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歌舞伎座新開場十周年「吉例顔見世大歌舞伎」が開幕!公演レポート、舞台写真掲載 2023年11月

(2023年11月04日記載)

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歌舞伎座新開場十周年「吉例顔見世大歌舞伎」が開幕!公演レポート、舞台写真掲載


★各演目写真及び内容に触れておりますので、ご観劇前の方はご注意ください★

昼の部『マハーバーラタ戦記』より
迦楼奈=尾上菊之助
提供ⓒ松竹

公演概要(リリースより)


11月2日(木)、歌舞伎座11月公演「吉例 顔見世大歌舞伎」が開幕。
熱狂を巻き起こした初演から6年ぶりの再演となる昼の部、「忠臣蔵外伝」屈指の人気作に古典の名作、
華やかな舞踊が揃う夜の部と、「顔見世」に相応しい賑々しい舞台をご堪能いただきます。

公演レポート


昼の部は、世界三大叙事詩のひとつ「マハーバーラタ」を原典とした『極付印度伝マハーバーラタ戦記』を上演。
「マハーバーラタ」の物語や哲学は、インドの文化・芸術に深く根 づくと共に、
中国を経て日本の「今昔物語」などにも影響を与えたとされ、世界最長の叙事詩を歌舞伎として上演するという
斬新かつ難易なこの企画は、尾上菊之助が SPAC(静岡県舞台芸術センター)の芸術総監督である宮城聰が演出した
『マハーバーラタ〜ナラ王の冒険〜』を観て感銘を受けたことがきっかけとなりました。
菊之助の熱い思いが実現し、青木豪の脚本、宮城總の演出により、平成29(2017)年に初演、
歌舞伎座に熱狂の渦を巻き起こしました。6年ぶりの上演となる今回は、
「二幕目の婿選びのシーンでインド映画の舞踊を模した踊り合戦」が加わることを事前に行われた取材会で
菊之助が明かし、映画「RRR」で話題となった「ナートゥダンス」のような激しい踊りの場面が登場するなど、
脚本と構成が練り直された再演となりました。世界中で争いが絶えない今、平和への祈り、希求、
そして戦いの原理に向き合い、戦乱のない世界に希望を見いだす本作がどのような進化を遂げるのか、
公演前から大きな注目が集められました。
また、今回の上演では、初演に引き続き尾上菊五郎が仏の化身である那羅延天で出演し、
主人公・迦楼奈とシ ヴァ神の二役を勤める菊之助、我斗風鬼写とガネーシャの二役を勤め、
今回が初出演となる菊之助の長男丑之助の、親子孫の三人が共演することも大きな話題となります。

開幕するとそこは、神々の世界。神々は人間界を見下ろし、争いを繰り返す人間たちを嘆きます。
黄金を身にまとっているかのように煌びやかに居並ぶ神々は、神聖さを感じさせます。
中央に聳える那羅延天(ならえんてん/尾上菊五郎)が「この世の終わりが始まる」と告げると、
滅びの神・シヴァ神(尾上菊之助)は人 間たちが始める戦争で世界が滅ぶだろうと語ります。
このままでは世界は滅びてしまうと、太陽神(坂東彌 十郎)は世界の終わりを止めるため
慈愛に満ちた子を人間界へ送り救世主にしたいと告げます。
一方、軍神である帝釈天(坂東彦三郎)は圧倒的な武力をもって世界を支配すべきだと言い、
それぞれ若く徳の高い汲手姫との間に迦楼奈と阿龍樹雷をもうけます。

母なるガンジス川に泰平を祈っている汲手姫(くんてぃひめ/中村米吉)のもとへ太陽神が現れると、
汲手姫は迦楼奈(かるな/尾上菊之助)を宿し、瞬く間に美しい耳飾りの子を産み落とします。
しかし、まだ恋すら知らない身であり恐ろしくなった姫は、生まれたばかりの赤子をガンジス川へ流してしまいます…。
十六年が経ち、亜照楽多(あでぃらた/河原崎権十郎)と羅陀(らーだー/市村萬次郎)夫婦に
育てられた迦楼奈は天性の弓の才能を秘めた青年へと成長を遂げますが、
ある日、太陽神から人間界の救世主であるとのお告げを受けると、弓の修業のために家を出る決断をし、旅立つのでした。

