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歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」公演レポート、舞台写真掲載 2022年09月

(2022年09月12日記載)

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歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」が開幕!公演レポート、舞台写真掲載


★各演目写真及び内容に触れておりますので、ご観劇前の方はご注意ください。★

第二部『松浦の太鼓』より松浦鎮信=松本白鸚
提供ⓒ松竹

公演概要(リリースより)


9月4日(日)から「秀山祭九月大歌舞伎」(9月4日初日〜27日千穐楽 休演日:12日、21日)を開催いた します。
初世中村吉右衛門の俳名を冠し、その功績を讃える「秀山祭」の開催は三年ぶりとなり、今年で十三回目を迎えます。
本年は、二世中村吉右衛門一周忌追善公演といたしまして、松本白鸚、片岡仁左衛門、中村梅玉をはじめとした
豪華な顔ぶれで、故人を偲ぶ所縁の演目を上演いたします。

公演レポート


第一部は、『白鷺城異聞(はくろじょうものがたり)』で幕を開けます。
平成十一年、二世吉右衛門が構成・演出を手掛け、姫路城特設舞台で初演された作品で、
剣豪・ 宮本武蔵にまつわる史実や伝説を取り入れながら、平和への思いを込めて創作された舞踊劇です。
幕が開くと、舞台はその白く美しい姿から“白鷺城”の別名を誇る播磨国の姫路城。
本多平八郎忠刻(中村又五郎)や妻の千姫(中村時蔵)らが賑々しく宴を催しています。
そこに招かれたのは、天下一の剣豪・宮本武蔵(中村歌六)。宴の最中、にわかに千姫が苦しみ出し
怪しい影が出現すると、これを物の怪の祟りと推量した宮本武蔵と宮本三木之助(中村萬太郎)は城の天守閣へ。
すると、目の前に刑部姫(中村七之助)と秀頼の霊(中村勘九郎)が現れます。
勘九郎演じる秀頼の霊と七之助演じる刑部姫は、城の人々を脅かす華やかな妖しさで観客を魅了。
勇壮な宮本武蔵が神刀を抜き打ち立ち向かうと、一同はダイナミックな立廻りを繰り広げ、
場内の熱気は最高潮となり、大きな拍手に包まれる中幕を閉じました。


第一部『白鷺城異聞』(前方)左より
宮本三木之助=中村萬太郎、腰元名月=中村米吉、腰元白鷺=中村梅枝、宮本武蔵=中村歌六、家老都築惣左衛門=中村錦之助
(後方)左より、千姫=中村時蔵、局明石=中村歌女之丞、本多平八郎忠刻=中村又五郎
提供ⓒ松竹


第一部『白鷺城異聞』左より
宮本武蔵=中村歌六、秀頼の霊=中村勘九郎、刑部姫=中村七之助
提供ⓒ松竹


続いては、歌舞伎三大名作のひとつ『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』より、
「寺子屋(てらこや)」の上演です。初世吉右衛門が松王丸、武部源蔵を共に得意とし、
二世も当り役として多くの観客の胸を打ちました。
その芸を受け継ぐ松本幸四郎と尾上松緑が、松王丸と源蔵を日替りで勤めます。
本来松緑としては、音羽屋系の銀鼠の雪持ちの衣裳を着用していますが、
この度は播磨屋の追善として尾上菊五郎の理解を得て、黒の衣裳を着用し臨みます。
偶数日の初日は、松王丸を幸四郎、源蔵を松緑の配役。幕が開き、何かを思い悩む源蔵が花道に登場すると、
場内は一気に物語の世界に引き込まれていきます。
そして、寺子屋に匿う菅丞相の息子菅秀才の首を討つように命じられた源蔵が、今日寺入りしてきた
小太郎を若君の身代わりにすることを決意し、物語が展開していきます。
緊張感溢れる「首実検」の場面や、恩義に報いるために我が子を犠牲にした松王丸の「泣き笑い」など、
数々の名場面が観客の涙を誘います。
幸四郎は公演に先立って行われた取材会に出席し、「真正面からどれだけ叔父のことを思い出せるか。
そういう思いで舞台に立とうと思っています。叔父に似せようとするのではなく、教えていただいたことを
しっかり勉強し直して勤めたいです」と語り、松緑は筋書のインタビューページにて「立役のセオリーというものを
教えてくださったおじ(二世吉右衛門)には感謝しかありません。そのおじの追善でどう成長できるかは課題です」と
真摯にコメントしています。また、当月は中村歌昇の長男中村種太郎と次男中村秀乃介が初舞台を踏みます。
種太郎は菅丞相の息子菅秀才を、秀乃介は松王丸の息子小太郎を堂々と勤め、客席から大きな拍手が送られました。

