせると会場のボルテージは最高潮に。
まさに錦絵のような歌舞伎の醍醐味を感じられるひと時に大きな拍手が送られました。


第一部『菅原伝授手習鑑 車引』左より
桜丸=中村壱太郎、松王丸=尾上松緑、梅王丸=坂東巳之助
提供ⓒ松竹



第一部『菅原伝授手習鑑 車引』(前方)左より
桜丸=中村壱太郎、松王丸=尾上松緑、梅王丸=坂東巳之助、杉王丸=市川男寅、(後方)藤原時平=市川猿之助
提供ⓒ松竹


続いては、賑やかな舞踊劇『猪八戒(ちょはっかい)』
歌舞伎座の本興行では初演以来、実に95 年ぶりの上演となる澤瀉屋ゆかりの演目です。
人気作「西遊記」を題材にした本作には、誰もが一度は目にしたことのあるおなじみのキャラクターが登場。
主人公の猪八戒を市川猿之助が勤めます。舞台は通天河という川のほとり。そこに祀られた魔神・霊感大王(市川猿弥)は、
毎年 村から生贄を献上させ、人々を困らせていました。三蔵法師一行は、猪八戒に女の童の姿をさせ生贄の身代わりとし、
大王を退治することに。女の童になりすました猪八戒の様子が最初のみどころです。
やがて八戒が霊感大王と共に酒を飲み始めるとその正体が明らかになってしまい…。
霊感大王との立廻りの場面では、孫悟空(尾上右近)、沙悟浄(市川青虎)たちが加わりアクロバティックな要素が盛りだくさんの
スピーディーな展開となり観客の目は釘付けに。大興奮の舞台に客席からは拍手が鳴り止みませんでした。

第一部『猪八戒』(前方)左より
沙悟浄=市川青虎、童女一秤金実は猪八戒=市川猿之助、孫悟空=尾上右近
(後方)霊感大王実は通天河の妖魔=市川猿弥 提供ⓒ松竹


第一部『猪八戒』左より
沙悟浄=市川青虎、童女一秤金実は猪八戒=市川猿之助、孫悟空=尾上右近
女怪緑少娥=市川笑三郎、霊感大王実は通天河の妖魔=市川猿弥、女怪紅少娥=市川笑也


第一部『菅原伝授手習鑑 車引』と『猪八戒』が一枚に凝縮された、心躍る特別ビジュアルも公開中!
https://www.kabuki-bito.jp/news/7582

歌舞伎座_第一部特別ビジュアル

     *     *     *

第二部の幕開けは、『信康(のぶやす)』
非業の死を遂げた徳川家康の嫡男・徳川信康を主人公とした本作は、父・家康との心の葛藤に焦点を絞り、
運命に翻弄された親と子の愛情の物語をドラマティックに描き出し、昭和49(1974)年に第三回大谷竹次郎賞を受賞。
今回は約26年ぶりの上演で、信康を演じるのは歌舞伎座初主演となる17歳の市川染五郎、
そして徳川家康は松本白鸚が勤める祖父と孫の競演とあって注目の作品でもあります。
幕が開くと、舞台は信康の居城である岡崎城。若々しさを感じる青い衣裳を身にまとった信康が鷹狩から戻ってきます。
自信に満ちた様子で生き生きとして生命力に溢れ、織田信長へのあこがれの思い、そして父への不満すらも口にする信康。
そこへ家康が突如来訪し、物語は展開していきます。実はかねてよりその優秀さを警戒していた織田信長から、
信康を始末するよう指示を受けた家康は、信康に岡崎を離れるよう命じます。
信康が去った後、遠くに雷鳴が轟く中「今ほど天下が欲しいと思ったことはない」と無念の思いに耐える家康の姿が
観客に強い印象を残します。それから一か月の後、舞台は遠州二俣城に移ります。十三夜の月が辺りを照らす中、
信康は我が身の上を嘆きながら、空を飛ぶ雁の姿に自らの境遇をなぞらえて無念の思いに沈んでいます。
岡崎での生き生きとした姿とのギャップに人々が信康という人物にどんどん惹きつけられ、客席の集中力が高まっていきます。
そんな中、父・家康が自らを生かすために母・築山御前の命を奪ったことを知ります。
信じられないとばかりに取り乱す信康…しかし、父の思いを深く理解した信康はある決断をします…。
家康を演じる白鸚はインタビューでこの芝居を「覚悟の芝居」と語りました。21歳でその生涯を閉じた“信康”という
一人の若者の揺れ動く心、そして覚悟を決め、ただ運命に生きたその人生を客席は息をつめて見守ります。
隅々まで神経の行き届いた密度が高い芝居が展開され、切実な一言一言のセリフに心を動かされるあっという間の90分。
客席からおくられる力強い拍手の音がいつまでも止まない初日となりました。