王が亡くなったばかりの王宮では、王妃である汲手姫の前に百合守良(ゆりしゅら/坂東亀蔵)、
風韋摩(びーま/中村萬太郎)、阿龍樹雷(あるじゅら/中村隼人)、納倉(なくら/中村鷹之資)、
沙羽出葉(さはでば/上村吉太朗)の五王子が並びます。五王子の名乗りの台詞は歌舞伎らしさに溢れました。
五王子とその従兄弟である鶴妖朶王女(づるようだおうじょ/中村芝のぶ)と
道不奢早無王子(どうふしゃさなおうじ/市川猿弥)姉弟による王位継承争いが勃発すると、
仙人久理修那(くりしゅな/中村錦之助)の助言により王位を競う武芸大会が開かれることに。
都へやってきた迦楼奈もその武芸大会に出場し阿龍樹雷と対峙しますが、
鶴妖朶は自らが国を治めるべく迦楼奈を仲間に引き入れます。
憎しみに駆られ五王子を亡き者にしたい鶴妖朶と、永遠の友と誓った約束を貫く迦楼奈。
二人の関係は果たして…。

また、迦楼奈と阿龍樹雷は、それぞれ葛藤しながらも自らの使命を受け入れていきます。
菊之助と隼人の二人は初演でも話題となった客席を貫く両花道を走る馬車に乗ると、
激しい立廻りを見せ、客席もヒートアップ。
汲手姫という同じ母親を持つ二人の運命がぶつかり合う場面に拍手が止みません。
戦乱の場面では、迦楼奈を演じる菊之助と、我斗風鬼写を演じる丑之助が親子で立廻りを見せると、
観客からは大きな拍手が送られ、丑之助はハッキリとした口跡で重要なセリフを聞かせました。
両花道を使った効果的な演出をはじめ、屏風を模した大道具、甲冑の衣裳デザインなど視覚的な楽しさから、
歌舞伎座の空間に響き渡る国際色豊かな音楽、次々に繰り広げられる怒涛の展開は時が経つのを忘れてしまうほど。
溢れんばかりの躍動感と哲学的な問いの余韻を残し、客席は大きな拍手で満たされました。


昼の部『マハーバーラタ戦記』
(前方)左より、沙羽出葉王子=上村吉太朗、納倉王子=中村鷹之資、阿龍樹雷王子=中村隼人
風韋摩王子=中村萬太郎、百合守良王子=坂東亀蔵
(後方)左より、汲手姫=中村米吉、仙人久理修那=中村錦之助
提供ⓒ松竹


昼の部『マハーバーラタ戦記』
(前方)左より、納倉王子=中村鷹之資、風韋摩王子=中村萬太郎、百合守良王子=坂東亀蔵
阿龍樹雷王子=中村隼人、沙羽出葉王子=上村吉太朗
提供ⓒ松竹


昼の部『マハーバーラタ戦記』
左より、迦楼奈=尾上菊之助、鶴妖朶王女=中村芝のぶ
提供ⓒ松竹


昼の部『マハーバーラタ戦記』
左より、仙人久理修那=中村錦之助、阿龍樹雷王子=中村隼人
提供ⓒ松竹


昼の部『マハーバーラタ戦記』
(前)迦楼奈=尾上菊之助、(後)我斗風鬼写=尾上丑之助
提供ⓒ松竹


昼の部『マハーバーラタ戦記』
左より、迦楼奈=尾上菊之助、阿龍樹雷王子=中村隼人
提供ⓒ松竹


昼の部『マハーバーラタ戦記』
左より、ガネーシャ=尾上丑之助、那羅延天=尾上菊五郎
提供ⓒ松竹


夜の部は、秀山十種の内『松浦の太鼓』で幕開き。
元禄十五年、師走の両国橋。俳人の宝井其角(中村歌六)は、笹売りに身をやつした赤穂浪士の大高源吾(尾上松緑)に出合います。
其角の俳諧の弟子でもある源吾は、其角の詠んだ上の句に「明日待たるゝその宝船」と下の句を残し去っていきます。
その後の物語に大きな役割を果たす意味深な付句に、緊張した空気が漂います。
そして翌日、大名・松浦鎮信(片岡仁左衛門)の屋敷では、其角を招き句会が催されていますが、
松浦侯は源吾の妹で腰元のお縫(中村米吉)の姿を見て苛立ち、其角から前日の源吾の話を聞くと、
赤穂には忠義に篤い浪士がいないのかとさらに苛立ちが増します。するとそこへ、隣の吉良邸から陣太鼓の音が…。
一つ二つと指折り数える松浦侯は赤穂浪士による討入りを覚ります。
その松浦侯の姿は本作最大の見所で、観客も心高鳴る様子で熱い視線を注ぎます。
大名の風格と教養そして喜怒哀楽を自在に現し愛嬌を備える松浦侯は、忠義を重んじる武士の精神を持ちます。
「忠臣蔵」外伝の人気作を、平成14(2002)年以来21年ぶりに歌舞伎座で演じる仁左衛門の姿に拍手が鳴り止みませんでした。