第一部『寺子屋』(前方)左より
戸浪=中村児太郎、涎くり与太郎=中村又五郎、小太郎=中村秀乃介、武部源蔵=尾上松緑、(後方)菅秀才=中村種太郎
提供ⓒ松竹


第一部『寺子屋』左より
戸浪=中村児太郎、武部源蔵=尾上松緑、松王丸=松本幸四郎
提供ⓒ松竹


第一部『寺子屋』左より
松王丸=松本幸四郎、武部源蔵=尾上松緑
提供ⓒ松竹

     *     *     *

第二部は、秀山十種の内『松浦の太鼓(まつうらのたいこ)』で幕を開けます。
初世中村吉右衛門は主人公松浦鎮信を当り役とし、後に撰定した家の芸「秀山十種」のひとつに加え、
その芸は二世吉右衛門へと受け継がれました。今回は、松本白鸚が初役で松浦侯を勤めることでも話題の舞台です。
元禄十五年、師走の両国橋。俳人の宝井其角(中村歌六)が偶然出会ったのは、笹売りに身をやつしている
赤穂浪士の大高源吾(中村梅玉)。其角の俳諧の弟子でもある源吾は、「明日待たるゝ その宝船」と付句を残し去っていきます。
そして舞台は翌日、句会が催されている大名・松浦鎮信の屋敷となります。
隣の館から陣太鼓の音が聞こえると、松浦侯がひとつ、ふたつと指折り数 えていく姿に、観客も心高鳴る様子で熱い視線を注ぎます。
松浦侯は大名の風格に加えて、愛嬌や高揚さを併せ持つ役柄。白鸚は、松浦侯の裏表のない様子や
忠義を重んじる武士の精神をにじませます。そして劇中にて、白鸚、梅玉、歌六ら出演者による追善口上が披露されました。
白鸚は、祖父・初世吉右衛門のもとで芸道の修行をし、その芸を後世に伝えるために「秀山祭」を開催し続けてきた
弟・二世吉右衛門について、「兄として誠に誇りと思うことと同時に、たった一人の弟でございますゆえ、
別れはいつも悲しい、侘しいものでございます。今回、弟の追善の意味を込めまして、
兄として初役にて『松浦の太鼓』を上演させていただきます」と述べると、会場は割れんばかりの大きな拍手に包まれました。

第二部『松浦の太鼓』追善口上
松本白鸚
提供ⓒ松竹


第二部『松浦の太鼓』追善口上 左より
中村米吉、松本錦吾、中村梅玉、市川染五郎、中村歌六、大谷廣太郎、松本白鸚、市川高麗蔵、大谷友右衛門
提供ⓒ松竹


第二部『松浦の太鼓』左より
お縫=中村米吉、早瀬近吾=松本錦吾、宝井其角=中村歌六、里見幾之亟=市川染五郎
渕部市右衛門=大谷廣太郎、江川文太夫=市川高麗蔵、鵜飼左司馬=大谷友右衛門、松浦鎮信=松本白鸚
提供ⓒ松竹


第二部『松浦の太鼓』より
松浦鎮信=松本白鸚
提供ⓒ松竹


第二部『松浦の太鼓』(前方)左より
お縫=中村米吉、大高源吾=中村梅玉、宝井其角=中村歌六、松浦鎮信=松本白鸚
(後方)左より、早瀬近吾=松本錦吾、渕部市右衛門=大谷廣太郎、江川文太夫=市川高麗蔵、鵜飼左司馬=大谷友右衛門
提供ⓒ松竹


秀山祭九月大歌舞伎 中村吉右衛門一周忌追善特別ポスター


白鸚が語る歌舞伎座『松浦の太鼓』、特別ポスターも公開
https://www.kabuki-bito.jp/news/7803


続いては、二世吉右衛門の当り役の名場面をつづる一幕『揚羽蝶繍姿(あげはちょうつづれのおもかげ)』
「籠釣瓶花街酔醒」では舞台一面に広がる花の吉原を背景に、
田舎から出てきた朴訥な男佐野次郎左衛門を松本幸四郎、佐野次郎があまりの美しさに見染める吉原一の花魁八ツ橋を中村福助、
「鈴ヶ森」では江戸の侠客幡随院長兵衛を中村錦之助、前髪の美しい若衆を中村歌昇、
「熊谷陣屋」では熊谷次郎直実を幸四郎が勤め、
続く「播磨潟だんまり」は、市川染五郎演じる佐々木盛綱らがだんまり模様で見せます。
幕切れでは熊谷次郎の花道での述懐、幕外の引っ込みを見せ、故人の舞台での姿が偲ばれる舞台に、
客席は割れんばかりの拍手に包まれました。

