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「十二月大歌舞伎」公演レポート、舞台写真掲載
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第三部『天守物語』左より、姫川図書之助=市川團子、富姫=坂東玉三郎
提供ⓒ松竹
公演概要/公演レポート
歌舞伎座12月公演「十二月大歌舞伎」が12月3日に初日の幕を開けました。
師走を彩る豪華ラインナップで、歌舞伎の多彩な魅力をご堪能いただきます。
第一部は、『あらしのよるに』で幕開きです。
「あらしのよるに」はきむらゆういち作の絵本で 平成6(1994)年の刊行以来、国内外問わず幅広い世代に愛されてきました。
平成27(201 5)年に南座で新作歌舞伎として初演、その後歌舞伎座・博多座でも再演し大きな反響を呼びました。
そしてこの度、絵本発刊30周年を記念し、8年ぶりの歌舞伎座での上演となります。
幕が開くと、そこには狼の親子、そして山羊の親子の姿。
この度の歌舞伎座での再演に際して、新たに書き加えられた幼いころのがぶ(中村夏幹)とめい(中村陽喜)の記憶の場面から始まります。
がぶの父である狼の長(中村獅童)との場面では、実際の親子での出演となり大きな拍手がおくられます。
そして、場面は激しい嵐の夜となり、粗末な小屋に身を寄せているのは、狼のがぶ(中村獅童)と山羊のめい(尾上菊之助)。
暗闇で互いの姿が見えず、相手が誰かわからない状況にも関わらず話が弾み、すっかり意気投合。
「あらしのよるに」を合言葉に、翌日の再会を約束します。
夕べの嵐が嘘のような、どこまでも青空が広がる穏やかの午後、がぶとめいは「あらしのよるに」の合言葉を嬉しそうにかわします。
ところが、互いに相手の姿をみてびっくり。目の前にいるのは狼にとって大好物の山羊と、天敵の狼。
食べたい欲求を抑えるがぶと、食べられてしまうかもと不安を抱くめい。
初演よりがぶを演じてきた獅童と、初役でめいを勤める菊之助による二匹の息ぴったりな掛け合いに
客席のあちらこちらから笑い声が聞こえてきます。またがぶとめいが縦横無尽に客席をめぐる演出では、観客は大盛り上がり。
ふたりは話をするうちに、ますます親しみを覚えていくと、互いを “友達”と呼び合う仲になっていきます。
一方で、狼のぎろ(尾上松緑)が発端で描かれた自らの恥辱を晴らそうと手下たちにめいたちを捕まえるよう命じます。
狼のばりい(澤村國矢改め澤村精四郎)が、めいの行方を問いただそうとがぶを連れてくると、
精四郎と獅童による狂言半ばで襲名のご挨拶。獅童から送られた暖かいエールをうけて、精四郎の眼には涙が浮かびます。
門閥外から幹部俳優となった精四郎の決意表明に、会場中からも割れんばか りの祝福の拍手が送られました。
そして、ある月夜の晩にがぶとめいが並んで美しい月を眺めていると、そこへめいを狙うぎろが現れ、いよいよ物語は佳境に。
めいを追いかけ狼たちに捕まったみい姫(中村米吉)たちの姿が…。
狼と山羊との息を呑む、大迫力の立廻りは圧巻で手に汗握る展開が続き…。
幕切れでは、がぶとめいの誰も邪魔することのできない強い友情に、客席は温かい雰囲気に包まれながら、
手拍子で一体となっておおいに盛り上がりました。
『あらしのよるに』左より、幼いころのがぶ=中村夏幹、狼の長=中村獅童
提供ⓒ松竹
『あらしのよるに』幼いころのめい=中村陽喜
提供ⓒ松竹
『あらしのよるに』左より、がぶ=中村獅童、めい=尾上菊之助
提供ⓒ松竹
『あらしのよるに』左より、たぷ=坂東亀蔵、みい姫=中村米吉、めい=尾上菊之助、狼のおばば=市村萬次郎、ぎろ=尾上松緑
提供ⓒ松竹
『あらしのよるに』左より、めい=尾上菊之助、がぶ=中村獅童、ぎろ=尾上松緑
提供ⓒ松竹
第二部は
『加賀鳶』で幕開き。
歌舞伎の名作者・河竹黙阿弥による江戸の粋が巧み 織り込まれた世話物の傑作です。
今回は見応えある「木戸前」からの上演。
本郷界隈では先日、加賀藩お抱えの鳶と旗本配下の定火消の間で大喧嘩が起こりました。
今日も日陰町の松蔵(中村勘九 郎)をはじめとする加賀鳶たちが勢揃い。
歌舞伎座の花道に俳優が並ぶ姿は壮観です。ずらっと花道に並び、黙阿弥らしい七五調のツラネの台詞は圧巻で、
客席には一気に粋な江戸の風が流れ込みます。血気に逸る加賀鳶の若い者たちを、頭分の梅吉(尾上松緑)が
江戸の町衆の憧れであった鳶頭の 気風の良さを見せながら留めに入ります。
ところ変わって、日の暮れた御茶の水の土手際では按摩の道玄(尾上松緑)が通りがかりの
百姓を手に掛け懐からお金を盗んで立ち去りますが、落としていった煙草入れを松蔵が拾い、
この後の物語に大きく関わっていきます。
続く場面では、姪の奉公先へ道玄と内縁の妻お兼(中村雀右衛門)が強請りに行きます。
