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歌舞伎座新開場十周年「壽 初春大歌舞伎」が開幕! 2023年01月

(2023年01月05日記載)

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歌舞伎座新開場十周年「壽 初春大歌舞伎」が開幕!公演レポート、舞台写真掲載


★各演目写真及び内容に触れておりますので、ご観劇前の方はご注意ください。★

第一部『卯春歌舞伎草紙』
(前方左より)壱太郎、鷹之資、青虎、玉太郎、勘九郎、猿之助、七之助、愛之助、千之助、猿弥、門之助、虎之介
(後方左より)染五郎、笑三郎、中村福之助、廣太郎、男寅、笑也、鶴松
提供ⓒ松竹

公演概要(リリースより)


1月2日(月)から「壽 初春大歌舞伎」 (1月2日初日〜27日千穐楽 休演日:10日、19日)が開催中です。
歌舞伎座新開場十周年を迎える令和五年の幕開けに相応しい華やかで多彩な演目が揃い、
歌舞伎の様々な魅力をご多能いただきます。

公演レポート


第一部は、『卯春歌舞伎草紙』で幕を開けます。
今日まで続く歌舞伎の源流とも言われる「かぶき踊り」を創始した人物・出雲の阿国と、
美貌の伊達男・名古屋山三の二人が恋仲であったという逸話をもとにした、卯年の幕開けに相応しい祝儀気分に溢れた一幕です。
舞台は桜の花が咲き誇る出雲。京で評判の出雲の阿国一座が故郷の出雲で村人と共に踊ることとなり、
村人が一座の面々から踊りを教わっています。
そこへ花道よりやってきたのは、かぶき者の佐渡嶋左源太(片岡愛之助)、佐渡嶋右源太(中村勘九郎)。
二人は賑やかに踊りを披露します。村長寿右衛門を演じる現役最高齢 92 歳の市川寿猿も元気に活躍し、
客席からは力強い手拍子が沸き起こりました。
やがて大きな拍手に迎えられ中村七之助演じる阿国と市川猿之助演じる山三が登場すると、場内はいっそう華やかに。
「歌舞伎草紙」の名の如く、まるで絵巻物のように美しい舞台が広がります。
舞台上に一座の面々と村人がずらりと揃い、女歌舞伎や若衆として登場した歌舞伎の未来を担う若手俳優らと共に、
新年を寿ぎ歌舞伎の栄えを願いながら皆で華やかに舞うと、客席は明るくめでたい雰囲気に包まれました。


第一部『卯春歌舞伎草紙』左より
出雲の阿国=中村七之助、名古屋山三=市川猿之助
提供ⓒ松竹


続いては、今年没後 130 年を迎える名作者・河竹黙阿弥による白浪物の人気作『弁天娘女男白浪』
鎌倉雪の下の浜松屋に、片岡愛之助演じる美しい武家の娘(実は弁天小僧菊之助)が、
中村勘九郎演じる供の若党(実は南郷力丸)を連れ立ってやって来ます。
娘は婚礼の品物を選ぶうちに万引きをしたとの疑いをかけられ、打ち据えられてしまいますが、
万引きが誤解だったと分かると、詫びの百両を手に入れます。金を手にして悠々と立ち去ろうとする二人でしたが、
中村芝翫演じる侍(実は日本駄右衛門)が現れ、娘の正体が明らかに…。
歌舞伎座で弁天小僧菊之助を勤めるのは今回が初となる愛之助は、
有名な「知らざあ言ってきかせやしょう」から始まる七五調の名台詞を、テンポよく披露し、芝居を盛り上げます。
「初心に返って勤めたい」と語った愛之助は「すっきりとした粋でいなせな弁天小僧」を、仕草はもちろん、
江戸弁も巧みに操りながら作り上げ、勘九郎演じる南郷力丸とも息の合ったやりとりをみせます。
「稲瀬川勢揃い」の場では、揃いの小袖を着て「志ら浪」の傘を持った五人男(弁天小僧菊之助 =愛之助、南郷力丸=勘九郎、
忠信利平=市川猿之助、赤星十三郎=中村七之助、日本駄右衛門=芝翫) が花道に勢揃い。
それぞれが手にした番傘を捌きながら名乗りを上げる場面は、目にも耳にも心地 よい華やかなひと時です。
「あの頃の時間が戻ってきたよう」(愛之助)、「共に修業した仲間。感慨 深い」(猿之助)と語るように、
猿之助、愛之助、勘九郎、七之助はかつて「新春浅草歌舞伎」で共演し、切磋琢磨してきた同世代でもあります。
五人男それぞれのキャラクターが魅力的に浮かび上 がってくる、歌舞伎の醍醐味を堪能できる舞台に、
客席からは拍手が鳴り止みませんでした。