第二部『揚羽蝶刺繡』左より
下男治六=中村吉之丞、佐野次郎左衛門=松本幸四郎、兵庫屋八ツ橋=中村福助、番頭新造八重咲=中村梅花
提供ⓒ松竹


第二部『揚羽蝶刺繡』左より
白井権八=中村歌昇、幡随院長兵衛=中村錦之助
提供ⓒ松竹



第二部『揚羽蝶繍姿』左より
相模=大谷廣松、熊谷次郎直実=松本幸四郎、藤の方=中村莟玉
提供ⓒ松竹



第二部『揚羽蝶繍姿』左より
佐々木盛綱=市川染五郎、奴智恵内=大谷廣太郎、一條大蔵長成=中村種之助、新中納言知盛=中村鷹之資、典侍の局=中村児太郎
提供ⓒ松竹

     *     *     *

第三部は、『仮名手本忠臣蔵』より、「祇園一力茶屋の場」です。
忠義を貫く本心を隠して遊興にふける由良之助を仁左衛門、忠義心をもちながらも身分の低さゆえに
仇討ちに加わることができない平右衛門を海老蔵、女方の大役である遊女おかるを雀右衛門が勤めます。
仁左衛門は、由良之助のもつ剛柔さを色気たっぷりにみせ、海老蔵の平右衛門、雀右衛門のおかる兄妹の
情愛と哀感が観客の心を惹きつけます。登場人物それぞれの本心が明らかになり、
人間模様をドラマティックに描き出す密度の高い芝居が展開され、客席から送られる力強い拍手の音が
いつまでもやまない初日となりました。

第三部『仮名手本忠臣蔵』左より
斧九太夫=嵐橘三郎、大星由良之助=片岡仁左衛門、遊女おかる=中村雀右衛門
提供ⓒ松竹



第三部『仮名手本忠臣蔵』左より
遊女おかる=中村雀右衛門、大星由良之助=片岡仁左衛門
提供ⓒ松竹



第三部『仮名手本忠臣蔵』左より
遊女おかる=中村雀右衛門、寺岡平右衛門=市川海老蔵、斧九太夫=嵐橘三郎、大星由良之助=片岡仁左衛門
提供ⓒ松竹



幕切れは、重厚な舞踊劇『藤戸』です。能の「藤戸」を素材に、戦によって子を失った母の悲しみに焦点を当て、
命の尊さへの思いが込められています。麗らかな瀬戸内の春。源平合戦の後、領主として備前国藤戸に着任した
佐々木盛綱(又五郎)の前に、藤波(菊之助)という女性が現れます。
1年前の藤戸の合戦で、敵陣へ馬で渡る浅瀬を教えてくれた漁夫を、無情にもその場で殺した盛綱。
その女性は、実は漁夫の母でした。今回、菊之助が母藤波と藤戸の悪龍を演じ、二世吉右衛門の孫・丑之助も
浜の童和吉として出演します。二世吉右衛門の祈りへの強い思いを描いた作品を、所縁の配役で上演する舞台にご期待ください。


第三部『藤戸』左より
佐々木三郎兵衛盛綱=中村又五郎、母藤波=尾上菊之助、郎党小林三郎=中村吉之丞
提供ⓒ松竹



第三部『藤戸』左より
浜の女おしほ=中村米吉、浜の童和吉=尾上丑之助、浜の男磯七=中村種之助
提供ⓒ松竹



第三部『藤戸』左より
藤戸の悪龍=尾上菊之助、佐々木三郎兵衛盛綱=中村又五郎、郎党長井景忠=坂東彦三郎
提供ⓒ松竹

 

 

『秀山祭九月大歌舞伎』

二世中村吉右衛門一周忌追善

 

公演日程:2022年9月4日(日)~27日(火)

【休演】12日(月)、21日(水)

会場:歌舞伎座

 

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/776

 

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