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「三月大歌舞伎」昼の部 公演レポート、舞台写真掲載
★各演目写真及び内容に触れておりますので、ご観劇前の方はご注意ください★
『元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿』徳川綱豊卿=片岡仁左衛門
提供ⓒ松竹
公演概要(リリースより)
歌舞伎座3月公演「三月大歌舞伎」の初日が開幕いたしました。
満開の桜が舞台を彩る『傾城道成寺』や『喜撰』に、
夜桜が印象的な『御浜御殿綱豊卿』など、歌舞伎座は春爛漫です!
公演レポート
昼の部は歌舞伎三大名作のひとつ『菅原伝授手習鑑』より『寺子屋』で幕開きです。
岳父・中村吉右衛門が当り役とした松王丸を尾上菊之助が初役で勤め、
松王丸の息子・小太郎を菊之助の長男・尾上丑之助が 演じる親子共演も話題。
場面は武部源蔵(片岡愛之助)と戸浪(坂東新悟)夫婦が営む寺子屋。
涎くり与太郎(中村鷹之資)をはじめ、寺子屋の子供たちは源蔵の不在の間
おちゃらけながら仲睦まじく勉強に励みます。
そんな中、源蔵は恩義ある菅丞相の実子である菅秀才を匿っていることが敵方に知れて、
首を討つように命ぜられ苦悩のうちに帰宅。寺入りしたばかりの品位ある小太郎(尾上丑之助)が
凛とした立ち姿で現れると、源蔵は菅秀才の身代わりにすることに決めます。
菅秀才の顔を知る松王丸が首実検を勤めるため、気が気ではない源蔵夫婦。
嘘をつけば命はないと春藤玄蕃(中村萬太郎)が脅し、緊迫感が高まります。
しかし、松王丸は討たれた首を見て「菅秀才に相違ない」と言い切り、立ち去ります。
続けて小太郎の母・千代(中村梅枝)が小太郎を引き取りにやってきますが、
なんと「若君菅秀才のお身代り、お役に立てて下さったか?」と尋ねます。
松王丸夫婦は我が子を身代わりにして、菅丞相への忠義を立てたのでした…。
息子の死を知り咽び泣く千代に向かい、泣くなと諭す松王丸ですが、
小太郎が喜んで身代わりになったと聞いて誇らしさや悲しみを含んだ大きな笑い声をあげ、
必死に気持ちを堪えました。忠義心と親子愛の間に揺れる人々の姿に、胸を打たれる一幕となりました。
『菅原伝授手習鑑 寺子屋』左より
松王丸=尾上菊之助、武部源蔵=片岡愛之助
提供ⓒ松竹
『菅原伝授手習鑑 寺子屋』左より
千代=中村梅枝、松王丸=尾上菊之助、園生の前=中村東蔵、武部源蔵=片岡愛之助、戸浪=坂東新悟
提供ⓒ松竹
続いては
『傾城道成寺』です。本作は、名女方・四世中村雀右衛門の十三回忌追善狂言として上演、
四世雀右衛門がライフワークとして数多手掛けた「道成寺物」のひとつです。
傾城清川を四世雀右衛門の次男で、父の名跡を五代目として継いだ当代雀右衛門、
僧妙碩を長男・友右衛門が演じ、友右衛門の長男・大谷廣太郎と次男・大谷廣松が出演し、
尾上菊五郎をはじめとした所縁の出演者で故人を偲びます。
舞台は桜が満開の紀伊国の道成寺。鮮やかな衣裳の傾城が忽然と現れます。
傾城の清川(中村雀右衛門)は源平の合戦で無常の世を儚み、那智の沖で入水したとされる平維盛と深い仲。
ひと目なりとも会いたいと道成寺にやってきました。やがて今は安珍と名乗り出家に臨もうとする
維盛(尾上松緑)が姿を現すと、清川の髪は次第に乱れ、情念を表す炎があしらわれた衣裳に早替り。
クライマックスでは導師尊秀(尾上菊五郎)と二人の童子(坂東亀三郎、尾上眞秀)が登場し、
蛇身と化した清川を鎮めます…。
雀右衛門はインタビューで「父は、安珍への思いを、傾城の姿を通じてより強く表現していたと思います。
恨みを語りながらも、愛おしかった気持ちも大切に勤めたい」と語っており、
切ない恋心と燃えたぎる執着が交差する、複雑な役柄を見事に勤め上げ、観客は釘付けとなりました。
『傾城道成寺』左より
傾城清川実は清姫の霊=中村雀右衛門、白川の安珍実は平維盛=尾上松緑
提供ⓒ松竹
『傾城道成寺』左より
傾城清川実は清姫の霊=中村雀右衛門、導師尊秀-尾上菊五郎
提供ⓒ松竹
昼の部の切は
『御浜御殿綱豊卿』。
真山青果作による全十編からなる新歌舞伎の名作「元禄忠臣蔵」は史実に基づいた新たな視点で
「忠臣蔵」が描かれ、なかでも特に人気が高い場面が『御浜御殿綱豊卿』です。
片岡仁左衛門が当り役の徳川綱豊卿、松本幸四郎が富森助右衛門を勤めます。
幕が開くとそこは次期将軍と目される徳川綱豊の邸宅・御浜御殿。
お浜遊びの最中、春うららの晴れやかな雰囲気が漂います。
綱豊の寵愛を受けるお喜世(中村梅枝)は浦尾(市村萬次郎)の詰問を受けているところ、
江島(片岡孝太郎)の助けを借りて兄・助右衛門(松本幸四郎)がお浜遊びを見る許可を得ます。
綱豊が政治に無 関心であることを隠すためにほろ酔いを装う様から、
師である新井勘解由(中村歌六)に対して仇討と浅野家再興の間で葛藤する旨を打ち明ける
厳かな様へ自然と移り行く姿に、観客は徐々に物語へ惹き込まれていきます。
お浜遊びに参加する仇の様子を見ようと御殿へやってきた赤穂浪士の助右衛門を呼び出し、
真意を確かめようと綱豊が次々と挑発。始めは平静を保つ助右衛門ですが、
浅野家再興の話が上がると堪えきれず、熱を帯びます。
夜が更け、仇の吉良上野介と見定めて能装束の人物に斬りかかる助右衛門でしたが、
相手は先回りして復讐を阻 んだ綱豊で…。
能装束姿の綱豊と、熱情にかられた助右衛門の立廻りでの歌舞伎の様式美、
そして本当の忠義とは何かを諭す綱豊の長台詞に大きな拍手が送られました。
『元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿』左より
中臈お喜世=中村梅枝、徳川綱豊卿=片岡仁左衛門、御祐筆江島=片岡孝太郎
提供ⓒ松竹
『元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿』左より
富森助右衛門=松本幸四郎、中臈お喜世=中村梅枝
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