第一部『弁天娘女男白浪』左より
南郷力丸=中村勘九郎、浜松屋伜宗之助=中村歌之助、浜松屋幸兵衛=中村東蔵
弁天小僧菊之助=片岡愛之助、日本駄右衛門=中村芝翫
提供ⓒ松竹


第一部『弁天娘女男白浪』左より
日本駄右衛門=中村芝翫、南郷力丸=中村勘九郎、赤星十三郎=中村七之助、忠信利平=市川猿之助、弁天小僧菊之助=片岡愛之助
提供ⓒ松竹


第二部は、初春を寿ぐ一幕『壽恵方曽我』から。舞台は大磯の廓。
富士の巻狩りの総奉行に任じられた工藤祐経(松本白鸚)が祝宴を催しています。
そこへやってきたのは、正月を祝い人々に福を招く万歳の太夫と才蔵。
実はこの二人は、十八年前に祐経の不意打ちにより命を落とした父の仇を討とうとする
曽我十郎(市川猿之助)と五郎(松本幸四郎)の兄弟で…。
江戸時代から新年に人々の幸せを祈り上演されてきた曽我兄弟の物語は、歌舞伎の様式美を堪能できる演目の一つです。
今月は、趣向を新たに風俗も元禄時代に置き換え、舞踊劇としての上演。
今年の干支であるうさぎが散りばめられた舞台で、万歳の姿に身をやつした十郎と五郎の兄弟が披露する
千穐萬歳を寿ぐ踊りにお正月気分が高まります。兄弟が自らの正体を名乗り、晴れて親の仇と対面すると、
幸四郎演じる五郎の血気盛んな様子と猿之助演じる十郎の和事の柔らかさとの対比が面白く、
向かっていく五郎を人々が止める場面は「三番叟」になぞらえた華やかな踊りとなります。
今回、白鸚、幸四郎、染五郎の高麗屋三代が共演し、新年から揃ったことについて「ありがたいこと」と話す白鸚は、
自身が勤める工藤祐経は「皆の要に居る存在という、大きさが必要」と筋書の聞き書きでも語った通り、
圧倒的な存在感を示し、登場とともに客席からは大きな拍手が湧き起こりました。
古式ゆかしい曽我狂言の姿をじっくりと味わうことが出来る充実の一幕となりました。

第二部『壽恵方曽我』左より
曽我五郎時致=松本幸四郎、曽我十郎祐成=市川猿之助、犬坊丸=市川染五郎、工藤左衛門祐経=松本白鸚
提供ⓒ松竹


第二部『壽恵方曽我』左より
小林朝比奈=中村鴈治郎、曽我五郎時致=松本幸四郎、曽我十郎祐成=市川猿之助、工藤左衛門祐経=松本白鸚、犬坊丸=市川染五郎
大磯の虎=中村魁春、化粧坂少将=中村雀右衛門
提供ⓒ松竹


続いては、『人間万事金世中』。イギリスの戯曲『money』を、名作者・河竹黙阿弥が翻案した一風変わった作品です。
明治初年の横浜を舞台に、早くに母親を亡くした恵府林之助(中村錦之助)が、父が米相場で失敗して財産を失い、
伯父の辺見勢左衛門(坂 東彌十郎)のもとで肩身の狭い様子で居候をしているところから物語は始まります。
しかし、強欲な勢左衛門一家のもとで暮らす林之助に突然莫大な遺産金が舞い込み、人々の態度が一変し…。
本作で6年ぶりに歌舞伎座で主演を勤めるのは坂東彌十郎。
「感無量。上で父や兄、伯父たちに 心配されているでしょうけれど、芸を繋ぎましたと言えるようになりたい」と
熱く語った言葉からも分かるように、気合十分の様子で、勢左衛門をとことんがめつく演じ、
けれどもどこか憎めない人間味も滲ませました。
公演に先立ち行われた取材会では「黙阿弥調といわれるせりふと、散切物ならではのテンポ。
ただ早ければいいのではなく、お客様に伝わるように。それでいて面白く」と江戸歌舞伎の世話物とは一味違う
明治に生まれた“散切物”ならではの難しさも話した彌十郎。
「江戸の芝居の雰囲気とも違いますが、散切物でも黙阿弥さんのにおいが出なければ」と
今回で本作への出演が3度目となる錦之助も語ります。中村扇雀、中村芝翫、片岡孝太郎ら彌十郎も信頼を置く
同世代の俳優も出演し、型がある作品とは違う自由さの中にも、歌舞伎らしさを 色濃く感じられる作品に。
また、中村鴈治郎演じる寿無田宇津蔵ら個性的なキャラクターも数多く登場し、随所で観客の笑いを誘いました。
いつの世も変わらぬ人間の姿を描きながらも、ふっと力を抜いて楽しめる新年の初笑いにぴったりの物語に、
客席は軽やかな空気に包まれました。