道玄のふてぶてしさと、お兼の小悪党ぶりに思わずハラハラしながら強請りの現場を見守ります。
ようやく道玄たちがお金を手に入れたところへ松蔵が現れ事態は一変。
ここでも黙阿弥らしい七五調の名台詞での道玄と松蔵のやり取りが聞きどころとなります。
いよいよ、道玄とお兼の悪事が露見すると、可笑しみ溢れる立廻りに客席からは笑いが漏れ、
最後はすっきりと晴れかがった結末と、どこか憎めない道玄に大きな拍手が送られました。
第二部『加賀鳶』天神町梅吉=尾上松緑
提供ⓒ松竹
第二部『加賀鳶』日蔭町松蔵=中村勘九郎
提供ⓒ松竹
続いては、長唄舞踊の名作
『鷺娘』。
幕が開くと、しんしんと雪の降る水辺に、綿帽子に白無垢姿の娘が一人佇んでいます。
傘を差したこの娘は、人間との道ならぬ恋に悩む鷺の精 (中村七之助)。
恋に思い悩む様子を踊りで見せていきますが、ところどころに鷺の精であることを想起させられます。
衣裳が引き抜かれ、艶やかな町娘の姿となると、客席からは驚きとがらっと変わった雰囲気への期待感に包まれます。
曲調も変わり、恋しい男と結ばれた頃の様子を踊ると、今度は男心のつれなさを訴えていきます。
美しい娘が踊る女心にうっとりしていると、舞台は降りし きる雪の中へ。
恋の妄執が甦り、ついに鷺の精の本性を顕していきます。
幻想的な美しさの中で激しく凄まじく踊る幕切れに、客席からは止まらない拍手が響き渡りました。
第二部『鷺娘』鷺の精=中村七之助
提供ⓒ松竹
第二部『鷺娘』鷺の精=中村七之助
提供ⓒ松竹
第二部『鷺娘』鷺の精=中村七之助
提供ⓒ松竹
第三部は、季節の移ろいをコミカルに描いた変化舞踊
『舞鶴雪月花』から始まります。
本作は、十七世中村勘三郎(俳名「舞鶴」)に書き下ろされた中村屋ゆかりの舞踊です。
幕が開くと枝垂桜の大樹の陰から、ひょっこりと姿を現した桜の精(中村勘九郎)が、
愛らしい娘姿で桜の名所の景色を歌いながら、まるで花の香りが漂うような艶やかな踊りをみせます。
季節が変 わり、月明りの下のすすき野となり、子どもの松虫(中村長三郎)がはぐれた親を探して踊っています。
親の松虫(中村勘九郎)が花道のすっぽんから現れると、先ほどまでの娘姿から一転した姿に客席からは
驚きの声が上がります。短い生命の虫の運命を哀れに踊る姿に観客の心は引き込まれていきます。
そして舞台は雪景色の町中へ。大きな雪達磨が舞台からせり上がり、炭屋の町娘に恋する雪達磨(中村勘九郎)が、
恋心を滑稽に踊って見せます。勘九郎が歌舞伎座で初めて踊る『舞鶴雪月花』、三役目となる雪達磨では、
軽妙に踊る姿に客席からは笑い声と拍手、場内の温度も上がると、 燃える恋心と共に、
朝日が昇ると雪達磨のからだはどんどん溶けていき…。
「中村屋!」の大向うが響きわたり、場内は惜しみない大きな拍手に包まれました。
第三部『舞鶴雪月花』桜の精=中村勘九郎
提供ⓒ松竹
第三部『舞鶴雪月花』桜の精=中村勘九郎
提供ⓒ松竹
続いては、幻想的で詩情豊かな泉鏡花の世界が浮かび上がる
『天守物語』です。
舞台は播磨国姫路にある白鷺城。この天守閣の最上階は、人間たちが近づくことのない、
美しい異界の者たちが暮らす別世界で、侍女たちが秋の草釣りをする中、蓑を纏った富姫(坂東玉三 郎)が登場します。
美しく気高い姿は、まさにこの異界の主たる風格で、客席も人間の世界からいつの間にか変わっていきます。
やがて、富姫を姉と慕う亀姫(中村七之助)が訪れます。
手土産として亀姫が持ってきた、血のしたたる生首を手に微笑む件は、鏡花らしい妖しい魅力に満ち溢れながら、
奇怪な存在感を放つおどろおどろしい異界の者たちにも目を引かれます。
前半の不思議な世界から 一転、後半の姫川図書之助(市川團子)が行方知れずとなった白鷹を探しに
天守へやってくると空気が変わり、富姫と図書之助の異界の者と人間との恋が描かれます。
特に、富姫が想いを顕わにして いく様子は物語の最大の見どころとなり、異世界に住む二人の行く末を案じます。
随所に感じられる鏡花らしい美学と世界感の中、当り役として輝きを放ち続ける玉三郎の富姫と、
堂々と真っ直ぐに図書之助を演じきった團子の二人が描き出した至上の恋に、
観客からの陶酔した拍手が止みませんでした。幕が閉まっていきました。
第三部『天守物語』左より、姫川図書之助=市川團子、富姫=坂東玉三郎
提供ⓒ松竹
第三部『天守物語』左より、姫川図書之助=市川團子、富姫=坂東玉三郎
提供ⓒ松竹
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情報は書き込んだ時点のものですので、実際の内容と異なる場合があります。
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