夜の部『松浦の太鼓』松浦鎮信=片岡仁左衛門
提供ⓒ松竹


夜の部『松浦の太鼓』左より、大高源吾=尾上松緑、宝井其角=中村歌六
提供ⓒ松竹


夜の部『松浦の太鼓』
(前方)左より、お縫=中村米吉、大高源吾=尾上松緑、宝井其角=中村歌六、松浦鎮信=片岡仁左衛門
(後方)左より、早瀬近吾=市村橘太郎、里見幾之丞=中村吉之丞、渕部市右衛門=中村鷹之資
江川文太夫=中村隼人、鵜飼左司馬=市川猿弥
提供ⓒ松竹


続いては、義太夫狂言の傑作『鎌倉三代記』
この度の上演では、中村時蔵と梅枝の親子が三浦之助義村と時姫をそれぞれ初役で勤めることが話題となります。
中村芝翫が3度目となる佐々木高綱を勤める本作は、大坂の陣をモデルとして、三浦之助義村は木村重成、
時姫は千姫、佐々木高綱は真田幸村であるとされ、鎌倉時代に舞台は置き換えられています。
三浦之助の母が病に伏す絹川村の侘びた住居。京方と鎌倉方の争いのさなか、
京方の三浦之助 (中村時蔵)が現れ、恋人である鎌倉方の時姫(中村梅枝)が出迎えます。
戦へ戻ろうとする三浦之助に時姫は夫婦の契りを交わしてほしいと嘆願するも拒絶され、
自害しようとしますが三浦之助に止められます。
時姫は父の北條時政と恋人の三浦之助との板挟みに苦しみ、ついに苦渋の決断を下します…。
二枚目の若武者である手負いの三浦之助を時蔵が、“三姫”と呼ばれる女方の大役のひとつである時姫を梅枝が勤め、
運命に翻弄される男女を色濃く演じると、客席はその一挙手一投足に見入りました。
前半では可笑しみを見せる藤三郎が後半では佐々木高綱(中村芝翫)としての本性を現し、
勇将たる姿でこれまでの計略を語る対照的な姿に観客は沸き立ちました。
趣向に富んだ重厚な義太夫狂言の傑作に、大きな拍手が送られました。


夜の部『鎌倉三代記』左より、時姫=中村梅枝、三浦之助義村=中村時蔵
提供ⓒ松竹



夜の部『鎌倉三代記』左より、三浦之助義村=中村時蔵、佐々木高綱=中村芝翫、時姫=中村梅枝
提供ⓒ松竹


夜の部を締めくくるのは、「顔見世」を彩る舞踊三題をお届けする『顔見世季花姿繪』です。

最初は、春の七種行事を曽我兄弟の仇討ちと結びつけた舞踊『春調娘七種』から。
親の仇である工藤祐経の館に現れた、曽我五郎(中村種之助)と曽我十郎(市川染五郎)の兄弟。
工藤を討とうと血気づく兄弟を、春の七種を摘む静御前(尾上左近)が押し止めます。
七種の名を巧みに織り込んだ長唄に乗せ、若手三人が華やかに踊る姿に客席は温かい空気に包まれました。

続いては、清元による『三社祭』。浅草寺本尊の観音像を拾い上げた
二人の漁師(坂東巳之助、尾上右近)が粋な踊りを見せると、頭上に黒雲が下りてきて、
二人に悪玉と善玉が取りつきます。
悪玉と善玉の面をつけて競うように踊る二人は、軽快で可笑しみに溢れ、躍動感ある勢いを見せます。
悪玉の巳之助と善玉の尾上右近という踊り巧者二人の競い合いに拍手喝采、大いに盛り上がりました。

そして最後は、吉原の遊廓を舞台に風情ある踊りで魅せる『教草吉原雀』
男女の鳥売り(中村又五郎、片岡孝太郎)が吉原の客を様々な鳥たちにたとえて踊り、
吉原通いの様子や廓の風習を伝えます。鳥刺し(中村歌昇)が登場し、賑やかさが加わり客席も浮き立ちます。
やがて三人の正体が明らかになると、驚きと共に沸き上がり、華やかに幕となりました。

夜の部『春調娘七種』左より、静御前=尾上左近、曽我五郎=中村種之助、曽我十郎=市川染五郎
提供ⓒ松竹


夜の部『三社祭』左より、悪玉=坂東巳之助、善玉=尾上右近
提供ⓒ松竹


夜の部『教草吉原雀』
左より、鳥刺し実は鷹狩の侍=中村歌昇、鳥売りの女実は雀の精=片岡孝太郎、鳥売りの男実は雀の精=中村又五郎
提供ⓒ松竹

 

 

歌舞伎座新開場十周年

『吉例顔見世大歌舞伎 』

 

公演日程:2023年11月2日(木)~25日(土)

【休演】10日(金)、20日(月) 公演詳細

会場:歌舞伎座

 

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/843

 

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