第二部『人間万事金世中』左より
恵府林之助=中村錦之助、辺見勢左衛門=坂東彌十郎、勢左衛門妻おらん=中村扇雀
提供ⓒ松竹


第二部『人間万事金世中』左より
雅羅田臼右衛門=嵐橘三郎、勢左衛門妻おらん=中村扇雀、辺見勢左衛門=坂東彌十郎
勢左衛門娘おしな=中村虎之介、寿無田宇津蔵=中村鴈治郎、恵府林之助=中村錦之助
倉田娘おくら=片岡孝太郎、毛織五郎右衛門=中村芝翫
提供ⓒ松竹



第三部は、『十六夜清心』を、情趣あふれる清元の音色が印象的な「稲瀬川百本杭」から、
清心、十六夜、白蓮という三人の人間模様が複雑に絡み合う「雪の下 白蓮本宅」まで上演いたします。
序幕は月夜の稲瀬川が舞台。鎌倉極楽寺の僧である清心(松本幸四郎)は、
遊女の十六夜(中村七之助)と深い仲であることが発覚し、女犯の罪で寺を追われて稲瀬川までやってきた清心は、
そこで廓を抜け出してきた十六夜と再び出会うと心中を決意し川へ身を投げます。
この作品を「心中から始まる珍しい世界。最初に、二人がどれだけ好き合っているのかを感じていただかないと
成立しないお芝居」と語る幸四郎と、「お客様に納得していただくには、やはり最初にすごく清心を好きだと伝えないと。
その後も、ずっと殊勝に清心を思う心を見せられるよう、大切に演じたい」と語る七之助は、
清元の名曲「梅柳中宵月」の美しい音色が劇場を満たす中、“心中”というどこか生々しい場面を、
儚く美しい一瞬として描き出します。
まさに「好き合うことが美しく見える」場面に観客が引き込まれていくかのよう。
しかし、身投げした十六夜は舟遊びをしていた俳諧師白蓮(中村梅玉)と、船頭の三次に命を救われ、
一方の清心も死にきれず、 岸辺に…。
再び入水するか思い悩む清心のもとへ通りかかったのは寺小姓の恋塚求女(中村壱太郎)。
癪を起こして苦しむ求女を介抱した拍子に懐にある大金に触れた清心は、
その金を奪おうとして揉み合ううちに求女を殺めてしまいます。
月の光に照らされた清心の顔にふっと影が落ちたかのうように見えたと思うと、
「しかし待てよ」で始まる台詞とともに清心が悪党に変わっていく様子を幸四郎が印象的に魅せます。
続く「白蓮妾宅の場」では七之助の十六夜が清心の菩提を弔うため剃髪する場面が大きな見どころ。
豊かな黒髪から坊主頭となった十六夜が独特の色っぽさをみせ、黙阿弥らし い趣向です。
「雪の下白蓮本宅の場」では、清心と十六夜が姿かたち、歩き方から話し方まで前半とはがらりと変わり、
悪党としての魅力を放ちます。そこに梅玉演じる白蓮が加わり繰り広げられるドラマ性とメリハリが効いたセリフの応酬は
一言も聞き逃せない聞きごたえたっぷりの場面。梅玉演じる白蓮が本性を明かすと、
“実は”の連続で展開する物語に観客からは驚きと笑いが起こり、新春の初芝居に相応しい充実のひと時となりました。

第三部『十六夜清心』左より
扇屋抱え十六夜後におさよ=中村七之助、極楽寺所化清心後に鬼薊の清吉=松本幸四郎
提供ⓒ松竹


第三部『十六夜清心』左より
下男杢助実は寺沢塔十郎=中村亀鶴、扇屋抱え十六夜後におさよ=中村七之助、極楽寺所化清心後に鬼薊の清吉=松本幸四郎
白蓮女房お藤=市川高麗蔵、俳諧師白蓮実は大寺正兵衛=中村梅玉
提供ⓒ松竹

 

 

歌舞伎座新開場十周年

「壽 初春大歌舞伎」

 

公演日程:2023年1月2日(月・休)~27日(金)

【休演】10日(火)、19日(木)

【貸切】第一部:6日(金)

会場:歌舞伎座

 

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/803

 

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