第二部『信康』左より、徳川信康=市川染五郎、徳川家康=松本白鸚
提供ⓒ松竹


第二部『信康』徳川信康=市川染五郎 提供ⓒ松竹


『信康』の特別ポスター&告知映像も公開中!
https://www.kabuki-bito.jp/news/7577

歌舞伎座「六月大歌舞伎」『信康』特別ポスター


続いては、華やかな舞踊『勢獅子(きおいじし)』です。
山王祭で賑わう江戸の街に鳶頭はじめ芸者や鳶の者、手古舞たちが勢ぞろいしています。
舞台上には鳶頭に中村梅玉、尾上松緑、芸者の中村雀右衛門、中村扇雀と華やかな顔ぶれが。
ほろ酔い気分の鳶頭たちは曽我兄弟の仇討ちの物語、威勢のいい獅子舞を賑やかに披露し、祭り気分は一気に盛り上がりを見せます。
江戸の風情を描いた賑やかな常磐津が耳に心地よく、粋でいなせな鳶や艶やかな芸者たちが披露する
さまざまな踊りが目に楽しい変化に富んだひと幕に、歌舞伎座は華やかな雰囲気に包 まれました。

第二部『勢獅子』左より、芸者=中村扇雀、鳶頭=尾上松緑、鳶頭=中村梅玉、芸者=中村雀右衛門
提供ⓒ松竹

     *     *     *

第三部は、有吉佐和子による演劇界屈指の名作『ふるあめりかに袖はぬらさじ』
昭和47 (1972)年の初演以来、数々の名優たちによって上演されてきた本作、今回の上演では、
坂東玉三郎がこれまでにも度々演じてきた当り役である芸者お園を、劇団新派の喜多村緑郎が思誠塾岡田を、
同じく劇団新派の河合雪之丞が遊女亀遊を勤めます。
自信の代表作のひとつ でもあるこの作品で演出も勤める玉三郎は「お園という女性を取り巻く廓の世界の物語でありながら、
人間の世情の根本というものを描いています」とその魅力を語っています。
時は幕末、舞台は開港間もない横浜の遊廓岩亀楼。
三味線の名手でもある芸者のお園は、病に伏せる旧知の遊女亀遊を見舞いに行きます。
どこか閉鎖的な廓の雰囲気も漂うなか、気風良いお園の様子とはかなげな亀遊の姿が印象的に浮かび上がります。
そこへやってきたのは、医者を目指し留学を夢見る通訳の藤吉。お園は亀遊が藤吉に抱く思いに気づきます。
二人の淡い恋模様を感じるやり取りや、さりげない仕草から人の良さを感じさせるお園の姿が巧みに描かれます。
場面は変わり、聞こえてくるのは賑やかな三味線と唄。すっかり元気を取り戻した美しい遊女の姿で亀遊が登場し観客も
見惚れるほど。
岩亀楼にやってきたアメリカ人イルウスは、すっかりその美しさに魅了され、藤吉に身請け話の通訳をさせます。
金に目の眩んだ岩亀楼の主人(中村鴈治郎)はその申し出を受け、藤吉との恋に絶望した亀遊は自害してしまいます。
主人のコミカルで抜け目のない様子がおかしみを誘う場面です。
ところが数日後、その死を“万金を積まれてもアメリカ人への身請けを断り自害した攘夷女郎” と事実を歪曲して伝える瓦版が。
「露をだにいとふ倭の女郎花ふるあめりかに袖はぬらさじ」という嘘の辞世の句まで添えられた瓦版のおかげで、
攘夷派の志士たちの聖地となった岩亀楼。やがて亀遊の死の真実を知るお園までもが、
三味線を手に亀遊の物語の語り部となってゆき…。
物語の後半では、お園が廓の客を、そして劇場の観客までも盛り上げていくかのように亀遊の物語をとうとうと語る姿が描かれます。
思誠塾岡田を勤める緑郎はきっぱりとしたセリフで存在感を見せるなか物語はいよいよ幕切れへ…。
観客はまさに自分自身が幕末の時代にタイムスリップして一部始終を目撃したかのような没入感のある観劇体験に、
心地よい疲労感と共に劇場を後にしました。巷に溢れるフェイクニュースに翻弄される現代にも通じる、
普遍性をもった哀感あふれる人間ドラマをご堪能ください。

第三部『ふるあめりかに袖はぬらさじ』左より、遊女亀遊=河合雪之丞、芸者お園=坂東玉三郎
提供ⓒ松竹


第三部『ふるあめりかに袖はぬらさじ』左より、岩亀楼主人=中村鴈治郎、芸者お園=坂東玉三郎
提供ⓒ松竹


第三部『ふるあめりかに袖はぬらさじ』左より、芸者お園=坂東玉三郎、思誠塾岡田=喜多村緑郎
提供ⓒ松竹

 

 

『六月大歌舞伎』

 

公演日程:2022年6月2日(木)~27日(月)

【休演】9日(木)、20日(月)

会場:歌舞伎座

 

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/761

 

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